ゼロの使い魔で転生記   作:鴉鷺

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第三十話  反乱勃発

 夜。

 フィーが既に寝てしまい、オレとフィルだけが子供の部屋で起きている。

 オレは何か新魔法が作れないか考えている。

目を閉じてじっとしているので、座って寝ているとも思われているかもしれない。

フィルは明りをつけ、何やら本を読んでいる。

 

「なあ、明日はどうするんだ?」

 

「どうするとは、予定のことかい?特に決まってはいないね」

 

「そうか。なら、一度フィルのもと家があった場所に行って、花でも添えていこう。前回は、しなかったしな」

 

「……そうだね。それもいいね」

 

「なら、決まりだな。フィーは……。まぁ本人に聞くか」

 

「多分、行くというだろう」

 

 フィルは柔らかく笑いフィーを見つめる。

 

「そうと決まれば、オレはもう寝る。フィルも適当なところで寝とけよ」

 

 そう言い残しベッドの中に潜り込む。因みに、フィーとフィルは同じベッドで眠っている。

 

 

 あけて翌朝、今日の天候は快晴。

なかなかのピクニック日和である。

まぁ天候は快晴だろうが、このゲルマニアには若干の雲がかかっているのだが。

父さんは今日も朝から反乱軍についての話し合いだそうだ。

連日連夜お疲れ様である。

大事な時に動けるように体調管理もしといてほしいね。

朝食を食べ終え、一旦部屋へ戻る。そして、

 

「フィー、今からフィルの家の跡地に行くがついてくるか?」

 

 オレの質問を聞くと、うんうんと元気いっぱいに首を縦に振る。

 

「そうか、なら用意としておいてくれ。馬で行くからな。」

 

 そう言い、素早く持ち物を選別。一対の短剣と10エキュー程。

 

「フィルは馬車を用意しといてくれ」

 

「了解。」

 

 

 

「何をしていたんだい?」

 

「ちょっと、花を買いにひとっ走りさ」

 

 そういい、一束の花束を見せる。

 

「それ何に使うの?」

 

「あぁ、フィーには言ってなかったが、まぁお参りみたいなもんさ。そのための花さ」

 

「ふーん。なるほど~」

 

 納得したようだ。

 

 

 馬上にて、

 

「そういえば、レイジ」

 

 唐突にフィルが質問をなげかけてくる。

 

「んぁ?」

 

「国内が、というよりお偉い方が反乱軍がどうだとか言っている時に、郊外に出て大丈夫なのかい?」

 

 至極もっともなことである。

 

「あー、そうだな。まぁいいんじゃないか」

 

 知らんが、そう最後に付け加える。

 我ながら無責任なやつである。

 まぁ何が来ようとも、守ることは決めているが。

 

「そうか、レイジがいいのならいいよ」

 

 なにやら、良いらしい。そこまでオレのことを信頼しているのか。

 

「何かあっても、レイちゃんが守ってくれるよね~」

 

 フィーはフィーでなかなかのんきである。

 

 

 グビーツ邸跡地。すでにここは国の管轄である。

 フィルの元住んでいた家だ。

 焼失してしまった邸宅の前に花束を置き黙祷を捧げる。

 オレが白毛精霊勲章を授与した日だったかに、その次の日だったかに焼失してしまった家である。

 聞くところによると侯爵の遺体は見つからなかったそうだ。

 火の勢いは強かったので全て燃えてしまったのだろうか。

 いや待て。

 骨まで燃え尽きるのか?

 答えは否だ。

 親戚の火葬の際に遺骨を見た覚えがある。不思議に思い調べてみたことがあった。骨は火災では燃えないとだけは覚えている。詳しいことは忘れてしまっている。結局軟骨は燃え尽きたとしても通常の骨は燃え尽きるはずがない。なのに、見つかっていないのだ。

遺骨が……。

 

「フィー、フィル戻るぞ」

 

 嫌な予感がひしひしとする。この悪寒はなんだ。

 

「どうしたのさ」

 

「レイちゃんどうしたの? 具合でも悪いの?」

 

 フィルは怪訝な表情を見せ、フィーは心配そうにオレを見る。

 

「いや、嫌な予感がする。そうだな具体的には――」

 

 特に具体例も考えていなかったが、何気なく焼失した邸宅跡を振り返る。

すると突如として邸宅跡よりも遠くの地平に何やら蠢く影がかなりの数目視できた。地平だけでなく空にも翼竜らしき影が確認できる。続けて風に乗り不快な魔物の奇声が聞こえてくる。

 

「あれは……」

 

「おい、ぼさっとするな。早く帝都に戻るぞ」

 

 これはやばい。ついに進撃を開始したというわけだ。

 リベリオンか、オレの魔法並みのネーミングセンスだ。

 

 その後は三人とも馬上の人となり一目散に帝都のお偉い方が集う場所へと駆けていく。その際フィルとフィーとは別れる。オレ単身の方が行動が早いので先行したのだ。

 

「父上!!」

 

 国の重鎮が卓を囲う中に一応皆が見知ったオレの乱入だ。

 

「レイジ! 今は会議中だ」

 

「会議なんてしている場合じゃありません。リベリオンが動き出しました!!」

 

 オレの言葉を聞き大人全員が驚きの表情を浮かべる。

 

「今頃は既にグビーツ領を抜けるかもしれない場所です。百は確実にいました。多分全部魔物です」

 

 グビーツ領はここから早がけで一時間もしない位置だ。

 

「なんだと!?」

 

 貴族たちはざわめき立つ。

 

「静かにせい!!」

 

 しかし、それも数秒ほど。閣下の一喝により場は静まり返る。

 

「われらが狼狽えてどうする。レイジ・フォン・ザクセス。そなたの言ったことは誠か?」

 

