箱庭の世界にやってきた博麗霊夢 作:冷水
ノーネームとガルド・ガスパーとが決闘することが決まった。
霊夢はガルドの話を聞いていたが、おそらく皆とは違った価値観を持っている。
-妖怪や悪魔といった存在が、人間を襲い殺すというのは、特別間違ったことじゃない
-妖怪は人を襲い、人は妖怪を退治する
-許せないけど、それが普通なのだと”理解”している
-博麗の巫女として、そういう”魔物側”への理解がある
黒ウサギは、サウザンドアイズ幹部の白夜叉の元へと向かう。
新たな同士のギフトを鑑定する為に、ジン・ラッセル、黒ウサギ、そして耀、十六夜、飛鳥、霊夢の合計6人は向かう。
すると、問題児3人が白夜叉に対して、挑発行為を始めた。
霊夢は白夜叉が並みの人物ではないことを見抜いている、ゆえにおとなしくしていた。
「少し、遊んでくれよ。最強のホスト様」
十六夜が喧嘩を得る。
「おんしらが望むのは、挑戦か?もしくは----」
言葉を切り、凄みを増した笑みで続ける。
『決闘か?』
その瞬間、あたり一帯の空間が、切り離される感覚がする。
それは、まるで結界のように。
そして、あたり一面、白夜の望める大地へと切り替わった。
絶句する3人。
しかし、霊夢は無表情気味な調子を崩すことはなかった。
十六夜、耀、飛鳥の3人は挑戦を望んだ。
湖畔を一周するギフトゲーム。
耀がそれに挑み、そして見事勝ち残った。
「私は、決闘を望むわ」
霊夢は、皆がギフトカードを受け取った後に、一人白夜叉に言う。
霊夢ただ一人だけが、決闘を望んだ。
『ほお・・・・・・面白い』
声の質が変わる。
白夜叉の姿が、少女の姿から大人の女性の姿へと変貌を遂げる。
双眸を細め、雪のように白くはかない印象なのに、表情は凛として強者としての自信に満ちている。
「この私に、白き夜の(元)魔王に、決闘を申し込むか・・・・・・」
この事態を、正確に把握しているのは、ノーネームリーダーとしてこの場にいるジン・ラッセル、そして黒ウサギだけであった。
「ちょ、ちょちょ、何を言っちゃってんですか・・・・!」
止めようとする黒ウサギ。
しかし、白夜叉がそれを手で制す。
決闘に、他者が言葉を挟むのは無粋というものだ。
「ふむ・・・・・・」
値踏みするように白夜叉が霊夢を見る。
強そうには見えないが、無表情の中に、どこか自分の実力への自信が満ちている。
自然体で立つ霊夢は、しかし隙はない。
白夜叉は考える。
目の前の少女が、実力差を見極められないだけの愚か者なのか、
それとも挑むに足る力を持つのかは判断できない。
白夜叉が全力を出せば、ゲーム盤どころかあたり一帯が焦土と化すだろう。
一応は黒ウサギの仲間となる者であることも考慮の内にある。
ふむ、ともう一息つく。
一枚のギアスロールが目の前に現れる。
ゲーム内容:
Destroy the world of "White Nights"
~白き夜の世界を破壊しろ~
勝利条件:
・ゲーム盤の破壊
敗北条件:
・制限時間30分以内にクリアできないこと
「負けたら、おんしのギフトの中から一つ、好きなのを私がもらう」
霊夢が負けた時の条件を言う。
「勝てば、私のとっておきのギフトをやろう」
そして霊夢が勝った時の条件を言うが、負けを最初に話題にするあたり、勝てるとは思っていないのだと、霊夢には”勘”でそう思った。
「それでも、おんしは、対等な決闘を望むか?」
「壊せば、いいのよね?」
霊夢は、この時初めて笑みを浮かべている。
白夜叉はゾクリと悪寒を覚える。
霊夢は、このゲーム盤が何で出来ているのか、ある程度の理解をしている。
それは、幻想郷を覆う博麗大結界のように、
