私のココロの伝え方   作:真冬の三月ウサギ

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春 永久不滅の憧れ
第二回オカ研極秘会議


 部員もどうにか集まり、廃部の危機もひとまず去った次の日の放課後、いきなり部員が招集された。

 

「よし、雲雀君以外は全員揃ってるわね」

 

 集まった面々を確認して先輩が頷く。雲雀は今日はバイトで来れないらしい。

 

「それではこれから第二回オカ研極秘会議を始めたいと思います!」

 

 黒板を背にした先輩の宣言に他の部員が拍手で答える。

 

「今日の議題はー……じゃん!これです!」

 

 後ろの黒板に書かれた文字を指さす。黒板には大きく『体育祭』の三文字があった。

 

「体育祭?運営でもするんですか?」

 

 こころが疑問を口にする。先輩はそうじゃないと首を横に振った。

 

「まさか、違うわ。これから話すのは二人三脚のことよ」

 

「二人三脚?」

 

「毎年部活対抗で二人三脚をやってるんだ」

 

 この学校の体育祭の種目の一つだ。各部活から三組が参加し、全員がグラウンドを半周ずつ走るというものだ。三組というと少ないように感じられるが、この学園には数多くの部活があるので、多すぎると時間が足りなくなってしまうのだ。だからこれくらいの数がちょうどいいらしい。もっと早く済むリレーにしないのは、普段から走っている運動部に文化部が勝てるように、ということらしい。だが、二人三脚だろうと普段から運動している方が有利なのは変わらないだろうし、そんな事を気にするなら完全に分けてしまえばいいとも思う。

 

「前回は人数不足で出れなかったしね、今回は優勝を狙うわよ!」

 

「いや、それはさすがに無理じゃないですかね?」

 

いくらかのグループに分かれて走り、タイムが最も短かった部が優勝だ。つまり、たとえどんな組み合わせになろうとも、必ず陸上部をはじめとした運動部と争うことになる。優勝は不可能と言っても過言ではない。

 

「何言ってるの、そんなのやってみなきゃわからないじゃない!」

 

「そうだぞ真人、何事もまずはチャレンジだチャレンジ!」

 

先輩と日向が二人で盛り上がる。楽しそうで何よりである。

 

「さて、まずは組を決めないとね。これを一本ずつ引いて」

 

言いながら机の下から人数分の棒が入った箱を取り出した。

 

「先に色が塗ってあるから、同じ色になった人がペアよ。それじゃあ、準備はいい?せーの……」

 

  全員が棒を選び、先輩の合図と同時に一斉に引き抜く。俺が選んだ棒は赤だった。

 

「俺は赤だった。みんなは?」

 

「俺は……おっ、青だな」

 

「わ、私も、青、でした……」

 

「私は白ね」

 

「私も白です」

 

赤は誰もいなかった。俺は雲雀と組むことになったようだ。これでよかったと思う。下手に先輩などと組んでしまったら競技に集中できなくなっていただろう。それはそれで嬉しいけれども。

 

「なるほど。私とこころちゃん、日向君と幽香ちゃん、真人君と雲雀君のペアね。問題ない?」

 

全員が頷く。とりあえず雲雀には後で伝えておこう。

 

「じゃあこれで決まりね。それで次は練習場所についてなんだけど……」

 

「学校のどこかでやるのは?」

 

「無理だな。今はまだ部活の勧誘もやってるし、それが終わったら運動部が使う。場所なんてちっとも余ってない」

 

「というか、仮にもオカ研が運動ばかりしていてもいいんですか?」

 

「確かにそうね。ちゃんといつもの活動もしないといけないと」

 

 活動する場所も時間も限られるとなると、優勝できる可能性はさらに低くなる。

 

「他に運動できる場所と言ったら……公園とか?」

 

 この近くには結構大きな公園がある。こころと初めて出会った場所だ。そこならば十分な広さもあるし、学園からもそう遠くない位置にある。学校が終わってから行っても練習する時間はそれなりにとれる。

 

