ゼロの使い魔で転生記   作:鴉鷺

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第四話 誕生会と辺境伯

 魔法を習い始めて早一年がたとうかとするころ。当然と言えば当然なのだが、妾の子と言ってもオレは貴族であるからにして、一応ではあるが社交界の基本は習っているわけである。数えで6つの子供であるが。つまり何が言いたいかというと、一年たったのだから6歳の誕生日があるわけである。そこに今回は父の知り合い他の貴族を招待して、オレの誕生会兼お披露目会というパーティーを開くそうだ。そんなパーティー嬉しくない。まぁそんなオレの心境はいざ知らず、貴族に生まれてしまったものの一応の務めを果たさなければならないわけである。

 ノブレス・オブリージュだっけか。常に余裕を持って優雅たれ。

 なんか違うがまぁいい。

 そんな、あまり自分の糧にならなそうなガキの誕生会のことよりも今は魔法である。魔法を始め一年で驚異的な成長スピードを見せるオレである。なんでも魔法はイメージが大切なのだそうだ。

 イメージ―想像力―

 イメージしろ!!

 ならばこのもと20歳の今では、そろそろ26歳の脳みそ君をもってすれば容易にイメージできる。今は火以外がすべてラインクラスである。中でも風はオレのお気に入りなので毎日練習としている。一年前に決めたランニングも継続中であり、今ではこの年にしては、ありえないんではないかというくらいの足の速さと持久力を持っている。あとは父に書庫を貸してもらったりをしている。

 この誕生日が終わったら剣術やらの武術を教えてもらえるよう父に掛け合うつもりである。ま、オレのことはいい。

 ティナことフィーであるが、オレの5歳の誕生日2ヶ月後にはやっと杖と契約してオレと共に魔法の練習をしている。オレの魔法を見ていたせいか、なかなか素質があり想像力が培われたようだ。オレと同じで風が得意であるがまだラインには達しない。が、あと半年もあれば到達するのではないかとオレは思う。父も鼻が高いだろう。

 

◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 魔法の修業に明け暮れること一月ちょい。オレの誕生日の日、やってきました誕生会。来る人の名前とかは聞いていない。因みにフィーは来月に同じことが控えているので今日は自室で待機である。オレの家のダンスホールに既に皆が集まったようだ。父であるグスタフがオレの手を引く、自分で行けるのだが…。

 

「本日は息子の生誕記念日にお越しくださり誠にありがとうございます。ほら挨拶しなさいレイジ」

 

 大仰に挨拶をした後にオレにふる。

 

「この度は私の誕生会なるものにご参加くださいましてありがとうございます。レイジ・グスタフ・フォンザクセスと申します。六歳になります」

 

 ちょっと、ガキ臭くはないがまぁいいだろう。社交辞令の拍手が起こってるわけだし。

 

「では、この会をお楽しみください!!後ほど舞踏会ですのでそれまで後ゆるりと」

 

 そういい。オレの父は背を押す。先までの静さとは打って変わって、各々が貴族どうしでしゃべったりしている。その光景をご飯を食べつつ見ていると、そこへ30代くらいの赤毛のおっちゃんが、オレと同い年くらいの赤毛のお譲ちゃんの手を引いてきた。どことなく他の貴族も赤毛のおっちゃんのことを気にしているようだ。

 

「誕生日おめでとう。レイジ君」

 

「お初にお目にかかります。ツェルプストー辺境伯、それと…」

 

「キュルケ、挨拶しなさい」

 

「はい。おとうさま」

 

 ここはゲルマニアであるし、領地は隣とは聞いていたので来ることは予想できたが。

 

「わたしのなまえは、キュルケ・アウグスタ・フレデリカ・フォン・アンハルツ・ツェルプストーよ。七歳」

 

 七歳なのに若干高圧的である。これもこの子の性格のなせるものなのだろうか。

 

「はじめまして、自分の名前はレイジ・グスタフ・フォン・ザクセスです。六歳です。一応一つしたということになりますね」

 

 当たり障りなさそうだと思う対応をする。

 

「噂はかねがねグスタフから聞いてるよ」

 

「噂……ですか」

 

「そう、噂。なんでも全系統に適性があるんだとか」

 

「はい。確かに適性はありますが、適性があるものなら珍しくはないんではないでしょうか」

 

 そう別に適性ってだけなら結構いる。使えるかどうかはどうも違うが。

 

「そう、適性だけならば…だ。しかし、君は全系統が使えるそうじゃないか」

 

オレ達の会話を聞いていて、この情報を知らなかったろうおっさんたちはひそひそ話をしつつ耳をこちらに傾ける。

 堂々と聞けよ。

 

「確かに、一応ですが全系統を使えます。扱えるとなると疑問を挟む余地が残りますが」

 

「そうかそうか」

 

 はっはっは、と笑うツェルプストー辺境伯。なんだ?

