放課後、とある男子生徒が教室で1人、居残り掃除をしている。
本来ならしなくていいのだが、なにぶん、彼は美化委員長なので月に一度、こうやって放課後、全ての今日を掃除をしている。
ようやく終わり...となるところで不意にマナーモードに設定していたスマートフォンが鞄の中で光を放つ。
見てみると、メールが送られているようだった。
そのままメールを開くと、若干予想出来た内容に苦笑いする。
『差出人:小猫
Re:遅い
一体いつまで待たせるつもりですか。あと10分以内に来なかったら先に帰りますよ』
親友の[
「・・・待ってくれるのは嬉しいけど...手伝ってくれても罰は当たらないと思うんだが...」
ポリポリと頬をかきながら呟く。
いつも待ってくれるのは嬉しいのだが、今まで手伝ってくれたことは一度たりともない。
でも、例え彼が時間にどれだけ遅れようが待っててくれる優しい女の子だ。
そんな優しい彼女でも待たせるとあとが怖いのでそそくさと掃除用具を片付ける。
最後に鞄を手に持ち教室の電気を消すと、外に出て鍵を閉める。
その後、職員室に鍵を渡しに行くとすぐに校門にいる親友のところへ走って向かう。
彼の名は[
駒王学園2年美化委員長、そして、塔城小猫の親友で、この物語の主人公。
これはその彼のお話。
ー夜の公園ー
「え~っと...明日のパン、携帯充電器...極甘プリンメロン味?あれ?こんなの買ったっけか?」
その日の夜、コンビニによって買い物をしていた紫貴。
買い物袋の中に買った覚えのない物があり、軽く首を傾げた。
ふと過ぎ去った公園に不意に嫌な気がして振り向く。
見ると、変態3人集のうちの一人、兵藤一誠が顔を真っ青にして逃げて来ているようだった。
そのままじっと見ていると目を瞑りながら溜め息一つ吐く。
"切り替えろ"と、そっと自分に言い聞かせて。
そして目を閉じて呟くのは自分への戒め。
「───鏡に写る花
消えることなき
月の守護者として 役割を果たすために
守るために 生かすために
俺は全てを 殺す
───さぁ、解体ショーの幕開けだ───
"
言い終え、開いた瞳に映るのはさっきまではなかった黒い点や線が走る世界。とても脆く壊れやすい世界。
その彼の瞳は先程までの黒い輝きはなく、代わりにその瞳には蒼の光を灯していた。
次の瞬間に彼はその姿を消した。
side 一誠
(なんなんだあのおっさん!?)
俺、兵藤一誠は今、絶賛逃走中です!
今日も松田と元浜の二人とエロDVD見てて、さぁ帰ろうとしたときに黒い帽子をかぶった男に追いかけられたんだ!何かブツブツ呟いてるけど、あまり聞こえないし...
(って必死に逃げて来たけど...ここって夕麻ちゃんとデートに来た公園じゃねぇか...)
そんなこと考えて足が止まる。
それがダメだった。
「さて...そろそろ鬼ごっこも飽きてきたのでな...。そろそろ死んでもらおうか」
見るとさっきの男が空飛んで光の槍を持っていた。
ハァァァァァ!?空飛んでる!?ってかなんだあの槍...
何かものすごく嫌な予感がするぞあれ...
あ、あいつ投げてきやがった!
(ヤッヤバッ...う、うわァァァァァァァ!!)
咄嗟に手で顔を隠し、目を瞑る一誠。
だがいつまでたっても来ない痛みにゆっくりその瞳を開ける。
そこにいたのは、蒼目のナイフを逆手に構えた駒王学園の制服を着た男子生徒だった。
男子生徒はサッとこちらを振り替える。
その顔には見覚えがあった。
(な・・・ッ?紫貴?)
「逃げるぞイッセー!」
side out
「逃げるぞイッセー!」
紫貴はナイフを持ってない左手で一誠の手をひくと、すぐさま林の方向へと駆け出す。
さっきの男も紫貴の登場に呆気にとられていたようだが、すぐに二人を追いかけようと翼を羽ばたかせ空を飛ぶ。
一方男より先に林に着いた紫貴はと言うと、
「イッセー逃げろ!ここは俺がなんとかするから!」
と、一誠を先に走らせる。
もちろんすぐに逃げようとする一誠だったが、逃げようにも恐怖で腰がぬけている。言葉も上手く話せていない。
それを見た紫貴はすぐ一誠を抱えて逃げようとするが、諦める。
いや、諦めざるをえなかった。
「...随分とお早いご到着で」
「チッ、人間風情が...邪魔をしなければ死なずにすんだものを」
先程の男が既に光の槍を構えて上空に飛んでいた。
どうやら見逃してくれる気はないらしい。
また、溜め息を吐くとナイフを構え、臨戦態勢をとる。
男と数秒睨みあったときだった。
先に動いたのは紫貴ではなく男の方。
右手に持った光の槍を紫貴に目掛けて投げる。
少しばかり身体能力がよくても所詮は人間。
これで終わると思っていた。
だからこその油断だった。
「とりあえず...落ちろ!」
「な、ガァ!?ッグゥ!!?」
気付けば男は地面に叩き落とされていた。
─理解できない。そんな表情だ。
それを見て紫貴が口を動かす。
「理解できなかったか?ただの人間に地面に蹴落とされたってことが」
紫貴が行ったのは簡単なことだった。
こちらに向かってくる光の槍を右手のナイフで弾く。
それと同時に男に向かって跳び、勢いのまま、顎を蹴りあげると蹴りあげた足でそのまま頭に踵落としを叩き込んだ。たったそれだけのことだが、速度がおかしい。
(え、なんであのおっさん倒れてんだ?ってか紫貴はいつの間にあんな場所に...)
