今、この部屋は少し重たい空気が流れている。
その原因は僕の近くに立つ神父様、柔和な笑みは変わらないが警戒しているのか威圧感が凄い。
もう一つの原因は入り口のところで立っている綾木信と名乗った…………昨日、僕と殺し合った少年。神父様からの威圧を受けながらもヘラヘラとした笑みを崩そうともしない。
…………お腹痛い…………特に神父様のせいで。
「なぁオッサン、悪いけど席外してもらっても良いか?」
「…………神楽と貴方を、二人にしろと?」
「警戒するのは分かるけどよ、こういうのは当事者だけで話し合った方がいいと思うんだよ。あぁ、安心してくれ、別にこいつに何をする訳じゃないからよ」
「神父様、僕からも頼んで良いかな?」
「…………はぁ、分かりました、部屋の外で待たせてもらいます。ですが何かあったら呼んでください、すぐに駆けつけますので」
「うん、ありがとう」
少し不満げだったが僕からの一言が効いたのか、神父様は部屋から出ていった。そして部屋に残っているのは綾木信と僕の二人だけ。
「名前聞いても良いか?」
「…………如月神楽」
「そうか…………なぁ如月、お前強いんだな!!」
「…………え?」
嫌われて、罵倒されるのが普通だった。昨日のこともそれだけのことをされるだけのことをしてしまったという自覚はある。だからそれを甘んじて受けようと思っていたのに…………綾木信は純粋な目で、興奮しながら僕のことを見ていた。
「あの高速移動!!あんなの初めて見たぜ!!ただ速いだけならどんな奴にでも当てられる自信はあったのに全部避けられるとか!!なぁ、あれ何て言うんだ!?」
「えっと…………確か、
「
「ちょ!!ちょっと待って!!」
余程興奮しているのかベットの上に乗り出してまで聞いてくる綾木信の顔を手で押す。思っていた反応と全然違う。
「僕にその…………報復とかしに来たんじゃ無いの?」
「報復?なんでそんなことにしなくちゃいけないんだ?昨日のあれはなかなか楽しめたぜ。退屈してたから感謝はしても恨み辛みを撒き散らすつもりはねぇよ」
「嘘だ…………今までそんなこと言われたことなんて無いのに…………」
感謝なんて、ここにいる人以外からされたことなんて無い。外に出れば拒絶され、罵倒されるだけ、嫌われることしか無かったのに…………綾木信は、そんな素振りを見せなかった。
「あぁ…………そういや学校の連中が白くて気持ち悪い奴がいるとか言ってたっけな?それってもしかしてお前のことか?」
「…………うん、多分僕のこと」
「ふぅん…………どんな奴かと思って少し楽しみにしてたけど、所詮噂は噂だな。お前のどこが気持ち悪いんだか」
「…………え?」
綾木信の言った言葉が信じられなかった。みんな誰もが僕のことを見て気持ち悪いと、汚いと言っていた…………それなのに、彼はそれを否定している。思わず顔を見るが…………嘘を言っているようには見えなかった。
「それ…………本気なの?」
「あぁ、可愛い顔してると思うぜ?中性的っていうよりも完全そっち側にしか見えない。どこをどうしたらお前のことが気持ち悪い奴になるんだか、理解に苦しむな」
「ーーーーーーーーーー」
誰もいなかった。ここにいるみんな以外が、僕のことを嫌っていた。誰からも拒絶されるだけだと思っていたのに…………まだ、僕のことを嫌わないでくれる人がいてくれた。
そのことが嬉しくて…………気がつけば僕は泣いていた。
「待て!!なんで泣いてんだよ!?」
「ご…………ごめ…………嬉しくて…………つい…………」
「あぁもう!!泣き止めよ!!この状況見られたら俺が泣かしたようにしか見えねぇじゃねえか!!」
僕だって涙を止めたいが止まらない。いないと思っていた人間がいると分かったから、どうしても泣いてしまう。
「おはよう、神楽」
「神楽君おはよー!!」
その時、僕のことを起こしに来たのか、レアとはやてが部屋に入ってきた。そしてこの状況を見ることになる。
「…………知らない人がいる」
「…………神楽君泣かしとる」
「…………しかもベットに乗り出して」
「…………つまりこれは」
「「嫌がる神楽(君)のことを押し倒そうとしてる!!!」」
