やはり俺がIS学園に入学するのはまちがっている。りていく!   作:AIthe

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タイトル通りです。
みんなが望まない形で閑話に突入ゥ!
ええ、ルミルミも陽乃さんもやりますよ。安心して下さい。

話の流れが強引だけど閑話だし仕方がないだろう(目逸らし)


やはり、金髪クロワッサンの料理は間違っている(味的な意味で)

十年前の、そこから更に一年前の話をしましょうか。

 

いや、長ったらしい言葉に形容する必要もないですね。

 

一言で言いましょう。

 

「あの日、私達(・・)は死にました」

 

───2───

 

‥‥状況を整理しよう。

 

学園に帰ってくる

部屋に織斑来て帰る

金髪クロワッサン襲来←今ココ

 

なるほど、全然わからん。すげえ睨んできてるし草生えない。クロワッサンみたいな髪型どうにかなんねえのかな‥‥‥

「奉仕部に用があるのですけれど、中に入ってもよろしくて?」

「お、おう」

 

身体をどかすと、その隙間をするりと抜けて中に入って、ぺこりと一礼する。デュノアは「ど、どうも」と言って小さく苦笑いをするが、相川はベットに突っ伏したまま返事がない。ただのしかばねなのか?

どっちでもいいのだが、相川はゲームが得意だ。ドラクエネタが通じるのかもしれない。ええ、どっちでもいいですね。

 

「奉仕部の部員の方はどちらですの?」

 

デュノアと相川を交互に見つめる金髪クロワッサン。俺なんだけどとか言えない空気にするのやめてもらっていいですかね。

 

「あ、俺だが」

「は?」

「俺が奉仕部の部い‥‥‥部長だけど」

 

疑念を孕む青い目を向けてくる。

「俺自身が奉仕部となる事だ」ってな。そういえば部員って俺だけだから実質部長なんだよな。部長(仮)でなんかすいません!(仮)の()が取れる時、あなたは真の部長に‥‥‥いやだ‥‥‥‥いやだよぉ!

 

「奉仕部ってなにさ!?」

「俺の入ってる部活だよ」

 

相川が布団に突っ伏したまま顔だけ上げて、驚いたような声を出す。そんなに驚くことじゃないだろ。古典部みたいな部活に憧れていた時期が僕にもありました。

 

「比企谷くんが部活‥‥‥‥頭でも打ったの?」

「打ってねえよ。ただ‥‥‥」

「ただ?」

「‥‥‥‥惰性でやってるだけだ」

 

答えに詰まり、ふとした疑念が浮かぶ。俺は何故、奉仕部を続けているのだろうか?受刑者ということで渋々受け入れたが、よくよく考えれば辞めてもバレないだろう。それに、誰かか相談に来ることなど滅多にない。

だが、そんな問いはする必要がない。何故なら、本当は自身の想いが分かっているからだ。

 

雪ノ下も言っていたが、俺はあの場所が嫌いじゃなかった。そして、あの二人の事も。

 

おそらく、俺はあの二人と繋がっていたいのだろう。奉仕部という形で、あの二人を忘れぬ様に、自身を縛り付けているのだ。

それにしても、こんな事を考えるようになってしまったとは、随分と自分は変わってしまったんだなとつくづく思う。前よりも臆病に、怖がりになってしまったのだろう。ぼっちの癖に繋がりを求めるとは、飛んだお笑い草だ。

まあ今は、目の前の事を片付けるとしよう。早く帰ってくれねえかな。

 

「オルコットさん、どうしたんですか?」

「セシリアで構いませんわ。それに敬語を使う必要も」

 

デュノアが尋ねる。

クロワッサンが俺の方を睨みつける。お前は名前で呼ぶんじゃねえって事ですね。わかります。

 

「そうですわね‥‥ネットにあったので織斑先生に聞いてみたのですが‥‥‥ここにいると聞いたので、信用に足る人物か見極めた上で相談しようと思ったのですが‥‥‥‥」

 

一拍置いて、溜息を吐いて続ける。

 

「見極める必要もありませんでしたわね」

「ちょっと、失礼じゃないですか!」

 

相川がベットから飛び上がる。声を大にして、丸い目で一生懸命金髪クロワッサンを睨みつける。俺のために怒ってくれたのか。いや、分からん。だが、こいつが怒る必要はない。

 

「落ち着け相川。こいつの言う通り俺は信用ならないからな。じゃあ、さっさと帰ってくれ」

 

セシリア・オルコットの言う通り、俺は信用ならない。こいつからすれば俺なんてゴミみたいなもんだからな。嫌われてるに決まってるわ。俺もこいつ嫌いだし。出てってくれるとかこちらからお願いするレベル。やったぜ!

