「なぁ、ここでその宝石とやらを見つけて拾ったのか?」
「うん、ここで五つ見つけて、その返りにジブリの祟り神みたいな奴に襲われてなおかつ弓を使ってる奴に襲われたんだ」
「で、そこで宝石捩じ込まれたと…………ったく、どこの馬鹿だ?意図してジュエルシード暴走させようだなんて」
夜の砂浜、僕は信に宝石のことについて聞かれたから拾った場所に案内した。信から話を聞いたところ、あの宝石はジュエルシードと言う名前で違う形で願いを叶える力があるとか…………普通ならあり得ないとかで笑い話になりそうだけど、それを身を持って体験したから笑い話にならない。今もジュエルシードが本物の目になって僕の体の中に残ってるし。
「五つ…………時期を考えると海にあったはずの六つの内の五つか?…………原作とは違う流れ…………まったく、ホント楽しませてくれるぜ」
「ねぇ、あんなのがまだあるなら集めた方がいいんじゃないの?」
「ん?あぁ、心配しなくても我先にって感じで集めてくれる奴らがいるからよ。そいつらに任せておけば大丈夫だ」
「ふぅん…………レアとはやてとシスターに被害がでなければいいけど」
「おいおい、オッサンのことは良いのかよ?」
「神父様なら大丈夫だと思うよ?前にトラックに下敷きにされたときには無傷で這い出してきてたし」
「え、なにそれ、メッチャ気になるんだけど?」
信が言うにはジュエルシードは21個あって、その内の六つが僕の中に入っているらしい。そして間違った願いを叶え、所有者を暴走させるジュエルシードだけど僕の中にあるのはすべて安定していて暴走する気配が無いんだとか…………信とシスターが言ってたから間違ってないと思う。だけどシスターが言うには感情が昂りすぎるとあの日のように暴走する可能性があるらしい。レアとはやてに被害が出ないようにしないと。
「悪かったな、夜遅くに付き合わせて。教会まで送ってやるよ」
「そう?ならよろしく頼むよ」
信は調べものが終わったのか、送ってくれると言ってきたのでそれに甘えることにした。
「こちら赤龍帝、ターゲットを発見した。隣には『快楽主義』の綾木信の姿もある」
『こちら英雄王、了解した。今集まっているのは?』
「龍滅魔法、大剣豪、それとスタンド使いと正義の魔法使いが数人ずついる」
『分かった。なら…………殺れ』
「了解」
「なぁ…………どうして人気の無いところを選んで帰ってるんだ?大通りの方にいけばもっと人がいるだろ?」
「それはね、人に会わないためだよ。人にあったら何されるか分からないからね…………」
「あ~…………すまんかった」
「いいよ、気にしてないし。気にしてないけど…………レアとはやてがいたら危なかったね、なんかハバネロが無かったとか代わりに七味唐辛子をとか言ってたから」
「刺激物!?今度は刺激物入れられるのか!?マジ勘弁してくれよ…………!!」
レアとはやてが企んでることに恐怖したのか信が尻を押さえながら震えていた。しないようには言ってあるんだけど…………なんか信の尻に物を入れるのが二人の最近の楽しみになってるみたいなんだよね。
「まぁまぁ、二人とも信に会えるの楽しみにしてるんだと思うよ?」
「俺に会うよりも俺の尻に物をぶちこむのが楽しみなんだろうが!?出会いからキュウリとゴーヤ入れられるしなんなのあの二人!?俺がそっちの趣味に目覚めたらどうしてくれるんだ!?神楽が責任取っ手くれるのか!?」
「えっと…………それって、信が僕のお尻に(物を)入れるってこと?」
「…………ごめん、頭冷えた、だから言うならきちんと言ってくれ。その言い方だとガチで誤解されかねない…………!!」
「…………?分かった」
なんか信が真顔で言ってきたので頷いておくが…………何がいけなかったのだろうか?後でみんなに相談してみよう。
「そう言えばーーーーーーーーーーッ!?」
僕が話そうとしたときに、空気が変わった。あの日の夜のように閉塞的な感覚、世界が別の色で塗り替えられている。
「これ…………あの日と同じ…………!!」
「結界だと!?ってことはつまり!!」
何かが来ると警戒している僕と黒い銃を取り出して構えている信を取り囲むようにして、僕たちと同い年くらいの少年少女が僕たちを囲むようにして現れる。
「『快楽主義』と『凶獣』だな」
『快楽主義』と『凶獣』?僕らのことを言っているのか?だとすれば狙いは僕らで…………理由はあの日のことか?