一誠には見えないレベルの速度でそれを実行したからだ。
そしてゆっくりとこちらを睨みながら立ち上がる男。
「き、貴様ぁ!人間風情がこの私に!」
「まだ立ち上がる、か...なら、仕方ない...」
男は立ち上がり、新しい光の槍を造り紫貴に向かって投げる。
「悪いけど...俺も負けれないんでね」
紫貴に向かって真っ直ぐ飛んできた光の槍。
そのまま行けば直撃は免れなく、後ろで一誠が何かを叫んでいる。きっと、危ない!と似た意味をなす言葉のはずだ。
しかし、その叫びは意味をなさない。
ゆっくりと右手を掲げる。
その行為に顔をしかめる男だが、最早何も出来ないと言う降参を表す意思表示だと感じとるとしかめっ面が不敵な笑みに変わる。
だが、それは降参などではなく寧ろ逆のもの。
槍との距離が1メートル程の距離に近づいた瞬間、掲げられていた右手を目に写らない速度で降り下ろす。
すると、槍は真っ二つに判れ、形を保てなくなり辺りに散布した。
「なッ!?き、貴様一体何をした!!」
さっきまでの笑みはどこにいったのか、怒り、それに動揺を顔に浮かべた男は慌ただしく問う。
それにより紫貴がゆっくり口を開く。
「...なに、簡単なことだ。
「こ、殺した、だと!?」
さも当然のように言いはなった紫貴に男の動揺はピークを迎える。
"槍を殺す?そんなこと出来るものか"そう言い鼻で笑えたならどんないいことだろうか。
だが、最早恐怖で口は言うことを聞かない。
身体も思うように動かせず、額には嫌な汗が滲んでいる。
ついにその背中にある羽で羽ばたこうと、空に逃げようとするも、
「逃がす...かよ!」
男が動く前に紫貴が動いた。
すぐさま男のところまで行く。男は突然目の前に現れた紫貴に驚き反応が遅れてしまう。それを紫貴が見逃すはずもなく、男の頭を左手に持つと前方の木に叩きつける。その衝撃により木が折れてしまうがそんなことお構い無しに突き進む。
「な、ガハッ...!グゥゥゥ!」
そして何本もの木を折りながらぶつけていくと、ついに林を抜けた。すると紫貴は掴んでいた手を離す。そして叩きつけられた衝撃で身動きが取れない男に対して、360度回転しながら強烈な回し蹴りを腹部に命中させる。
それにより男は10メートルほど飛んでいく。
地面に擦りながら止まったときには完全に男の意識はなかった。
ただ死んではいないらしく、ピクピクッと指が動いている。
(立ち上がってくる気配は...なさそうだな。ひとまず一誠のもとに戻るとするか...)
そう思い振り返り─
「...んで?なんでお前がここにいる?フリード」
目の前にいた人物に声をかける。
「なんでもクソもねぇよ、仕事だよ仕事」
銀髪の少年、フリードはめんどくさそうな顔をして答える。
「仕事って、何の?」
「そこののされてるおっさんを連れ帰ってくる仕事だよ...ったく、めんどくさいったらありゃしねぇよ。あ、オイ紫貴、お前代われ」
「流石に遠慮しとく」
苦笑いし答える紫貴。
「チッ...」っと軽く舌打ちしているフリードの後ろには呆然とした表情の一誠。
だが、いきなり変な男に殺されかけて、その男を温厚な友達がボコボコにして後、急に現れた銀髪の少年と会話しているのなら、呆然とするのも仕方のないことだ。
「ったく...それじゃあ俺も帰るわ。じゃあな」
「ああ、じゃあな・・・オイ、フリード。忘れ物」
そう言って紫貴は未だに気絶している男の側に行き、フリードに向かって放り投げる。
それをフリードは背中に背負っている大きな剣を引き抜き、柄の部分で受け止めると男を上に放り投げる。
「...またな」
大きな剣で空間を裂く。
すると、黒い渦のような塊がフリードの前にでき、それに重力の法則に従って落ちてきた男と共にフリードは入っていく。
フリードの体が全部入り終わった瞬間黒い渦は閉じ、跡形もなく消えさった。
「...さて大丈夫か?イッセー」
「え!?ッあ、ああ!うん、なんとか」
呆気にとられていた一誠が返事を返す。
無事を確認し、一誠の方へゆっくり歩いて行こうとすると突然一誠と紫貴の間が赤色に輝く。
一誠は驚き、片手で両目を隠す。それに対して紫貴は瞳を細めて光を見る。
光の中から現れたのは紫貴の蒼い瞳と対をなすような紅髪の女性。
───蒼と紅が出会う時、物語りは幕を開ける
「...さて、いきなりで悪いのだけど質問いいかしら?」
───月の守護者が歩む道は光か闇か
「あなたは誰なの?」
───それを知るのは
「俺は... そうだな」
───今はまだ誰もいない
「ただのしがない...