>>CE71.08.01 L3/ユウナ・ロマ・セイラン
艦橋の正面スクリーンには調印式典の模様が映し出されていた。
ユニウス条約の締結。
南アフリカ統一機構の首都ナイロビで行われ地球連合とプラントの停戦協議は「ナイロビ講和会議」と呼ばれていたものの、最終的にはスカンジナビア王国外相リンデマンが提案をした「お互いの国力に応じた軍事制限」を基本とする「リンデマン・プラン」を採用、今次大戦における最大の悲劇とされる「血のバレンタイン事件」を地球連合も認めたことから、最終的に「ユニウス条約」という名前で停戦が締結されることになった。
とはいえ、原作に比べると今の時点でのナチュラルとコーディネイターの種族間問題は和らいでいるのが実情だ。
原因は民生用ニューロリンカーことナーヴギアの普及と関係している。
オーブ防衛戦で有用性が実証されたリンカー技術は、セイラン家とアスハ家が共同出資した新企業『アーガス』により一般市場にも開放された。ついでに俺がシステム開発を請け負う形で『ソードアート・オンライン』を実用化。ただしアバター変更は不可、ナーヴギアも最初からアミュスフィアと同程度のデスゲーム不可な仕様にしたため、『SAO』シリーズのような問題は極力つぶしてある。
で。
これに伴い、リンカー技術の同調率が遺伝子強化されたコーディネイターほど低下することが発表された。また、今なおオーブの独占技術としてあるニューロリンカーによる脳神経系補助を行うと人によってナチュラルの方が各方面でコーディネイターを上回ることも実証済み。これにより世界中のナチュラルが自信を取り戻し、なにやらブルーコスモスの活動も沈静化しつつある今日この頃。最近はコーディネイターの過激派なんてものが現れだして、なんだかなー、と思うことが増えている昨今だ。
そうそう。
第三次ビクトリア攻防戦以降の歴史は、原作をほぼ踏襲しつつも斜め上の展開を見せてくれた。
まず原作で7月1日に起きたラクス・クラインの反乱はそのまま発生。ターミナルが暗躍し、ラクスと縁を持つキラに協力を求める通信があったようだが、フレイとの結婚を視野に入れて家さがしすら始めているキラが応じるわけもなかった。
オーブにしても戦後処理がひと段落した6月23日の時点からL3再開発事業の開始を宣言。宇宙軍によるデブリ回収やら譲渡済みのコロニーをL4から運び出すなど、大忙しな状況だったのでプラントの内紛にかかわっている余裕など無い。
よって、この世界では三隻同盟なんてものはなかった。
7月12日、原作通りにL4のメンデル跡で<エターナル>と<ドミニオン>が激突。もしかしてこれでラクス一党が退場してくれるかも……と期待したが、そうはならず、さらに原作と違う別口からアズラエル財団がNJC(ニュートロンジャマーキャンセラー)の情報を入手してしまう。
情報源は、どうやらプラント在住のローレベル・コーディネイターだった模様。
これが二次創作によくある修正力か……と戦慄したのは秘密だ。
もっとも、こっちの仕込みはすでに終わっているので、あまり心配しなかったが。
7月16日、地球連合首脳会議において、NJC搭載型核ミサイルの開発開始と“ピースメイカー隊”の編成が極秘裏に決議される。もちろん、その現場は俺が記録しておいた。原作通りだなぁ、と思いつつ俺個人のエージェントが得た情報としてオーブ本国にも通達。核兵器対策が議題にあがったのでニュートロンスタンピーダーの可能性を示唆しておいた。これを受け、本国で研究開始。俺個人にも研究依頼が来たものの、いい加減、俺に依存した体制は好ましくないのでスルーしておいた。
8月8日、地球連合軍によるカーペンタリア攻略作戦が発動。
地球軍、カーペンタリア攻略を最終目標とするエアーズロック降下作戦を発動。砲撃戦能力を強化した<ぺリオン>を主力とするオーストラリア内陸部からの浸透作戦が始まり、ZAFTの地上戦力はさらに追い詰められていくことになる。
また同時期からビクトリア宇宙港より続々と宇宙戦用<ぺリオン>にあたる<ロングぺリオン>や人員・物資が月に向けて打ち上げられていく。大作戦の噂が流れだし、オーブも念のため警戒態勢をとることにした。
