愛し方を知らない孤独な銀狼   作:鎌鼬

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第18話

 

 

「ーーーどうやら外れのようね……」

 

 

時の庭園の最上階まで来たリザは自分の選択が間違っていたことを悟った。そこに会ったのは駆動音を立てながら稼働している巨大な装置、ここに来るまでの道に会った部屋はすべて調べている。つまりここに神楽がいないということは彼は下にいることになる。

 

 

「カイン」

「■■■■ーーー」

 

 

リザが指示を出すとトバルカインの持っていた大剣から漆黒の雷が程走る。これは八つ当たりに近い行為だが、神楽を攫った連中の足を引くことが出来るとリザは確信していた。そしてトバルカインの剣が振るわれ、それと同時に漆黒の雷が指向性を持って装置に向かう、装置には防御の為の障壁が張られていたが大隊長クラスと双首領の二人を除く黒円卓の中で最強と言われているトバルカインの前では紙同然の強度でしかなかった。

 

 

障壁が音を立てて割れ、装置が破壊される。時の庭園の動力源の破壊された瞬間だった。

 

 

ここにはもう用は無いとリザはトバルカインを引き連れてこの場を去ろうとする。その時、

 

 

「さっきの音は何!?」

「っ!?誰だ!?」

「女の人?」

「ぜぇ……ぜぇ……」

 

 

四人の少年少女たちがやって来た。神楽と同じ年頃の子供たちがこの場に現れたことにリザは顔には出さなかったが動揺してしまう。

 

 

「……サトリ、あいつの心を呼んでくれ」

 

 

その中の一人の少年が息切れをしている少女にそう告げた。サトリという名の少女はその名の通りに悟り妖怪と同じ能力を特典として与えられている。敵か味方か分からない相手でも心を読めれば判断出来ると思っての指示だった。

 

 

「は、い……」

 

 

サトリが息を整えながら神経を集中させる。そしてリザの心の内を読もうとした時ーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

AAAAAAAAAAAAAAAAAAーーー!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

咆哮が、時の庭園内に響き渡った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハッハッハ!!遅いぞジン!!」

「信だって言ってるだろうがこの野郎が!!」

 

 

下に向かった信と篝は罵り合いに近いことをしながら走っていた。その進行を阻む物は無い。始めに現れた機械兵はそれっきりで全く姿を見せなくなったのだ。

 

 

「大体テメェが道間違えなけりゃあもっと早く着けただろうが!!」

「それに関してはマジ悪いと思ってる、スマン」

「誠意が感じられない、後で俺が教会でされたことをすっからな!!」

「何されたんだ?」

「ケツに野菜ぶち込まれた」

「WRYYYYYYYYY!?」

 

 

絶叫している篝の姿を見ても信の心中は晴れない。何故なら篝が先走った行動を取った為に大幅な時間ロスをしてしまったから。少なくともそれのせいで二十分は時間を無駄にしてしまったのだ。それだけあれば神楽を見つけ出し、ここから逃げることが出来たのを考えるとかなり手痛いロスだ。

 

 

「……なぁジンよぉ、本当に嬢ちゃんは無事なんだろうな?」

「信だ!!……神楽ならまだ無事なはずだ。プレシアの目的はジュエルシード、それならジュエルシードと融合している神楽を殺すのは下策だ。アルハザードに向かうにしても生きたままの状態で向かおうとするだろうが……プレシア側に付いた転生者たちが余計なことをしてないことを祈るしかねぇな」

 

 

信の中で危惧しているのは転生者たちの行動。フェイトと良い関係になろうとプレシア側に付いた転生者たちが所構わずに嫌悪をばら撒いている神楽を前にして余計なことをしていそうだと考えているのだ。そうなった結果、あの神楽と初めて出会った夜のような状態になってしまえば信だけでは止めるのは難しいだろう。

 

 

新たな階段を見つけて飛び降りるように階段を降りているその時ーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

AAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAーーー!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

咆哮が、時の庭園内に響き渡った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ここだな」

「うん……」

 

