私のココロの伝え方   作:真冬の三月ウサギ

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第一回オカ研極秘会議

「それでは、これより第一回オカ研極秘会議を始めたいと思います!」

 

 神代先輩の号令に合わせ、他のメンバーが一斉に拍手する。これがいつもの会議の始まり方だった。先輩の合図で一斉に拍手をやめる。こころもまわりに合わせてぎこちなく拍手をしていた。そのうち慣れるだろう。

 

「さて、今回の議題ですが……」

 

 先輩は後ろに移動させていた黒板に今日の議題を書き出す。この時代、ほとんどが電子黒板に変わってしまい普通の黒板はよほどの田舎でもない限り使われていないのだが、我が部は古い文化を大切にするという趣旨の部活なので普通の黒板を採用していた。

 

「……よし、できた!」

 

 先輩は黒板の文字を見渡して満足そうに頷くと、ハンカチで手を拭きながら振り返った。

 

「今日の議題はずばり、『どうやって部員を集めるか』です!雲雀君、説明お願い」

 

 指名された雲雀が立ち上がり、説明を始めた。

 

「分かりました……さっきも言った通り、ここ花之宮学園で部活として認められるには最低でも五人の部員が必要なんだ。けど、現在の部員は四人。だから、僕達は速やかに部員を確保する必要がある、という訳さ」

 

「いつまでに集めればいいんですか?」

 

「遅くとも、五月初めの連休前には五人の部員が在籍している状態にしてなきゃいけないね。毎年連休前に部活の審査が行われるんだ」

 

「その時点で条件を満たしていない部活はお取り潰し、ってこと。だから皆、いい案があったらどんどん言ってね!」

 

 四人が同時に頭を悩ませる。これがもっと有名なスポーツなどの部活ならまだしも、こんな超マイナーな部活、部員どころか興味を持ってくれる人を探すことすら難しい。となると、誰か知り合いを勧誘するのが一番なのだろうが、残念な事にここにいる全員交友関係は広くない。俺はあまり人付き合いは得意ではないし、こころは転入してきたばかりだし、雲雀はあんなだし、先輩は……

 

「……」

 

考え込む先輩を見つめる。そういえば、一年間ここで付き合ってきたわけだが、俺は先輩の交友関係についてよく知らない。部活の仲間以外の人と一緒にいるところを見たことがない。特に嫌われているということもないようだが……

 

「あ、そうだ。真人君、日向君はどうかな?」

 

 つい先輩について考えていると、急に雲雀が声をかけてきた。慌てて意識をそちらに戻す。

 

「あいつか……」

 

 いい奴だし、話していて楽しい。彼が入ってくれるなら俺も嬉しいのだが。

 

「まあ、難しいだろうな」

 

 こういったことに興味を持っているようには見えない。どちらかといえば、もっと活発な、運動部にいるほうが似合っている。

 

「けど、一応声はかけておくかな」

 

 実際に言ってみなければ分からない。ひょっとしたら、意外にUMAとかが好きかも知れないし。

 

「そうだね。彼のクラスは知ってる?」

 

「ああ、同じクラスだ」

 

「じゃあ、一回誘っておいてくれる?」

 

「ああ、任せておけ」

 

 明日、昼休みにでも聞いておくか。

 

「僕も他の友達をあたってみるよ。って言っても、真人君も知ってる人ばっかりだけどね」

 

「じゃあ私も何人かに聞いとくね?」

 

「お願いします」

 

 同じ学年の人にできることはこれくらいだ。既に部活に入ってしまっている生徒がほとんどだし、普通に勧誘しても効果は薄いだろう。

 

「となると、やっぱり狙うは新入生だな」

 

「そうなるわね。雲雀君、体験入部期間はいつまで?」

 

「部活審査と同じ、連休前までです。けど急いだほうがいいですね。他の部活も新入部員確保のため動くでしょうし」

 

 この時期は部活の勧誘で学院内がにわかに騒がしくなる。その賑わいは学院最大のイベントの一つである文化祭にも劣らない。この学院の生徒はそれだけ部活に情熱を注いでいるということだ。

 

「具体的に、何ができるんですか?」

 

 こころが手を挙げて質問する。彼女も不慣れながら協力しようとしているようだ。

 

「この期間中は特別に放課後に限って学院内での勧誘行動が許可されるんだ。あと、掲示板に部員募集のチラシも貼れるし、昼休みや放課後には体育館のステージでのパフォーマンスができる」

 

 この人数でステージを使ったパフォーマンスは難しい。となれば、学院内での勧誘がメインになってくる。

 

「とりあえずチラシは作っておこう」

 

「そうね、やっぱりそういう小さなところから攻めていかないとね」

 

 先輩が黒板に『チラシを作る』と書き込む。別に書き込むほどの事でもないと思う。

 

「真人はどうやってこの部に入ったんですか?」

 

