愛し方を知らない孤独な銀狼   作:鎌鼬

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朝七時

作者「ランキングに面白そうな作品は無いかな~?」

タグ:熊本先輩

作者「お?タグに熊本先輩だと?どんな作品だこりゃあ?」

作品名:愛し方を知らない孤独な銀狼

作者「…………ファ!?」

なんかランキングに44位で乗ってました…………リアルでファ!?って驚きました…………しかも昼に見たら22位って…………

ランキングに乗ったのは初めてなので固まることしか出来ませんでした。

そして一言だけ言わせてください…………ありがとうございます!!




第4話

 

 

「ァァァァァ…………」

 

 

抉られた左目からダバダバと血を涙のように流しながら神楽は幽鬼の如く立っていた。

 

 

「アッハッハ!!暴走したな!?よっしゃ!!今からオリ主であるこn」

 

 

黒塗りの弓を構えた色黒の少年が見下した目で神楽を見る。一目見たときから分からないが酷く強い嫌悪感を感じた。だからジュエルシードに託つけて神楽を殺そうと考えた。

 

 

少年は転生者、神々の遊びという訳のわからない名目で殺されて転生することを強要させられたが正義の味方の投影魔術を特典としてもらい、自分こそが主人公だと思い込んでいた。

 

 

しかし少年の生はここで終わる。歪んだ笑みを浮かべたまま、頭と胴体が別れた。首が無くなり噴水のように血を吹き出して倒れた少年の遺体のそばに立つのは手を手刀の形に構え振り切った神楽。少年が知覚するよりも早くに近づき、その首を切り落としたのだ。

 

 

『マスター!?おのれ!!よくもマスターを!!』

「Fahr’hin,Waihalls lenchtende Welt! 」

 

 

少年が持っていたアクセサリーが地面に転がり、少年を殺した神楽に怨みの籠った声を向ける。が、神楽にはその声は届かない。だがアクセサリーが何か言っていることには気付いているのか、喋るアクセサリーに足を振り下ろした。

 

 

『グギィ!?』

 

 

アクセサリーは僅かに形を歪ませただけで壊れる気配は見えない。だから神楽は更に足を振り下ろした。

 

 

『ぎゃぁ!!や、やめ』

「Leb’wohl, prangende Gotterpracht!

Leb’wohl, prangende Gotterpracht!

Leb’wohl, prangende Gotterpracht!

Leb’wohl, prangende Gotterpracht!」

 

 

何度も、何度も、何度も何度も何度も何度も何度も何度も…………神楽は耳障りな音を出すアクセサリーに向かって足を振り下ろした。五十も振り下ろしたころにはアクセサリーは元の形を無くして公園の砂と混ざりあっていた。

 

 

「ァァァァァァァァァァァァァァァ……………………」

 

 

その時、不思議な現象が起きた。死んだ少年と砕けたアクセサリーから何かが現れ、神楽の左目に吸い込まれていった。見る者がいたとしたらその吸われた物を魂のようだと思っただろう。その魂は苦痛の声を上げながら神楽に喰われた。

 

 

「タリ、ナイィ……………………」

 

 

呟くような、それでいて聞くものを凍てつかせるような声が公園に響く。

 

 

そう、足りないのだ。あの程度の塵芥の魂では満たされない。だから…………満たされるまで貪ろう。幸いなことに、今食べたのと同じ様な魂はたくさんあるのだから。

 

 

地面を蹴り、その細身からは考えられないような跳躍を見せる。そして神楽はそこら辺に転がっている自分を満たしてくれるだろう魂を貪る為に隔離された夜空を駆けていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ジュエルシード!!封印!!」

 

 

不定形の存在が少女の持った杖から放たれた桃色の閃光に撃ち抜かれて霧散する。

 

 

「ふぅ…………」

 

 

少女、高町なのはは下校途中に拾ったフェレットが心配になり、夜に家を抜け出してわざわざ病院にまでやって来たそしてあの不定形の存在と出会い、喋ることの出来るフェレットのユーノから与えられたレイジングハートという魔法の杖でジュエルシードの思念体と呼ばれるあの不定形の存在を封印した。

 

 

「お疲れ様」

「大丈夫かい!?」

「怪我は無いか、俺の嫁よ!!」

「よくやったぞ!!」

「ふっ、それでこそ俺の嫁だ」

 

 

思念体との戦闘の最中に魔法の才能を持ったものは少ないとユーノは言っていたが…………なのはの目の前には少なくとも二十人、ユーノがなのはに与えた魔法の力を使えるものたちがいた。しかもそのほとんどが学校のクラスメイトという。

 

 

この事実になのはは苦笑いするしか無いし、ユーノは地球って恐ろしいところだと間違った認識をしていた。

 

 

「はいはい、そこまでよ。なのはだって疲れているのだから…………なのは、詳しい話は明日でいい?早く帰らないと士郎さんたち心配するわよ?」

「にゃあ!?そうだった!!ごめん!!お休みなさい!!」

 

 

自分がこっそり抜け出していたことを思い出してなのはは肩に乗せたユーノを連れたまま全速力で駆け出していった。

 

 

思念体との戦闘で荒れたこの場に残るのは地球にいる魔法使いたち…………別名転生者たちだ。

 

 

「(さて…………この状況はどうしましょうかね?)」

 

 

なのはを帰らせた少女、鈴宮愛莉(すずみやあいり)が二つに別れて言い合いをしている転生者たちを見て思わずため息をつく。

 

