ゼロの使い魔で転生記   作:鴉鷺

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第二十四話 武闘

ワイバーン退治からさらに数ヶ月が経つころ。

 

季節は夏が終わり、秋の気候になってきたような気がしないでもない。

 

まぁここは日本とは違うし、

 

元いた地球とも気候区分などが違う可能性は大いにあるのだが、

 

大体の四季は感じられる。

 

しかし、寒くなるのはゲルマニアでも北や東の方に位置する地域である。

 

雪などトンと見ない。魔法で見ることはできるが。

 

これは元の地球と同じ気候故なのか、はたまた別の理由があるのかは謎である。

 

時間があったなら調べてみたい気がしないでもない。

 

そんなことを無駄ではないが特に役にも立ちそうにないことを、

 

日々考えて修行などに精を出す。

 

剣の修行、魔法の修行を日々繰り返しつつ、

 

そろそろ領地経営もかじっていこうかという時期。

 

「ベルト。父さんから聞いたんだが、リッターの武闘会にでるんだってな」

 

久しぶりにオレの剣術、武術の師である

 

ベルト・リッターに先日小耳にはさんだことを聞く。

 

リッター武闘会とは名前のままであるが、

 

ゲルマニアのリッター<騎士>の勲章を受勲したものでのトーナメント制の大会である。

 

なぜこんなものがあるというかと、

 

ゲルマニアの人は楽しいも好きであり、お祭り好きということもある。

 

あとは閣下も絡んでるとかどうとか。

 

「そうです」

 

間接に答えを返すベルト。

 

「ん? けど、あれって基本メイジしか出てないじゃん。前の大会も出てなかったし」

 

そう、リッターの称号をもつものは平民にもいるが、

 

勿論貴族もその称号をもつものがいる。

 

なので必然的に大会ではメイジ、

 

貴族が有利になりあまり平民のリッターはでてもあまり活躍できない。

 

メイジ殺しの異名があってもである。

 

「そうなんですが、今回はレイジのおかげで出場する気になったのです」

 

「なんでオレなんだ?」

 

オレは特にないもしていないような…。

 

「今やっている訓練です。レイジも成長しているように、

 私もメイジとの戦い方を学ぶことができるというわけです。

 それに先日公務での活躍も相まっての駄目押しです」

 

「なるほど、確かにメイジとの戦いはいろいろと研究になるよな。

 ベルトは一応メイジ殺しだけど」

 

「メイジ殺しと呼ばれていても、それはただのメイジ相手ですからね。

 リッターともなろうメイジはそう簡単にはいきませんよ」

 

リッターの称号を持つメイジとただのメイジではその差は歴然である。

 

ドットでトライアングルに勝つことなんてザラらしいし。

 

「けど、オレとの訓練でそんなに勉強になることはないんじゃないか?」

 

自分のことだ。そこまで自身ができているとはあまり思わない。

 

「いえいえ、レイジの魔法と武術の使い方は他のメイジにはないですし、

 何よりそんじょそこらのメイジなど簡単に鎮圧できるでしょう。

 たとえ相手がスクエアであったとしても」

 

ベルトの目にはオレはなかなかの使い手に移っているようだ。

 

なかなか嬉しい。

 

「そんなもんか?」

 

照れ隠しとしてそう言っておく。

 

「そうですとも。さぁ、おしゃべりは終わりです」

 

そう言いベルトは木剣を構えなおす。芯には鉄が入っている。

 

おもさは実剣と大差はないだろう。自然体な構えどこにも力みは生じない。

 

「了解。次こそは一撃入れてやるぜ。魔法は使わない」

 

そう言いオレも二本の短剣使用の木剣を構える。

 

体は半身、右手は両刃を順手に、左手は逆手に片刃を。

 

数瞬ののち先に動いたのはベルトであり、

 

右手に持った木剣で右からの横薙ぎそれをバックステップでかわす。

 

着地と同時に既にこちらにもう一度踏み込み

 

剣をなぎ払おうとするベルトに向けこちらも一歩踏み込む。

 

その時に左右両手の握りをどちらも逆にし、

 

逆手になった右の短剣で受け止めようとする。

 

が、それをやめ少し体を浮かし、二戟目を右で受け2メイルほど吹き飛ばされる。

 

やはり受けきれない。

 

「いい判断です。体格が敵わないものの太刀は受けてはいけません」

 

