ゼロの使い魔で転生記   作:鴉鷺

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第七話 青天の霹靂

意識が覚醒する。

 

「ここ…は?」

 

上体を起こしながら辺りを見渡す、見えるのは見慣れた家具たち。

 

オレの部屋である。どうやら気を失ったようだ。

 

そこでフィーが一緒に寝ていることに気づく。フィーには無理させたか…。

 

まぁ生き残れたので良しだ。こういうときは楽観的になろう。

 

なんたってオー クを倒したんだから。そこで部屋の扉が開く。

 

「おお、目が覚めたか」

 

「はい、ありがとうございます。父さん」

 

「何、礼には及ばん。子を助けるのは親の役目だ。それに」

 

「そうよ。レイジ、心配したんだから」

 

そう言い、帝都で平民部隊の隊長をやっていた、

 

母―サラ―が父の後ろから来てオレを抱き締める。

 

「母さん…」

 

「しかし、六歳の身で単身オークを討伐するとは、

 規格外だと思ってはいましたが、これほどとは…」

 

さらに続いてユリアさんが現れ。

 

「レイジ君。私は素晴らしい生徒を持ったよ。今回のオークはなかなか強敵だったろう」

 

ミスタ・シードが部屋に入ってくる。まるでオークを知っているように言う。

 

「ミスタは…知っていたんですか?…オークのことを」

 

「ええ、今日伯爵に会いに来た理由です」

 

「成る程、だから…。ん?しかし、今回のオークってどういうことですか?」

 

「ああ、今回のオークは特別だったのさ。ラインのメイジが討伐依頼を受けたが…」

 

ミスタ・シードでなく父が答え、

 

「普通のオークはラインなら結構簡単な相手なんです。そうですね…。

 ライン…レイジ君の『エアカッター』であればかなり効果があるでしょう」

 

ミスタ・シードが補足する。

 

「けど、かすり傷しかつけれなかった」

 

「ええ、先に言った依頼を受けたラインの方もそうおっしゃていました。なので…」

 

「ラインであるお前には討伐不可能だと思っていたんだが…」

 

オレは討伐してしまったわけだ。

 

「それで、トライアングルである父さんにお鉢が回って来たわけですね?

 しかも、自身の領地ですからなおさら」

 

「そうだ。まぁその依頼ももうないがな。」

 

一体だけだったのだろう。確かにあんなカッチカチのやつが複数体いるのは勘弁したい。

 

「なにはともわれ、無事で何よりです」

 

ユリアさんの言う通り無事で何よりである。

 

「そうだな。そういえばレイジ、あのお前が持っていた二本の短剣はなんだ?

 強力な『固定化』と『硬化』魔法がかかっているが」

 

「今日森で土に埋まっていたのを掘り出したものです。

 その短剣でオークの首をはねました」

 

しかし、凄まじい切れ味だった。

 

「成る程、何を思って埋められたものか、あるいは場違いな工芸品か」

 

思案顔になる父。

 

「そういえば、レイジ君。杖はどこへ?」

 

杖…そういえば折られたな。かすっただけなのに。今思えば凄まじい力である。

 

「それなら、オークに折られました」

 

「なに?折られたならば新調しなくてはな」

 

杖ってのは木杖じゃなくてもいいんだろう。

 

「父さん。ぼくはあの短剣を杖にしたいです」

 

軍杖も剣みたいなもんだ。

 

「む、そうか?まぁレイジがいいならばいいが…」

 

「あの短剣は妙に手に馴染むんです。だから」

 

「わかった。珍しくお前からの頼みだ。いいだろう」

 

「あ、フェイクとして適当な木杖も欲しいです」

 

「…お前は何かと戦うのか?まぁいいが」

 

若干呆れ声で言う父。が、子供に甘いな。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

開けて翌日、日課としている朝のランニングを終えると、母が玄関口にいた。

 

何事かと思い、

 

「母さん、どうしました?」

 

「あなたが剣を習い出したと聞いてね」

 

成る程、稽古でもつけてくれるのだろうか。

 

帝都で平民部隊である抜剣隊なるものを率いていたものとして。

 

「稽古ですか?」

 

「まぁそうよ」

 

「けど、自分はまだ剣の稽古、といっても素振りを一週間もしてませんよ?」

 

「構わないわ」

 

そう言い刃の潰れた二本の短剣をオレに渡す。長さがあれらとほぼ同じくらいである。

 

「どこからでもいいわ。かかってらっしゃい。

 実践稽古でしか得られないものもあるわ。基礎も大事だけれど」

 

その事を聞きオレは素直に構える。

 

構えは、オークにしたのと同じ右手に順手左手に逆手、左半身を前に半身で構える。

 

左手で受け流すなり防いで右のカウンターか、

 

対オーク戦でやった右で受け流し左できめるか…これもカウンターだが。

 

「きなさい」

 

さてどう攻めるんだ?対人戦は基本読みの勝負である。

 

相手の得物はロングソード両手持ち。正眼のかまえ。

 

「行きます」

 

まず、一合目!!