 

時の庭園の最深部、プレシアがいると思われる場所にクロノたちはいた。信たちが先に向かっているにも関わらずにクロノたちが先に着いたのは篝の時間ロスが原因である。

 

 

扉の向こうにプレシアがいる。そう思うとクロノの心の内は穏やかでは無かったが……それ以上に、クロノの直感が警鐘を鳴らしている。

 

 

ここから先に入るな

 

入ればきっと後悔する

 

今すぐ振り返って逃げ出せ

 

 

まるでこの扉の向こうが自分の知っている世界では無いと警告している程に煩い直感。例えこの直感が正しいとしても、クロノにはここで撤退するという選択肢は無かった。何故ならクロノは時空管理局に所属する執務官だから、目の前で行われている犯罪行為を見逃すことは出来ない。

 

 

「……僕が先行する。開けるぞ」

 

 

後ろにいるフェイトと夜行、凪に声をかけてクロノは力を込めてプレシアがいるはずの部屋への扉を押した。

 

 

「ーーー」

 

 

息を飲んだのは誰か、しかしその行為を間違いだと指摘するのは酷だろう。扉一枚を隔てた先にあったのは地獄だった。まるで鋭利な刃物で斬り刻まれたかの様に細切れにされている肉片、床だけではなく壁や天井を染めている大量の血液、同じ世界だと思えない程に凄惨な光景がそこにはあった。

 

 

「Ruuuuuuuuーーー」

「ガハッ……」

 

 

そして部屋の中央には二つの人影。一つは赤い髪に黒い肌、そして背中から禍々しさを感じさせる刃を幾つも生やしている少年。もう一つはその少年の片手で首を絞められ持ち上げられている女性ーーープレシアテスタロッサだった。

 

 

「ーーー母さん!!」

「待てっ!!」

「ダメだ!!」

 

 

その光景を見たフェイトが飛び出そうとするのをクロノが手で制し、凪が後ろから羽交い締めにして止める。この光景を見ればあの少年がこの惨状を作ったのだと推測できる。だとするなら下手に飛び出したところでこの部屋にいる肉片の一部になる未来しか見えない。

 

 

だが、その努力も無駄に終わる。少年の背中から生えていた刃、それらすべてがプレシアに向けられーーー腹部に突き刺さった。

 

 

「ーーーアリ、シア」

 

 

そして刃が力任せに外側にへと引っ張られる。まごう事なき致命傷、プレシアはクローン(フェイト)ではなく、最愛の実子(アリシア)の名前を呟きながら逝った。

 

 

そして少年の行動はプレシアを殺しただけでは治らない。外側にへと向けられた刃が戻ってプレシアの首を斬り落とす。床にプレシアの死体がついた時には頭部、上半身、下半身の三分割。

 

 

そして少年は迷うことなくプレシアの頭部に向かって足を振り上げてーーー踏んだ。

 

 

プレシアの頭蓋骨が軋む音が聞こえる。

 

 

少年は足を振り上げてーーー踏んだ。

 

 

プレシアの頭蓋骨が砕ける音が聞こえる。

 

 

少年は足を振り上げてーーー踏んだ。

 

 

庇う物が壊された頭部が砕けて脳が潰れる。

 

 

振り上げて踏む、振り上げて踏む、踏む、踏む、踏む踏む踏む踏む踏む踏む踏む踏む踏む踏む踏む踏む踏む踏む踏む踏む踏む踏む踏む踏む踏む踏む踏む踏む踏む踏む踏む踏む踏む踏む踏む踏む踏む踏む踏む踏むーーー

 

 

少年の行動が止まった時にはプレシアの頭部だった物が丹念にペーストされた状態で床にぶちまけられた物の一部に成り果てていた。

 

 

「あぁ……あぁ……!!アァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!!!!」

 

 

その光景を見させられたフェイトは激怒し、凪とクロノの制止を振り払って少年に向かい突貫していった。プレシアから愛情を向けられた事はないが愛していた母を殺されたのだ。激昂したとしてもおかしくない。