そう、言い評価を下しつつも、さらにベルトはオレに詰め寄り、さらに上段からの唐竹。

 

それを次は両足を開き右も順手に握り変え、両の短剣を交差し受け止める。

 

重い衝撃が全身を駆け抜ける。

 

相手は重力も味方であり、

 

そもそも力の差が圧倒的なので受けとめ続けるだけで精一杯である。

 

そんなオレに対してベルトはさらに追撃を加える。左手のボディーブローを振るう。

 

それを感知しつつ両手で無くなったベルトの剣をオレの右に流しつつ、

 

オレは左に転がるように剣とブローから避け、すぐさま立ち上がり、相手を視覚する。

 

「よく避けました。前はヒットしたんですが」

 

「もうヒットはしたくないっての」

 

「まぁそうですね」

 

そう言いつつも、オレは思う。

 

やはりベルトは強い。

 

オレが武術―主に剣術だが―だけなのもあるが、

 

魔法を使っても苦戦をさせるだけである。魔法ありならば一本はとれるのだが…。

 

「ベルトの壁はたけぇーな」

 

そうぼやきつつ相手の隙を攻撃を避け受け流しながら探る。

 

前までならば、先にボディブローをくらってダウンだったが、

 

今回はそれを避け光明を見出すために耐える。

 

耐えた先にあるはずだ。一瞬の隙が。

 

数合の剣戟を交えた時オレは隙を自ら作る。

 

その隙を見逃さずにベルトは切りこんでくる。

 

その横薙ぎをオレはそのさらに下に潜り込み避ける。

 

あぶなねぇ、髪かすった…。

 

そう冷や汗をかきつつオレの思考は加速する。

 

避けるときに地面に着けた右手を短剣ごと握りしめ

 

オレ渾身の右ストレートをベルトのボディにかます。勝った!!

 

 

 

 

 

 

 

「うげぇ、ありゃないぜベルトさんよぉ~」

 

そう言い自分の腹に『ヒーリング』をかけつつ文句を言う。

 

「狙いは良かったですね。しかし、私も剣で家族を養っている身。

 歳はの行かぬ少年に一本くれてやる気はありません」

 

そう、きっぱり言い切るベルト。

 

「大人げないぞ~」

 

そう反論するのはフィーである。いつものことなのだが…。

 

「あぁ、だいぶ良くなった」

 

腹をさすりつつオレは立ち上がる。

 

「しかし、やっぱりレイジも負けることがあるものなんだね」

 

そう言いつつ、何度目かというフィルの声を聞く。

 

いつも同じことを言いやがるからな。

 

「言っただろ。オレは完璧超人じゃねぇんだよ」

 

半目になりつつ同じ身長になったフィルに言い返す。

 

「いやいや、普段の君は完璧超人を地で言ってるからね?ね、フィー」

 

「レイちゃん、何でも出来るもんね~」

 

オレの言葉を否定し始める。フィルとそんなことは気にしないといった体のフィー。

 

いつもの光景ではあるのだが。

 

「あー、もういい。オレは修行にもどる」

 

人海戦術で来たフィルに白旗を上げつつオレはまたベルトと向き合う。

 

「君はまだやるのかい?」

 

若干呆れた声が聞こえてきたがオレの耳のフィルタリングにかかる。

 

うるさい、オレは修行をしたいんだ。ワーカーホリックだコノヤロー。

 

「次は、魔法ありだ」

 

そう、オレは宣言しとく。特にする必要はない。気分でする。

 

オレは気分屋であるからに…。

 

『エアハンマー』を一瞬で詠唱し正面に何の小細工もなしに撃つ。杖は指輪。

 

案の定ベルトはまるで見えているかのように避ける。

 

しかし、オレの放った『エアハンマー』の面積よりもかなりの余裕を持って避ける。

 

これが風メイジなどならある程度は感覚でわかるので不可視でも避けやすい。

 

しかし、これはただの様子見である。本命は次だ。

 

そう思い『エアハンマー』を撃った直後にまずは『ウィンドアクセル』を掛ける。

 

「ベルト。オレはお前が公務に迫られているときに一段階パワーアップしたのだ」

 

「なるほど、それがそのパワーアップですか?」

 

そう言いオレに切り込んでくる。

 

オレは無駄にかませっぽいセリフを吐きつつ返答は呪文の詠唱で返しておく。

 

