ゼロの使い魔で転生記   作:鴉鷺

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第八話 サンドバッグ

変態兄弟来襲から二週ほど過ぎた昼下がり。

 

杖として短剣が契約されたことがわかった。理屈でなく感覚で。

 

「杖の契約がやっとできたか……」

 

魔法のある生活に慣れると不便で仕方がない。

 

なんとまぁ人間は楽をしたがるものなんだか。

 

短剣両方が杖なのだろうか。試しに呪文を唱え、魔法をだす。

 

結果としてはどちらも杖として機能するようだ。

 

二本一対なのだろうか?

 

この短剣にはまだ謎がありそうである。

 

異常な強度の『固定化』と『硬化』魔法がかかってある。

 

この二週ほどでわかったことはオレ以外は鞘から抜剣できないことぐらいであり、

 

その理由も未知のまま。

 

まぁ単純に使用者だから、という理由だろうか…。

 

ま、今考えても栓なきことと割りきり、

 

武術の師であるベルトを契約したばかりの杖で、アクセサリーをいじりつつ待つことにする。

 

「素振りの方は続けていますかな、レイジ君」

 

二週前とは違い僅かながらも砕けた呼び方になっているのは、

 

オレがそう呼んでくれと頼んだから。

 

正確には、「様なんて敬称要らないよ。互いに貴族なんだ」と言ったからである。

 

最初は渋っていたが、押しきった。

 

「ああ、勿論だとも他にやることもなかったしね」

 

杖の契約は短剣を腰の後ろで特殊なベルト(作ってもらった。)に

 

交差させる様にさしており、その状態で刃の潰れた直剣の素振りを行っていた。

 

「成る程、いかほど振れるようになりましたか?」

 

一つ頷き質問をさらに継ぐ、

 

「千はいけるようになりましたよ。まぁ昨日のことですが…」

 

初日の百の十倍である。

 

「やはりレイジ君、あなたは規格外だ。その成長速度は目を見張るものがある」

 

「けど、所詮素振りの回数だ」

 

「いえ、基礎があればこその技です」

 

「まぁ、そうか。それで今日は何をやるんだい?」

 

この自嘲話はおしまい。と、区切り今日やることへ

 

「そうですね。剣を振る、というだけの基礎はできました。

 剣術だけならこれから簡単な打ち込みなどですが、レイジ君は武術、

 とりわけ徒手空拳においても学びたいと言っていましたので、

 今回は脚や拳を鍛えるメニューをしましょう。なに簡単なことです」

 

朗々と長ったらしく説明をし、結果。徒手空拳用の修行らしい。何をするんだろうか。

 

「今言うものを用意してください」

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

用意したのは縄、牛革をなめしたもの。本当何をやるんだ?

 

「これは私がやっていたことなのですが、

 サンドバッグなるものを作っていただこうかと」

 

成る程サンドバッグね。ここにもそんなものがあるのか。

 

「理由は相手を殴るなり蹴るなりしたらならば、こちらにもダメージ、反動がきます。

 わかりますか?」

 

作用反作用のことだろう。

 

「ああ、確かに反動がくるな」

 

「そう、ですのでせっかく攻撃したのは良いが、

 こちらの手や脚が壊れてしまわないように鍛えるのです」

 

「つまり、自身の耐久度が攻撃力に繋がるわけだ」

 

「はい。ではサンドバッグを作りましょう」

 

そう言われ納得し、サンドバッグを作る。

 

てか、牛革袋状にしなきゃならんじゃないか。誰かに頼むか…。

 

「おーい、イリス」

 

「はい。なんでございましょう」

 

イリス―オーク遭遇事件から側に仕え始めた侍女である―に縫えるか聞く。

 十代中盤の子である。愛想はそんな良くはない。

 

「この牛革を長方形の袋になるように縫ってくれない?」

 

「わかりました。道具を取りに行って参りますので少々お待ちを」

 

そう言い残し屋敷に姿を消した。縫いあがるまでどうすんだ?

 

「レイジ君。縫い上がるまで、素振りをしましょう。これからは横薙ぎも追加で」

 

「わかりました」

 

そこに勉強が終わったのかフィーがイリスと現れた。

 

「レイちゃん何してるの?」

 

「サンドバッグってやつを作ってるのさ。まだ原型すらできてないが」

 

「ふーん。あ、杖は契約できた?」

 

「ああ、ついさっきできた」

 

「明日からは魔法の練習出来るね!!」

 

にこにこ笑いながらそう言う、

 

「そうだな。一緒にやろうか」

 

「うん」

 

「あ、そうだこれ」

 

そう言い、フィーにペンダントを渡す。

 

マジックアイテムであるペンダントであり、

 

原動力は以前ディレクトマジックで見つけた風石をオレが加工したものである。

 

「よし。オレは今から素振りをする!危ないから離れててな」

 

オレの言葉に頷き離れる。

 

オレの素振りをみるときの定位置。木陰に木に背を預けながら座り込む。

 

それをみて、剣を振るう。イメージはオークを真一文字にぶった切るイメージ。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

振り続けること一刻(二時間)ほど、そこでイリスは牛革がしっかり縫えたことを知らせ

る。

 

それに『固定化』をかける。

 

「よし、中には砂を入れるんだ」

 

ベルトの指示で砂を『錬金』し、牛革にぶちこむ。

 

縄で口を固定その接合部の口を『錬金』で鉄に変え『固定化』をかける。

 

あとはどこに吊るすかであるが…。めんどくさいのでつくることにした。

 

魔法で鉄の柱を『錬金』柱から腕を一本だし、

 

そこにレビテーションで縄を引っ掻け、

 

返しをつくりサンドバッグ他に『固定化』をかける。これで完成。

 

「こんなもんかな?」

 

「よろしいのではないでしょうか」

 

「これがサンドバッグ?」

 

納得いくようにできた。

 

よし、鍛えるぞ!!っと意気込んでいたのは、つかの間。ユリアさんが出てきて、

 

「玄関先には不適当なので裏側につくりなさい」

 

その言葉で、もう一度裏で同じものをつくるはめになったのである。


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