ゼロの使い魔で転生記   作:鴉鷺

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原作開始前 第三章
第十話  再び


季節は巡る。巡り巡って、ついに来てしまった二度目の誕生会。

 

今回は前回よりも小規模ではある。が、素直に喜べない。

 

だって、社交なんていやだもの。

 

しかし、オレは貴族、やらねばならないことがある。

 

今回はフィーも出席するようである。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

前と同じ感じで開式の辞的文句が述べられ、各々歓談する。

 

昨今の情勢やらなんやらを、少し耳を傾けてみる前に

 

「レイジ、お久しぶりね」

 

そういい、キュルケが現れる。八歳になるお嬢さんである。

 

「ああ、キュルケか、久しぶりだな」

 

「レイちゃんこの方は?」

 

そこにフィーが登場する。てか、初めて会うのか。

 

「フィーこの人はお隣さんのツェルプストー辺境伯の令嬢の…」

 

「キュルケ・アウグスタ・フレデリカ・フォン・アンハルツ・ツェルプストーよ、

 あなたは?」

 

「わたしは、ティナ・フィーネ・フォン・ザクセンです。レイちゃんとは同い年です」

 

「同い年?…ああ、なるほどね」

 

納得してうなずいている。

 

「あなた、魔法は得意で?」

 

自分の自身のある魔法についてキュルケは早速話を持っていく、

 

去年は確か火のラインだったか…。

 

「わたしはレイちゃんほど得意じゃないですけど、風と水がラインです」

 

「…へぇすごいわね。私も火がラインなのよ。もうそろそろトライアングルね」

 

うんうんという感じに頷きながら語る。

 

結構負けず嫌いのきらいがあるのかもしれない。

 

いや、オレも人のことは言えない。オレもとにかく負けず嫌いである。

 

「ラインなんですか…。すごいですね」

 

純粋にほめるフィー。邪心がない。

 

「あ、ありがとう。あなたもラインなんてすごいわね」

 

若干純真なフィーにおされぎみであるキュルケ。

 

「けど、レイちゃんの方がもっとすごいんですよ!」

 

ここでオレにお鉢がまわる。

 

「そうなの?」

 

「はい、レイちゃん最近火もラインになったんです」

 

確かに最近やっと、

 

火がラインに上がったことは事実であり、戦術の幅が広がった。

 

いや、別にまだ本格的な魔法での戦闘はあれっきりだが…。

 

「火も?ってことは他もラインなの?」

 

そこで些細なこと―別に些細ではないが―を発見し聞いてくる。

 

「ああ、去年から火以外はラインだったな。いやー火はどうも苦手で……」

 

「あなた…、去年はそんなこと言ってなかったじゃない」

 

「いや、聞かれなかったし…」

 

「そうだっけ?」

 

「ああ、火はドットだなぁ、スゴーイって言っただけさ」

 

「た、確かにそれだけだったような……」

 

「ね? レイちゃんすごいでしょ?」

 

「……そうね、すごいわ……」

 

若干落ち込み気味で無垢なフィーの言葉にこたえる。

 

「まぁ、気にするな。いずれは火のトライアングルになれるさ」

 

一応紳士……としてフォローを入れておく、

 

オレが既に風はトライアングルなんて言えない。

 

「そうね。前を向いてなきゃ私じゃないわ」

 

オレのフォローが功を奏したのか、元気になりフィーと会話を開始する。

 

オレはそれを見つつ意識は貴族たちの会話に集中する。

 

こういう社交の場は情報が流れやすい。酒場とかもしかり、酒は人を饒舌にする。

 

「き……ん、ア………の…に、…物…、た……うに……した。と、…きます。」

 

「ええ、その…は私……およん……す。」

 

「何……前触れ……うか…。」

 

「さぁ、まぁ私…………接し…ない………。」

 

なんだ?一層ひそひそ話す貴族を横目で注視する。

 

「レイジ、あなた何ボーっとしてるの?」

 

貴族の話に聞き入っていると、目の前からキュルケの声がかかる。

 

「いや、なんか。胸騒ぎがするだけさ」

 

「そうなの? まぁいいわ、ご飯の食べすぎでしょ?」

 

笑いながら言う。

 

「レイちゃん疲れたの?」

 

「いや、大丈夫だ」

 

フィーも心配なようだ。いけない、しっかりしなくては。

 

「…、あ、大丈夫と言えば、あのときも大丈夫って言ってたね。かっこよかったよ」

 

「? あのとき?」「どのとき?」

 

キュルケとオレの疑問が被る。

 

「あれ、さっき言いかけたオークとあったときの話で、

 わたしに父さんたちを呼ばせにいかせたときのこと」

 

あー、そんなこともあったな。

 

などと、うっすら思い出すのではなく、あれは今生で一番鮮烈に記憶に残ってる。

 

「オーク!? 人間の子供が好物の?」

 

「ああ、そうだ。話せば長くなるので割愛。あいつはありえなかったね。

 いやほんと、生きてるのが不思議だよオレ」

 

「割愛…。けど、オークってラインの力量があれば簡単に、

 とはいかないけど倒せるはずよね?」

 

「あいつ、なんか他のオークと違うらしいんだよ。

 詳しいことは知らんが突然変異種ってやつじゃないか?」

 

「それで、あのときレイちゃんが言ったの。≪オレはお前には嘘はつかない≫って」

 

そんなことも言ったような気がする。

 

「へぇ、かっこいいこと言うじゃない」

 

キュルケはにやりと笑う。

 

「そう思うならニタニタ笑うな、下品だぜ。レディさん」

 

「いやね、冗談よ。」

 

なにがだよ。

 

 

 

ダンスが終わり、そろそろ、日をまたぐ頃だろうか、

 

オレは新鮮な空気を吸うため一人庭にでて、満月を見上げる。二個ある満月を。


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