箱庭の世界にやってきた博麗霊夢 作:冷水
博麗霊夢のプロローグ
==幻想郷、ある晴れた秋の日のこと、博麗神社にて==
幻想郷で博麗霊夢は退屈を持て余している。
前回の異変から半年、神社への参拝客もあまりなく、神社に遊びに来る妖怪も少なかった。
「ああ、暇だわ・・・・・・」
時々、魔法使いの霧雨魔理沙が来てお茶をしていく程度にしか、来客などない。
「もう、寝て過ごすのも飽きたわ・・・」
異変もなく、妖怪も最近は暴れることがない。
これでは、妖怪退治の報酬も入るはずがない。
お賽銭を入れる人もいない。
「ああ、することもない、お金もない、あるのは暇くらいだわ」
先日、魔理沙の連れとしてアリス・マーガトロイドが来たときに、置いて行った本のことを思い出した。
それを手に取り、読み始める。
それは、異世界に勇者として召喚される物語。
外の世界の、ライトノベルという文学らしい。
「私も、異世界に召喚されたりしないかしら・・・・・・」
本人は、何気なくつぶやいたつもりだった。
しかし、それを聞いている者がいた。
あたりに神気が漂い始める。
「っ・・・・誰?」
『その願い、聞き届けよう』
頭の中で声がする。
「え?」
『もし、汝が機会を得たいと望むのならば、次の満月の夜に願いなさい』
しばらくして、声が聞こえなくなり、あたりに漂っていた神気が消えている。
霊夢は茫然とし、声の主と、その内容に思いを馳せていた。
ここで、博麗霊夢という少女について、記載しておこうと思う。
博麗霊夢という少女は、一言で言えば貧乏で、何もかもを面倒くさがる癖がある。
それは、異変と呼ばれる幻想郷を揺るがすほどの事件の時もそう。
幻想郷の柱ともいえる、博麗大結界の管理者。
それなのに、周囲から見ても面倒くさそうに、そして周囲が発破をかけてやっと重い腰を上げて動き始めるのだ。
しかし、そこに楽しみが無い訳じゃない。
普段から博麗神社にひきこもり気味の霊夢は、外に人間の知り合いは少ない。
会いに行くほど親しい人物は、人妖の区別をなくしても、霧雨魔理沙以外にいない。
どんなに面倒くさそうに見えても、普段娯楽の無い霊夢にとっては、
自らでおいしく入れたお茶と、そして異変だけが楽しみなのだ。
異変が解決した後に行う、宴会も忘れてはいけない。
だけど、年頃の少女にしては、それはあまりにも楽しみが少ないと、いえなくもない。
霊夢は逡巡する。
自らが消えてしまえば、結界を管理する人物がいなくなる。
霧雨魔理沙も、もしかしたら悲しむかもしれない。
それに対する答えを自らの中から模索する。
私が消えても、私が博麗の巫女に選ばれた時のように、
急死した博麗の巫女の代わりに、結界のほころびが限界に到達するまでの時間で、紫が代替たる者をみつけだす。
魔理沙は、あれで自分勝手なのだ。
普段、森から出ないのは魔法の研究をしているから。
そして人恋しくなると人里や、アリス・マーガトロイドや紅魔館のパチェリー・ノーレッジの所へ行く。
稀に博麗神社にもくる。
魔理沙には、私以外にも親しい者がなんにんかいる。
だから、大丈夫だろう。
自らを納得させ、そして自らのすべきことを頭に思い浮かべる。
「・・・・・・うん、おもしろそうじゃない」
霊夢は、立ち上がる。
自らが消えても幻想郷がしばらくは大丈夫なように、自らと同じように、後継者を紫が見つけるまでの、時間稼ぎを考える。
前回の満月は、昨日だった。
次の満月まで、幾分かの時間がある。
そして、珍しく意欲的に働き始める。
自らの好奇心に従って。
博麗の巫女が意欲的に働いている。
それは紛れもなく、霊夢を知る幻想郷の面々にとっては異変だった。
しかし満月の夜までの間、幻想郷の誰にも気づかれることはなく、誰も会いに来ることもなく、
八雲紫も、人間も妖怪も、幽霊さえも、霊夢へ会いにくることはなかった。
もし、誰かが会いに来たり、異変を起こしたならば、違った結果になったのかもしれない。
自らの霊力を、保存する為の術式を作る。
結界が綻びたら、保存した霊力から結界を修復するように、自らの意識を複製した式神を作る。
それはとてつもなく面倒で、だけど天才である霊夢には造作もないことだった。
普段やらないのは、それが途轍もなく力を消費する上に、管理するのも面倒だからだ。
「さようなら、幻想郷」
博麗霊夢が消えた。
翌日、遊びに来た霧雨魔理沙が、霊夢の不在を不審に思った。
それを八雲紫へと伝達し、霊夢が幻想郷から消えてしまったことを、幻想郷の人々が認知する。
書置きもなにもない、しかし結界をしばらく維持する為の、霊夢の式神を見つけた紫は、
霊夢が自らが消えることを予知していたのか、それとも、もう戻るつもりはないのか、
その意味だけを悟ってしまった。
後には、人知れず涙を流す魔理沙と、焦りを隠すことのできない八雲紫だけが残った。
中編(原稿用紙100~枚程度)の予定です。
プロットは簡単に作って、とりあえず書き始めます。
ここでの投稿活動は、初となります。
二次創作を作るのが初なので、何か変なところがあれば、ご指摘下さればうれしいです。
原稿用紙70枚程度の短編を何作か程度しか書いた経験がないのと、
戦闘描写、会話描写が苦手な為、そこそこ歪な作品になるかもしれませんが、
楽しんで頂けるように、頑張ります。