詠唱は一秒もかからないが、しかし少しは時間がかかるので。

 

まず一太刀目を魔法の力をかり大幅に後退し、詠唱が完了。

 

「いんや、こいつじゃない。『エアハンマー』が本命だ」

 

そうニヤリと笑い追撃に来るベルトめがけ剣を杖代わりに振るう。

 

「『エアハンマー』は先程避けましたよ。!?」

 

そこでベルトは気づいたようだ。空気がベルトを中心に四方が歪み、

 

「これは……!?」

 

四方から『エアハンマー』がベルトに叩きこまれる。威力は弱くしているが。

 

四つの『エアハンマー』はベルトを中心に交わり、通り抜け若干の竜巻を発生させる。

 

規模は相当小さいので竜巻はできたらすぐにそこで消える。

 

「ベルト大丈夫か?」

 

やはり、魔法ありだと簡単にいってしまったか…。

 

今まではそうでもなかったんだが。

 

そんなことを思いつつもベルトに声をかける。

 

「……はい大丈夫です。」

 

そう言い膝をついた状態から立ち上がる。

 

「ま、一応『ヒーリング』はかけとくぞ」

 

そう言いベルトに『ヒーリング』を掛けておく。

 

「しかし、今の魔法はなんですか?見たことがありませんね。

 一度に多面的に攻撃するなんて、複数のメイジと戦っているようですよ……。

 それとその前の動きが速くなる魔法」

 

不覚をとったこと若干悔しいのかオレに解説を求める。

 

「そりゃ、見たことないだろう。オレがつくった魔法だからな」

 

「魔法を新たにつくったんですか?」

 

「ああそうさ、まず動きが速くなるのが『ウィンドアクセル』な。

 効果は簡単に言うと動きを速くする。

 で、四方からの『エアハンマー』の攻撃だが、

 あれはオレのオリジナル魔法である『エアカッター・マルチ』から発想を流用した

『エアハンマー』。名前は…そうだな。『タービュランス』ってのでいこう」

 

最後に一つ頷く。

 

「フィルグリック嬢の意見がわかりましたよ」

 

そうオレの説明を聞いたベルトは言った。おい、なぜフィルの味方をする。

 

「ま、いいや。今日はこれで終わりな。もう夕暮れになるだろう」

 

「そうですね。では、また予定ができたらばきます」

 

そうお辞儀をしてコメスに帰ろうとしたベルトを、

 

「あ、そうだ。ベルトさん。武闘会は何時にあるのかな?」

 

そう呼びとめフィルは武闘会の日程を聞く。

 

「そうですね。ラドの月の第四の虚無の日です」

 

「そうなんですか。予定があったらヴィンドボナに行きますね」

 

どうやらフィルは武闘会に興味があるようだ。

 

「そうですか、活躍できるようがんばります」

 

そう笑って今度こそ馬に乗り街の方に駆けていった。

 

「フィルは武闘会に興味あったのか?」

 

「いや?ただ貴族の子女に今人気だというスイートロールを食べてみたくなってね」

 

「あ、そだね。スイートロールはヴィンドボナにしか売って無いって話だしね」

 

訂正、武闘でなく砂糖に興味があったようだ。

 

オレは元々行く気だったんだが。おもりをさせられそうである。

 

オレも同じ年の子供だっつうのに。

 

はぁ、そう溜息をつきつつ、屋敷に入っていく二人を見つつ。

 

ふとアホなことが頭をよぎる。

 

「あれ、オレ男友達いなくね?」

 

重大かもしれないことに気づいてしまった今日、ラドの月、第二週、三日目。




というわけでベルトとレイジの訓練風景みたいなものです。
レイジの男友達はいませんね。
まぁ嫉妬の対象なんで友人じたいできないんですが。
次回は首都ヴィンドボナでの話。

以下オリジナル魔法紹介

『タービュランス』風風風 
ある対象の四方に『エアハンマー』を出し同時に打ち出し封殺して攻撃する。メイジならば上にフライで飛べばいいし、何らかの魔法で防げる可能性があるが、飛んだ場合無防備になるので追撃が容易であり、『エアハンマー』をさらに四方のみでなく上からも出せば上への逃げ道は潰れるのでなかなか有用な魔法。殺傷力は『エアカッター・マルチ』に劣る。

風のオリジナルが多いですが、一応他の系統も考えているんですが…。
如何せん風魔法が好きなもので。

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