「誠にございます閣下。自分はフィルグルック嬢。元グビーツ家の長女とグビーツ邸宅跡に赴いたところ。地平より影が大量に見えたのでございます」

 

「魔物の群れといったがその理由はあるのか」

 

「はっ! 自分は風のトライアングルです。風に乗った声が全て魔物の声だったからであります」

 

 これで一応はすべての情報を提供したことになる。

 

「わかった。ならばこれより軍を編成。魔物の群れが帝都に入る前に全軍を持って殲滅する!!」

 

 聞くが早いか、閣下はすぐさま支持を飛ばす。

 

「ははっ!!」

 

 一同が一糸の乱れもなく返事をする。そしてすぐさまに各々の役割が決めてあったのか移動を開始する。

 

「レイジ・フォン・ザクセス。よく知らせてくれた」

 

「感謝痛み入ります」

 

 そういって閣下に対し一礼して父のもとへ向かう。

 

「父さん。これからどうするの?」

 

「そうだな。お前はティナたちを守ってあげなさい。といっても魔物は帝都には侵入できないだろうがな」

 

 父はオレの頭をぽんぽんと叩く。

 

「父さんは戦いへ?」

 

「ああ。私は仮にもトライアングルなんだからな。なあに心配することはない」

 

 父はふっと笑う。何やら旗が立ったみたいな気がしてならない。

 

「父さん、これを」

 

 オレは父にベルトに渡したものと同じ風石と使ったマジックアイテムを渡した。これは自分用だが、オレは別に今回戦場には駆り出されないので父に託す。

 

「ありがとう」

 

 父は礼とともに足早に、軍が編成されるだろう場所に向かっていった。

 その背を見送り、別邸へと向かおうかとした時フィーとフィルが現れた。

 

「どうなったんだい?」

 

「軍を編成して殲滅しに行くらしい。今回オレはお留守番だ」

 

「レイちゃんは戦いに行かないの?」

 

 少々心配そうにフィーがオレに聞いてくる。

 

「ああ今回はお休みさ」

 

 フィー頭を撫でつつ別邸へと向かうため歩き出す。

 

 

 場所は移りフォン・ザクセス別邸。

オレは先のグビーツ邸跡で気がかりになったことを考えていた。侯爵はまだ生きているという可能性が浮上した。だが、なぜ死んだことにしたんだ。何かが足りない。決定的な何かが……。

 このことは脇に置いておくにしても、本当に帝都には何も起こらないのだろうか。というよりもリベリオンの目的が曖昧なのだ。何がしたいのか全くわかっていない。まだ悪寒を感じる。グビーツ候の生死、リベリオンの目的、魔物の群れ、統率された魔物。

魔物が統率られることなどあるのか? 

いや、ドラゴンやワイバーン、グリフォン、マンティコアも魔物であり、統率が取れている。しかし、いずれも使い魔として契約されていることが大多数だ。そして人間が統率の指揮をとっている。

 魔物は誰かに操られているのか? 

そう考えるのが、妥当性が高いか。魔物の群れといえばアルデルの森で大規模の討伐が行われた。あれは関係あるのだろうか。関係あるのだとすれば今回も突然変異種というような強力な魔物ということになる。しかも反射を使ってくるものも出てくるかもしれない。

 幸いだがオレには反射を貫く術がある。

 そもそもなぜ突然変異種なんぞがいるかだ。しかし、いくら考えても謎だ。

人為的に生み出されたのかが問題だが。人為的なら確実に今回作った本人が絡んでくるだろう。宣戦布告するくらいだ。自信があるんだろう。あるいはオレたちに傲りを感じているか。その時は何が違ったかを教えてやる。

 リベリオンの目的はいたずらに帝国を混乱に陥れることなどではないだろう。それが目的なら別に宣戦布告する必要がない。各地で適当に魔物で襲撃でもさせればいいのだ。

ならば本当の目的は何か。帝都を攻めるんだ。帝都に目的はあるはずだ。一番思いつくのは閣下に恨みがあっての復讐ってとこか。閣下は大粛清をしているから、恨みはそこら中に転がっているだろうし。

 敵を作るのがお好きだな。

 ……本当に目的は閣下への復讐なのかもしれないな。

 粛清によって閣下の親族だけでなく巻き込まれた貴族もいるらしい。粛清の対象の線引きはイマイチなところは解せない。

 そりゃ、巻き込まれたら恨んだって仕方ない。

粛清の年はオレの生まれた時分だったはずだ。

 

「フィル聞きたいことがあるんだが……」

 

 思考を中断して顔を上げる。するとフィーはベッドで寝転んで本を読んでいるがフィルはいない。イリスは相も変わらず椅子で編み物をしている。

 部屋から出て、何度か別邸内で名を呼ぶが返事が返ってこない。

いない? もう戦闘が始まるんだぞ。いくら帝都内が安全だとしても……。

ここで自身の悪寒が回帰する。

 何か起こる。

 具体性の欠片もないただの感がオレ自身にそう言ってくる。もとの部屋の戸だけ開けて

 

「フィー部屋から出るなよ」

 

「どうしたの?」

 

「嫌な予感がする」

 

「……わかった」

 

「心配するな、絶対戻ってくるさ」

 

 フィーが不安そうな顔をするので、微笑みを返し安心させるように努める。

戸を閉めたあとに素早く『固定化』の魔法を全力で部屋にかける。その後オレは駆け出す。何かに急かされる。同時に装備の確認も怠らない。一対の短剣は常に腰にある。

 

 フィル、お前どこ行きやがった。




何と何ヶ月前かに、この話が書かれていたが途中で止まっていたようです。確実に某所の閉鎖で、モチベが下がったに違いないことは疑う余地がないですね。
そろそろ原作前での大きな山になるんでしょう。(傍観

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