もっとも、オーブの心配は杞憂に終わる。
9月11日、地球連合軍司令部はプラント本国攻撃を最終目標とした「エルビス作戦」の発動を決定。これに伴い、地球連合とオーブとの休戦に向けた動きが本格化する。
9月15日、赤道連合首都シンガポールにおいて地球連合とオーブの休戦協定、通称「赤道条約」が締結される。内容は事実上、地球連合側の降伏そのもの。アズラエル財団を主とした賠償金の支払い、戦争犯罪人としてのムルタ・アズラエルおよびロンド兄弟の引き渡し、G計画成果物の全面的な引き渡し、L3宙域のオーブ独占領有承認などがなされた。
ぶっちゃけ、アズラエル一派を生贄にした手打ち式そのものだ。
これに伴い<ドミニオン>と<ダガー>系MS機体がオーブに引き渡され、ナタル・バジルールとアーノルド・ノイマンも戦争犯罪人として引き渡されている。両名には不運としか言いようがない顛末だが、地球連合内での権力闘争の結果でもあるので納得してもらうしかない。
また、この過剰ともいえる賠償に対し、地球連合は最新のNOSと装甲技術の提供を打診。悩みどころだったが、俺が特に気にしていないことを知った爺様がOKを出したことからこの話はあっけなくまとまることになる。
9月23日、ボアズ攻略戦。ピースメーカー隊による核攻撃でポアズが陥落する。この時、新装甲で超軽量化に成功した<試作型バスターぺリオン>が活躍。地球連合のMS運用が宇宙でも移動砲台を主とする路線で固まることになった。
9月26日、第二次ヤキン・ドゥーエ攻防戦。プラント本国への核攻撃が行われるものの、<エターナル>が颯爽と登場。アスランとニコル、また本国から出撃したイザークとディアッカが乗る<ジャスティス>が<ミーティア>で対応したことにより核はすべて迎撃される。<フリーダム>無しでどうなるかと思ったが、<ミーティア>4機で対応したので、どうにかなったらしい。
その後、ZAFTは<ジェネシス>を使用。第1射だけで4割を撃退する。
翌27日、<ジェネシス>第2射により、補給を兼ねた地球連合軍第二陣の攻撃隊もろとも、月面のプトレマイオス基地を破壊。戦いの趨勢は決したも同然だが、ここでなにをトチ狂ったのか、パトリック・ザラはアマノミハシラに第3射を放とうとする。
ここで俺の仕掛けが牙をむく。
なんてことはない。<ジェネシス>が動作不良を起こし、自爆しながらズラした射線でヤキン・ドゥーエを薙ぎ払っただけだ。これにより本国宙域にデブリが大量発生、ヤキン・ドゥーエに詰めていた上層部は全滅。パトリック・ザラも当然死亡。プラントは混乱のるつぼに叩き込まれることになった。
そこに再び<エターナル>が登場。ひそかにターミナルの支援を受けつつ、ラクス・クラインが呼びかける形で全体の統制が回復する。これをきっかけとし、失墜していたクライン派が再びプラント政権を掌握する。
9月30日、プラントはラクス・クラインを首班とする新政権を発足。地球連合に対する停戦協議を正式に求める。地球連合も、これを前向きに受け止める。それというのも、この頃になるとリンカー技術の話が地球圏で広まりだしていたからだ。つまり、これを使えばナチュラルもコーディネイターに対抗できるわけで、それがブルーコスモスの勢いをそぎ始めたというわけだ。
同日、プラント新政権はオーブにも停戦協議を持ち掛ける。
オーブ=プラント間の停戦協議は月面中立都市コペルニクスで行われ、11月24日に「コペルニクス条約」が締結される。内容は賠償こそないがヘリオポリス崩壊の謝罪が公式に行われ、オーブのL3独占領有の承認と前期GAT-Xシリーズの引き渡しが中心となっている。他にもこまごまとあるが、まぁ、気にするな。
原作では第二次ヤキン・ドゥーエ攻防戦後に月のファクトリーを失ったユーラシア連邦がアマノミハシラに攻めてきたが、この世界では地球連合の主導権をユーラシア連邦が握っているせいか、逆にそうしたことは起きなかった。
だが、海賊の襲撃ならたびたび起きている。
海賊に見せかけたZAFTの特殊部隊や、海賊に見せかけた地球連合軍の特殊部隊が何度となくアマノミハシラを狙ってきたのだが、そのすべてをオーブ宇宙軍は退けている。ついでに海賊の一部がジャンク屋連合につながっていたので、12月の時点でオーブは実力行使に打って出た。