外と内を境界で隔て、白夜の望むことのできる世界そのものを”隔離”しているのだと。
白夜叉は知らない、霊夢が楽園を守る結界を管理する巫女であるということを。
本来、魔王へ攻撃を届けるには、弱点を突くか”星を砕くほどの一撃”で攻撃しなければならない。
白夜叉は、最初はその星を砕くほどの力を持って壊すものだと考えていた。
霊夢は手を少し持ち上げ、その目は焦点がどこかずれ始める。
ふっと、霊夢の左手から先だけが虚空へ消える。
ビリ、バリ、バリバリバリ・・・・・・。
「なに・・・!」
白夜叉が驚きの声を上げる。
空間に、穴が開く。
霊夢はしばらく、手を動かしている。
ビリ、びりびり、バリ、ガリガリ、破壊音が、あたり一帯に響きわたる。
それは、空間をつなぎとめる楔を、削り取り、抉り、破壊している音、・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「見つけた」
しばらく、茫然としていた周囲に、しかし凛とした霊夢の声が木霊する。
その瞬間に、空間ははじけ飛び、隔離した世界と箱庭の世界が同化を始める。
あたり一面、真っ暗な空間へと変化した。
「まずい・・・・!」
この時、白夜叉は己が慢心し、相手を見誤っていたことを悟った。
そして白夜叉は焦っていた。
その、焦りの原因が、実力の強い・弱いの云々の話では、決してない。
白夜叉の関心は、この場にいるノーネームの面々と、そしてゲーム盤を展開した”場所”についてである。
破壊されるにしても、物理的にギフトそのものを砕かれ、破壊されるのだと思っていた。
今回のゲーム盤は、その前例があり、破壊されればどうなるかを前もって知っていたからである。
しかし、壊されたのは切り取った空間の位置を固定する部分のみ。
すると、氷山から氷漬けの湖、それらが元居た場所へ、そのままあふれ出ることになる。
押さえつけられていた空間は、しばらくの停滞の後に、膨張をはじめる。
ギフトカードへ格納しようにも、様々な境界が揺らぎ、ギフトとしての概念が崩れ始めている。
(太陽の主権の力で、一気に焼き払うか・・・、いやそれでは黒ウサギ達が・・・)
「くっ・・・・」
しかし、救いの手は意外な所からやって来る。
幻想の世界そのものを、一時的に自らの展開した”結界”にて固定し直す。
霊夢は、壊した部分を直し始める。
壊した部分を己の霊力で補完し、空間が外の世界へ膨張を始める前に、白き夜のゲーム盤の形にもどした。
「私の勝ちで、いいのかしら?」
勝ち誇ったような笑みを浮かべる霊夢。
幻想の世界を守る為の巫女は、幻想の世界を破壊する力を持っている。
本来、直すより壊す方が簡単なのだ。
ゆえに、これはただ予定調和であったのかもしれない。
「・・・・・・しょ、勝者、ノーネームの博麗霊夢!」
そこで意識が戻って来た黒ウサギが宣言し、このゲームは幕を閉じた。
霊夢の力を示す話を書きたかったのに、これだと強さを証明できないのかな?
せっかく、箱庭で最強レベルの星霊と戦う機会が得られたというのに。
決闘と言いつつ、なんだか”試練”のような形になるのは、
白夜叉は本来、恩恵を授ける側であり、
”決闘”か”試練”かを選んだとしても、
ギフトゲームにおいては対等以上の者へと課す「凶悪で難解なゲーム」と、
自らの傘下の者や成長途中の者へと課す「頑張ればクリアできそうなゲーム」との2種類の区別が”決闘”か”試練”だと、解釈しています。
今回は小手調べ程度の「実力があるのか試すレベル」のもの、魔王に一撃を届けさせられるか否かというのを見極めるものでしたが。
疑似とはいえ、世界を破壊しろ、というのは、凶悪な部類・・・・・・ですよね?