やはり俺がIS学園に入学するのはまちがっている。りていく!   作:AIthe

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閑話とストーリーを絡めるという新発想‥‥?


普通ですね。では、伏線を張り過ぎて回収できていない作者のSSをどうぞ


突如、その部屋の扉は叩かれる。

「理想」

 

それ以上がない、完全なもの。

 

──────

 

電子の世界が広がっている。宇宙のように莫大な広さを誇り、煌めき輝くその世界に、距離は存在しない。

 

1と0のみで象られた二つの少女が、互いに視線を交わしている。

 

「とうとう“壊れ”ましたね」

「うん、まあ平常を保っていられるだけすごいんじゃない?ここまで持った人はいないよ?」

 

蒼目の少女はニタニタと笑い、白髪の少女は顔を顰める。

 

「どんな理由であろうと、普通の高校生が「殺し」を容認してしまったのです。いつ発狂してもおかしくないんですよ?」

「‥‥‥“普通の”高校生ねぇ?」

 

意味深に呟く。

 

「“普通”の“男子”高校生がISに反応するわけないよねぇ?」

「だからと言って「殺し」を許容できるような人間とは限らないでしょう?」

「いやいや、そういう歪な思いを抱いてる人なんて沢山いるんだよ?世界では常に戦争が起きてるくらいなんだからさぁ?」

 

そして、口元が三日月型に歪む。

 

「君も同類でしょ?」

「っ!?」

 

くしゃくしゃな顔。今にも泣き出してしまいそうだ。

 

「私は‥‥この剣で誰かを‥‥誰かを守るとあの日に誓ったのです。ただ戦闘狂のあなたには一生解らない」

「そうだね。その通りだ。でもさ、それだって誰かを殺していい理由にはならないよね?」

「‥‥‥‥」

 

黙り込む白。嗤う蒼。

 

「そんなものはエゴでしかない。綺麗事でしかない。結局、自分で妥協点を見つけられるかられないかって事だよ」

「‥‥‥‥‥」

「君は【殺される前に守る】事を信念にしているのかもしれないけど、僕は【殺される前に殺す】ことを信念にしている」

 

蒼目の少女は両手を広げて見せる。

 

「だから、僕らの意見は交わることがない。違うかな?」

「‥‥‥私は‥‥‥‥‥」

 

白髪の少女は俯き、強く唇を噛み締める。

 

「それでも私は‥‥‥‥‥」

 

そして、力強く前を向く。

 

「私はあなたを認めない。私は私のやり方で、誰かを守ってみせる」

「‥‥‥‥」

 

目を細める蒼目の少女。真っ赤に染まった手を握り締め、やがて、力なくだらりと下げられる。

 

「理想なんて叶わないんです。誰も傷つかない世界なんて、存在しません。分かっているのでしょう?」

「‥‥‥‥‥ちっ」

 

蒼が紅へと変わる。そして、血濡れた手を見つめる。

 

「‥‥‥君のこと、本当に嫌いだよ」

「‥‥‥私も、あなたが大嫌いですよ」

 

二つの少女は手を伸ばし探り合うが、互いに触れ合わず、虚空を彷徨った。

 

───2───

 

織斑に肩を貸してもらってアリーナを出ると、緊迫した表情の織斑先生が駆け寄ってきた。怪我をしていたという旨を伝えると、文字通り担がれて病院に運び込まれた。

身体は特に異常は無く、ISの自然治癒である程度の緊急治療が済んでいた為にすぐに退院できるらしい。それにしても戦闘後の俺のベット率は異常。シンジくん並だろ。知らない天井とか呟いた方がいい?

後に聞いた話なのだが、アリーナ襲撃は今回だけでなく、この前俺が無人機と戦った時も襲ってきたらしい。やけに織斑の動きがいいと思ったがそういう事だったのか。さすがラノベハーレム主人公。やりますねぇ‥‥‥‥‥

現在はわき腹をぐるぐる巻きにされ、ベットの上に寝転がっている。「向日葵の咲かない夏」読んでいるのだが、なかなか面白い。ハラハラして死にそう。もう三週目だよ。この世界感やべえよ‥‥やべえよ‥‥‥

 

俺は楽しい読書タイムを楽しんでいるというわけなのだ。なのだが、

 

「ねーねー、比企谷くーん」

「なんすか?」

 

艶かしい、愉快な声。その正体は雪ノ下陽乃。クラスのみんなにはナイショだよ(暗黒微笑)!

この人がいなければもっと楽しいのに。いやさっきまで家族がいたんですよ?‥‥‥でも気を遣って帰りやがりやがりましたよ。俺に気を遣ってくれ‥‥チクショオオオオオ!!

 

「なんか面白い話してー」

「‥‥‥‥はぁ」

 

視線を雪ノ下姉に移す。

うわぁ、あるあるだわ‥‥こういう事言ってくるやついるよな。マジ許さん。話題がないなら帰れよ。

再び視線を本に戻す。こういうのは無視するのが一番!二番じゃダメですよ?