 

 

フェイトはデバイスのバルディッシュを振りかぶって少年に斬りかかる。少年はフェイトたちに対して背を向けた状態でいたので背後を取る事は容易かった。フェイトは自身の限界を超えた速度で突貫して少年の首を刈り落とす未来を幻視する。

 

 

「ーーーいかんな、これは」

 

 

フェイトが飛び出したのと同時にここまで嘲笑う様な笑みしか浮かべていなかった夜行が動いた。懐から何かが書かれた札を数十枚取り出してクロノと凪を巻き込む様な形で自身の周りにばら撒く。

 

 

「AAAAAAAAAーーー」

 

 

そして少年が振り返り、フェイトを、その奥にいたクロノたちを視界に捉えた。

 

 

その瞬間、クロノたちを重圧が襲う。息がし辛い、身体が動かし難い。まるで突然水中にでも引きずり込まれたかの様な錯覚に陥る。

 

 

「これでも抜かれるか……この陣から出てくれるなよ?出ればあの様になる」

 

 

夜行が示した先にあったのはフェイトの姿。だがフェイトはバルディッシュを振りかぶったままの状態で停止していたーーーいや、良く注意して見れば僅かに動いている様に見えなくもない。

 

 

そして少年の背中の刃が消える。再び視認出来た時にはーーー細切れになったフェイトの姿があった。恐らく自分が細切れにされたことに気づかずに逝ったのだろう。フェイトだった肉片は床にぶちまけられた。

 

 

「何が……起きたんだ?」

「停止……いや、遅滞だな。恐らく視界に入れた存在を遅滞させ、その分己が速くなったのだろう。いやはや、よもや無間と同じ能力を持つ者と出会えるとはーーー僥倖と言うべきか?」

 

 

フェイトが殺されたことに唖然としている凪、少年が何をしたのかを冷静に判断しようとしていたクロノを背後に夜行はその淡麗な顔に再び嘲笑の笑みを浮かべていた。

 

 

「さて」

 

 

夜行が自身の敷いた陣から出て行く。守る陣から外に出たことで少年の遅滞の法則が夜行に向けられる。が、新たな札を前に出したことでその法則に抗う。

 

 

「飲み込まれてた……違うな、自ら堕ちたのか?まぁ良い、どちらにしろ貴様はとても興味深い」

「Ruuuuuuuuーーー」

 

 

遅滞の法則に抗う夜行を少年は警戒する。それに対して夜行は嘲笑の笑みを崩す事無く新たな札を取り出して少年と対峙する。

 

 

「この身は暁夜行(あかつきやこう)と申す。さぁ……貴様は私にとっての蝉に相応しいかな?」

「AAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAーーー!!!!」

 

 

大紅蓮の化身と化した少年ーーー神楽に夜行は名乗りを上げる。ここに、無間の赤子と曙光の一角の名を持つ者との死闘が始まる。

 

 

 






リザ、原作主人公と出会う。ただし、機械兵相手だと容赦無しのリザさんでも神楽と同じ年頃の子供を殺すわけには行かずに躊躇ってしまう。某悟り妖怪の能力の転生者がリザの心を読もうとしましたが読んだ場合にはリザの渇望の一端に触れて発狂する事間違いなしです。

信と篝のコンビ、時の庭園内にて迷子の模様。これは篝が先導した結果。もしも信だったら己の直感に任せて進んでいたので最短距離で最深部まで行けたはず。

クロノ一行、最深部にて神楽に出会う。転生者の始末を終えた神楽は最後に主犯格であるプレシアを抹殺、この現場にクロノたちは出くわしました。それを見たフェイトが特攻して細切れになりました……恐らく現段階で最大の原作破壊。

無間の赤子VS夜摩閻羅天?。暁夜行は誰も知らなかったはずの無間の名前を語って神楽の姿に無間の姿を見る。ただし、彼はTON☆JI☆CHIとは別人である。良いね?

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