 

しかし、彼女が出て行く事はなく、手の片方を腰に、片方を頭に当て、「やれやれだぜ」と言わんばかりに小さく溜息を吐く。

 

「すみません、言い方が悪かったですわね。私は貴方を信用していると言っているのです」

「「‥‥‥は?」」

「うーん、話についていけない‥‥」

 

デュノアの霊圧が‥‥消えた‥‥?

すまん‥‥デュノアすまん‥‥‥今度ご飯でも奢ってやろう。むしろ奢らせて下さい!

 

「どういう意味だ?お前は俺を信用してないはずだ。そんな奴に相談する理由がないだろう」

「‥‥はぁ‥‥‥‥」

 

あからさまな溜息。さっきからなんだよこいつ。承太郎かっつーの。

 

「貴方が自身の事をどうお思いになっているかなどは興味ありませんが、おそらく、貴方が思っているよりも、貴方は嫌われていませんわよ。好かれてもいませんけれど」

 

そう言って、金髪クロワッサンは相川をチラ見する。相川は肩をぎくりと動かし、視線を泳がせる。一体何をしでかしたんだ‥‥‥‥

 

「もし嫌われているとか、目立っていないなどと思っているなら勘違いですわ。特に前者なら、ただの自意識過剰ですわ。それと付け加えると、私は貴方の事を全面的には信用はしていません。しかし、貴方のゴミクズさにだけは信頼を置いていますわ」

「‥‥‥‥‥はぁ」

 

マジでなんなんだこいつは。まるで前とは違う。前のような荒さはなく、静寂に包み込まれた水面のように全くの揺らぎが見られない。とても落ち着いた、気品のある人間へと変わっていた。偉そうな態度と、言葉に棘があるのは全く変わっていないが。

だが、前よりも話が通じそうだ。まあ、話を聞くだけならタダだしな。聞いてやらん事もないよな。うん。

 

「で、なんの相談に来たんだ?」

「‥‥‥‥」

 

無言で俺の椅子に腰掛けて、とうとう俺の居場所がなくなる。あの、帰ってもいいですかね?

 

「りょ、料理を教えて欲しいのです」

「‥‥‥理由は?」

「い、一夏さんに料理を‥‥‥」

「へぇー、素敵だね?」

「うんうん、素敵だね!」

 

恥ずかしそうにモジモジとするクロワッサン。何故か二人でハイタッチを始める相川とデュノア。あやうくこしひかり(魚沼産)しちゃうところだった。主にデュノアに。あ、相川は完全に愛玩動物なんで。クロワッサン?知らない子ですね?

 

「つまり、織斑に手製料理を喜んで欲しいって事だな?」

「ええ、そうです」

「そうか。なら俺がする事はなにもない」

「比企谷くん、それは酷くない?」

「そうだよ!奉仕部って名前なんだからしっかり奉仕しなよ!」

 

頬を膨らませる相川マジハムスター。あとデュノア可愛い。結婚しよう。

 

「いやいや、悪い意味じゃない。本当に教える事が何もないんだ」

「‥‥‥‥どういう事ですの?」

「つまりだな───」

 

数ヶ月前に、由比ヶ浜にした説明を復唱する。男が単純ってのは織斑にも適することなのだ。なんてったって織斑はホm‥‥朴念仁だからな。女慣れしてるわけじゃない。ただ病気な程に鈍感なだけだ。

女の子が手料理振舞ってくれるのに嬉しくない男子がいるわけないだろうに。なにを言っているのだね。手料理ってだけで嬉しいもんなのによ‥‥

 

「珍しくまともなこと言うんだねー」

「うんうん、今のは素直に僕も感心したよ」

 

こいつら‥‥‥俺の扱い荒くね?俺なんて捻くれすぎて一回転してるくらいなんですけど。自分にすごく素直だよ。早く帰りたいとか仕事したくないとか‥‥‥‥あれ?ただの社会人かな?

しかし、クロワッサンの顔色は曇ったままだ。曇っているというより、顔色が悪いと言うべきか。

 

「その、試しに作ってきたのですが‥‥‥」

「‥‥‥‥」

「普通に美味しそうに見えるけど‥‥」

「うんうん、そうだね」

 

出したのは、木の編み箱。どう見てもサンドイッチケースだ。中にはもちろんサンドイッチ。色鮮やかに彩られたそれは、見ただけで食指を動かされる。

 

「じゃあ僕が。いただきまーす、はむっ、うっ‥‥‥」

 

顔を真っ青にして、その場に倒れこむ。

 

「デュノアくんが死んだ!」

「このひとでなし!ハッ!?」

 

ランサーネタを知っているだと!?相川、恐ろしい子‥‥‥!