「お前たちは危険だ…………だから、排除する!!!」
それを皮切りに誰もが武器を構えたり、手から炎を出したり、魔法使いの杖のような物を出したり、背後に幽霊のような人型を出したり…………手段は違うが、分かることは一つだけ。
こいつらは僕らのことを、殺そうとしている。
「っ!!神楽!!逃げるぞ!!」
「う、うん!!」
現状が良くないと判断したのか信が後ろに向かって駆け出し、それを追うように僕も走り出す。信の足は子供のものとは思えないほどに速い…………だけどあの日から僕の体は変わった。自動車のようなスピードで走る信に遅れることなく着いていける。
「鬼!!」
両手と口に刀を持った少年が斬りかかってくる。が、遅い。信の銃弾と比べれば遥かに遅い。
「斬りぃ!!」
僕も信も、振るわれた刀にかする事無くその少年を通り過ぎる。
次にやって来たのは手から炎を出している少年。
「火龍の咆哮!!」
手から炎を出しているのにしてきたのは口から炎を吐き出したこと。炎の範囲は広いものの、炎その物の速度は遅い。信は左側の塀に、僕は右側の塀に飛び乗って炎を避けて少年を通り過ぎる。
「「「「「「
後ろから魔法使いの杖のような物を持った奴らが矢のような弾幕を撃ち出してくる。これは速度も早く、曲がり角で巻こうとしてみるが僕らの後を追いかけている。
「追尾式か!?面倒なことをしてくれやがるなぁ!!」
信が黒い銃を矢に向かって撃つものの信の銃の弾数は六発、すぐに撃ち尽くして次の弾を装填して撃つがじりじりと距離を詰められている。
「このままじゃ…………!!もっと…………もっと速く逃げないと…………!!」
そうして逃げている内に…………袋小路にへと追い詰められてしまった。矢は信のお陰ですべて撃ち落とせたものの、後ろから足音が聞こえている。
信は強い、それは分かっている。しかし僕がいるせいで信の足を引っ張ってしまっている。信一人ならこいつらなんてすぐに倒せるだろうが僕を守ろうとしているので攻められている。どうにか…………どうにかして、この場から逃げないと…………!!せめて、信の邪魔にならないようにしないと…………!!
その時、頭の中に夢で見た僕に似た彼が乗っていた軍事用のバイクが浮かぶ。
僕の中で何かが噛み合う音がした。
「
そして、意識した訳ではないが…………僕はその言葉を呟いた。
「
そして、頭の中に描いていた、夢の中の彼が乗っていた軍事用のバイクが現れた。どうしてなどと原因を探している暇はない。
「乗って!!」
信に呼び掛けながらバイクに跨がる。信も躊躇う事無くバイクの後部座席に乗ってくれた。
使い方なんてわかるはずが無かった…………それなのに、体が勝手に動く。ハンドルを回し、まるで獣の雄叫びのようなエンジン音を出しながらバイクは走り出した。
「追い詰めたz」
「邪魔だぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
先程矢を放ってきた一人が飛び出してきたが避ける暇も義理も無かったので真っ直ぐに突き進む。そいつは一般的なバイクに比べると大きく頑丈なタイヤの下敷きになり、轢き殺された。
握っているハンドルからエンジンの振動以外にそいつの肉や骨を擦り潰して砕く感触が伝わってくるものの…………それだけだった。心は轢き殺したことに何も感じない。あの日の夜からおかしくなった僕の精神だったがこの時だけはこれがありがたかった。これにハンドルを緩めたりしたら逃げられないから。
轢き殺した奴を無視してハンドルを思いっきり回す。そうして加速し、また囲まれる前にその場から逃げることに成功した。
「すげぇな!!これも
「多分ね!!」
その場から逃げることは成功したものの、相変わらず後ろから追われている。真っ直ぐに走っているが…………どうもおかしい、景色が変わらない。まるで同じところを走っているかのように真っ直ぐ進んでも教会にたどり着けない。
「結界だな。大方、空間繋げて無限ループさせてるんだろうよ。このままじゃここから出られないな」
「じゃああいつらを倒すしか無いの!?」
「そうだ…………俺が行くからお前はこのまま逃げてろ」
「え…………?」
信がそう言うと今まで後ろに感じていた気配が遠ざかる。背後を見れば…………信がいた場所には誰もいなかった。
確かに…………僕が邪魔になってるってのは分かってる。僕がいても足手纏いになることも理解できてる。
このまま逃げてしまいたい。信に任せていれば…………この問題は解決する。
