ゼロの使い魔で転生記   作:鴉鷺

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第二十一話 ワイバーン退治

開けて翌日、朝起き家の外に出ると、ちょうどそこに三兄弟が姿を現した。

 

「よく寝れたか」

 

「ああ。そういえば昨日から思ってたが、あんたら一番最初の雰囲気とは違うな」

 

一番初め、屋敷の前で素振りをしているオレの目の前で、

 

なんのマネか無駄に凝った演出をしていて変人だと断じたものだが…。

 

「ん? 最初と言うと。何年か前のときか?」

 

「ああ」

 

「あれは、依頼中でなかったからな。それに今回は竜種が相手であるからな」

 

「ふーん。仕事はしっかりやるってことか」

 

まぁ納得しとく、そこまで気になることでもないので。

 

「それはそうと、目撃情報によればワイバーンだそうだ。

 一体1000だが、お前は100でいいんだろ?」

 

金を気にするたちなのか…。

 

「それでいい。フィルには倒せないだろうしな。溺死くらいさせれるか?」

 

半笑いでフィルに聞いてみる。

 

「難しいかもしれないね。動きが速いと、とらえられない」

 

そっすか、と自分から聞いたのに、気のない返答をする。

 

「まぁいい、行くぞ。時間は有限だ」

 

そう言いダイヤたちは歩きだす。

 

まぁオレも新魔法が試せりゃいいだけだしな。

 

「行こうか」

 

「ああ。」

 

 

 

森に入り、山のふもとから山を登っていく。

 

情報によると洞窟をねぐら、巣にしているとのことだ。

 

洞窟を釜にして釜焼きをして外に出すとか。しかし、焼き殺してはいけない。

 

ワイバーンの一対の翼爪を提示すると金になるとのことである。

 

因みになぜ正規にこのことを頼まないかと言われれば、

 

いろいろと後ろ暗いことをしているとかで、正規軍には見せたくないんだとか。

 

ダイヤの変態に聞いたことである。

 

登山中は三兄弟が真面目に周囲を警戒しているのをみると、

 

あの衝撃的な初見を残念に思う。

 

オレはと言うと三人の後をフィルと話しながらついていっているだけである。

 

羽ばたく音がすれば一番早く感知できるので、索敵は楽なもんである。

 

ダイヤが土。ルビーが火。サファイアが水。風がいない。

 

エメラルドあたりが風だろうか。

 

風は一番汎用性があると思うのだが。

 

つーか、宝石の色のイメージで決めたかのような感じである。まぁ偽名らしいが。

 

「フィル、さっきからなんで手首。

 てか、腕輪を握ってるんだよ。そう言えばいつも付けてるけど」

 

右腕に着けた腕輪を、今日の朝からちょくちょく握っているフィルに聞く。

 

「ああ、昨日の会話で思ったんだ。家族は大切にしなきゃいけないかなと」

 

「?」

 

「これは、今はいない母の形見……。

 というか、母の家に伝わっていたらしい腕輪とのことだ」

 

父が言っていた。そう言い前を向く。

 

「ふーん。そりゃ大切にしなきゃな。形見なんだから」

 

「ああ、昨日改めて思ったよ。これは唯一だとね」

 

「オレも形見つくろうかな」

 

そう前を向きつつ肩をすくめて考える。

 

思い返せば、オレは基本危険と仲がいいのだから。

 

「そうだな。この指輪にしようか」

 

そういい、何年か前に買った右手の指輪を見つつ、つぶやく。

 

「それ、いつもしてるけど、なんなんだい?」

 

「ああ、オレの短剣と同じ臭いがするから買ったんだ。しかも、これは杖なんだぜ」

 

腰の短剣をこつきつつ答える。

 

「君は杖を何個持つ気なんだい?」

 

「いやいや、オレの杖は短剣二本とこの指輪の三つだぜ?」

 

「普通は一本だけどね」

 

いやいや、手札はやっぱ多いほうがいいからな。

 

ま、いいじゃん。そう言い、前の三人組を追いかける。

 

くだらない会話をフィルとしつつ、木々の茂った山道、けもの道を進むこと半刻ほど、

 

そこでワイバーンの巣とかなんだとか言われている洞穴を発見。

 

数年前に廃鉱になったとか。洞穴の前にワイバーンはいない。

 

「ここだ。ルビー。『フレイムボール』だ」

 

「承知」

 

そこでルビーが『フレイムボール』を詠唱し、廃鉱内に向け撃つ。

 

数拍後にワイバーンの叫喚がオレの耳に届く。

 

「どうやら、ほんとにいたようだな。おねんね中だったのか?」

 

「さて、仕事の時間だ」

 