ジャンク屋連合に対する討伐宣言と降伏勧告だ。
もともとジャンク屋連合とはL3復興事業を通じて接触を持ち始めていた。またNOSの対価として得た旧型コロニーおよび赤道条約締結後に買いたたいた廃棄コロニーをL3に運ぶ際に長期契約を結んだジャンク屋もいる。その中に、あの悪運の強い彼もいたが、正直どうでもいいので放置してある。
んで、つきあいを持つ中でターミナルと結びついているジャンク屋が数々の非合法活動に手を染めていた事実が明らかになった。というか俺が明らかにした。その中には地球連合加盟国に対する麻薬密売などもあり、そっち方面があれこれと大騒ぎになっている。
ジャンク屋連合そのものは地球連合だけが特権を承認しているので、オーブからみるとただの民間組織だ。よって12月15日をもってオーブはジャンク屋連合を非合法団体に認定。ジャンク屋連合の有志を支援し、新たなNPO団体として「DSA(デブリ・スイーパー・アソシエーション)」を設立させた。
そのうえでオーブ宇宙軍が出動。ムウ率いるMS部隊が大活躍し、<ジェネシスα>を確保し、これをL3に運び込んだ。
そんなこんなで今現在もオーブはジャンク屋連合を名乗る海賊と宇宙でドンパチを続けている。その背後にいるターミナルは、情報戦チートな俺の攻撃で状況の把握すら難しくなっており、最近はプラントの直接的な強化に専念し始めた気配が濃厚だ。
大望のSEED持ちによる政権だから、だろうな。
地味にオーブはSEED持ちのカガリが次期代表首長に内定しているので、連中にしてもうかつに手を出せなかったりする。
あとは地球連合だが……ま、あとは勝手にやってくれ。
こっちはこっちで忙しいんだ。
「最終確認終了。──総長、発進準備整いました」
「そうか」
ユニウス条約調印式典を映し出していた正面スクリーンが別のものを映し出した。
再建されたヘリオポリスの映像だ。
かつてのように資源小惑星にシリンダー型コロニーが突っ込んだ形をしてるが、今はそれが2基あり、資源小惑星間をつなぐフレームもろとも、全体がAL防御幕で覆われている。さらにコロニー間にもAL防御幕は張られ、そこでL1、L4、デブリ軌道から送り込まれる巨大デブリを受け止めている光景も垣間見えた。
新生ヘリオポリスは宇宙のリサイクル基地として再出発を果たしているのだ。
最終処理はオーブ本土で行い、ここではあくまで分別が主となっている。そして今後、ここは今年2月2日に発足したNPO団体、JDこと“木星開発団(ジュピター・ディベロッパーズ)”の地球圏側窓口として機能する。
「じゃ、行くか」
「了解。──<ジェネシスα>に通達。出力上昇を確認」
スクリーンが切り替わり、第一陣の異様な船体の概念図が表示された。
シリンダー型コロニーそのもの。
底面にはアーム等でがっちり固定された<アークエンジェル>の姿がある。
<アークエンジェル>のALを用いたコロニー丸ごとの移動。
JD発足と共に、俺はオーブの公職をすべて退き、退職金代わりにオーブでも持て余していたG計画成果物のすべて──<アークエンジェル>、<ドミニオン>、前期および後期のGAT-Xシリーズ──の譲渡を受けていた。
<フリーダム>は魔法で劣化させたものを残してある。
今はムウがメインパイロットを務めているそうだが、あまりのハイスペックに、今でももてあましているとぐちっていた。
そうそう。戦争犯罪人として受け渡されたアズラエルは懲役240年の禁固刑、ロンド兄弟は軍法に基づき処刑、ナタル・バジルールやアーノルド・ノイマンをはじめとする<ドミニオン>クルーは情状酌量が認められて現在はオーブ宇宙軍に所属している。なお、ナタルとアーノルドは来年にも結婚しそうだ。というのはマリューの妊娠が発覚して浮かれまくりだったムウ・ラミアス一佐の無駄情報だ。
──あんたもそろそろ結婚したらどうだ?
──誰とだよ。
──はぁ? セイラ・アブナズルっていういい女がいるだろうが。
という話をしたのは2週間前のことだ。
あぁ、そうだよ。
どうせ俺は一人上手だよ!
