ゼロの使い魔で転生記 作:鴉鷺
第二十九話 始動
オレの誕生日も無事(?)終え、さらにフィーの誕生日も終えたころ。
帝都より書状が届いた。内容としては<リベリオン>なる反乱組織、
謀反の企てをつかんだとのことである。
因みにこの書状は領地持ち貴族に送られたようだ。
こんな書状送って、<リベリオン>とやらの関係者に知られるだろうに。
まぁ、意図的にではあるだろうが、それとも<リベリオン>自ら流した情報なのか。
全容を見定めるにはまだ時期尚早だろう。いやはや古今東西謀反は絶えないのか。
理由としては、上司の無能さ。部下の野心などだろう。
オレが思うに前者はあまりない気がする。このゲルマニアにおいては。
ま、若干皇帝陛下は慎重すぎるところもあるかもしれないが、それもまた一つの政策か。
「レイジ。帝都に向かうぞ」
「急にまたどうして」
いや、理由はわかってはいるが、そんな焦るほどのことなのか。
「お前にも文については言っただろう。それ関連だ」
「やっぱりか」
「分かればすぐにしたくしなさい」
「了解。オレだけですか?」
そこで一瞬間が開くが、
「ついでだ、フィーたちも一緒に連れていく」
珍しいことに姉妹を連れていくらしい。
「因みに、なぜです?」
「久しぶりに、帝都に行きたいだろうと思ってな」
成程、一つ頷いた。
「分かりました。用意をしてきます。フィーたちに伝えてから」
◇◆◇◆◇◆◇◆
その次の日にオレ達は帝都に向けて出発した。
帝都で何が起こるかも知らずに。
「うっはぁぁぁ」
馬車から下りた第一声はそんな気の抜けた伸びの声である。
声の主は勿論オレ。
「レイジ。行くぞ」
「了解です。またあとでなフィー、フィル」
父に促されオレもそれに続く。手を振りつつ。
「じゃあ、またあとでね」
フィーも笑って手を振る。
フィルも酔いでもしたのか、元気なさげに腕輪を着けた方の手を振る。
馬車酔いとはまたどうしたことか。
閣下に謁見をし終わり、と言ってもオレはずっと頭を垂れてたわけだが…。
非常に睡魔との戦いは熾烈を極めた。いや、なかなかいい勝負だった。
どうやら夜に反乱についてのアダルティな会議があるとのことで
オレは帝都にある別邸で待つであろう、フィーたちのもとへと足を向ける。
時刻は真昼間である。なんか土産でも買って行ってやろうか。
そう思うも考え直す。あいつらと買い物した方がいいかな。
そんな思考をしつつマントをなびかせ、大通りを歩く。
貴族の子弟もなかなかいるようである。それも今回の召喚のせいか。
今年になってもフルース・ゴエは繁盛しているようである。
何が人気なのだろう。店長の行動はちょっと迷走気味であると思う。
そんな無駄なことを考えていると向かいから最近知り合った人を発見。
特にこれからすることもないので、声をかけることにする。
「ウィンダ!」
手を挙げ声をかける。
「? あぁ、レイジ。久しぶりだね」
そう言いつつこちらに視点を合わせたのは、オレと同じ年である緑髪の少年である。
そう、少年なのだ。この世界初の男友達である。
「お前んとこも呼ばれたのか?」
「そうなんだよ」
「まぁ、お前はオールラインだからいると良いんじゃないか?」
ちゃかし気味に背中を叩きながらウィンダに言う。
「よく言うよ。君は僕より上だろ?」
「それはそうだな」
自然と笑いがこぼれる。あぁやっぱ男子と話すのはいいなぁ。
ハーレムに憧れた現代のころが懐かしいぜ。
「そうだ。僕はフルース・ゴエのスイートロールを食べようかと思ったんだけど、
一緒にどうだい?」
「おーらい。万事良好。お供するぜ」
にぃっと笑いウィンダの後に続く。
◇◆◇◆◇◆◇◆
グビーツ候、いや、元グビーツ候は高揚していた。
「みなの者、<リベリオン>始動の時である」
そう円卓を囲む人間の中で一人立ち演説をする。
「苦節10余年、アルブレヒトに恨みを抱きよくぞ。
耐え忍んできた。しかし、時は来たれり。今反旗を翻す時である」
そこに30~40歳ほどの数人のマントを着た人が賛同する。
「明日をもって我らの目的を果たす」
そう言い終え元侯爵は席をはずす。豪華な料理が並べられた円卓を後にして。
廊下を進む。そこで、
「ルクス。明日開戦だ。短期決戦でいく」
「りょーかい。実験は進んだよ。いやぁ~良い実験ができた」
歳は二十代、いや下手したら十代後半なのでは、と思われる金髪の青年が答える。
「ふん、利害関係の一致だ」
「まぁいいさ。あんたらが成功しようが失敗しようが、データはとれるしな」
そう言い残し青年は闇に消えていく。
それを複雑な表情で見送り再び歩き出す。
一室に入り、
「待っていてくれ。明日で終わる。私の怨嗟が終わる」
そう言い抱き締める。侯爵と同じくらいだろう。女性を。
書きためはここまで