 

右の袈裟斬り、はじかれる。

 

続けて左のから右へ一文字。

 

これは受けられる。つばぜり合いになる。右手を引き絞り突く。

 

左足を引き半身になり避けられると同時に力もそらされ、前のめりになる。

 

首に剣をそえられる。

 

「まだまだね」

 

「そりゃそうですよ。年期が違う」

 

 

「何言っているのよ。私はまだ30にもなってまいせん」

 

「それは…そうですけど」

 

なんかその指摘は違う気が

 

「まぁいいわ。構えがカウンターします。って言ってたけど」

 

うげ、そんなこともわかるのか。

 

「な、なるほど。助言などありませんか?」

 

「そうね。まだまだ荒削りであるし剣筋が素直ね。

 虚実を織り混ぜなきゃ。あとは構えを自然にしないとね」

 

成る程成る程。荒削りはしゃーないだろう。これからよくなっていくだろう。

 

虚実ってのは対人戦を多くやれば付くんじゃなかろうか。構えは…要検討。

 

「成る程、参考になりました。ありがとうございます」

 

「どういたしまして、私はまた帝都にグスタフ様と行かないとならないから。

 よろしくね」

 

なにがよろしくなのかは、いまいちわからんが。父さんも帝都に行くのか。

 

ミスタ・シードに連れられてだろう。

 

新種かなんか知らんがオークの報告があるんだろう。

 

「わかりました。いってらっしゃい」

 

そう言い部屋に行き件の短剣二本を持ち部屋をでる。

 

杖契約が完了するまで魔法が使えないのが痛いな。

 

ま、そのかわりに体操とかして体の調整をしよう。あと素振り。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

母と父が帝都に出立して小一時間ほどたったろうか。オレが剣の素振りをしていた。

 

フィーは部屋でお勉強だそうだ。

 

そんな折りに三人のマントをまとった人が訪ねて来た。

 

近づくにつれ三人の輪郭がはっきりする。

 

なかなか独創的な思考の持ち主のようである。

 

ゴツいマッチョ三人組である。顔もゴツい。年の頃は25過ぎ30弱位か。

 

「どうしました? この屋敷に用がお有りで?」

 

「フム。」

 

そういい、いきなり杖を取り出す。オレの警戒レベルが跳ね上がる。剣を構える。

 

「おい、詠唱をやめろ!」

 

殺すぞと言わんばかりに睨みつけ言う。

 

「待ちたまえ、危害はない」

 

杖を取り出した隣のやつが言う。

 

「なにを……」

 

はたして放たれたのは『フレイムボール』。上空に…。

 

 

そこで唐突に魔法を放ったやつが吠える様に声を出す。

 

「小生の名前はダイヤ!!」

 

「俺の名前はルビー!!」

 

「僕の名前はサファイア!!」

 

続けざまに名乗りを上げる三人。

 

「人呼んで、宝石兄弟!!!!」

 

三人声を合わせそう言うなりポーズをとると、

 

丁度三人後ろに『フレイムボール』が着弾爆破の演出。

 

「……そ、それで、どんな用だ?」

 

気を取り直し聞き直す。すると、

 

 

「兄者、反応が薄いようでござるが?」

 

ルビーと名乗りをしたやつがダイヤとやらにヒソヒソ大声で話す。

 

「む、なぜだ?子供には受けが良いはず……」

 

聞かれた方もさも不思議だと聞き返す。そこへ最後のサファイアだったか、が

 

「兄者たち。だから、言ったではないか。やはり、演出は竜巻がいいと!」

 

そういう問題ではない。

 

いかん、話が平行線をたどる。

 

「おい、あんたたち結局何しに来た」

 

そこでようやく、口論をやめ。

 

「失敬、失敬。小生たちは宝石兄弟。人呼んでジュエルブラザーズだ」

 

英語にしただけだろ。という言葉は飲み込みつつ、

 

「さっき聞いたし、それどうせ自称だろ」

 

驚愕に見開く6つの目。

 

「なぜそれを!?」

 

「うるさい。勘だ勘。それでここになんのようだ?」

 

「用とは…」

 

言葉を区切り、間をあける。なんだ?

 

「兄者」

 

そこで耳打ちするルビー。

 

「そうだった! この近辺に出現したオークを討伐しに来たのだ!!」

 

どうやら思い出したらしい。いちいち叫ばんでほしい。

 

「成る程、あんたら察するに傭兵メイジかなんかだな?

 ご足労ありがとう、と言いたいが、

 昨日討伐されました。お疲れさまでした。目的は達成されました。

 直ちに帰還してください、このやろー」

 

早く家に帰れ。情操教育に不適当だ、お前らの格好は、上半身半裸野郎共。

 

「な、なん…だと!? 噂にはラインでは敵わん敵と聞いて、楽しみにしていたんだが」

 

「あんたら、トライアングルなのか?」

 

「そうとも、俺たちはトライアングルなんだぞ?すごいだろボウズ」

 

そんな言葉遣いで良いのか?

 

「へースゴイスゴイ。じゃ、目的ないなら帰ってください。お願いします。いやマジで」

 

「仕方ない。目的がないとなるとどうしようもない。今回は骨折り損だったな。

 金にならんと意味がないしな」

 

「じゃあなボウズ」

 

そう言い、来た道を引き返す。

 

なんなんだあいつら?疑問が尽きないが、それを押し退け素振りを再開する。

 

終わったのは辺りが暗くなり、侍女が声をかけてからだった。あ、昼飯食ってない。


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