 

「比企谷くんIS上手く使えるようになった?」

「まあ、最初よりは」

「へえー!じゃあ大会とかに出れちゃうの?」

「いやいや、そこまでの実力はないですよ。この前も、その前も勝てたのはまぐれですし」

 

嘘は吐いていない。そもそも戦ったのは三回だけで、勝った二回もまぐれだ。本当に、偶然が重なり合って助かったのだ。俺自身はまだまだ全然ダメなのだ。

 

「‥‥‥‥比企谷くーん?」

「‥‥‥なんすか?」

 

蛇のように絡みつき、そのまま俺を飲み込んでしまいそうな声。その冷ややかな色はまるで身体を蝕む“それ”のように感じられ、眉間にしわを寄せる。

 

「あのさー、いや。そうだ!私と一緒にフランスに行かない?」

「はぁ?」

 

カラッと声色が、元気で薄っぺらい言葉に様変わりする。そんな「そうだ、京都へ行こう」みたいに言われても困るんですが‥‥‥あれの千葉版ないの?

 

「お断りします」

「ええー?行こうよ行こうよー!」

「お断りします」

 

AA略。意味がわからん‥‥‥なんだフランスって。まさか俺を暗殺するために遠くの地に連れてこうとしてるの?

 

「楽しいよ?」

「魂胆がわからないんでお断りさせて頂きます」

 

基本的に従わないスタイルで。この人怖いんだよな。何考えてるかわからんし、雪ノ下の姉ってだけで気後れする。ネームバリューありすぎんよ‥‥‥‥

 

「‥‥‥‥ふーん、つまんないの。一人で旅行行ってもつまんないや。やーめた」

 

諦めちゃうのかよ。諦めないでってお茶石鹸も言ってた。でもあの場合は諦めた方がいいんだぜ‥‥‥

玩具に飽きた子供のように、こちらに全く興味を持たず、手早く片付けを始める。

 

「んー、無理っぽいし、今日のところは帰るね?またねぇ〜」

 

病院の扉が、音を立てずに閉められる。

 

真っ白な生活感のない部屋に、俺だけが取り残された。

 

───3───

 

「プリキュア、プリキュア、ふーんふんふーん」

 

【浮舟】大先生の自然治癒力促進により数日で退院した俺は、我が家に帰る気分でIS学園に向かった。脇腹は完治したが、異物感が消えない。まさか刀が刺さっているのがデフォ‥‥?それなんてスカイリム?

あの日以来、雪ノ下姉は全く見舞いに来なかった。まあ問題ないけどね。ただ「無理」ってのがなにを指してるのかが気になってしまう。まあ、考えても仕方がないだろう。

 

それに関連して思い出したのだが、雪ノ下姉は「大会」と言葉にしていた。今更だが、何故ISはスポーツ扱いされているのか?殆どの一般人がISはスポーツだと思い込んでいる。なぜだ?どこぞの見た目は子供、頭脳は大n(ryのトリック並みに違和感を感じる。

 

そもそもISは白騎士事件というものが発端で時代に出現した兵器だ。簡単に説明すれば、「日本に飛んできたミサイル全部落としたよやべえ!ISSUGEEEEEEEE!!!」というものなのだが、そんな事すれば兵器扱いされるに決まっているのだ。

 

だが、世界中ではISの大会が開かれ、女性が嗜むスポーツと移行して行ってしまった。

 

こういうのは思い込みというのかもしれないが、この話に関しては誰かの陰謀を感じざるおえない。ISを兵器にしたくない、兵器として扱って欲しくない誰かによる情報操作。そんな人間が思い当たるのかと聞かれば‥‥‥まあ黙ってしまうのがオチなのだが。

 

なんて下らない妄想を膨らませていると、学園に着いちまったよ。男というだけで訝しげな目線を送ってくる外の警備員に学生証を見せ、バカ広い学園の土を踏む。ちなみにこれは文章表現の一つだから。現実はアスファルトなんすよ‥‥‥‥‥

数日ぶりに見た学園は、まあ当たり前なのだが、何にも変わっていなくて安心した。

 

私服なので、目立たないようにそそくさと端を歩いて寮に向かうと、視界に見覚えのある顔が映る。金髪の髪の毛がクルってなってるやつ。あいつだよあいつ‥‥‥‥誰だ?

スルーしようと思ったのだが、突然こちらをチラッと見て、ギロリと睨む。

 

「ひいっ!?」

「ふん‥‥‥」

「オルコットさんどうしたのー?」

「なんでもありませんわ。ほら、あちらの───」

 

怖いよぉ‥‥‥ふぇぇ‥‥‥なんだあの金髪‥‥‥睨んできたり笑ったりなんなの?表情豊か過ぎるだろ。あやうく変な性癖に目覚めるところだった。ひとめぼれ(2015年新米)しちゃうところだったなぁ(棒)。まだそんな時期じゃねえな。

 

なんていうドンパチがあり、寮に着く。今の所一人にしか見つかってない、さすがステルスヒッキー。

 

「おい、比企谷」

「お、織斑先生ですか?」

 

一番のステルス能力を持っていたのは織斑先生でした。おかしいよ。ステルス能力を持つ代わりに他ステータスが低いってのは漫画のテンプレじゃないですか!うわっ‥‥俺のステータス、低すぎ‥‥?