でも…………でも…………
「頭で納得出来ても…………!!心はそうはいかないんだよなぁ…………!!」
僕の勝手な思い込みなのかもしれない、でも友達に全部押し付けて自分だけ逃げているだなんてしたくない。
僕も、信と一緒に戦いたい…………でも、僕にあるのはこのバイクだけ。あの夜のようになれれば戦えるかもしれないがそうなったら信も一緒に巻き込みかねない。
「力が…………欲しいな…………」
戦える力が、
彼と一緒に戦える力が、
力が、欲しい。
『ーーーーーーーーーー失礼、そこの方。少々よろしいでしょうか?』
『(…………この主は外れでしたか)』
とあるデバイスは己の運の悪さに嘆いていた。
そのデバイスの主となった者は正義を名乗っているだけの偽善者だった。
確かに、正義であろうとするその心は素晴らしいかもしれない。しかし、いくら正義を語ろうともそれで誰も助けられなければただの道化でしかない。
問題を見かければその問題を解決しようとする…………表面上だけ。勝手に介入して、問題を解決した気になって、去っていく。
そしてその問題は根本的には解決していないのでまた再発する。
善行をしたような気になって酔いしれているだけの者を道化と呼ばずしてなんと言う。
始めの頃はこれではいけないとデバイスは考えてその主に進言をした…………しかし、返ってくるのはすべて怒声だけだった。
自分は間違っていない、問題はきちんと解決している、知ったような口を聞くな。
何度も何度も進言をして、何度も何度も怒声で返されている内にデバイスは進言をすることを諦めた。主が言うことにはすべてイエスと機械的に答えるだけ。これではわざわざ感情を付けられた意味がない。
『(こんなことなら………素直な可愛らしい主が欲しかったです)』
そう願えど主は代わることはない。デバイスの主はデバイスの考えに気づく事無く、デバイス能古とを相棒だと言っていた…………デバイスはすでに、その主のことを見限っているのに。
そうしてデバイスの主は他の魔導師に呼び出され、転生者を殺す転生者の排除に駆り出された。利用されているのは誰が見ても明らかなのに、その主は自分にしか出来ないことだと張り切っていた。
『(あ、この子可愛いですね…………彼が私の主ならば良かったのに)』
主の言うことにイエスイエスと機械的に答えなから、デバイスはターゲットである転生者の姿を見てそう考えた。主を含めて集められた転生者たちはターゲットの姿を見て気持ち悪いと罵っていたがデバイスはそうは思わなかった。
そしてそのターゲットと、隣にいた別の転生者を襲い…………デバイスの主は、ターゲットがどこからか出したバイクに轢き殺された。
『(轢き殺されましたね、ざまぁです)』
主が殺されたことを内心喜ぶデバイス。そしてデバイスは幸か不幸か主が轢き殺された衝撃で手から離れ、ターゲットと別の転生者が乗るバイクに引っ掛かった。
ある程度追っ手から離れた彼らだったが、別の転生者はターゲットを守るためかターゲットから離れて追っ手に向かっていった。そして残されたターゲットは逃げることしか出来ない自分を悔いているのか、悔しそうな顔をしていた。
「力が…………欲しいな…………」
無力な自分が腹立たしいのか、今にも泣きそうな顔でそう呟いたターゲットの顔はーーーーーーーーーー
『(あぁ…………可愛らしい…………!!)』
そのデバイスのど真ん中だった。
そしてデバイスは死んでしまった主を忘れ、前の主を殺したターゲットーーーーーーーーーー如月神楽に声をかけた。
『失礼、そこの方。少々よろしいでしょうか?』
転生者強襲回、そして形成覚醒とフラグ立てでした。
綾木信が強くない!?と思われるかもしれないですが、彼が強いのは攻めるからです。守りに回れば実力が発揮できません。だから神楽を守りながら戦っている綾木信は弱く感じられます。
そして神楽、形成に目覚める。形成は軍事用のバイクを出してブーンするだけ。形成(笑)とか言わないで。創造位階には神楽が自分の渇望を正しく理解したときに至れます。
フラグなのか分かりませんが神楽に興味を持ったデバイス。可愛い子が好きなデバイス、前の主は神楽に轢き殺された転生者で、正義になっている自分に酔っている主を見限っていました。そして神楽の姿を見ても気持ち悪いとは思っておらず、普通に可愛いと思っています。人格は女性です。
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