やはり俺がIS学園に入学するのはまちがっている。りていく!   作:AIthe

8 / 27
さりげなく新キャラが出ています。気付けるでしょうか?


やはり、篠ノ之箒は秘密がある

「過去」

 

いくら強く願っても、決して変えられないもの。

 

──────

 

「ナギちゃーん、そっちあいてる?」

 

次の日。私はまたまた食堂でご飯を済ませていた。異様な食堂率だと自分でも思う。

私の前席はぽっかりと空いて、誰が座る気配もない。仕方ないよね。みんなに「大嫌い」なんて言っちゃったんだから。こんなんじゃ、嫌われても虐められても仕方がないな‥‥

 

「あ、一色ちゃーん!こっちこっちー!」

「あー、待ってて〜」

 

クラスの女子は、いつも通りに楽しそうに会話を繰り広げている。もう、あそこに私の席はない。ほんのちょっとだけ寂しいけど、誰かに気を遣わなくていいのは楽だ。

今日も私は早く起き過ぎてしまったので、早くご飯を済ませて、メロンソーダをちょびっとずつ飲んでいる。これを飲みきったら教室に行こうと思っていたのだが、案外怖くって、飲み切ってしまう勇気が出ないのだ。

 

「あいむしんか〜、とぅ〜とぅ〜とぅ〜とぅとぅ〜」

 

小さく鼻歌を口ずさみながら、リズムに乗せて首を揺らす。再びストローに口をつけると、突然、目の前にダン!と勢い良くお盆が置かれる。ボケッとした表情のまま上を見上げると、そこにはムスッとした顔。篠ノ之さんの姿があった。

 

「え、えっと‥‥?」

「相席、させて貰うぞ」

 

篠ノ之さんは、篠ノ之束博士の妹だ。顔も整っていて、織斑くんの幼馴染という事で、学校内でも名も高い。こんなに不機嫌そうな顔をしていなかったら、絶対に人気者になれたのに‥‥‥

 

「‥‥‥‥‥」

「‥‥‥‥‥」

 

それにしても、どうして相席なんてしてきたんだろう。すっごく気まずいよ‥‥‥‥

すると、篠ノ之さんがその表情を崩さず、重たい口を開く。

 

「昨日の話だが‥‥‥」

「う、うん?」

 

モゴモゴと口を動かす。どこか恥ずかしそうに頬を染め、モジモジと肩を動かす。

 

「お、お前は比企谷とどういう関係なんだ?」

「え?ええ?」

「い、いや、別に他意はないんだ‥‥‥」

 

あれれ?なんかおかしい。比企谷くんと篠ノ之さんって関わりあったっけ?比企谷くんも隅に置けないなぁ‥‥

 

「同じルームメイトだよ。篠ノ之さんこそ比企谷くんとどういう関係なの?」

「‥‥‥‥少し知り合いなんだ」

「そうなんだ‥‥‥比企谷くんに話しかけないの?」

「‥‥‥色々あって、今は‥‥な‥‥」

 

落ち込んだような顔をする。朝から重い話だ。が、こうやって篠ノ之さんの表情が変わるのが見れただけで儲けものだ。

私がその表情をじーっと見ていると、顔をまっかっかにして両手をブンブンと動かす。

 

「べっ、別に好きとかそういうわけじゃないんだ!」

 

指同士をツンツンと動かす篠ノ之さん可愛い。なにかに目覚めそう。

しかし、顔を染めていた赤色もすぐに引き、いつもの仏頂面───ではなく、少しだけ真面目な顔つきに変わる。

 

「ただ、少し‥‥‥な‥‥‥少しだけ‥‥‥‥」

 

寂しそうな、切ない声。私はなんて声をかけていいのか分からず、少しだけ出した手を引っ込める。

再び気まずくなり、ストローを口に加える。口の中がアワアワになって、後味の悪い甘味だけが残る。

 

何分か経ったのだろうか、「すまない」と一言断って、篠ノ之さんは去って行った。

再びストローを加える。ズルズルと音を立てたそれを持ち上げてみると、中身が空になっていた。

鞄を肩にかけて、渋々と私は教室に向かった。食器はしっかり片付けた。

 

───2───

金髪クロワッサンについて調べた次の日の朝、俺は突然織斑先生に呼び出された。ほぼ一徹してるから次の朝ってのはおかしいか?いやおかしくないな。寝たのは夜の三時だもんな(白目)。

 

そして開口一番、織斑先生はこう告げた。

 

「今日、お前の専用機が届く事になった」

 

‥‥‥ゑ?

