愛し方を知らない孤独な銀狼   作:鎌鼬

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第8話

 

 

『まさしぃぃぃぃぃぃぃぃい!!!!!!!!』

「よっしゃ!!決まったぁ!!」

 

 

トンファーを持った軍服の少年が魔王と呼ばれる軍服の男性を殴っている。このままいけば少年の方が勝つだろう…………このままいけばね。

 

 

『その程度か?違うだろう!?もっと!!もっと死力を振り絞れ!!そしてこの俺を越えてみせろぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!』

「よし、コマンド成功」

「ちょ!?そこで廬生覚醒かよ!?」

『リトルボォォォォォォォイッ!!!!ツァァァァァァリッ!!!!

ボンバァァァァァァァァァァ!!!!!!

ロォォォォォォォッズ!!!!フロォォォォォォォム!!!!ゴッドォォォォォォォォォォォォォォ!!!!!!!!

さぁ!!俺にお前たちを…………愛させてくれぇ!!!!神々の黄昏(ラグナロク)!!!!!!!!!!!!』

『ぐわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!』

「まさしぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!!!!!」

「うわぁ…………近代兵器三連発から超必殺技って…………えげつないなぁ魔王」

「神楽ウィ~ン。カンカンカーン」

「やはり魔王は魔王だったね」

 

 

トンファーを持った軍服の少年が魔王の必殺技の波状攻撃に倒れ、信の敗けが確定する。ネットの噂程度だと思ってたけど…………本当に相手との体力差が九割で出来るとか…………流石は魔王。

 

 

自分の使っていたキャラが敗けたと分かった瞬間に信はorzの姿勢になる。これは敗けたことがショックだからじゃなくて…………そのあとに待ち受ける罰ゲームに絶望しているのだ。

 

 

「さぁ…………それじゃあ…………」

「罰ゲームを決めるがいい、敗者よ」

「クソッ…………レベルが違いすぎるだろ!!なんであそこから逆転できるんだよ!!廃人か!?ゲーム廃人なのか!?」

「そりゃあね、僕とレアとはやてはこのゲームやりこんでるし、休みの日なんて二十四時間耐久でやってたからね」

「ガチの廃人じゃねぇか!!やりこみ過ぎだろ!!!」

「だって…………外に出ても嫌われるだけだから…………」

「あー!!信君が神楽君苛めたー!!」

「おっと、こんなところにトウモロコシが」

「待て!!待って!!待ってください!!トウモロコシなんて突っ込まれたら俺の尻がガバガバに…………!!あ、あ、あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!」

 

 

今日も今日とて僕らは元気に過ごしてます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「信、大丈夫?」

「あぁ…………まだトウモロコシの粒々の感触が残ってる…………」

「ワハッハ!!うちの逆十字に勝てると思っとるんか!?」

「私のそばもんは無敵」

「クソォ…………あいつら俺の尻を物置か何かと勘違いしてるんじゃねぇか?」

「それが二人だからねぇ」

 

 

レアとはやてがスーツの男性と触手を生やした名称しがたい冒涜的なキャラを使ってバトってる間にあれからのことでも思い返そうか。

 

 

綾木信、彼はあの時に言った通りまた来てくれた。その時にはレアとはやての誤解は解いたんだけどまだ警戒していたらしく、大根と仙人掌を手にして構えてる二人を前にして信はすっごい警戒してたな…………二人に背後を見せないように。でもそれは最初の内だけで僕に危害を加えるつもりがないと分かったら普通に接してくれた。それでもさっきのトウモロコシのような何かしらの物を用意しているのだけどね。

 

 

永劫破壊(エイヴィヒカイト)については神父様とシスターが教えてくれた。なんでもざっくりと言ってしまえば渇望を形にするんだとか。それならあの時の『誰にも触れられたくない』という願いに反応して『超高速移動』が出来たのも納得出来る。

 

 

そしてあの日の夜のことは…………二人には言っていない、知っているのは神父様とシスターと信と僕の四人だけだ。神父様から明かさない方がいいと言われたし、僕も二人にあの時のことを明かす勇気が無い。

 

 

数少ない僕のことを嫌わないでくれる人が僕のことを嫌うなんて…………考えただけでもゾッとする。受け入れてくれるなんていう希望的な観測はしていない。殺人という重たい罪を受け入れてくれる訳がないから。幸いなことに信もこの事を口外するつもりは無いらしいし。

 

 

そしてあの日の夜のことは集団殺人事件としてニュースに取り上げられていた。そりゃあ二十人近い子供が死んでいたらニュースにもなる。神父様と信から聞いた話だと一人だけ生き残りがいて警察に保護された…………でも精神状態が安定してないとかで病院に入院したらしい。どこからそんなことを仕入れてきてるんだろ?