「それいいわね!じゃあ、練習場所はそこにしましょう。他に意見は?」

 

 全員がその意見に賛成し、先輩が黒板に『練習場所は公園』と書き込んだ。後は時間をどうするかだ。

 

「どのくらい部活動してればいいのかしら。日向君、前の部活ではどうだった?」

 

「練習なんてほとんどしてないですよ、そうでなくてもうちは大体走ってましたし。せいぜい少し前にペアの人と合わせるくらいしか」

 

「そう……真人君はどう思う?」

 

「週の半分くらいでいいんじゃないですか?」

 

「まあ、そのくらいが妥当かしらね」

 

 先輩が黒板に『週の半分くらい 状況により変更あり』と書いた。後半が気になるが、今は気にしないでおこう。

 

「前の部活じゃ、朝練とかやってたんですけどねー」

 

「朝練……それだわ!」

 

 日向の言葉を聞いた先輩が手を叩く。また面倒な事を思いついてしまったようだ。

 

「私たちもこれから朝練をすればいいのよ!」

 

「えー……」

 

 いきなりの状況による変更に、ほぼ全員が嫌そうな顔をした。確かに、せっかくやるなら勝ちたいという気持ちはわからなくもないが、かと言ってわざわざ朝早く起きて練習してまで勝ちたいかと言われるとそうでもない。

 

「朝練は面倒なので嫌です」

 

「俺も、自分で言っておいて何だけどちょっと……」

 

「わ、私もできれば……」

 

「えー、何でよー?」

 

 先輩が不服そうに頬を膨らませる。

 

「そりゃあ、いきなり言われたらそうなりますって。体育祭までどれだけあると思ってるんですか」

 

「むー……じゃあ一週間!最後の一週間だけでいいから!」

 

 先輩はなお諦めずに両手を合わせて迫ってくる。一体何がそこまで先輩をやる気にさせるのだろうか。

 

「うーん、そこまで言うなら……」

 

見たところそれなりに本気のように見えるし、ここまで頼まれて断るのも気がひける。たったの一週間だ、そこまで苦労はしないだろう。

 

「やった!他の人もそれでいい?」

他の人も渋々ではあるが賛成してくれた。先輩が黒板に『一週間は朝練!』と書き込む。雲雀には事後報告となってしまうが、大丈夫だろうか。

 

「さて、これで決める事は全部ね。これからどうする?」

 

「あ、じゃあ俺少し用事があるんで、もう帰ります」

 

日向が鞄を持って立ち上がった。

 

「そうなの?……ま、特にすることもないし、今日は解散でいいかしら」

 

「そうですね」

 

特に話すこともなかったのでそのまま解散となった。時間的にはまだ早いが、残っていてもどうせ暇だろう。

 

「あ、そうそう。週末って空いてる?」

 

部屋を出る寸前、先輩がそんなことを聞いた。週末、土日は特に予定は無かったと思う。

 

「まあ、暇ですけど」

 

「俺も用事はないです」

 

「私も暇ですよ」

 

「私も、一応……」

 

「そう、よかったわ。だったらみんなで遊びに行かない?新入部員の歓迎会も兼ねて」

 

「おっ、いいですねそれ!」

 

それは楽しそうだ。春休み前からずっとみんなで遊びに行く機会はなかったし、久しぶりに遊ぶのも楽しそうだ。

 

「でしょ⁉︎じゃあ、土曜日の朝十時にショッピングモール集合でいいかしら?」

 

ショッピングモールとは、こころと出会った日に出掛けていたところだ。店も多いし、遊ぶには最適の場所だ。全員が先輩の提案に賛同した。

 

「じゃあ決まりね!くれぐれも遅れないようにね?」

 

「はーい」

 

 十時なら、よほどゆっくりしない限りは間に合うだろう。

 

「それじゃあみんな、また明日ね?」

 

 全員が部室を出てそれぞれ散らばっていく。これ以上学校ですることもないので、さっさと帰ることにしよう。

 帰ったら、雲雀に今日のことを伝えておかないとな。

 

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