箱庭の世界にやってきた博麗霊夢 作:冷水
==ポーカー勝負==
クラミーの手から、トランプのカードが落ちる。
最後のチップが、霊夢の元へ移動する。
「・・・・・・・っ」
クラミーは、何も言えなかった。
((クラミー・・・・))
相方の心配する声が聞こえる。
「どんな手をつかったのよ・・・・」
唐突に呟く、しかしクラミーの声は誰にも届かない。
「どんなペテンを使ったのよ!」
クラミーは霊夢へ向けて、声を荒げるように叫ぶ。
「どこの種族の支援を受けているのよ!」
理不尽に対して、クラミーは叫ぶことしかできなかった。
クラミーは自嘲気味につぶやく。
「・・・ええ、私はエルフの、エルヴン・ガルドの支援を受けていたわ」
それを聞いた周囲の者たちは、ざわめき始める。
エルフが・・・エルフの国が・・・と呟き、青くなる者が大半だった。
クラミーの独白は続く。
「・・・・・・エルフの魔法に対抗した貴方のバックには、どこの種族がいるのよ・・・!?」
クラミーの目から、涙があふれる。
「ただのイマニティが、エルフの魔法に対抗できる訳がない!」
周囲の者達は、その言葉に息を飲む。
今まで攻めるようだった視線は、その言葉で何かを思い出したように反対の霊夢を見る。
自らの内から血を吐きだすように、クラミーの口からは怨嗟の声が続く。
「私たちの国を、イマニティの国を、好きにさせる訳にはいかない」
根底にある信条、それが口から零れる。
「エルフの支援を受けて、あらゆる勝負を放棄して、生存権を確保する」
クラミーは、既に砕け散ってしまった願望を語る。
「この状況で、こんな世界で、イマニティが生き残るにはそうするしか無いじゃない!」
その言葉で、ここに居るエルキアの国民は、思ってしまった。
そのとおりであると。
すると、相対していた霊夢という存在が、なんだか恐ろしいものであるように見えてくる。
ステファニー・ドーラですら、そう思ってしまった。
そこに、霊夢の凛とした声が響き渡った。
巫女である霊夢は、まるでその場にいる人の絶望を洗い流すような声で答える。
「そんなの、ただの言い訳じゃない」
しかし、霊夢はそれを切り捨てる。
「人類が魔法に対抗できない?」
そんなの誰が決めたのだと、霊夢は逆に問いかける。
「私の居た所はね、神がいて、人を襲う妖怪がいて吸血鬼がいた」
ここではない、世界を二つ超えて来てしまったのだと、そう呟いて。
「そんなところでもね、人間は暮らして行けるのよ」
多くの人間が、普通の人間が、食われるだけの弱い存在であることも、
否定はしないけど、と付け加える。
「だけどね?普通の人間でも、人外の存在へ対抗できる手段を持つことができる」
霊夢は問う。
なぜイマニティが、古の大戦を生き延びたのか?と。
「もし、対抗手段がないのなら、そんな種族、盟約があっても6000年もかからずに滅亡しているわ」
なぜ、古の大戦を生き延びたのか、それは人類にとっての最大の謎だった。
確かに、霊夢には人外へ対抗する特殊な才能があるとも言う。
「だけど私、知っているわ。人が努力すれば、私みたいな才能がなくても、人外へ対抗できた例を」
霧雨魔理沙という、普通の人間は、しかし魔法使いへと成ったように。
血の滲むような努力を。
そして、家族を捨て、帰る場所を捨て、
一人森の中で隠者のように生活しながらも努力する姿を。
危険な魔法の実験を行い、時に本当に死にそうになりながらも、
人でない者達の中で、一角の存在に成った例を語る。
「できた例があるのに、それを否定するの?」
怒ったように霊夢は言葉を紡いでいく。
「貴女、人間を馬鹿にしすぎじゃないの?」
霊夢の凛とした視線がクラミーを射抜く。
その場に居るものは、見られてもいないのに、
なんだか責められているように感じてしまった。
親に、いじめの現場をみつかって、咎められた子供のように。
「私は、不正など何もしていないわ」
霊夢はまわりの者達を睨み付ける。
「もし、不満があるというのなら、私に挑み負かせばいい」
それができない者が、何も言うなと言外に語る。
そして、おもむろにサイコロを3個取り出す。
「私は、3個のサイコロの目を同時に当てることができる」
そして一拍置く。
「さあ、不満があるという者は自らの手でサイコロを振りなさい。私は命を賭けるわ」
巫女は鬼気迫るとでも言うように、その場で存在感を放っていた。
もし、負けたら文句を言うなと。
自らは命を懸けるのに、しかし何も要求することはなかった。
サイコロは床に転がる。
見つめる人々は、そのサイコロが物凄く恐ろしいものに思えて、気持ちが悪くなってくる。
そして、そのサイコロを見て、
クラミーは、そこで本当に心が折れてしまった。
「うぅ・・・・ぐす・・・・」
そして次の瞬間には、子供のように大きな声で泣き声を上げていた。
膝を付き、涙を流す姿を、イマニティの面々はただ見つめることしかできなかった。
そこには、責めるような調子もなければ、憐れむような調子もない。
ただ、呆然と、見ているだけだった。
「クラミー・・・・」
フィールだけがクラミーに近づいていく。
そして、肩を抱き、この場から退室するように動くのだった。
フィールは去り際、何か意味ありげな視線を寄越してきたが、
そのまま何も言わずに歩を進めるのだった。
後には、誰も挑む者がいなくなった、国王選定戦の会場だけが静まり返っていた。
==作者のつぶやき==
なし