私のココロの伝え方   作:真冬の三月ウサギ

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はじめての花選び

こころの洋服を選んで昼食を適当に食べた後、再度どうするかの話し合いを行った。その結果、特にやることも思いつかず時間もまだまだあったので各自自由行動、時間になったらまた再集合という決定の元部員は全員思い思いの場所へと行ってしまった。我ながら計画性の欠片もない部活だと思う。そして最近来たばっかりで見たいものもなかったため、『部室に飾る花が見たい』というこころの希望によりモール内の適当な花屋に足を運んでいた。

 興味津々といった様子で花を見て回るこころをよそに店内を眺めてみる。花屋には色とりどりの花が飾られており、それぞれがとてもよい香りを放っていた。種類も豊富で、一般的な花からあまり見かけないような花まで数多く揃っている。その名に恥じないくらいに数え切れないほどの花が育てられている花之宮の中でさえ見たことがない花が存在しているのだ、その品ぞろえは並みのものではない。

 

「真人、種類が多すぎて決まりません」

 

 食虫植物が飛んでいた蝿を捕まえる様子を眺めているとこころが戻ってきた。どの花にするか決めかねているらしく、目の前の食虫植物に目をつけた。

 

「いっそこれを飾ってみるのもいいかもしれませんね」

 

「よくないよ、もうちょっと考えようよ」

 

 もう少しまともな選択があるだろう。

 

「その頭にくっつけてるやつとかどうだ?」

 

 こころの頭の髪飾りを指す。桜の花と紫のような色の花だ。紫の方は見たことがあったはずなのだがどうしても名前が出てこなかった。

 

「これですか?」

 

「そう、それ。桜は枝だけなら部室に飾れるし、そっちの紫のもきれいだし、ちょうどいいんじゃないか?」

 

「……これはやめておきます」

 

 いい案だと思ったのだが、どうしたのかこころはそれを拒んだ。

 

「桜はともかく、こっちの花はあまり好きではないんです」

 

「どうして?」

 

「なんとなく、好きになれないんです」

 

「嫌いなのか? だったら外せばいいのに」

 

 こころはまたしばらく考え込むような間を置き口を開いた。

 

「外すのもなんとなく嫌なんです。それに嫌いではないんですよ。ただ、これを見ていると変な気分になるんです」

 

「変な気分ねえ……」

 

 アンドロイドでもそういう複雑な気分になるらしい。

 

「ま、考えても仕方ないか」

 

その感情の原因について気にはなったが、今はあまりにも情報が少ない。この件については後で気が向いたら父さんに聞いてみるとして、今は部室に飾る花を選ぶのが先決だ。

 

「そうですね、分からないことについていつまでも考えるのは無駄ですから」

 

「そうそう、とりあえず今は花について考えよう」

 

 今度は二人で店内を巡る。赤い花やら青い花やら数々あって、ただ見て回るだけでも時間がかかったが、気になった花の花言葉をいろいろとこころが教えてくれたので退屈はしなかった。指さした花の花言葉のほとんどをすぐに言ってみせるこころには感心した。普通の人間並の頭脳になるよう作られたとは言え、やはり機械であるぶん記憶力は優れているのだろうか。だとしたら羨ましい限りだ、特にテストの時とか。

 

 そうやって二人でぶらぶらと見て回った。最初は部員それぞれに合った花を見つけようという案も出たのだが、荷物が多くなりすぎるのと季節が合わないのでしぶしぶ断念することとなった。なのでそれは後々実現することにして、とりあえず全体的に合ったものとしてゼラニウムという花の鉢を一つと、一年中花が見れるように造花も購入して店を出た。この花には友情とか信頼とかという花言葉があるらしい。また色ごとに別の意味もあるらしいのだが、そこまで追求しだすと長くなるので考えないことにした。ちなみに、荷物は俺が持つことになり、左手に花、右手にさっき買った服がぶら下がっている。服の値段を考えるとあまり雑には扱えないので困る。そしてなぜか造花だけはこころが持っている。気に入ったのだろうか。