デュノアが手から落としたサンドイッチを手に取り、一口頬張ってみる。甘さ、辛さ、塩っぱさ、苦さ、酸っぱさの全てが混ざった混沌とした味‥‥‥最早味と言っていいものなのか。その言葉では形容しがたいなにかが、俺の口の中に広がる。

 

一言で言おうか。マズイ。由比ヶ浜の比じゃない。一口分食ったら確死。ペロッ、これは未元物質‥‥!?常識が通用しねえ‥‥‥

 

「‥‥‥‥その、頑張れ」

「私も流石に擁護できないよ‥‥」

「‥‥僕も‥‥‥‥‥」

 

クロワッサン以外が顔を青くする。本人は恥ずかしさからか、顔が真っ赤だ。こうしてしおらしくしてりゃ顔もスタイルもいいしもっとマトモになるんだがな‥‥‥‥

 

「その、どうすれば料理を上手く作れるかというのをですね‥‥‥」

「相川、料理できるか?」

「私はちょっと‥‥‥デュノアくんは?」

「僕は‥‥‥‥僕も作れないや」

 

数秒悩んで、デュノアは答える。何を悩む必要があったのか。多分あれだ。少し作れるけど教えるほどは作れないってやつだな。うん。そうに違いない。

 

「そうなると他の奴に頼むか‥‥‥いや‥‥‥」

 

この学園は、織斑一夏の事を好きな奴が多数だ。そんな殺伐とした世界で織斑への手料理を作りたいからやり方教えろなんて言ってみろ。悪意のある奴にぶつかった瞬間即終了のお知らせだぞ。

となると、外部の人間だ。俺の知り合いで料理の上手い奴‥‥‥思いつくはつくのだが、頼みを聞いてくれるのだろうか。

おもむろに携帯を手に取る。全員からの「なにやってんだこいつ」という視線が痛い。

 

まずは小町だ。我が愛しの妹ならば料理ができる。愛妹弁当が食べたい今日この頃。

 

「もしもし?」

「もしもし、小町か?俺だが」

「オレオレ詐欺とかポイント低いんだけど‥‥‥電話なんてどしたの?」

「いやぁ、妹の声が聞きたくなって「そういうのいいから」

「はい‥‥‥‥」

 

ふええ、小町怖いよお。

 

「今週の土日、どっちか暇か?」

「んー、土曜日なら暇だけど、どしたの急に?」

「実はだな───」

 

小町に詳しく説明する。存外にも反応は薄く、「ふーん」と答えたそれきりだった。

 

「でもさ、それって奉仕部の活動じゃん?」

「ま、まあそうだが」

「なら雪乃さんに言った方がいいんじゃないの?」

「バッカお前。俺が雪ノ下に連絡できるわけがないだろ」

 

小町にしてはマトモな事を言う。だが、雪ノ下に連絡してみろ。毒舌食らって終了だぞ。そもそも連絡先知らないし。それに連絡したくないし。

 

「もう‥‥‥わかったよ。お兄ちゃんの代わりに小町がお願いしておいてあげるから」

「え?ちょ、ま」ツーツーツー

 

電話が切れてしまった。小町絶許。マジで小町なにやってんだ。結局土曜日どうなっちまうの?

 

「その、なんだ。土曜日、開けておいてくれ」

「‥‥‥‥‥‥え?」

「‥‥‥う、うん?」

「ぼ、僕も?」

 

‥‥‥これもうわかんねえな。

 

───3───

 

先程の通り、私セシリア・オルコットは比企谷八幡が嫌いではありません。彼に嫌な思いをさせられた事もありましたが、それでも、彼は悪い人ではないのでしょう。無論、いい人ではありませんが。

彼をまともに、いや、妄信的に信頼しているのは相川清香ただ一人で、その他は「存在自体は不快だか、干渉してくるわけでもないので無害」といった評価です。教師も、「真面目な生徒」程度にしか思っていないでしょう。

 

ただ、彼は無害です。攻撃しない限り、特に何をしてくるわけでもない。私は、彼のこの部分だけには信頼を置いています。

だから、今回相談する事に決めたのです。彼ならきっと、私の考えを最も客観的な方法で判断してくれる事でしょう。織斑先生が生徒として信頼できる人間ならば、それなりの人間という事なのでしょう。

 

まあ、これ。きっかけに彼に謝る事ができればいいななんて思っている事はナイショなのですが。

 

それにしても、土曜日にはどうなってしまうのでしょうか‥‥?どうしても高圧的になってしまう態度だけはどうにかしないと‥‥‥





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