織斑先生は出席簿をゆらゆらと揺らしながら、一歩一歩こちらに近づいてくる。

 

「うむ、怪我は大丈夫か?」

「ええ、まあ‥‥いてっ」

 

出席簿で軽く叩かれる。いつもの強烈なのとは違い、優しく、まるで教師のようだ。

 

「あまり心配させるな」

「‥‥‥はい」

「よし、じゃあ今日はしっかり休め。明日から普通に授業があるからな、遅れを取り戻しておけよ」

 

踵を返し、どこかに向かって行く先生。その背中は大きく、とても立派なものに見えた。

 

ふと、かつて先生が言っていた「非情になれ」という言葉を思い出す。

 

俺は守れただろうか?誰かの為に、誰かに非情になれたのだろうか?

 

「難しいな‥‥‥はぁ‥‥‥‥」

 

考えてたら頭が痛くなってきた。帰ってマッカンでも飲んで落ち着こう。

 

───4───

 

「うぃーっす」

「あ、比企谷くんおかえりー。怪我大丈夫?」

「ああ、結k‥‥‥完治したぞ。相川は?」

「相川さんは食堂だよ」

「異様な食堂率だな‥‥‥‥」

 

部屋に戻る途中に三人部屋だったことを思い出し、憂鬱な気分のまま扉を開くと、そこにはブロンドの天使の姿があった。ああもう可愛いな畜生。危うく結婚を申し込むところだったぜ。

 

「相川さん心配してたよ?」

「‥‥‥‥そうか」

 

あの時、相川を蹴り飛ばしてしまった。打鉄を装備していたし怪我はしていないとは思うが、それでも悪い事をした。一応は謝っとかないといけない。一応、な。

 

「たっだい‥比企谷くん!?お腹大丈夫だった?」

「お、おう?大丈夫だっ‥近い近い離れろ」

 

噂をすればなんとやら。ピョンピョンと跳ねて近づいてくる相川さんマジウサギ。でも近い。コミュ力は身体の距離で測れると言うが、言いえて妙だ。

ゴホンゴホンと咳払いをし、場を仕切りなおす。

 

「あ、相川。この前は済まな「おーい、八幡!」

 

扉を力強く開いて、空気読めないのがやってきた。視線が一点に集中する。織斑ホント空気読めない子‥‥‥

 

「あれ、お邪魔だった?」

「お邪魔だったよ。それと名前で呼ぶな、馴れ馴れしい」

「いやぁ、いいだろ?男同士仲良くやろうぜ?シャルルもさ?」

「う、うん」

 

勝手に俺の椅子に座る織斑。

デュノアの事をシャルルと呼ぶとはけしからんやつだ。律する小指の鎖を心臓にぶち込むぞ。あ、目が赤くないと使えませんでしたね、てへ☆

 

「取り敢えず自室に帰れ。もしくは自室でゆっくり休め」

「二択に見せかけた一択!?」

 

すごく反応がいい。雪ノ下の元に放り込んだら楽しそうだな。ズタボロになって帰ってきそう。

 

「そうだ、八幡大丈夫だったか?」

「名前で呼ぶなって‥‥‥大丈夫だ」

「そっかあ、よかった」

 

ホッと胸を撫で下ろす織斑。俺の心配より自分の朴念仁さの心配をした方がいいと思うの‥‥‥

すると、キョロキョロと周りを見渡す相川がポンと手を打つ。

 

「そうだ!暇だしゲームでもやる?織斑くん入れれば四人じゃん?」

「いや、俺は今から山田先生のところ行ってくるから無理かな」

 

案外真面目なのな。

 

「なら仕方ないね」

「ああ、仕方がないな」

「ええーっ!暇なの暇暇ぁー!」

 

ベッドにダイブしてジタバタとし始める相川マジコイキング。はねるとか覚えてるのかな?

 

「んじゃ、俺は行くわ」

「うん、行ってらっしゃい」

 

守りたい、この笑顔。

 

織斑は部屋から飛び出して言って、この場所はいつも通り三人の場所に戻った。ジタバタとし続ける相川を横目に見て、俺は本棚から適当に一冊取り出す。

取り出したのは、見るからに内容のなさそうなライトノベル。パラパラと挿絵を見て大体の内容を思い出しつつ、一頁目に手をかける。

デュノアもなにやらレポートらしきものを纏めており、自身の時間を過ごしている。相川は抵抗を諦めたのか、その場でぐったりとする。

 

何故だか、この場所は本当に安心する。自分の場所があるというか、なんというか‥‥理由は全くわからないのだが、安心してしまうのだ。

おそらく、この二人がある程度空気を読めるからなのだろう。こうやって本を読んでいても特に邪魔する事もなく、各々の時間を一つの部屋で共有し合う。

俺は案外、ここが気に入っているかもしれない。

 

なんて、柄にもない事を考えながら頬を緩ませていると、控えめに扉がノックさせる。二人に手で俺が出ると制し、その扉を開く。

 

「少し、話があるのですけれど」

「‥‥‥‥は?」

 

そこにいたのは紛れもない、金髪クロワッサンの姿であった。

 





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