やはり俺がIS学園に入学するのはまちがっている。りていく!   作:AIthe

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閉じられた部屋の中、“それ”は瞬間を待ちわびる。/ふと、相川清香は目を覚ます。

「嘘」

 

嘘とは、最も強い自己暗示である。時には自分を奮い立たせ、時には心の制御装置となるなど、悪いイメージの割には案外役に立つ場面も多い。

 

だが、その嘘を嘘だと理解し、認識してしまった時、人は───

 

───よって、「真実」の取り扱いには、くれぐれもご注意を。

 

──────

 

千葉県内の、とある地下施設。

扉に「千葉メカトロニクス第三IS研究所」と書かれたプレートが貼られているその部屋に、それは目覚めの時を待ちわびていた。

その扉は銀行の金庫の扉のように丸く、分厚い設計になっており、中には一台の不恰好なISがISの装甲と同じ素材の鎖に縛られ、無理矢理に鎮座させられている。

それは厳重に保管されているというより、牢獄の中には閉じ込められていると言った方が正しい。

 

やがて、その分厚い扉が開かれる。入ってきたのは、小太りの男。普通すぎるその見た目は、顔に浮かべる不気味な表情と相まって不自然さを漂わせる。

 

「はぁ、まさか本当にここに来ることになるとはね」

 

男は独り言を呟く。が、それは完全に誰かに向けられた言葉であり、そこには刺々しい敵意も隠されていた。

突然、それに反応するようにカメラアイが白い光を放つ。その“白”は単純な白ではなく、全ての色が纏められた“白”であった。

 

「‥‥‥‥そうやって誰をも拒む。君の悪い癖だと思わないかい?」

 

そう言って、男はその装甲に手を伸ばす。

すると、それを拒むかのように手の前に空白の空間投影型ディスプレイが表示される。そこを中心として機体全身を包み込むようにそれが表示され、“拒絶”を表す。男が手を引っ込めると、ディスプレイは粒子となって霧散する。

 

意思疎通を諦めたかのように彼は背を向け、小脇に抱えるファイルから一枚のデータを取り出す。そこには、目の腐った少年の顔。その生い立ちと、簡単な特記情報が書かれていた。

 

「一応確認しておくけど、本当に、“彼”でいいんだね?」

 

返事をするように、白い光がチカチカと消灯、点灯を繰り返す。ツートンツーツー、トン、トントントンと繰り返すそれには、何か意味があるようのだろう、機体を横目で見る男の顔に、小さな笑みが浮かぶ。

 

「まあ、君がしっかり売り物になってくれるなら‥‥僕も親としての責任がある。全力でバックアッブするよ。それに、五十四のデータで再構成される君の姿を見てみたいし、ね?」

 

そう言い残し、男は重苦しい扉を力一杯引いて、不安になる音を掻き鳴した。

扉がバタンと、重さを感じさせる音を立てて閉められる。ギィィとハンドルを回し、ロックが掛けられる。

 

再び、部屋は牢獄と化した。

 

数分後、誰もいない、音も立たない牢獄内に一つのディスプレイが展開される。

 

そこには───

 

「We welcome to “dominant” .」

 

───2───

 

小町との電話を終え織斑先生に携帯を返すと、今までに見たことがない程の“イイ”顔をされた。いい顔ではない。“イイ”顔である。大事な事なので二回言いました。

 

これからは妹を通して色々頼まれる未来が見える。これも運命石の扉の選択なのか‥‥‥!

 

「そうだ比企谷」パシィン!