オレのボケを華麗にスルーしてダイヤがルビサファに言う。

 

ようは翼を壊さなければいいわけだ。流石にあの竜種よりは弱いだろう。

 

何より反射など使わない。比較的楽である。ドラゴンに比べればの話であるが。

 

しかし、空を飛んでいるのでめんどくさいことこの上ない。

 

とのこと。空対地攻撃はうっとおしい。メイジじゃなかったら手も足も出ない。

 

「フィルは隠れてろよ」

 

フィルに声をかけつつオレも戦闘態勢に入る。

 

抜剣し詠唱を開始する。

 

そこでワイバーンが5匹ほど次々と洞穴から出てきた。

 

声の数より少ないな。

 

そう思いつつも、気にしずに魔法をかける。

 

『ウィンドアクセル』を自身にかけ、駆け出し、跳ぶ。

 

その前にもう一つ詠唱発動。

 

跳ぶが『ウィンドアクセル』の力も借りて10メイル弱の跳躍。

 

因みに『ウィンドアクセル』は一定時間かかっている状態にすることが可能。

 

ワイバーンの滞空位置は25メイル前後であり、オレのブレイドの範囲外。

 

が、さらにオレは空中で跳ぶ。フライではない。

 

空を蹴りさらに跳躍。も一つおまけに、再々跳躍。

 

ワイバーンとの高度が逆転するときに下からブレイドで胴体を縦に斬り裂く。

 

さらに空で体を逆さにし、空を蹴り地面に向かい再加速し、二体目を上段からぶった切る。

 

魔法で制止をかけつつ着地。空を蹴るのに用いた魔法は『マテリアルエア』と命名。

 

この魔法は風魔法によくある<空気を固める>ということができるところに目をつけて、考え付いたわけである。

 

フライでいいんじゃないかなんて言われたが、、

 

あれは三次元移動があまり素早くできないし、何より急に方向転換ができない。

 

慣性により若干のラグがある。

 

それに比べ、『マテリアルエア』はラグが身体能力依存なので、

 

慣れれば相当カクカク移動できるわけである。

 

この魔法を連続発動することで空中を歩行可能であり、

 

先のように複数ジャンプも可能になるわけである。

 

またもオレの新魔法がいい出来で、今回はうまくいったので、この二体の翼爪を頂く。

 

これで200エキューである。ちょろ甘だな。

 

真っ二つの二匹のワイバーンの翼爪を、はぎとりに移行しようとしたところ。

 

他三体も三兄弟の絶妙なコンビネーションにより、駆逐された。

 

「オレもう新魔法を実戦レベルで使えることがわかったから、この二匹でいいわ」

 

そう、三兄弟に伝え、剥ぎ取りフィルのところにもどる。

 

「君はまたバカをやっていたね」

 

バカとは失敬だな。

 

「おい、フィル。バカとはなんだ、オレの崇高なる戦いにケチつけるのか」

 

「いや、争いは何があっても崇高ではないと思うけど」

 

ごもっともである。

 

そう思いつつ三兄弟が息を合わせワイバーンを殲滅しているのをみる。

 

「ま、そうだな。戦いはいけねぇな。

 けど、戦いはなくならない。この世界が滅ぶまで……な」

 

動物は争い続ける生き物である。理由なんて後付けなことが多そうだし。

 

「そうだね。それにしても、なんで君は何時も接近戦をするんだい?

 『ウィンドジャベリン』を使えばいいじゃないか」

 

疑問はわからんでもない。しかし、

 

「『ウィンドジャベリン』を使うよりも、

 『ウィンドアクセル』と『マテリアルエア』を併用した方が、効率がいい。

 それに、破壊力の桁が違う『ウィンドジャベリン』を使ったら、

 翼爪まで吹き飛びそうだ」

 

簡単な話金にならないのはちょっと。てことである。

 

「お金に困ってるのか?」

 

「いや、だけど貰えるもんは貰う主義だ」

 

貰えるものは貰っとく。

 

「なら、ボクも貰ってもらおうかな?」

 

「……何言ってんだよ。もううちに貰われてんじゃんか」

 

まぁそんな意味でないことは百も承知であるのだが。

 

「そうだったね」

 

真顔でシレっとそんなこと言うなよな。そう心の中で悪態をつきつつも三兄弟が、

 

ワイバーン撲滅し終わるのを見届けたのである。




オリジナル魔法紹介
『マテリアルエア』風風風
風系統によくある空気を固めて何かをする。
という性質を足場にすることを考えた魔法である。
フライとの差別化。
立体軌道が身体能力依存であるが、思いのままできること。
『エアシールド』のように空気の壁を作ることで、
敵の攻撃も防ぐことができる。連続発動可

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