ISVD〜Infinite Stratos Verdict Day〜 作:高二病真っ盛り
臨海学校二日目夜 海岸
SIDE:箒
「……」
夜の海。月明かりだけが雲の間から差し込む砂浜で私は一人佇んでいた。
『好きと言わずに他の女と一緒にいるのが許せないだなんて身勝手にも程がありますわ!』
『貴女は、”一夏さんとの楽しい思い出に固執して、依存しているだけです”って!』
『貴女の
頭の中で響き続けるのはオルコットの説教。そして––––
『あっちの世界に行くよ。仕事の報酬だからね』
一夏の言葉だった。
「依存…か……」
結局自分は、何のために専用機を欲したのだろう。
今思えば、やはり一夏への依存だったのだろう。
『こんな別嬪さんになってるなんてすごく驚いたさ』
入学式の日。一夏は私のことを忘れずにいてくれた。
それも、あんな世界を体験した後にだ。
姉さんがISを発表して、白騎士事件が起こり、私は一夏と離れ離れになった。
そして私は、一夏との思い出に執着して剣道にこだわり続けた。
『勝者、篠ノ之箒!』
いや違う。アレを剣道と呼べるものか。
アレは一夏と離れ離れになった事に対するただの八つ当たりだ。
「私も…進まなければ……」
シュル
リボンを解き、海に投げる。
しばらくは海風に吹かれて飛んでいたが、やがて海に落ちた。
「さようなら、『私』…」
この髪型は一夏との思い出で、依存の形の一つだ。
もう私には必要ない。
未来を、明日を『私』が決めるんだ。
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臨海学校二日目 束ラボ
SIDE:束
「……」
クーちゃんが、死んだ。
原因はいっくんのあの”武器”だ。
念には念をと司令船に搭載しておいた絶対防御を容易く貫いた。
「……」
わからない。どうしてあの武器が絶対防御を貫けたのか。
わからない。どうしていっくんが人が乗ってる船を戸惑わずに壊せたのか。
わからない。どうしてクーちゃんが死ななきゃいけなかったのか。
ぱらりろぱらりらぺろ〜♪
ゴッドファーザーのメロディーが鳴る。
この着メロはちーちゃんに設定しておいたはずだ。
「…もしもし」
『束か?』
「うん、私だよ。ちーちゃん」
『『白式』を倉敷技研に返却しようと思う。構わないな?』
「あー……いいんじゃない?」
『…?そうか』
電話を切り、ぼうっと天井を見上げる。
……ああ。『白式』の事でちーちゃんに言い忘れた事があったな。
ガチャ
その時、研究室のドアが開いた。
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振り替え休日 生徒会室前
SIDE:一夏
「それでは会長、また明日」
「ええ、また明日」
生徒会室の前で会長に挨拶を告げる。
何故わざわざ休日に生徒会室を訪れているのかと言うと、会長にも俺の過去を話すためだ。
一通りの説明を終えると会長は、
『逆に納得した』
と言った。
曰く、『あの経歴であんな事を平気でするのだから、それぐらいの過去はあるだろうと思ってた』そうな。
……俺、そんなに変な事したかなぁ?
「一夏…」
「…ん?」
そんな事をふと考えていると後ろから箒の声がかかる。
「どしたのほう…き……?」
「……」
なんということでしょう(ビフォーアフター風)
振り向くとそこには、短髪の箒がいるじゃあありませんか。
「えっと…箒……さん?」
「さんを付けるな」
「アッハイ」
えーと、これはどういうことだ?
何故かはわからないが、箒があの髪をバッサリ切ってるのだ。
「その…似合うか?」
「…ああ。似合うよ」
「そうか…」
俺の言葉に箒は満足そうに微笑む。
その顔は、何かが吹っ切れたようで。
「どうしたのいきなり」
「……イメチェンと言う奴だ。昔の自分に、別れを告げようと思ってな」
イメチェン、ねぇ…。
しかし、あれだけの長髪を切ると凄く印象が変わるな。
「一夏、私はお前の事が好き
「今は違うと?」
「ああ。気付いたんだ。結局私は、過去にしがみついてただけだとな」
「そうかい」
印象が変わった原因は精神的なものもあるようだ。
笑顔にも明るさがある。
「今度の休み、神社に戻ろうと思うのだが、オルコット達も誘いたいんだ」
「んで?」ニヤニヤ
「お前も来てくれないか?一人では心細いんだ」
「いいぜ」
箒と雑談しながら皆の元へ向かう。
久しぶりの箒との会話は、スーパーボールのようによく弾んだ。
〜〜♪
「ん?メールだ」
スマホを開き文面を読む。
『消えろよ偽物』
「……は?」
そこには、発信者不明の謎のメッセージがあった。
[MISSON05 COMPLETE]
過去を求める者に未来は無く。
虚飾の霧を払えぬ者に真実は無く。
幻想に溺れる者に現実は手を差し伸べず。
ただ自分の都合のいいものを信じるだけでは、決して幸福は訪れない。
甘い過去を捨て、虚飾の霧を払い、幻想の海を越える者だけに魂の幸福が訪れるだろう。
そして『彼』は、その黒い翼で全てを焼き尽くし魂の場所を求める。
彼の旅路は、まだ長い。