私のココロの伝え方   作:真冬の三月ウサギ

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ある青年の苦悩

 大きな怪我もなく練習は終わり、その場で解散となった。帰り道の途中で部活のみんなと別れて、僕は暗くなった道を一人で歩いていた。空には雲がかかり、月の光は届かない。

 

「疲れたなあ……」

 

 大きく息を吐いて肩を落とす。正直なところ、僕は運動はあまり得意じゃない。どちらかと言えば苦手だ。昔から、一人で本を読んでいる時間の方が長かった。

 

「けど、今日はうまくできたかな?」

 

 決して速く走れはしなかったけれど、今日の練習では一度も転ばなかった。練習を続けていればきっと速く走れるようになると思う。何より、真人君の足を引っ張るような結果にならなかった事が一番うれしい。

 

「……真人君、気にしてないかな?」

 

 ペアを交換しようと提案した時の事を考える。あれは本当に相性の事だけを考えた話で、真人君とのペアが嫌だなんてこれっぽっちも思っていなかった。真人君は分かってると言ってくれたけど、やはり気になってしまう。

 

『僕も、変わった方がいいのかな……』

 

 さっき言った言葉が浮かんでくる。それは格好の事ももちろんあるけど、この気にしすぎてしまう性格の事も多少はある。聞くまでもなく、変えた方がいいとは思っているし、実際少しずつではあるが変わっていけているとも思っている。もう部のみんなともちょっときつめの冗談も話せるようにもなった……今日みたいに後で気にしてしまう事も多々あるんだけど。

 でも、変わったのはあくまで一部分だけ。その他の大部分、根本的な部分は全く変わっていない。変えようと思っても、どうしても心のどこかで拒否してしまうのだ。

 理由はさっぱり分からない。僕は昔とは違う。周りにいるのは昔の僕を知らない人ばかりだし、僕を理解してくれている友達だっている。もうあの時のようにならないとは分かっている。

 ――こんなもの、もう必要ないはずなのに。

 やりきれない思いを胸に空を見上げる。曇っているせいで月も星も見えない。夜は好きだ。暗い夜の闇が、僕の姿を分からなくさせてくれると同時に、僕の中の弱い部分も隠してくれるような気がする。

 隠してくれるだけで、消し去ってはくれない。本当に無くしてしまうには、僕自身がどうにかするしかない。分かってはいても、どうしても最後の一歩が踏み出せずにいる。変わりたいのに勇気を出せず、いまだに僕はこうして臆病な自分を隠し続けている。

 

「どうして、僕は変われないんだろう……」

 

 そんな僕の疑問に、答えてくれる人はいなかった。

 

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