 

「さて、次はどこに行きましょうか」

 

「特に行きたい場所はないんだけどな……」

 

 携帯で時間を確認する。時刻はちょうど三時、約束の時間は五時なので、少し早めに集合場所に行くとしても一時間半以上は余っている。何もせずにただ待っているには長すぎる時間だ。予定が決まっていないならもう少し遅い時間に集まればよかったのにと思う。

 

「こころは見たいものとかあるか?」

 

「いえ、特には」

二人ともこれといった希望はなく、ついに行き詰まってしまった。

 

「……にしても、他のみんなはどうやって時間を潰してるんだ?」

 

「聞いてみればいいんじゃないでしょうか。ちょうどそこにいますし」

 

こころの示す方を見ると、紙袋を抱えた雲雀が店から出てくるところが見えた。マントを羽織った独特の格好は人混みの中でも存在感を強く放っていた。反対方向に行こうとする雲雀に近づき声をかけてみる。

 

「よう、何やってるんだ?」

 

「ん? ああ、真人君、それにこころ君じゃないか」

 

「どうも。何をしてるんですか?」

 

「ちょっと買い物をね。二人は?」

 

「時間を持て余してる」

 

「奇遇だね、僕も買い物が終わって暇なんだ。よかったらこの辺を一緒に見て回らないかな? 一人だと会話もなくてつまらないんだ」

 

「そうしましょうか」

 

雲雀を加えた三人でモール内を散策する。こっちの方のエリアはなかなか訪れないので新鮮な気分だ。地図を見て興味が湧かないと思った店でも、実際に見てみると面白そうに感じるから不思議だ。

 

「ところで、その花は?」

 

歩きながら雲雀が俺の手にある鉢を見て言った。

 

「部室に飾る花だと。ゼラニウムって名前らしい」

 

「へえ、いいんじゃないかな。ちょっと匂いはきついけど、綺麗だと思うよ」

 

「気に入ってもらえてよかったです」

 

選んだ花を褒めてもらったこころはなんとなく得意げだった。

 

「やっぱりこれは花言葉で選んだの?」

 

「そうですよ。友情とか信頼とか。尊敬って意味もあるみたいです」

 

「なるほど、僕達にはぴったりだね」

 

話しながら赤い花を見つめる雲雀。

 

「しかし、花言葉って本当にいろいろあるよな。一つの花にも複数あるし。色によっても違うらしいぞ」

 

「意外と奥深いんだね。僕もいくつか知ってはいるけど、そんなに詳しくは知らないかな」

 

「いくつか知ってるってだけでもすごいな、俺なんて全然知らなかったし」

 

「そりゃあ、花の町に住んでるんだからね、多少は知ってるさ」

 

花屋に行って初めて知った俺とは大違いだ。やはりそんな町に住んでいる以上、ある程度の知識は持っていた方がいいのか?

 

「あ、そういえば、木にも花言葉があるらしいね」

 

「それは調べてませんでした。花屋さんにあるような花しか見てなかったので」

 

「まあ、そういう花の方が綺麗だし目立つからね、無理もないよ。木に咲く花って目立たないものも多いし」

 

その後も花に関する話題は続いた。雲雀が花言葉を知っているというのは驚きだった。意外なことを知ることができてよかったが、あまり知識のない俺は会話に参加できず話を横で聞いている方が多くなってしまった。それはそれで楽しいが、少し退屈でもあった。今度話す時にはもう少し話せるよう、花言葉について調べてみるのもいいかもしれない。

 

 

「……おっと、そろそろいい時間だね」

 

話しながら適当に歩いていると、いつの間にか時間が経っていたようで、集合の十五分前になっていた。

 

「そろそろ集合場所に行ったほうがいいな」

 

「そうですね、行きましょう」

 

三人で集合場所へ向かう。先輩は一体何を準備したのか。面倒なものでなければいいのだが。とにかく、行ってみれば分かるだろう。

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