 

現在転生者たちは三つの派閥に別れている。

 

 

一つは救われなかった人たちを救いたいという目的で集まったグループの通称『偽善党』

 

一つは登場する少女たちと結ばれることを信じて疑わない奴らの総称『踏み台衆』

 

一つは原作に関わるつもりなど一切なく、平和に過ごしたいと思っている『日和見組』

 

 

愛莉はどちらかといえば『日和見組』に分類されるのだがなのはとは友人、友人が厄介事に巻き込まれているのなら救いたいと思っているので原作にへの介入を選んだ。そして今日は原作が開始される日と言うのもあって愛莉を除いた全員が『偽善党』か『踏み台衆』のどちらかの転生者だった。

 

 

「ザ・ワールド!!」

「スター・プラチナ!!」

 

 

『偽善党』の転生者と『踏み台衆』の転生者が言い争いから戦闘を始めようとしていた。互いの背後にスタンドを出して一触即発な空気になっている。愛莉はため息を着きながら仲裁の為に二人の間に割り込もうとする。幸いなことに愛莉の特典は拘束向け、あの二人を止めてさっさと家に帰ろうとしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

スタンドを出した二人の顔面が無くなるまでは。

 

 

「ーーーーーーーーーーえ?」

 

 

スタンドが崩壊して力無く崩れ落ちる二人の姿を見て誰かが抜けた声を出した。そうなったのは無理はない。さっきまで生きていたはずの人間が一瞬の内で殺されたのだから。

 

 

下手人は崩れ落ちた二人の間に現れた白い影。長い白髪を靡かせ、左目からはダバダバと血を流しているその姿は幽鬼の如く。

 

 

「アァーーーーーーーーーーァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

 

 

最速を冠する、殺意が現れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

先程までの一触即発の空気はどこにいったのか、『偽善党』の転生者も『踏み台衆』の転生者も普段することはない共闘という手段をとって現れた最速の殺意と戦っていたーーーーーーーーーー違う、戦いなどではない。

 

 

これは狩りだ。最速の殺意が狩人でその他の者はすべて獲物、狩人を楽しませるだけの存在でしかない。

 

 

「レールガンってs」

 

 

突き出した手に銀貨を持った少年が手だけを残して挽き肉に変わる。

 

 

「お前のたm」

 

 

鎌を担いだ少年が首を一回転させて崩れ落ちる。

 

 

「衝撃のファースt」

 

 

右手に籠手を着けた少年が心臓を貫かれ絶命する。

 

 

「卍!!k」

 

 

黒い刀を持った少年が五臓六腑を引きずり出されて息絶える。

 

 

「何なのよこれ…………」

 

 

離れた場所からその殺戮を見ていた愛莉は絶望の混じった声色で呟くことしか出来なかった。

 

 

前に出てきた三つの派閥の力は拮抗している。それはそうだ、転生者のそれぞれが思い思いの架空の力を願っている、多少の差こそあれど強いことには変わりなかった…………はずだった。

 

 

強いと信じて疑わなかった特典が、触れることすら出来ずに蹂躙されている。しかもその相手は見覚えがある、始業式の時に見ているすべての人間に嫌悪感を与えていた少年だった。

 

 

彼は始業式以降は不登校で、『偽善党』の転生者たちが友達だとか騒いで彼のことを無理矢理学校に通わせようとしていたなと、愛莉は現実逃避をしてしまった。

 

 

そして…………現実が追い付いてくる。

 

 

「ァァァァァァァ…………」

 

 

殺戮を終えた神楽が、殺戮を見ていた愛莉に目を向けた。『偽善党』の転生者と『踏み台衆』の転生者たちは不仲だったというのに今は仲良く地面を染め上げる血液と肉片に成り果てている。そして遺体から離れた魂魄が神楽の左目に吸い込まれ、苦痛の声をあげているのを聞いて愛莉はその場に座り込み、失禁した。

 

 

与えられる嫌悪感と死の恐怖に顔を鼻水と涙で汚し、無様に失禁する愛莉に殺戮の返り血で汚れた神楽は一歩、また一歩とゆっくり近づいている。

 

 

さっきまでの獲物は抵抗してきたから壊した、しかし抵抗しない獲物ならば…………じっくりと貪ることが出来る。

 

 

そうして神楽と愛莉の距離は縮まる。そして神楽が血で汚れた手を愛莉に伸ばした。愛莉には逃げようという気迫は感じられない、この獣に貪られるしかないと諦めていたから。

 

 

神楽の手が、愛莉の首元に伸びる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして神楽は突然響いた発砲音と同時にその場から飛び退いた。さっきまで神楽のいた場所に上空から六発の弾丸が降り注ぐ。

 

 

「ったく、折角原作見てて面白っ!!とか思ってたのになんだよこりゃあ」

 

 

前ぶれなく聞こえる幼い声、神楽が顔を見上げると民家の屋根に座る黒衣と黒い帽子を纏い、黒銃を構える少年の姿があった。

 

 

「まるで獣だな、躾てやるよぉ!!」

「ァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

 

 

 





神楽暴走回、そして転生者虐殺回でした。

被害にあったのは転生者二十人です、なのはとユーノは直前に現場を離れたので被害は無いです。そして彼らは神楽のご飯になりました。

殺されるだけ、大した役回りではない転生者は名無し、名前ありの転生者はそこそこの役回りを用意するつもりなのでご理解ください。

次回は暴走神楽vs黒の少年です。


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