「AL展開、惑星間航行強度まであと40……10……惑星間航行強度まで到達」
「っていうかさ、セイラ」
「なに?」
「別に口頭でやる必要、ないだろ」
「気分よ、気分」
<アークエンジェル>の艦橋には俺とセイラしかいない。他の同行メンバーは全員コロニー側の管制室に集まっている。そちらには別口で状況報告の放送を行っているので、いちいち艦橋であーだこーだする必要は皆無なわけで……
〈あきらめろよ、本体。どうせ俺たちはひとり上手なんだから〉
居残り組のシャア・アブナズルがそう念話で告げてくる。もっとも、向こうは<ドミニオン>を用い、同じように来週には旅立ってくる予定だ。あとは木星で大気資源採取施設を完成させ、帰還用の<ジェネシス>を組み立て、ついでにM粒子型核反応炉を完成させ、地球=木星往復資源船を就航させて……やること、いろいろあるなぁ。おい。
「どうしてこうなった」
俺は未完成だった<アストレイ>に乗りたかっただけなんだがなぁ。
気がつけば、これだ。
だが地球圏に残ると、もっと面倒なことに巻き込まれるのは必至。さらなる研究を進める意味でも木星圏くらい遠くまで移動したほうがいいに決まっている。
「いっそ別人になるか……」
ヒトの知り得る全ての知識を脳内で検索できる【超叡智】を使えば、人為的に転生する手段も……ほら、あった。
「今度はもう少し、のんびり生きられる立場になりたいもんだわ」
出発のカウントダウンが始まる。
さて。まずは木星だ。
種死がどうなるのか謎な部分が多々あるが、そんなもん、知ったことか。そもそも【超叡智】があれば木星圏に地球以上に豊かな文明圏を築くことも可能だ。あとはもう、ここで生きている連中で好きにしてくれ。
よって! 俺の頑種はここで終了! そうする! そう決めた!
あとはほんと、好きにしてくれ!!
>>SIDE END
>>SIDE OTHER
……その後、地球圏で案の定、大規模な戦いが起きた。コーディネイター至上主義過激派によるユニウスセブンの残骸を地球に落とすという“ユニウスセブン落下テロ事件”、通称「ブレイク・ザ・ワールド」を発端とした地球連合とプラントの第二次戦役だ。これはロゴスとターミナルの暗躍により戦火が広げられ、原作の種死のような様相を呈するが、原作そのままとは言えない部分が多々あった。
なにしろムウはオーブで二児のパパになっている。
エクステッドはジョン・ドゥ暴露事件時に救助されている。
キラはフレイと結婚、医師の道を志すようになり、軍から遠いところにいる。というかブレイク・ザ・ワールドの時点で三児のパパだった。さすがスーパーコーディネーター。下半身もSEEDだZE☆
カガリはウズミの引退に伴いアスハ家首長およびオーブ代表首長に就任するものの、原作とは遠く離れた、オーブのためなら他国民の虐殺にも目を閉じるような逞しい(?)女傑へと成長しつつある。また、ものすごい斜め上な展開の結果、なんと『ASTRAY』シリーズに登場したユーラシア連邦軍特務部隊『X』のカナード・パルスと恋仲になっている。
なお、カナード・パルスはオーブでキラと運命的な遭遇を果たし、ナーヴギア用コンテンツのひとつであるロボットバトルゲーム『デンジャープラネット』で雌雄を決し、いろいろと心の整理をつけたらしい。というか、それでいいんだ。すげーな、VR。
シン・アスカはオーブの教育機関に在学中。
ギルバート・デュランダルは、ラクス政権を支えるターミナルの謀略により開戦前の時点ですでに失脚。シングルマザーになっていたタリア・グラディスはその子供、さらに保護下にあるレイ・ザ・バレルと共にオーブに亡命。本土で遺伝子調査会社を立ち上げ、新たな人生を始めているところだ。
なお、レイ・ザ・バレルはちょっと可哀想だったので、こっそり俺が拉致してテロメアの問題を治してある。そのせいでひと騒ぎ起きたのだが、“人類の技術はまだ遺伝子の全てを解き明かしたわけではない”という結論になった。というか、そうなるように世論誘導した。だからレイ・ザ・バレル、おまえは幸せになっていい。俺が許す!
んっ? ミーア・キャンベル?
売れないてないけど月面で知る人ぞ知る歌手として活動していますが、何か?