「痛っ!!」

 

突如出席簿が炸裂し、俺の首をぐわんと曲げる程に吹き飛ばす。頭をさすさすと撫でて、痛いですとアピールしてみる。

が、それもどこ吹く風として、出席簿をゆらりゆらりと揺らしながら、暴力教師は話を続けんとする。

 

「お前、具合が悪いだろう?」

「‥‥!‥‥‥そうですね、とっても具合が悪いですね‥‥特に首が」

 

突然、織斑先生はよくわからない事を言い出す。数秒遅れて俺も、ようやくその意味に気づいてしまう。

この先生、俺に休みをくれてくれようとしているのだ。普段なら先生を崇拝しているところだが、まあ今は事情が事情だ。

一週間後の模擬戦まで殆ど時間がないのだ。施しを受けるつもりはないが、好意には甘えておくとしよう。

 

「今日は休むといい」

「そうさせて頂きます‥‥ありがとうございます」

「なぁに、休むだけなのに礼を言われる筋合いはないぞ?」

 

織斑先生はいつでも楽しそうだ。その端麗な顔でニヤッと笑ってみせる。

 

そして、「お、そうだ」と呟き、先生はわざとらしく手を打って見せる。

 

「そういえば、今日は第四アリーナを使う予定がなかったなー。おっと、どこかに訓練機貸出承認書を落としてしまった。まあいい、仕事に戻るとするかー」

 

酷い棒読み演技の後に、織斑先生の出席簿から手書きの申請書が滑り落ちる。俺はそれを拾い、綺麗に畳んでジャージのポケットにしまう。

織斑先生は俺に向かって小さく頷き、踵を返してどこかへと去って行った。

 

織斑先生がここまでお膳立てしてくれたんだ。後は、俺がどれだけ頑張るか。それだけだ。

 

───3───

 

比企谷八幡。前任の平塚先生から聞いていた通り、厄介な生徒だ。ただ無意味に捻くれているだけなら力で叩き潰すのみなのだが、そうなったのにも色々理由があるらしく、本人もあの厄介な生徒と同じく口が回りそうで‥‥私の苦手なタイプだ。

私は教員としてはまだまだ未熟なのでその辺は分からないが、こういう生徒に力で指導するのは逆効果な気がする。自殺なんてされたら困るしな。

 

「織斑先生、おはようございます。昨日の事、しっかり反省してますか?」

「おはようございます。分かってますよ、次から気をつけます」

 

職員室で山田先生に挨拶を交わし、硬く冷たい椅子に腰掛ける。

話を戻そう。一部生徒によると、比企谷は妹の事を馬鹿にされ、人が変わったように怒ったらしい。やはり、ただの捻くれた無気力症患者ではなかったようだ。

今ペルソナ3思い出した人、放課後に先生のところに来い。これは命令だ。ちなみに先生はテレッテが好きだ。

 

んんっ、話が逸れたな。まあとにかく、私はあの比企谷とかいう腐った目の捻くれ者を鍛え上げたいのだ。

一夏は前向きだしそれなりに向上心もあるだろうから問題はないだろう。けしかけてやればすぐに反応するような扱いやすい奴だ。

だが、あの男は注意をしても全くやらないだろう。それどころか、こちらを舌論で負かしてきそうだから困る。私はそういうのが苦手なんだ。話すとかそういうのは私の仕事じゃない。

それに、やる気のない女生徒なら放っておいてもそれは自己責任となるだけだからまだいい。だが、世界に二人しかいない男性IS適性者となれば話は変わってきてしまう。

 

いつ、どこで、どのようにその身が、その命が狙われてもおかしくないのだ。本人にそれを伝えたところで、現実味が無さ過ぎて耳を貸すとは思えない。それに奴は疲れている。精神的に追い詰め過ぎるのも‥‥‥何だ、良くないって事だ。

 

そこで、私はオルコットと模擬戦をやらせる事で解決する事にした。妹を馬鹿にした相手だ。さすがに比企谷も努力をするだろう。あそこまで膳立てもした事だしな。これでやらなかったら私がキレるぞ。

そして、あわよくばオルコットを倒して欲しい。弟を馬鹿にした事をお姉ちゃんは根に持っているのだよ。千葉の兄弟、姉妹、姉弟、兄妹は愛し合っているのだよ!ソースは私だ。

 

まあ、負けたとしても比企谷に悔しいと思ってもらえるだろう。妹の事を想えば、自衛できるくらいには強くなってくれるだろう。むしろこっちが本命だ。

正直、私も比企谷がオルコットに勝てるとは思えない。弟云々は“体”というやつであり、一夏については本人もそれなりに結果を出せたから私としては満足しているのだ。オルコットが突然ベタ惚れしているのが少しだけ気に入らんがな。あいつはチョロいのか?