「私が声をかけたの。去年は部員がそれぞれ入ってくれそうな人に聞いてまわってたのよ」

 

「それで声をかけられたのが僕達なんだ。けど、何で僕達に?」

 

「そりゃそうよ。だって雲雀君、当時はすごく噂になってたのよ」

 

 確かに当時、雲雀はいろいろと噂されていた。何せその時からこんな見た目でこんな性格だったのだ、話題にならないはずがない。お陰で雲雀は周囲から若干浮いていた。ついでにそんな雲雀と付き合っていた俺も浮いた。なので、現在俺の友達が少ないのはだいたい雲雀のせいだ。決して俺の性格が悪いわけではない。と思う。多分。

 

「で、たまたま一緒にいた俺も入部したんだ」

 

「たまたまじゃないわよ。真人君も勧誘対象だったんだから」

 

 先輩が笑いながら言った。別に目立ったことはしていなかったと思うが、一体どうして?

 

「目立ったことはしてなくても、雲雀君と普通に接してたって時点で十分変わってると思うよ?」

 

「あー確かに。変人の周りには変人が集まるって言いますしね」

 

「あの真人君、さらっと人を変人扱いしないでもらえるかな」

 

「とにかく、前回はそうやって声をかけてまわったらしいけど、今回もそれを?」

 

「……露骨に話題をそらしたね、まあいいけど」

 

「そうね、確かにそれもやっておきたいところだけど、やっぱり何か足りないのよね、もっとこう、大勢を惹きつける派手なのはないのかしら」

 

「派手って、そんなに人を集めたって困るだけですよ?」

 

 この部活はあまり大勢でやるような部活ではないと思う。多人数で派手に、というよりは互いをよく知った少人数でひっそりと楽しむ、そんな部活だろうと思う。第一、あんまり多いと部室が狭くなる。

 それでも、先輩は不満そうだった。

 

「けどー……」

 

「あ、じゃあこういうのはどうでしょう?」

 

 先輩がうなっていると、雲雀が手を叩いた。

 

「とりあえず、明日はそれぞれが思うような方法で勧誘をしてみましょう。それで誰かのに効果があればそれを採用、無ければまた新しい手を考える、というのは?」

 

「……まあ、それもいいかもな」

 

 正直ここでぐだぐだ考えていてもいい案は浮かびそうに無い。それならばいっそ、明日までに考えて実行するほうがじっくり考えられるだろうし、何よりここでじっとしているよりは宣伝になる。

 

「なるほど、いい考えね。実は一個やってみたいことがあったのよー」

 

「へえ、一体どうするんですか?」

 

「ふふ、それはね……内緒」

 

 言って先輩がいたずらっぽく笑う。こういう場合、大抵はろくなことを考えていないものだが、今回はどうなのだろう。たとえ悪かったとしてもこの先輩を止めることは難しい。せめて悪い印象を与えないようなことを祈っておこう。

 

「それじゃあ各自いい方法を考えて、明日実行に移すこと!あと、その後結果をみてもう一回作戦会議をするから、午後五時半に校門に集合すること!それでは第一回オカ研極秘会議、解散!」

 

 先輩の号令で会議はお開きになった。皆それぞれ適当に解散していく。帰り道は皆ばらばらなので一緒に帰るということはあまりない。

 

「んじゃ先輩、お疲れ様でした」

 

「お疲れ様でした」

 

「ばいばーい。いい案期待してるからね?」

 

 こころを連れて部室を出て学校を後にする。いい案なんて思いつくだろうか?けど何か考えないと他がうるさいだろうし。家に帰ったらじっくり考えるとしよう。

 

「そうだ。すっかり忘れてたけど、お前に学校を案内してやらないとな」

 

 家に帰る道の途中、ふと思い出した。今日はそんな暇なかったし、いつかはした方がいいと思ったのだが。

 

「案内ですか?」

 

「そうそう。やっぱりいろいろ覚えておかないと不便だろ?」

 

「大丈夫です、一人で適当に歩いておきますから」

 

 あっさり断られてしまった。まあ特に説明が必要な施設もないし、授業の教室も皆について行けばいいだけだし必要ないと言えばないのだが、なんとなくさびしい。

 

「それより真人、何かいい案は浮かびましたか?」

 

「え?いや、何も。こころは?」

 

「いえ、何も。残念ながら、オカルトについてあまり詳しくないですし、どうすれば人の注意を向けられるか、というのもよく分からないです」

 

「そうか……」

 

 まあ、なかなか難しいだろう。こういうのは人と接しながらとか、人を見ながら覚えていく部分もあるだろうし、そういう経験が少ないこころにはまだ難しいかもしれない。それでも、こころも彼女なりにいろいろ考えているみたいだし、できるならいい案を思いついてほしい。

 そんなことを考えながら、俺は家路を歩いていった。

 

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