一方、ラクスは彼女の相談役となったマルキオ導師のせいで“世界征服すれば世界平和が実現できる”などと本気で考えるかわいそうな状況に。アスランはマルキオ導師に反発しつつも、自分では決断できないところが何も変わっていないので状況に流されまくり。
<ミネルヴァ>はアンドリュー・バルトフェルドが艦長に抜擢。アスランの相棒扱いを受け続けてるニコルの部下にルナマリア・ホークが配属。<インパルス>はアスラン、<セイバー>はニコルの乗機となった以上、主人公はアスランってことか? いや、種死の主人公は“主人公(涙)”だからなぁ……
ロード・ジブリールは平常運転。こいつは原作そのままと言っても良い。
最終的にオーブのみが平穏を享受。オペレーション・ラグナロクことヘブンズベース攻防戦の後、逃げ出したロード・ジブリールがオーブに逃げ込むが、難癖をつけているとしかいえないオペレーション・フューリーは俺の置き土産というべきオーブ軍の<ウィンダム>の大活躍でオーブ圧勝。多大な権益をロード・ジブリールから引き出したうえで、彼を宇宙に放逐する。
で、あれこれあったあと。
メサイヤは離反したアスランが破壊。マルキオ導師を殺し、ラクスと共に爆発の中で消え、ルナマリアは涙するニコルを抱きしめてエンディング、という形でユニウス戦役は幕を下ろすことになった。
原作の主要人物を欠いたことで二流がgdgd(グダグダ)してばかりの展開だったが、総じて俺の肩入れしたオーブが利益を受けた点だけは確かである。
そんな俺、ユウナ・ロマ・セイランはCE99年7月10日、木星共和国の建国宣言が行われる一年前に48歳の若さで逝去している。死因は宇宙白血病。遺体は生前の本人の希望で木星葬──木星大気圏下に落とす──に伏された。
……ということになっているのだが。
「はぁ、今日もいい天気だなぁ」
地球の南半球、オーブにもほど近いポリネシア諸島の某島。某龍玉のタートルな仙人の家にしか見えないものが建っている孤島の砂浜では、パラソルの下でのんびりとロングチェアーに腰かけている俺がいたりする。
うん。生きてるんだ。俺。ちなみに転生もしてないよ?
ただ、顔立ちや体型は随分変わったと思う。
髪の色は青みが強まり、紫色っぽい感じになってきたし、頬骨が自然と削れたかのような感じで顔全体がシャープにもなっている。整形したつもりはないんだが、今にして思うと転生前の名前がフラグそのものだったじゃないかなぁと思うところが少々。
あー、みなさん、どうも。白川修造(しらかわ・しゅうぞう)です。
うん。あれだ。『スパロボ』シリーズのテラ子安のひとり、“たまにしか出てこず、出てきたら謎めいた事を言い、おいしい所を持ってくだけ持っていって帰る”のが特徴の、超絶的な自信家にして自由を熱愛する御方であえせられる超天才、シュウ・シラカワ博士。その影響を、俺、色濃く受けているらしい。
そりゃあ、【超才能】に【超叡智】なんだもんな。逆に納得したよ。俺、無限に存在するシュウ・シラカワの並行存在のひとりなんだって。そのわりに前世、平成日本での俺は、大したことのないプチオタクなだけだったが……
なんにせよ。
いろいろあって不老長寿になった結果が、今の俺だ。シュウ・シラカワ本人ほど目つきは鋭くないし、どちらかといえばボケ~ッとした感じがするシュウ・シラカワ(笑)な感じだが、今は地図にも無ければ認識阻害により間接的な記録上でも存在を把握できないこの島で興味の赴くままに研究三昧の日々をすごしている。
「ふむ……平和ですか。そうですか」
自分勝手な転生者は、贅沢なひとりの時間を楽しみ続けるのだった。
>>SIDE END
>>>>おわり
以上、「面倒くさがりなチート転生者なら要所に仕込みだけでして放置するよね」という話でした。
少しだけ補足すると、主人公はジョン・ドゥ暴露事件で「干渉しても被害は出る」ことを学ぶと共に、気合いを入れて干渉する意味そのものを見いだせず、「俺の責任範囲ってオーブだけだよね!」と開きなった結果、こうなってしまった、という感じです。
地味にこの続編として、魔法チート無しバージョンで「もう一回やどドン!」な話も途中まで書いていますが、こっちは未完のまま放置してあるため掲載しないつもりです。ただ、今回の掲載を気に読み直した結果、なんとなく書き足してみようかなぁ、と思うところも出てきたので、書きあがった際には章を分けて追加しようと思います。
でも、とりあえずこの話はこれでおしまい。
以上ッ! しっつれーしましたーッ!!
※追伸:2015.06.18
感想で指摘されるまでアゴンさんの『Gの日記』とかぶってること、忘れていたので、念のため主人公の名前、変えました。当初は完全オリ主で考えていたものの、ふとシリーズ化できるかもと妄想し、だったらもうひとネタ挟もうと「シュウ・シラカワの残念な同位体」というネタを思いついたが最後、「2人目のシュウ」でシュウジという案と「造られたシュウ」で修造の2案を思いつき、「修造だと太陽神になってしまう」「そういえばマスター・アジアの本名ってシュウジ・クロスだったからガンダムつながりにできるな」というわけで前者にした、というだけだったりします。
ちなみに本作第10話の執筆は、TXTのプロパティで見たところ2013年12月08日更新になっていたので、たまたま被っただけのようです。大して重要なネタでもないので、修造に変更させていただきます。