 

「ふん‥私もまだまだだな‥‥‥」

 

私は、色々あって教師になった。

昔は、私も比企谷とは違う方向に捻くれていた時期もあった。人の事は言えんのだよ。

だからこそ、比企谷には頑張ってまともな人間になって欲しい。なってもらわないと困る。無理矢理にでも立派になってもらうつもりだがな。

 

というより、昨日の電話。妹さんにゴリ押されてしまった事を一から十までしっかりと報告したら、山田先生に怒られた。それもみっちり。

ホウレンソウが大事だというのは嘘なのか?怒られるならキチンと報告するんじゃなかったと後悔している。

人生の中でも、ここまで怒られたのは初めてだ。だいたい比企谷の妹のせい。つまり比企谷が悪いのだよ。そうだ!比企谷がわr‥‥‥‥死にたくなるからやめよう。押し切られてしまった私が悪かったです。はい。

 

‥‥‥‥やっぱり、敬語とかを使ってペラペラと喋るのは私の担当じゃない。こういうのは、次から山田先生に頼む事にしよう。

 

───4───

 

右も左も分からない俺は、仕方なく自室で勉強する事にした。期限はたったの一週間しかない。やるべき事を迅速に終わらせねばならないのだ。

「いつISが出来たのか」とか、「ISに関する条約」などのテストにしか出なさそうなところはすっ飛ばして、実戦に使えそうなものだけを選んで学習した。そこまで熱中していたのかは分からないが、不覚にも同室の子に「だ、大丈夫?」と存在を気づかれた上に心配までされたので、「大丈夫だ、問題ない」と返してみた。

何のネタなのか分かっただろうか?

 

「取り敢えず、分かった事をまとめてみるか‥‥‥‥」

 

・ISが世界最強の兵器という事

・シールドエネルギーについて

・絶対防御について

・ISの基本運用方法

・上記の注意点

 

うわぁ、特にこれといって得られたものがねえ‥‥四時間もやったのに全部無駄にしたわ。基本操作とかマジ基本中の基本じゃん‥‥‥多分あれ見ないでも余裕で扱えてたと思う。十字キーで移動みたいな事しか書いてなかったんだぜ?それって教科書としてどうなんだよ?

その点トッポって凄いよな、最後までチョコたっぷりだもん。

 

その後、デカデカと『実践編』と書かれた参考書を手にしてみたものの、今度は逆に全然わからなかった。どれくらい分からないかというと、数学の微分くらいわからん。X^2(Xの二乗)を微分すると2Xになるとか意味不明過ぎる。そもそも微分ってなんだ。平均増加率?もっと分かりやすく説明しろよ‥‥‥数学の教科書常連のたかしくん教えろ下さい。

ってか、たかしくんりんご買うときに値段忘れたりするのやめろよ。レシート破ったり、池の周りを無意味に回ったりするの生産性なさすぎだろ。お役所仕事かっつーの。

 

額を抑えて、まだ温もりの残るベットに倒れ込む。すると、携帯がバイブレーションを鳴らす。既視感のある光景だ。

 

携帯開く。平塚先生からのメッセージが届いていた。静かな部屋に、パタパタという携帯のタップ音だけが広がる。

 

From 平塚先生

 

件名:ご機嫌いかがですか?

 

こんにちは、比企谷君。IS学園に入学してからもう二日経ちますが、友達はできましたか?クラスに比企谷君がいないというのは少しだけ寂しいです(笑)。そういえば、この前美味しいラーメン屋を───

 

そっと閉じた。平塚先生が結婚できない理由がこの一通のメールに詰まっている気がする。マジパンドラの箱。希望も災厄の内ってな。

 

携帯が十一時過ぎを指す。勉強のし過ぎで腹が減った。食堂があるって聞いたし、生徒がいない今のうちに飯を食いに行くか。うん、そうしよう。

 

パリッとした制服に袖を通す。ふと思い出したのだが、IS学園の制服は自分で勝手に改造してもいいらしい。改造と言われてもどう改造するのか。制服の中に文房具でも仕込むのか?

