ゼロの使い魔で転生記   作:鴉鷺

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第十九話  依頼

オレの誕生日という毎年行われてきたイベントが終わり、早二ヶ月経過した。

 

もうすでにこの世界、ハルケギニアに来て九年経つわけである。

 

小学校と中学校を卒業できるくらいの年月が経過したわけであるが、

 

九年皆勤や高校での十二年皆勤など、冗談じゃないかと思ってしまったものである。

 

風邪も引かないなんて機会でもありえないね。

 

オレの場合隙あらば休む。という少々残念なことをがんばっていたもんである。

 

が、興味を持ったものには時間を忘れて打ち込むことをしてきたし、

 

ネットをすることにより様々な情報を得れてこれたわけである。

 

膨大な量を、何より簡単に。

 

しかし、今生はそんな便利グッズがあるわきゃない。

 

あるとすれば主人公である。

 

そうそう、サイトが持ってくるか否かである。が、パソコンはあるがネットが。

 

ということだし、バッテリーもすぐ切れるだろう。だってノートだし。

 

原作の知識はもうほぼ皆無と言っていい。

 

まぁ主人公の名前がスッと出てこないほどである。

 

この世界に来てオレも必死だったわけで、特にフィーについては――。

 

閑話休題。

 

まぁ何が言いたいかと言うと、この世界でも情報が命というわけであるが、

 

その情報を持つのが国境や領地を頻繁に越えている商人。

 

あるいは傭兵ということになるわけだ。

 

とりわけ我が領のコメスという街は立地条件がよく、

 

人がよく行きかいそしてなによりもモノが行きかうわけである。

 

合法非合法問わずに。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

「じゃ、行ってくるわ」

 

「気をつけてね~」

 

「ああ」

 

そうフィーと会話を終え、愛車にまたがる。

 

その名も。特に決めてないので初号機で。

 

こいつを作ってから早二年が経ち、改良をひたすら加え続けて今に至る。

 

初期と違うのがまず最高速度である。

 

風石の力を流用することを思いつき、車輪とハンドルに搭載。

 

時速を底上げ。前方からの風圧を後方に流す。

 

さらに車輪をMTBっぽくして、このハルケギニアの荒れ地もなんのその。

 

今度土の修行も兼ねて街まで舗装してやろうか……。いい考えだ。

 

車輪も大きくし、変速も付けといた。

 

時速は100は軽く行くことが可能。体感でだが。

 

まぁ馬よりは早いことは確かである。

 

因みにこのチャリであるが、

 

フィーとキュルケにねだられ二号機と三号機を作成した。

 

フィーもキュルケもすぐ乗れるようになった。

 

まぁオレまで速度はださないのであるが。

 

一応は同じ機能を付けたので、だいたい馬と同じくらいは楽にいける。

 

フィルは馬でいいそうだ。生き物とたわむれるのがいいとか言っていたが。

 

まぁそれで駆りコメスの街に行く。数分で到着することができる。

 

楽になったもんだ。人は楽にすぐ慣れてしまう。

 

街中では自転車に乗れないのでそこらへんに置く。

 

そして土を魔法で車輪の穴にとおして『錬金』『固定化』をかけ、

 

簡易的なカギをかけ街に繰り出す。

 

今日街に来た理由としてはずっと前から気になっていた街の裏に進行するためである。

 

表向きの理由はただの買い物である。

 

街を進み裏路地に入る。そこでローブをまとい、奥へ進む。

 

テンションがうなぎ登りである。危険は刺激的だ。

 

何回か曲がりついた先には、酒の絵が描かれた看板。

 

中からは昼間だというのに人の騒いでいる声が聞こえる。

 

酒屋か…。そう思いつつも扉に手をかけ開ける。

 

なかは普通の酒場。だがなぜこんな隠れてやっているのか。

 

疑問が尽きないがカウンターの店員らしき人物に話しかけようとして、

 

カウンターにどこかで見たことのある三人の筋肉達磨のおっさんがいた。

 

そいつの一人がオレに気づき話しかけてきた。

 

「あんた、ちっせーな。飯ちゃんと食ってんのか」

 

「ん?兄者どうした」

 

「ああ、ちっこいやつがとなりに来たんでな」

 

「ふむ、おお? ほんとだ。あんたチビだな」

 

おいオレはまだ10だからこの身長は仕方ねーだろう。

 

「しかし、ローブをかぶっているとは訳ありの者でござるな?」

 

ふふん、と得意げに筋肉達磨の一人が言いだす。

 

「そうだな、まぁ訳ありだ。あんたらもだろ?」

 

頑張って声を低くしてみつつ返答。

 

「ま、ここにいる連中は多かれ少なかれ脛に傷を負ったものたちだ。

 まぁ小生たちは」

 

「ダイヤの旦那。依頼が入りましたぜ」

 

依頼?

 

「うむ、聞こう」

 

「なんでも、ヴァッツ山に竜種が数匹現れたって話でさぁ。

 そいで退治してほしいってことでさぁ」

 

竜種が数匹? ワイバーンとか? ヴィッツ山のふもとがここから馬で1日くらいだな。

 

「ふむ、金は?」

 

人差し指を立てつつカウンターのおっさんは

 

「一頭1000エキューでさぁ」

 

「1000!?」

 

1000エキューとかどこの貴族だよ。

 

「なるほどな。分かった引き受けよう。ドラゴン退治」

 

「では、ヴァッツ領領主様に一応言っといてくだせぇ。金はその人なんで」

 

ヴィッツ領はそこまで豊かではない。そんな金どっから捻出したんだ。

 

まぁ、当たりはつくが。竜退治か。実戦にはもってこいだな。

 

「なぁダイヤのおっさん。オレもそれに連れてってくれよ」

 

にいッと笑い190メイルはあろう巨漢を見上げる。

 

「子供。ボウズお前遊びじゃないんだぞ」

 

「わかってるさ。オレはこう見えてもトライアングルなんだ。あんたらと同じ……な」

 

最後の言葉で眉間にしわが刻まれる。

 

「なぜ……それを知っている?」

 

その質問をおどけて答える。

 

「おぼえてないのか? オーク退治のときあったじゃないか。

 まぁ正確にはオレは追い返しただけだけどな」

 

少々の沈黙。

 

「ああ、あのときの、久しぶりだなボウズ。

 それと小生はまだ三十路を越えてなどない」

 

「それでボウズはこんなとこ来てどうした。親に勘当されたか?」

 

ぶわっはっはっは。と笑いながらそんなことを聞いてくる。

 

「ああ、あれから親父には感動されっぱなしだ」

 

「ふむ、まぁいいだろう。金は」

 

「ああ、オレの殺した数の分の一割くれればいい」

 

「ああ、それならまぁいいだろう。出発は明日の明朝。この街の西門に集合だ」

 

「りょーかい」

 

そう手を振り、椅子から立ち踵を返して出口に向かい思う。

 

楽しくなりそうだ。オレの魔法を実戦で試すことができる。

 

またフィルにあくどい顔だと言われそうな顔をしつつ、

 

裏通りから本通りにでる、前にローブを脱ぎ顔の緩みを直して、

 

「なんかお土産買ってくか」


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