 

「そういうのってもっと早く言ってくれるものじゃないんですか?」

「本当は一ヶ月近くかかる予定だったのだがな。今日の朝に、完成したから届けると連絡が来た」

 

あ…ありのまま今起こった事を話すぜ!

『おれは昨日打鉄に乗る事を想定した作戦を立てたと思ったら、突然今日専用機が届く事になった』

な…何を言ってるのかわからねーと思うがおれも何をされたのかわからなかった…

頭がどうにかなりそうだった…

言うのを忘れていたとか報告体制に問題があったとかそんなチャチなもんじゃあ断じてねえ

織斑先生の無能さを味わったぜ…

 

バシィィィィン!

 

「いでっ!?」

 

痛快な音を立てて、俺の首がコキャリと曲がってはいけない方向に曲がる。首がもげる‥‥死ぬ‥‥‥‥

 

「今失礼な事を考えただろ」

 

出席簿からあんな音が鳴るなんてヤバイ。何がヤバイってその威力。軽く振っただけなのに平塚先生のファースト・ブリットレベルの衝撃力。人間ってレベルじゃ‥‥‥魔王だったわ。

 

「イテテ‥‥‥それで、放課後の模擬戦はどうなるんですか?」

 

織斑先生は「ん?」と頭の上に疑問符を浮かべ、出席簿の動きを止める。

 

「そりゃあ、普通に専用機で実行されるに決まっているだろう。お前もスペックが高い方がいいだろう?そうだよな?違うのか?そうなんだろ?」

「ハ、ハイ‥‥‥‥」

 

有無を言わさないこの圧力。この圧力だけで角煮作れる気がする。織斑先生は圧力鍋だったのか(困惑)。IS学園ってすごいなぁ‥‥‥

 

「では放課後、楽しみにしているぞ」

 

俺の肩をポンと叩き、織斑先生は立ち去ってしまった。

 

‥‥‥俺が昨日徹夜で練った作戦はどうするなのよさ?

 

───3───

 

という訳で、現在第三アリーナのピットに来ています比企谷八幡です。昨日の作戦がおじゃんになったので、もうヤル気0なんだゾ☆。

 

‥‥‥マジでどうすればいいんだ?専用機は願ってもない事だが、俺は操作が下手だから打鉄の防御力を頼りにしてたのに‥‥‥‥これで専用機が速度特化とかだったら笑えん。それと現役時代の織斑先生みたいなブレオンの機体も死ねる。ブレオンってのはブレードオンリーの事な。亜空間判定で斬り殺されて呆然とする。

 

「比企谷、届いたぞ」

「あっ、はい。わかりま「あー!君が比企谷君かー!」

 

大声を出しながら、こちらに駆けてくるまあるいシルエット。見るからにただのオッサン。凄い普通なオッサンだ。俺の手を掴み、大きく上下に振ってくる。なんか粘ついてるんですけど。この人汗かき過ぎだろ。鼻の頭が完全に大洪水である。

「ど、どうも」と挨拶をするが、完全に苦笑いなのが自分でもわかる。失礼しちゃうぜ!

 

「よろしくね!私は千葉工の社長だよ。いやぁ、比企谷君、君に会えて光栄だよ」

「千葉工の社長!?こ、こちらこそ会えて光栄です」

 

手のひらをクルーテオ伯爵する。

掌返しが早い?え、なんだって(難聴)?

 

説明しよう!略名千葉工、正式名称千葉メカトロニクス株式会社とは、千葉県が誇る最大の工業系の企業だ!地元からの就職に根強い人気がある!近年はIS開発部が発足し、日本三大IS工業会社としての名が高いのだ!

余談だが、千葉工業高校と千葉工業大学という同じ略ができる学校が二校もあるが、それぞれ「工業」、「千葉工大」と言えば通じるのだ!

千葉県民にその名を知らぬ人はいないと断言してもいい!