それにしても、この真っ白な制服、マジで似合わない。パリッとし過ぎて気持ち悪い。

 

と、いう訳で寮から出てみたのだが、IS学園は無駄に広くてどこがどこだか全く分からない。ディスティニーランドかと錯覚するレベル。

なんか東京にムカっ腹が立ってきた。東京許すまじ。

というより、東京って名前のつくアニメ多すぎだろ。レイヴンズとか喰種とかアンダーグラウンドとか。全部千葉に変えて再放送しろよ。少なくとも千葉県民に需要あるぞ。

 

「織斑先生地図くれたっていいだろ‥‥‥お?」

 

学園内を探索していると、遊園地によくある案内掲示板と似たものが設置されていた。

最新の電子掲示板らしく、スマホ初心者のような慣れない手つきで検索してみると、該当件数一件と、案外すぐに見つかってしまった。どうやらこの道で正解だそうだ。やったぜ。

数分歩くと、目的地の学舎が見えてきた。完全に俺が昨日ブチ切れた一年一組がある学舎に一致です本当にありがとうございました。

昨日の事を思い出すだけで死にたくなる。ロープあったら首吊ってるね。青酸カリあったらペロッと舐めてる。

 

学舎内で誰かに会うと面倒だと思い、ステルスヒッキーを発動させたが杞憂だったようで、誰にも会わずに食堂まで辿り着けた。案の定食堂のおばちゃん的な人物がいたので、怪しい者じゃないですオーラを出しながら話しかけてみる。あれ?これ不審者に見えるんじゃ‥‥‥

 

「す、すみません。ここの学生なのですが、食堂を利用するのが初めてでして‥‥‥」

「あらまあ、二人目の男子‥‥‥噂のヒキタニ君ね」

 

おばちゃんのニコニコ笑顔が眩しい。

いつから噂になっていたんですか?あと比企谷です。葉山思い出すんでやめろくださいお願いします。

 

「どれが食べたいのかしら?」

「あー、じゃあラーメンで」

「はーい。ちょっと待っててねー」

 

あれ?食堂のおばちゃんが優しい‥‥目からダシが‥‥‥‥

 

「はいお待ち、熱いからふーふーして食べなよ」

「あ、ありがとうございます」

 

なんであの人俺が猫舌だって知っているんだ。新手のスタンド使いかよ。しかもふーふーって子供じゃねえんだからさぁ‥‥‥‥

お盆に乗っかったラーメンを運び、無意識的に端の、人気のなさそうな席に座る。

 

「いただきます‥‥」

 

小声でボソボソお呟き、汁が服に飛び散らない程度の勢いですする。

味はシンプルでいい感じだ。これで千葉県の地産地消製品とかだったら三食全部ラーメンにする。ずっと食べていると身体に悪い?細けえこたぁいいんだよ!

 

「はふっ、はふはふっ」

 

なんというか、懐かしい味だ。最近は家系ラーメンみたいな豚骨醤油系ばかり食べていたが、こういうのもアリだ。ラーメンの原点に帰れた気がする。

器を掴んで汁を飲み干す。今なら平塚先生とラーメンについて一時間は語れる気がする。ラーメンマジソウルフード。マッカンの次に好きだね。

 

関係ないけど、“うまみ”って旨味だけど、甘みともかけるじゃん?つまりマッカンはうまみの塊なんだ!

そして、綾鷹式に行けば濁りはうまみじゃん?つまり、濁り=うまみ=マッカンなんだよ。つまり俺の目はマッカン。Q.E.D.証明終了っと。

 

「ごちそうさまでした‥‥‥」

 

箸を器の上に置き、手を合わせる。

ぼっち百八のスキルの一つ、早食いを発動させ、僅か十分で完食してしまった。ぼっちって偉大だわ。

 

「ごちそうさまでしたー」

「はーい」

 

食器をそそくさと片付け、俺は素早く食堂を後にした。

 

───5───

 