「待て!!待て待て待て待て待ってくれ!!何がどうしたらそうなるんだよ!!」
「喧しいわ!!神楽君のこと押し倒してナニしようとしとるん!?あぁん!?」
「判決、ギルティ」
「おぃぃぃい!?その手に持ったキュウリとゴーヤは何だ!?それで俺に何するつもりなんだ!?」
「ヤられたらヤり返す。それが常識。例え未遂だろうが許さない」
「さぁ…………神楽君にしようとしたこと、身を持って思いしれ!!」
「違う!!これは冤罪だ!!裁判のやり直しを要求する!!だから…………だからキュウリとゴーヤを持って俺に近づくんじゃねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!」
「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!!!!!」
この日、少年の純ケツが失われた……………………
「神楽君大丈夫!?」
「お尻痛くない?」
「な、何もされてないから平気だけど…………」
そう言って心配そうにしてくれている二人から目をそらす。するとそこには…………尻からキュウリとゴーヤを生やして倒れている綾木信の姿が……………………なんというか、悲惨すぎる。
「ぉお…………おぉ…………クソッ、初めてが二本刺しとかハードル高過ぎるだろうが。俺はそんな趣味はねぇぞ。これで目覚めたらどうしてくれるんだ!?あぁん!?」
「喧しいわ!!うちらの神楽君の純ケツ奪おうとした罪は重いでぇ!!」
「だぁかぁらぁ!!冤罪だって言ってんだろうが!!」
「煩い、次は大根と仙人掌入れるよ」
「ハイ!!すいませんでした!!」
大根と仙人掌見せられてしまうと逆らえないようで綾木信はそれはそれは見事なDO☆GE☆ZA☆を披露してくれた…………流石に可哀想になってきた。
「レア、はやて、僕は何もされてないから平気だよ」
「ほんま?でも神楽君可愛いから気を付けなあかんで?」
「神楽、これあげる。お母さんから貰ったスタンロット。ここ押したら電気流れるから」
うん…………はやてはいいんだけどレアは物騒な物渡さないでくれる?なんか棒の部分からバチバチと明らかに
「なぁレア…………これを刺して電気流したらどうやろか?」
「採用」
「ヒィッ!!」
「やめたげてよぉ!!」
レアとはやてがアグレッシブ過ぎる。てかスタンロット刺して電気流すって…………拷問じゃんか。
「わ、悪い、そろそろ帰るわ…………これ以上ここにいたら何されるか分からないしな」
「ホントにごめん…………」
「次来るときまでには誤解解いてくれよな?でないと大根と仙人掌かスタンロット刺される気がする…………」
「わかっ…………て、次?」
少し綾木信の言っていることが分からなかったから聞き返してしまった。次とはいったい…………
「あぁ次だ。俺、お前のこと気に入ったからよ、また来るぜ?じゃあな」
そう言い残して綾木信はレアとはやてに背中を見せないようにしながら逃げるようにして部屋から出ていった。
「また…………来てくれるんだ…………」
前世ではあったが今になってから僕に会いに来てくれる人がいなかったので綾木信の言葉は素直に嬉しかった…………でも、
「くっ…………!!まだ神楽君の純ケツ狙っとるんか!?」
「衆道だなんて認めない」
先に二人の誤解を解くところから始めようか。
綾木信との出会いですね、前に会った時は神楽が暴走していたからノーカンです。
綾木信は神楽のしたことを全く気にしておらず、また神楽のことを嫌わない珍しい人間でもあります。つまりは友人枠。いないと思っていた人間が現れて泣いてしまった神楽を責められようか。
そしてレア&はやての暴走。部屋に入ったら家族が押し倒されている場面に遭遇してしまった…………これは誤解しても仕方無いね!!(ゲス顔)
そして綾木信の純ケツが犠牲になったとしても仕方無いね!!(愉悦顔)
あと文中の『純ケツ』は誤字じゃありませんので。
その後神楽はレアとはやての誤解を解き、綾木信は聞きたいことの本題を聞くのを忘れていたことを思い出してorzしました。
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