 

「私は六歳で、そんなことばの言い回しをする子をはじめてみたよ。なるほど使えるが扱えないね。面白い」

 

 確かに、六歳児が言うことじゃないな。ボキャブラリーも多いし。どう返すか。

 

「すいません。社交の場は初めてなもので」

 

 苦笑いで流すことにする。

 

「ふむ。まぁそうか」

 

 納得を口にするが顔は納得したようには見えない。

 

「わたしの用は終わった。レイジ君。キュルケの話し相手をしてやってほしい。同い年の子があまりいないのでね。しかも異性となると…。では、私は他の者と話しておく」

 

 そう言い残し、キュルケを置いて行った。おい、どう会話すりゃいいんだ。自慢じゃねーがオレも同年代だとフィーくらいしか喋ったことないって。

 まぁいい。ここは無難な話題を……。

 

「レイジって呼んでいい?」

 

 と当たり障りのないだろう話題を模索しているところに声をかけてきた。

 

「ええ、別にかまいません。こちらはどうお呼びすれば?」

 

 一応年上なので敬語で聞く。

 

「わたしもキュルケでいいわよ。あと敬語が似合ってないわ。普通に話していいわよ」

 

「そうか? なら、そうさせてもらおうかな。オレも敬語はそこまで好きじゃない。公私混同する気はないがな」

 

 堅苦しい敬語からの解放を許可された。

 

「それで、さっきおお父様が言っていた、全系統に適性があるっていうのはほんとなの?」

 

「ああ、本当だ。というか、なんで辺境伯に嘘教えなきゃならんのだ。オレの父も懇意にしてもらってるんだ」

 

 領地がとなりということもあり結構父は辺境伯と仲がいい。時たま、ヴァリエールという単語を耳にする。洗剤ならば気が楽だったろう。

 

「まぁ、そうね。それでどの系統が得意なの?」

 

「風が一番得意だね。次点で水と土。一番苦手なのが火だね」

 

「へぇー、私は火が得意なの。もうラインなのよ? すごいでしょ」

 

 オレも火以外ラインだが……。という言葉は飲み込んでおく。

 

「へぇ、そりゃすごいな。火がラインなんて、オレは火はまだドットだよ」

 

 事実なのでそう返す。

 

「すごいでしょ?教えてあげてもいいのよ?情熱の火の魔法」

 

 火が情熱かどうかは置いておいて、そこまでオレ的には火はそこまで魅力的とは思わない。やっぱ風の偏在ができるようになりたい。何年かかるか分かったもんじゃないが。

 

「ぜひっと、言いたいところだが遠慮しとくよ。オレは自由な風が好きなんでね」

 

「あらそう?残念ね」

 

 全然残念そうじゃない。

 そんなこんなでこの後にはちょこっと貴族のおっさんたちがオレに話しかけてきたが、当たり障りなく返して舞踏会になる。舞踏、一応貴族の基本事項として練習はしていたが、初めて対外的に踊る。舞踏は嫌いなんだよ。しかし、一回は踊らなきゃいけない。いちおうはメインなのだから。

 まぁどうせ相手は唯一の異性の子供であろうキュルケになるだろうことは確定事項だろう。

 

「レディ、私と踊っていただけますか?」

 

「ええ。」

 

 レディには全然歳が足りないが一応言う。キュルケも踊ってくれるらしい。ここで嫌だと言われたらどんだけ恥をかいたか。音楽が演奏される。

 

「あら、お上手ね」

 

「そりゃどうも」

 

 軽口をたたきつつ一曲踊り終わり。父の所に行き、

 

「父さんぼくもう眠たい」

 

 といいつつ目をこする。自分の行動をはたから見たらさぞ鳥肌もんだろう。

 

「おお。もうこんな時刻か。わかった。下がっていいぞ。後は私がやっておく」

 

 おやすみなさい。そう返しダンスホールを後にする。全く貴族相手は疲れることこの上ない。まだゲルマニアだからましなんだろう。トリステインとかだったら、どうなっていたことやら。今日は疲れた。フィーももう寝ているだろう。明日にでも父さんに武術について言おうかな。自室のドアを開け、魔法で明かりをつけ、寝巻に着替えあかりを消して、いざ夢の世界へと思い布団に入ろうとしたら。フィーが寝ていた。

 ときどきフィーはオレと一緒に寝たがる。昨日も一緒に寝たんだがな。そう思い苦笑いしつつも、寝ているフィーの頭を撫でオレもその横に寝る。寝るまではそう時間はかからなかった。


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