私が今朝少し早く起きると、ルームメイトである比企谷くんはすでに起きていた。私を全く意に介さぬ様子で、「IS基礎知識の導」と書かれた辞書並みに分厚い参考書と睨めっこしてた。

昨日の内に挨拶しておきたかったんだけど、私が寮に戻った時はすでに寝てしまっていた。

今わざわざ挨拶するのも憚られるので、なんとなく「大丈夫?」と声をかけると、「大丈夫だ、問題ない」と返された。問題がないなら良かった。

制服に着替えようと思ったんだけど、比企谷くんは退いてくれそうもないので風呂場で着替えることにした。勉強の邪魔するのもあれだし。

パパッと着替えを済まし、朝の食堂に向かうことにした。

 

「おはよー」

「おはよー相川ちゃん」

「てか、昨日さぁ───」

 

途中、クラスの子と合流した。

最初はどうなるかと思ったけどみんなそれなりには良識があって、結構うまくやっていけている方だと自分でも思っている。

 

朝ご飯は、日本食のセットを頼んだ。ここのご飯はいいものが使われていて美味しい。時々、家のご飯が恋しくなるけどね。

みんなで丸いテーブルを囲んでいると、そこに今学園一注目を集めている、話題の人物がやってきました。

 

「あ、織斑君だ!」

「おはよう織斑君!」

「おはようみんな」

 

織斑くん。世界初の男性IS適性者で、私達一年一組のクラス代表でもある。入学早々にオルコットさんと模擬戦をし、後一歩というところまで追い詰めた。結局負けちゃったんだけど。

その堂々とした心意気に惚れた女子も多く、私もその一人だ。織斑くんはかっこいいと思っている人はたくさんいると思う。

 

「織斑君かっこいいよねー!」

「うんうん、流石うちのクラス代表っていうか?」

「優しくて素敵だよね!」

「だ、だよねー」

 

話は織斑君の話題となり、みんながキャッキャと騒ぎ立てる。話の内容には同意できるが、私はこういう内輪ノリみたいなものが得意じゃない。頑張って合わせてみるけど、しっくりこない。自分だけが、世界から取り残されている感覚がしてしまうのだ。

 

「それに対して、もう一人はヒドイよね」

「うんうん、セシリアさんに突然キレたんでしょ?」

「ヒキタニ君だっけ?織斑君とは大違いだよねー」

「う、うん。そうだね」

 

話が織斑くんから切り替わる。ああ、またこの流れかとうんざりしながら、事実と違う事を指摘する勇気のない私は、適当な相槌を打つ。

 

昨日から、この流れは鉄板となりつつあるのだ。織斑くんの話題になると、引き合いに必ず比企谷くんが怒った話が出されてしまう。私はその時クラスにいたので比企谷くんが怒った理由も知っていますが、噂というのは怖いもので、「二人目の男子が、話しかけたセシリアさんに突然キレた」とか、「態度を注意したセシリアさんに逆ギレした」とか、怒ったという事以外勝手に捏造されて、尾びれが付いた状態で出回っているのだ。

しかも、それが一年のほぼ全員に広まっている。私は女子高出身で、こういう噂話にも慣れっこではあるのだが、未だに慣れない。

 

「しかも、今度セシリアさんと模擬戦するらしいよ?」

「絶対負けるのにバカだよねー」

「うん、だ、だよねー」

 

そして、私は気づいてしまった。私達が見直したのは男の人ではなく、“織斑一夏”という一人の人間なのだと。

みんなそうなんだ。「男の人もいい人はいる」とか「見直した」とか言ってるけれど、それは織斑くん相手にしか適応されていない。恋で盲目になっているだけでしかないのだ。

 

そう考えると、私は自分の思いに自信が無くなってきた。織斑くんの事を好きだと思っていたけれど、それも集団心理に巻き込まれてしまっただけ。本当は、ただかっこいいと思っただけなのかもしれない。

 

「清香聞いてる?」

「う、うん」

 

今日も私は他人の意見に相槌を打つだけで、まともに自分の意見も言えず、閉じこもったままだ。

 

私は家族の為に堂々と怒れる、自分の姿勢を比企谷くんが羨ましかった。

 




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