頑種ですか。そうですか   作:匿名既望

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原作? クルーゼの隣で寝てるよ。(あの世的な意味で)


第6話 引越ですか。そうですか

>>CE71.04.05 本島@オーブ/ユウナ・ロマ・セイラン

 

 ラウ・ル・クルーゼの極刑が言い渡された3月24日、

 

──ボッチが嫌なら分身すれば良くね?

 

 という逆転の発想によって、俺は『魔法少女リリカルなのは』のミットチルダ式魔法と、『魔法先生ネギま!』の数々の神秘、さらには『ゼロの使い魔』の[錬金]、[固定化]、[偏在]の3つを固有魔術化する形で、ニューロリンカーという魔術基盤に刻み込むことにした。

 

 これにより俺は[偏在]で最大108人に分かれることが可能となった。

 って、多すぎるわ!

 

 そこで本体を私室に残しつつ、アルハザード式魔導術式による[封時結界]の中に[偏在]を4人ほど送り込む形で魔法の鍛錬と検証に励ませてもらった。そこで判明したのは、[偏在]が得た知識と経験は任意のタイミングで“同調”すると本体にフィードバックされる仕様になっていたということ。つまり『NARUTO』の[多重影分身の術]に匹敵するチートであることがわかったという感じだ。

 

 そこで俺は固有魔術の[錬金]と[偏在]をさらにチート化させることにした。

 

 こうして3月末日には、[錬金]がナノ単位で形を変えられる[錬金変形]と、【超叡智】で知る物質なら何でも生み出せる[錬金生成]、[偏在]が受肉した変身済みの偏在を生み出せる[変化偏在]へと進化させるに至った。

 

 なんかもう、どうにでもなれ~って感じだ。

 

 そう呆れている中で爺様から持ちかけられたのが、俺のパテント料に関する話とアメノミハシラ総督および宇宙軍司令長官の就任話だ。

 

 なんでも<アークエンジェル>が持て余されているらしい。

 またサハク家失墜後、宇宙軍の扱いが宙に浮いているらしい。

 

 そこで俺は<アークエンジェル>を俺の個人企業であるフロンティア社に現物支給するならパテント等をチャラにする案を提示した。これが早々にOKになったのだから苦笑するしかない。

 

 しかも現物支給されたのは<アークエンジェル>以外にも<ストライク>2機、<アストレイア>4機、スタージョン級シャトル2機、コーネリアス級航宙艦2隻だった。このオマケは単純にパテント料に見合う金額を査定した結果と、オーブ本土防衛軍で極秘開発していた偽百式こと<アカツキ>の開発をお願いするために色をつけた結果だったらしい。

 

「つまりオマケはご機嫌取りってこと?」

「まぁ、そういうことだな」

 

 正式な受領書類を持ってきた父さんは、苦笑まじりでそう答えた。

 さもありあん。

 <アカツキ>の開発チームは意固地になって俺の関与を拒否し続けてきた。それが今になって態度を変えたということは……あぁ、原作でも武装の開発が遅れて頑種時代には間に合わなかった、みたいな設定があったな。その絡みか?

 

「で、どうする? <アカツキ>は開発を中止してもかまわんのだが……」

「好きに改造していいなら、やってもいいけど」

「そうか? じゃあ、頼む」

 

 この時点で俺が<アークエンジェル>と共にアメノミハシラに赴任することは決定していた。よって、<アカツキ>も宇宙に上げることが決定。

 

「ところでスタージョン級とコーネリアス級だけど、どこに余ってたやつ?」

「もらいものだ」

「えっ? ──あっ、NOS?」

 

 なんでもちょうど一昨日、大西洋連邦とユーラシア連邦にNOSを販売する決定を首長会議が下したらしい。それに先立ち、両国から旧アルテミス所有権と建造途中で放棄されていたシリンダー型コロニー1基の所有権、またスタージョン級8機、コーネリアス級4隻、ドレイク級4隻、ネルソン級1隻、アガメムノン級1隻が譲渡されたそうだ。

 

 大盤振る舞いである。

 

 ただ、これには裏があって……

 

「それでな、ユウナ。できればドレイク級とネルソン級を──」

「改修しろって?」

「無償で、ということになってるんだが」

「あー、やっぱり」

 

 いわゆる改修型にすれば良いってことか。

 大した手間ではない。あとでサクッとやっておこう。

 

 ちなみにフロンティア社に譲渡された以外の艦艇は、スタージョン級2機が本土防衛軍預かりになることを除くと、残りすべてが宇宙軍預かりとなるそうだ。すでにスタージョン級は全機納入済みだが、宇宙艦艇は後日、月面基地に引き取りに来て欲しいそうだ。

 

「こっちから月面に?」

「ああ。向こうから運ぶと、途中でZAFTに落とされそうでな」

 

 なるほど。確かに。

 