 

どうだ俺の千葉愛は!いや、もはや愛を越え‥‥憎しみすら超越し‥‥宿命となった!

 

「いやぁ、僕の事を知ってるなんて嬉しいねー」

「いやいや、千葉工の社長となれば知らない人はいませんよ」

「比企谷くんに会えてよかったよ!同じ千葉県民として君みたいなのは誇りだよ!」

「俺もです!」

 

マジ幸せ。こんな偉い人に会えるなんて生きてて良かった。この人チーバくん並に偉大だからね。

 

「ゴホンゴホン、そろそろ本題に入ってもいいですか?」

 

今凄い盛り上がってたのに‥‥織斑先生とかみんながカラオケでリア充御用達の曲を歌ってるところに、アニソンを歌い始める系の人間だな。あの空気が冷める感は異常。

まあそんな人達とカラオケに行く機会なんてないんですけどね‥‥‥‥一人カラオケ最高!

 

「ああっ、ごめんね?じゃあ比企谷くん。私達千葉メカトロニクス株式会社は、比企谷八幡をテストパイロットとして歓迎するよ」

 

両手を広げ、満面の笑みで歓迎を表す社長。

 

「比企谷くんにはテストパイロットとして、IS一機を貸し出すよ。基本的には自由にしていいけど、毎週ISのデータを送ってね。約束だよ?」

「はい。分かりました」

「それと、欲しい武器とか色々あったら連絡してね。二十四時間三百六十五日いつでもどこでも駆けつけるよ」

「はい、ありがとうございます」

「うん、じゃあ、契約成立だ。これからよろしくね?」

 

再びその丸い手が差し伸ばされる。俺はそれを強く握り返す。

 

「はい、よろしくお願いします」

 

社長はうんと小さく頷き、満足気な表情を浮かべる。

 

なんとなく、チラリと見た織斑先生は、その顔に影を潜めていた。俺の視線に気づいたのか、咳払いをして話題を切り替える。

 

「社長、ISの方は?」

「もう来る筈なんだけど‥‥‥お、来た来た」

 

ゴゴゴという轟音と共に、IS運搬用エレベーターが到着する。重々しいその扉が開き、ISが姿を現わす。DIO様かっつーの。

 

「じゃじゃ〜ん!」

「‥‥‥‥先生、これISですか?」

「‥‥‥‥お前がそう思うならそうなんだろう、お前ん中ではな」

 

物凄いドヤ顔。突然の少女ファイトはNGっす。

それにしても、目の前のISはすごいよぉ!さすが‥‥さすがなんのお兄さんなんだ?

 

「これが君の専用機だよ?」

 

社長は自慢気に胸を張る。少なからず、俺はISの容姿に驚いてしまった。

一言で表すなら、異質。そのISらしくない見た目を言葉にするならば、それが一番近いだろう。

半ば頭部と合体し、流線型のフォルムを描く胸部。折れてしまいそうな程に細い腰部。左腕よりも大きな右腕。四角くがっしりとした両足。

そのどれもがISとは程遠く、その統一性のなさに違和感しか感じ得なかった。

そして、感じた違和感の最大の原因。それは‥‥いや、勘違いなのだろう。ISが楽しそうに笑っている気がしたのだ。多分、徹夜をして疲れているからそう感じただけだ。無機質な機械が笑うわけなどないのに。

 

「千葉メカトロニクス試作第三世代型IS。名前はないよ!」

「ええぇ‥‥‥‥‥」

「名無し‥‥‥何故に?」

「うーん。ちょっと事情があってね。これの製作エピソードにあるんだよねー」

 

いやそこ重要だよね?むしろそこが一番重要だよね?