 

 

「だぁぁぁぁぁぁ!!!!敗けたぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

「ア~イムウィ~ン」

「そばもんつえぇ…………つかあんなキワモノキャラで逆十字に勝てるテレジアすげぇ…………」

「よしっ、じゃあ次僕ね。それじゃあ…………べんぼうで!!」

『あぁぁんめいぞぉぉぉぉ!!ぐるぉぉぉぉりあぁぁぁぁぁす!!』

「きた!!吐き気を催すガングロ金髪きた!!これでかつる!!」

「ふっ、私のそばもんに勝てるつもりなの?」

『そっばもぉぉぉぉん!!』

 

 

ガングロ金髪と名称しがたい冒涜的な触手がぶつかり合う。

 

 

うん…………なんていうか…………こんな日が来るなんて考えもしなかったな…………

 

 

レアとはやてと一緒に…………僕が勝手に思ってるだけかもしれないけど友達の信とゲームして笑ってる…………

 

 

こんな日が…………ずっと続いてくれれば良いのにな…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ーーーーーーーーーー集まったわね?」

 

 

夜、海鳴のどこかにある廃工場。そこに神楽と虐殺の現場に立ち会い、神楽と信との戦いを観た愛莉がいた。薄暗い室内で顔は見え辛いがよく見れば他にも何人か集まっている。

 

 

「おいお前、なんで俺たちを呼んだ?それにこの偽善者たちに臆病者たちも一緒に…………」

「偽善者だと?はっ、勘違いしてるキチガイ共にそう言われるとはな」

「何ぃ!?」

「…………帰っていいか?」

 

 

集められたのは全員が転生者、対立している二組と傍観している一組の計三組の集団に分けられていた。偽善者と勘違いしてるキチガイだと言われた二組は今にも争いだしそうな雰囲気で、傍観している一組はそんな二組のやり取りをつまらなそうに見ながら文句を垂れ流している。

 

 

「ーーーーーーーーーー『黙りなさい』」

 

 

怒気の籠った一声で、対立している二組と傍観している一組は一斉に口を閉ざした。もちろん、これは本人の意思で黙ったのではない。愛莉の与えられた特典の『言霊』、明確な意思を持って愛莉の放った言葉を聞いた者はその通りに動いてしまう能力で黙らされたのだ。

 

 

「いい?今は下らない争いをしている場合じゃないわ。黙って私の話を聞きなさい、良いわね?」

 

 

愛莉のただならぬ雰囲気を感じ取った集団は言霊で黙らされた状態で首を縦に動かして肯定の意を示す。実質、この場で一番優位に立っているのは愛莉だからだ。例えば愛莉が言霊で『死ね』と口にしていたら…………この場にいる全員はその通りに死ぬだろう。故に、誰も逆らえない。愛莉を黙らせるよりも早く、死ぬことが分かっているのだから。

 

 

「今日集まってもらったのは…………先日の集団殺人事件のことよ」

「あのニュースでやってたやつのことか?あれって原作に関わりたい奴らが互いのことを邪魔だと思って殺しあっただけじゃないのか?四年前にもそんなことがあったし」

 

 

愛莉の言ったことに傍観していた一人が口を出した。原作に関わりたい奴らというのは先程争おうとしていた二組のことである。救われなかった者たちを救いたいと願う派閥と原作に登場する人物と仲良くなりたい派閥とでの争いは度々あった。一番大きいのは四年前、その時もニュースに取り上げられるほどの死傷者が出たのだ。それ以降大きな物は無いが小さな小競り合いは続いている。彼は今回もその事だろうと思っていたのだ。

 

 

しかし、愛莉はそれを首を横に振って否定した。

 

 

「違うわ…………あれは、一人の転生者がしたことなの」

 

 

廃工場にいる集団がざわめく。特典を持っている転生者たちがたった一人の転生者にやられたと告げられたからだ。その特典はピンから切りまで差はあるがたった一人で二十人近い転生者を殺すなんて異常でしかなかった。

 

 

「ハピネス」

『はい、マスター』

 

 

愛莉がデバイスに告げると、一枚の画像が投影される。そこに写るのは一人の幽鬼、銀に見える白髪と全身を返り血で汚し、左目からダラダラと血の涙を流した中性的な顔をした子供だった。

 

 

容姿だけ見れば優れて、少女にも少年にも見えるのだが…………誰もがその姿を見て、嫌悪感を露にした。

 

 

「こいつが一人で二十人の転生者を殺したわ。特典は恐らく高速移動の類いだと思う。どういう目的でこいつが転生者たちを殺したのか分からないけど…………こいつがいたら、間違いなく原作は破綻するわ」

「…………それで、何が言いたいんだ?」

 

 

勿体ぶった言い方をした愛莉に痺れを切らした一人が苛立たしげな声で尋ねた。それを聞いて愛莉は画像を消して、廃工場にいる転生者たちを見渡す。そしてーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「提案よ、こいつを危険人物と認定して…………排除しましょう?」

 

 

悪どい笑みを浮かべながら、そんなことを口にした。

 

 

 





日常回と裏側でした。

信は教会に入り浸って遊んでます。レアとはやては信のことは受け入れていますが…………何かすれば容赦なく尻に物をぶちこみます。

神楽は現状が楽しくてしょうがない。そりゃあ友達が出来たら嬉しいし楽しいでしょうね。

そして動く転生者たち、生き残った愛莉が転生者たちを先導して神楽を狙ってます。まぁ、気持ちは分からないでもないですね。いきなり現れて殺しまくって消えられたりなんかしたらまた来るんじゃないかと思って警戒するのは当たり前ですし。

だけどそれが正しいとは言ってないですけど。


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