 というわけで早速、引っ越しの準備をスタート。どうせなので、今後も考えて[変化偏在]の一部に、電子精霊網を駆使した偽の戸籍を用意。またフロンティア社の無駄に溜まっていた資産を浪費する意味で独自のヘリオポリス再建計画を立案。爺様に打診すると即日OKが出たので宇宙軍再編成計画に取り込むことにした。

 

 んで、あれこれやってるうちに日時が過ぎて4月17日。

 

 原作では<アークエンジェル>とザラ隊の最後の死闘によりトール・ケーニヒが戦死、キラ・ヤマトがMIA(戦闘中行方不明)となり、ディアッカ・エルスマンが<アークエンジェル>の捕虜となったその日、俺は正式にオーブ連合首長国軌道ステーション“アメノミハシラ”総督とオーブ宇宙軍司令長官に就任。またヘリオポリス再建事業最高責任者にも任命され、

 

「はぁ……自業自得とはいえ、やること多すぎだろ」

 

 と溜息をつかずにいられなかった。

 だが嘆いていても仕方が無い。

 本島で就任式を済ませた俺はカグヤ島のマスドライバーステーションに向かい、そこで出発準備をしていた<アークエンジェル>に乗り込むことにした。

 

「総督閣下、お待ちしておりました」

 

 搭乗口では女性士官と男性士官が待ちかまえていた。

 

 セイラ・アブナズル──フロンティア社所属技術試験艦<アークエンジェル>艦長に大抜擢されたオーブ生まれ、南アメリカ合衆国育ちの、元南米合衆国海軍士官。という身分を偽造しておいた[変化偏在]の一人だ。

 

 見た目は初代『ガンダム』のセイラさんそのもの、と言えばわかる人にはわかるだろう。

 と、なれば、もう一人もわかるはずだ。

 

 シャア・アブナズル──フロンティア社MS部隊隊長に抜擢されたセイラの実兄にして元南米合衆国空軍士官。という身分を偽装しておいた[変化偏在]だ。もちろん見た目はシャアその人。現在は袖こそノースリーブではないが、サングラスをしているクワトロ・バジーナ版になっている。

 

 共に軍には所属していないが、フロンティア社内では一佐待遇にしてある。

 

「出発準備は?」

「いつでも可能です」

「じゃ、早速」

「はっ」

 

 SPがいるので茶番をこなしつつ<アークエンジェル>に乗り込む。

 程なくしてマスドライバーを使い宇宙に向け出発。

 <アークエンジェル>は入港後、俺が提案した種死時代と同様の改修が施されているため、実を言えば単独での大気圏脱出も可能だったりする。だが、せっかくマスドライバーが使えるんだから、と今回は使わせ貰ったわけだ。

 

 続けてスタージョン級シャトル2機も打ち上げられてくるだろう。

 

 マリュー・ラミアス技術一佐やムウ・ラ・フラガ一佐をはじめとする亡命組は、ほぼ全員がこっちのシャトルに搭乗している。特にマリュー・ラミアスには今後の地球連合軍艦艇改修計画の要になってもらう予定だし、ムウ・ラ・フラガにはMS大隊を押しつけてアメノミハシラ防衛の中核になってもらうつもりだ。いろいろと期待しているので、是非がんばって欲しい。

 

〈でもその前にアメノミハシラそのものの魔改造でしょ?〉

〈おい。待て。セイラ。偏在でもおまえは俺だろ。念話での女言葉やめろ。きしょいわ〉

〈へぇ。じゃあ、同調しなくていいんだ。夜戦演習の〉

〈すみませんごめんなさい俺がわるかったです〉

 

 [マルチタスク]で思考を分けているだけのはずだが、どうも[変化偏在]すると主人格(?)を演じる思考部分が自然と活性化することが増えてきた。つまり、一人上手になってきたってわけだ。

 

 ……なんだろう。余計、悲しくなってきたぞ?

 

 はぁ……こんなチート野郎だから、それも仕方ないが。下手に理解者とか求めたら、そこから破綻していくの、見え見えだからなぁ。

 

〈それより本体。ひとついいか?〉

〈シャアか? どうした?〉

 

〈質問はMSについてだ。魔改造しないのか?〉

〈魔改造か……悩んでるんだが……〉

 

〈気持ちはわかる。そこでだ、魔改造するならシャア系のMSにして欲しい〉

〈自分でシャア言うな〉

 

〈だってシャアだぞ? クワトロ大尉だぞ? ガンダムとは違うのだよ、ガンダムとは〉

〈あー、いっそ<サザビー>にでもするか?〉

 

〈ねぇ。赤い<ストライクフリーダム>っていうのは?〉

 

