ゼロの使い魔で転生記   作:鴉鷺

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第十三話 対峙

ラ・ヴァリエール公爵の言うことを聞き、公爵―40代くらいの金髪―の間が、

 

15メイルほど離れたところに向かい合い、杖をとりだす。

 

他4人は離れたところで見ている。

 

「なるほど、君が噂の……」

 

「どのような噂かは存じ上げませんが」

 

「ふむ、まぁいい。どこからでもきたまえ。先手は君からだ」

 

いい大人が何をたくらんでやがる。そう思いつつも腰の片刃の短剣を左手で抜く。

 

「では、お言葉に甘えて」

 

そういい、『エアハンマー』を放つ。まずはジャブ……。

 

公爵は杖を一振りし、岩の壁をつくる。系統は土か。

 

「次はこちらから」

 

そう言い、呪文を唱える。

 

おい、これは別にターン制じゃねぇぞ。そう思い公爵めがけ駆け出す。

 

相手の呪文が完成、ゴーレムが二体現れる、無手。

 

色的には鉄製……。ブレイドを発動。

 

踊りかかってくる一体の攻撃を右手で抜き放ったもう一本の短剣で受け、

 

こぶしを受け流し、

 

すぐさま二体目のゴーレムがこちらに殴りかかり、攻撃してくる。

 

それをバックステップでよけ、右腕を引き絞り、前に突きを出す。

 

3メイルほど前のゴーレムの頭をオレの“伸びた”ブレイドが貫く。

 

すると動きが止まり、土にもどる。

 

「なんと!?」

 

驚愕の声はだれが上げたのだろうか。

 

続けて再度こちらに向かってきた一体目のゴーレムには、

 

左で同一の突きをくらわし、破壊。

 

すぐさま、また駆け出し……。『エアカッター』を足めがけ放つ。

 

それもまた岩の壁に阻まれる。

 

が気にせず突っ込み、体術勝負に持ち込む、力では勝てないが素早さで…。

 

が、またゴーレムが現れる。

 

今回は5メイルほど、先は1,7メイル位だったが。

 

ゴーレムの叩きつけられる拳を、思い切り横っとびに回避し、地面を転がり衝撃吸収。

 

どうする? こいつにはブレイドは効かないぞ。

 

一昨日開発したやつは……駄目だ威力が抑えられない。

 

なら、ゴーレムを見つつ『エアスピアー』を詠唱、発射。

 

が、今度は先よりも強度が増したのか硬質な音が響いただけ。

 

ちっ。どうする。オレは風以外はまだライン。

 

いや、この年でラインってのは優秀なんだがいかんせん場数が違いすぎる。

 

やはり、風だと速さくらいしか……。

 

あれを使うか……。まだオレが使えこなせてない『ウィンドアクセル』を。

 

そうと決めてゴーレムからの追撃をかわす。

 

「君では勝てんよ」

 

「あたりまえでしょ!! 経験が違います!!」

 

何をあたりまえなことを言ってやがる、頓珍漢が!

 

「諦めたまえ、このゴーレムは壊せん」

 

「諦めたら、そこで試合終了ですよ!!」

 

それにオレは壊さない唯一勝てるだろう。

 

貴族が苦手な近接戦闘、クロスレンジで決める!!

 

そこでオレの体を風が包む。行くぞ!! 『ウィンドアクセル』!!

 

魔法発動の瞬間、体が一気に軽くなり、公爵の方に踏み込む。

 

次の瞬間ゆうに15メイルあったろう距離を詰め、右の短剣で突きを放つ。

 

これが今のオレの体術の最速。

 

難点としては、自分の目が追い付かなかったら意味がないこと。

 

勝利を確信…。

 

ガキィン!!

 

その確信は砕かれる、剣が打ち合った音によって、驚愕。

 

体勢を立てなおそうとして、

 

「チェックメイトだ。」

 

そう言いこちらの首に杖にを当てた公爵が目に入った。

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

「はぁ~!!?」

 

部屋ににオレの間抜けな叫び声だけが響く。

 

 

「ってことは、最初っから討伐隊は断る気なかったってことですか!?」

 

「そうとも、森の魔物を倒さねば、領民が危機が及ぶ。申し出を断る理由は」

 

間が開く

 

「あなた」

 

夫人が一声かける。

 

「断る理由などなかったのだよ」

 

「何だ……。オレは骨折り損か」

 

そうガックリ肩を落としてソファーにもたれかかる。

 

「いやいや、いい勝負だった。ゲルマニアの神童とやらの噂を聞いていてな。

 気になったものだからつい、昔の血が騒いで」

 

おい、昔も何も壮年のおっさんが何言ってやがる。

 

まだまだ現役だろう。働き盛りのくせしやがって。

 

「しかし、ラインの威力の風魔法じゃないですね。トライアングルといったところですか?」

 

鋭い夫人。そのとおり。

 

「はい、そうですね。はい」

 

「それにしてはラインスペル以下で戦っていましたね」

 

「いえ、トライアングルになったばかりでして」

 

逃げの一手

 

「まぁいいでしょう。しかし、最後の魔法は何ですか?」

 

「風で自分を押して瞬間的に移動することを目的としたものです。

 距離は15メイルほどですが……。それよりもヴァリエール公爵は剣術が相当なレベルな のでは?」

 

「まぁ、昔は剣で儂に勝てるものなしと、言われていたからな」

 

なんだそれ、騎士団にでもいたのか?

 

「しかし、レイジといったか、その年でそこまでとは神童という噂は伊達ではないな。」

 

「そうですね。ルイズにも見習わせたいです」

 

ルイズは夫人の言葉で下を向く。

 

そう言いオレをほめてくれる。負けたがほめてくれるとは。

 

いや、そもそも、オレはまだ7歳ちょいのガキだからな。

 

気を取り直し帰ったら修行に勤しむとしよう。

 

「おほめにあずかり光栄です」

 

そういい頭を下げる。そういえば、ここルイズは虚無なのだろうか。

 

「うむ、今日は晩餐会としよう。それまで旅の疲れをいやすといい」

 

そういい立ち上がる公爵と夫人。

 

「ありがとうございます」

 

そういい。オレたち三人は頭を下げた。

 

しかし、疲れた。

 

なんて茶番につき合わせてくれるんだ。

 

ユリアさんも知った上でオレをはめたとは。

 

ユリアさん的にもオレの実力が見たかったのかもしれない。

 

実力主義のゲルマニア伯爵家夫人として。

 

キュルケがルイズに何かちょっかいを掛けている。

 

それをカトレアさんはほほ笑みみている。

 

その光景をオレはソファーにグッタリもたれかかりながら見ていた。




というわけで、対ヴァリエール公爵でした。

因みに前話でカリーヌさんが一瞥したのも、レイジの噂を聞いていたからですね。
ユリアさんも完璧に実力主事のゲルマニアで次世代でもやっていけるのかの、検査的な目線あったわけで、公爵も乗り気だったから。ということでの試合になったわけです。

因みに伸びるブレイドはドゥドゥーの技と一緒です。
『ウィンドジャベリン』は威力がおかしいので、殺しありでない限り封印ですね。


以下オリジナル魔法説明。

『ウィンドアクセル』風風
風で自身を押し、瞬間的に瞬発力を上げる。

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