先にアリーナに出ている金髪クロワッサンをチラ見する。このままだと長くなって迷惑‥‥というのは建前で、社長の自慢話を延々と聞かされそうなのでさっさとISに触れる。莫大な情報と電気信号が身体を駆け巡り、俺の全身を灰色の装甲が包み込む。

ハイパーセンサーが起動し、ゆっくりと立ち上がる。何故か、社長がポカーン顔をしている。自社で作ったISだろオイ‥‥‥

 

「ふーん、気分はどう?頭とか痛くなってない?」

 

両手を動かし、頭を軽く左右に振ってみる。が、問題は感じられない。打鉄とは違うので感覚的に違和感が強いが、時期に慣れるだろう。

 

「‥‥はい、大丈夫です」

「そうかそうか。じゃあ、頑張ってきてくれるね?」

「勿論です」

 

楽しそうな社長に応対をしながら、俺はカタパルトデッキに脚部を接続する。緊張してドキがムネムネしちゃう。心臓病かもしれん。もしそうならトランクスが未来から来るまで生きなきゃ。生きねば(使命感)。

 

「じゃあ行ってこい。比企谷、応援しているぞ」

「わかりました。比企谷八幡、出ます」

 

前傾姿勢を取り、カタパルトから俺のISが射出される。その寸前、俺の耳───正確にはハイパーセンサーによって強化された聴覚が、小さなぼやきを捉えた。

 

「あ、その子飛べないって教えるの忘れちゃった。てへっ☆」

 

社長ってほんとバカ‥‥‥‥‥‥

 

───3───

 

「社長。本当にあの機体は何ですか?正直私はあなたが信用できません」

「いやいや、嫌われちゃったなぁ」

 

アリーナの管制室で、私と千葉工の社長は比企谷の試合を見ている。だが、私は試合の結果を見届ける事よりも、この男の案件を処理したい。

 

「一ヶ月後の予定が今日になるのはどう考えてもおかしいですよね?」

「いや、全然そんな事はないよ?」

 

この男、実に怪しい。普通過ぎて逆に怪しい。大体一ヶ月が一日に縮まる訳がないのだ。それに、IS自体の形もおかしい。

もし比企谷に悪さをしようとしているのなら、私は教師として然るべき対処をさせてもらう。いくら相手が社長だといえど、躊躇せずに突き返してやる。

 

すると、社長は両手をろくろのように回して、突然自慢気に語り始める。

 

「あのISの名前‥‥‥まあ仮称なんだけど、【源氏物語】って言うんだよねー。知ってる?」

「源氏物語ですか‥‥‥」

 

国語の苦手な私でも、そのくらいは知っている。確か、光源氏とかいうイケメンがハーレムを作ったのちに、血の繋がっていないその息子もモテモテなけしからん純文学らしいが、どう考えても最近のハーレム系ライトノベルだ。これを純文学だと評価した人は頭が湧いているのではないか。当時流行った凄い本だとはいえ、内容が純文学からは程遠い気がする。

 

一夏も基本モテモテだからな‥‥‥こうなってしまうのか?一夏も光源氏なのか?お姉ちゃんは心配です。

 

「そうそう。全部で五十四貼で構成された、光源氏の栄華と衰退を描いた作品だよ。まあ途中からその息子の話になるけどね。厳密には息子じゃないけどねー」

 

社長はニヤニヤ、いや、ニタニタと笑う。その余裕の態度が不快だ。そうやって、意味もなく人を見下す人間は嫌いだ。

 

「本当に一ヶ月かかる予定だったんだよ?ただ、それは【源氏物語】じゃない。もう一機の方だからね」

「じゃあ、比企谷が装備しているのは?」

「あれは、我々の努力の結晶。想いの寄せ集めだよ。ボツになった五十四の設計図。【桐壺】から始まり、【浮夢橋】で終わる全てを混ぜ込んだ、最強の一機だ」

「混ぜ込んだ?適当にくっつけただけじゃないですか!?」

 

頭に血が上る。

あのISの違和感がようやく分かった。あれは、様々なISの出来損ないを寄せ集めた、正に“出来損ない”だ。

私の胸の中がグツグツと煮えたぎる。比企谷はあんなに頑張っていた。なのに、この男は全てを台無しにした。誰かの頑張りを無駄にする行為を見て見ぬふりできる程、私は出来た人間でもなく、要領も良くない。

 

「おお、怖い怖い。そんなに睨まないでよー」

「‥‥‥‥‥」

 

言っている言葉の割に、その態度は余裕そうだ。

 

「大丈夫。あのISは何よりも強いよ。だってさ───」

 

そして、この男は衝撃的な発言をする。

 

「───あの子にあれだけ(・・・・)反応した人は、今のところ比企谷君だけなんだからさ?」




感想、評価等よろしくお願いします。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。