〈シャア専用<ストライクフリーダム>? なにそれ燃える〉

〈そういえばこの世界だと<フリーダム>、計画倒れだっけ?〉

〈えぇ、そうよ。この世界だと<フリーダム>はクライン派、<ジャスティス>はザラ派が推し進めてた計画だったんだけど、クルーゼの一件でバタバタしてるうちに開発関係が一時、ザラ派に染まったらしいもの。おかげで<フリーダム>は設計以前の段階で開発中止。その分の生産力を<ジャスティス>に費やしたことで、もう4機も稼働しているわけだし〉

 

 ザラ隊にアスラン用とニコル用、ジュール対にイザーク用とディアッカ用が配備されている。この世界の核動力機は、試作型の<ドレッドノート>を含めても、これら五機だけである。

 

〈ああ、そういえば<ジャスティス>改修案にファトゥムの砲撃戦能力強化っていうのがあったな。この流れだと、もしかしてファトゥムだけを切り替えた中長距離戦用<ジャスティス>とか出てくるのか?〉

〈<フリーダム>涙目……〉

〈好きなんだけどなぁ、<フリーダム>と<ストライクフリーダム>……〉

 

 よろしい。ならば作ってしまおう。オーブ製<フリーダム>ってやつを。

 いや、この場合はフロンティア社製<フリーダム>か?

 オーブの兵器開発許可は貰っているから、やってしまおう。

 

〈じゃあ、<アークエンジェル>はどうする?〉

〈<アークエンジェル>か……〉

〈魔改造したいところだけど……〉

 

 ここが悩み処だ。すでに改修しているとはいえ、理想を言えば『機動戦艦ナデシコ』のオモイカネ型量子コンピュータを搭載してワンマンオペレーションを再現してみたい。というか、俺のチートを十全に発揮するには、余計な人間を排除しないといけないのだ。さもないと魔法とかバレかねないし。いや、最悪バレても、どうにもでなるが。

 

〈よし。決めた。やろう〉

〈どこまで?〉

〈まずワンマンオペレーション〉

〈はーい。艦の運用にロボットが必要になると思いまーす〉

〈ハロか〉

〈ハロだな〉

〈『SDガンダムフォース』の?〉

 

〈〈〈……ないわー〉〉〉

 

 『SDガンダムフォース』はさすがにオーバーテクノロジーすぎる。自我を持つ人工知能が当たり前のように存在する世界なんて、危なっかしくて手を出す気になれない。

 

〈定番は『ナデシコ』のコバッタだな〉

〈『スパロボ』系は?〉

〈いっそ『スターウォーズ』のドロイドって手も〉

 

 悩んだ結果、オモイカネ型量子コンピュータをコントロールユニットにした、『スターウォーズ』のR2シリーズ・アストロメク・ドロイドの採用を決定。外見的な威圧感が少ないことが採用の決め手になった。

 

〈そうなると<フリーダム>も魔改造したくなるなぁ〉

〈<ストライク>からの魔改造だろ? <ストライク>、もう1機あるけど?〉

〈そっちは近接寄りにして<ノワール>に?〉

〈魔改造<ストライクノワール>は、アリだろ〉

〈<アストレイア>は手つかず?〉

〈いっそMD(モビルドール)化して母艦を守らせる?〉

〈アリだな〉

〈アリアリだ〉

〈そもそも必要ないんじゃないの?〉

 

 もはや単なる脳内会議だ。

 しかも、意見を言い合いながら[マルチタスク]で実際に設計等を始めている始末。

 

 もっとも、考えてみればこの世界で前世を思い出した直後、俺が何を求めたかといえば、実物のMSに乗ってみたい、なんていう馬鹿馬鹿しい欲求だった。その結果、いろいろあって今に至っているわけだから……むしろ、こうなるのが自然なのだと思う。

 

 そんなこんなで、そろそろアメノミハシラだ。

 さーて、新天地でもガンバってみますか!

 

>>SIDE END

 




筆者はシャアとセイラさんが好きです。本作を書き始める少し前にファーストガンダムの小説版を手に入れ、アムロ死すべし、と思いました。ただ、THE ORIGIN のロリセイラたんはprprよりナデナデしたいと思った時点で、もう自分の思春期は終わったんだなぁと痛感しました。

閑話休題。

ヘリオポリス崩壊に関しての諸責任問題。原作では兎角スルーされまくりですが、種死時点におけるオーブ復興の一端は、地味にこれをテコにオーブがプラントから譲歩を引き出した結果ではないかと筆者は妄想しています。

いくらMSを共同開発していたといっても、コロニーを瓦解させたことに変わりはありません。小説版の頑種を読むと、プラント最高評議会はいろいろと自己正当化している様子がうかがえるわけですが、地味にこの件をそのままにすると「戦略物資である食料を生産していたユニウスセブンに核攻撃されたこと」も肯定しかねない悪手です。

現実には「そんなの関係ねー!」と利己的な主張をする国が大陸や半島にいるわけですが、さすがに優越種を自称するコーディネーターがそんなことをするとは……いや、奴らもそういえば…………

政治って、複雑怪奇ですよね!(逃走

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