「殺人貴... ですって?」
怪訝な顔をする紅髪の女性。
だがそれも仕方ないことだろう。
目下の少年は自分のことを殺人貴と言ったのだ。
"とてもそんな風には見えない"そう言おうとして固まる。否、動けなくなる。
(何... なの?あの目は...)
"あれは危険だ"そう彼女の本能が叫ぶ。
蒼く輝く瞳はこちらを見据えているだけだ。
だが、その存在感は凄まじい。
とにかく、一度臨戦態勢をとろうとした彼女であったが、
「そう...ですね。通称みたいなものですよ。
───本当の名は矢吹 紫貴。あなたの1つ下の学年の17歳です」
彼はそうこちらの呟きに答えると一旦目を閉じる。
そして再び開けられた瞳は先程の蒼い輝きはなく、黒色のいつもの瞳にもどっていた。
驚きに目を見張る女性とは違い、涼しげな顔の紫貴は淡々と言葉を紡ぐ。
「あなたは...たしかリアス・グレモリー先輩であっていますよね?」
「... なんで私の名を知っているのかしら?」
自分の名前が知られていたことへの驚きを隠し、余裕を見せて答えるが、それはただの見栄を張っただけである。
「なんでって... そりゃ有名だからですよ。表でも、裏・・・でもね...」
「ッ!!」
やはり... そう言いそうになり咄嗟に飲み込む。
彼は裏の人間。それもかなりの手練れ。
本当なら今すぐ逃げ出したい。
だけど、
(彼を放っておくと危険だわ...この土地の管理者として、彼は私が何とかしないと...)
彼女は決して逃げることはしない。
それはこの土地を任されているという責任と、彼女自信のプライドからであった。
だからこそ早めに手を打とうとするが、
「ん... あっ・・・すみません俺ちょっと用事があるんで失礼させていただきます。それじゃまた明日、学校で!」
「えっ、あっちょっと!」
言いたいことだけ言った紫貴はトンッと地面を蹴ると一瞬で辺りから消えた。
伸ばした手は虚空を掴みやがて降ろされる。
(なんだったのかしら... )
───ひとまずは
兵藤君をどうにかしなければっ、そう考えるリアスであった。
音もなくビニール袋の近くに着地すると何か盗られてないか確認する。
幸いにも盗まれてはいないようた。
(はぁ、よかった... )
紫貴が急いであの場から逃げたのは2つ意味がある。
1つは荷物。道端に置いてきたため、盗まれてないか心配だったからだ。
もう1つは───
「さてと、帰りま...ッ!・・・ゲホッゲホッ... 」
見知らぬ人の前で倒れるのを拒んだためだ。
ビニール袋が再び地面につく。
強い浮遊感。
膝が崩れ落ち、手をつこうとしてもやはり力が入らず地面に倒れてしまう。
そして、息を吐くたびに赤い血が。
これは先ほどの力のデメリットのようなもの。
使用後は力が抜け、吐血してしまう。
だが詠唱なしにあの力を使うと、このような症状は起きない。しかし、詠唱なしだと使う度、寿命が縮む。
どれだけ短くても減ってしまう。5分につき1年。一時間使えば12年。
デメリットだらけの能力。それだけ死を視るというのは代償が大きいものだ。
(あぁ、くそっ... 目が霞んできた...家は目の前だってのに... )
そして心のなかで悪態をつくと紫貴の意識はブラックアウトした。
まだ倒れていると錯覚してしてしまったがどうやら今自分は立っているのだと、一瞬で気づいた。
目を開けるとそこは先ほどの道端の上ではなく、なにか黒い靄がかかっている夜の森林。
あぁ、またか... そう思い森林をゆっくりと歩く。
知っている。俺は知っている。この森を。この匂いを。この土の感触を。
(なら... そろそろ見えるはずだな。あれ・・・が)
上を向く。そして瞳に映るのは大きな城。
そしてこれもまた自分は知っている。
名は確か、
(■■■■■■■■■■■■■■)
すると城は役割を果たしたかのように跡形もなく崩れ始める。
そして空を見上げて目を見開く。
「な、なんでお前が... 」
崩壊する城の上には見知った女性。
金色の髪に赤い瞳。
彼女は悲しげな笑顔を浮かべると、一筋の涙を流した。
またね。そう言って崩壊する城と共に消える。
咄嗟に手を出しても。どれだけ速く走っても。
掴めない。追い付けない。
あぁ待ってくれ。待って、待って!
「待って!」
「... 何を待つんですか?」
「え、あ、あれ?」
目を覚ますと知らない天井なんてことはなく、自分の部屋の天井だった。
急いで起き上がったために布団はめくれてしまった。
(あ、そっか... 夢、だよな・・・ん?)
自分は確か... 一誠を助けに行って、道で倒れて... あれ?
「なんで俺自分の部屋に... 」
「... 私が運んだからですよ、バカ紫貴」
「う、うぇぇぇ!?小猫!?なんで!?」
気がついて驚愕。おかしい。この友人がなぜ自分の部屋にいる?
謎がとけないままでいると、小猫がわざとらしくため息を吐き謎を教えてくれた。
「... もう一度言います。私が、ここまで運んだんです。帰り道にどっかの誰かさんが自分の能力でぶっ倒れてましたからね」
「あ... あは、あははははは・・・ありがとうございますそしてごめんなさい」
(バレてた... )
厄介ごとになった、そう心で呟くと目の前の爆発寸前の原子爆弾を見る。
その無表情は端から見たらわからないかもしれないが若干眉が八の字になっている。
(キレ・・・てるな完璧に)
「前に使わないと約束したはずですけど... 約束破りはお仕置きですね」
「いや、ちょっと待ってって!今回は人?いや違うなえっと悪魔助けしただけだから許してよ!」
「悪魔・・・?誰ですか?」
「あ・・・」
墓穴ほった・・・そう思っての後の祭りなもので。
お仕置きはなくなったかもしれないがこれじゃあ誤魔化してもバレて結局本当のこと言うまで追及される。
ため息一つ。そして腹をくくると名前をだす。
「兵藤一誠だ。堕天使の野郎に襲われてた」
「・・・あぁ」
「いやちょっと待てよオイお前完璧に忘れてただろい─お仕置きしますか?─よしっ、明日も学校早いし寝るか」
そう思い急いで布団を被ろうとするが、布団が被れない。
(あぁ、しまった。俺今力入んないんだっけ)
それを察したのかため息を吐きながら布団かけてくれる小猫。
ありがとう、そう言って寝ようとして
「... 私あっちの部屋で寝るから何かあったら起こして」
「あ、はい・・・おやすみ」
「... おやすみなさい」
部屋からでて行った小猫を見て思う。
(あいつ... 今日で何回目だっけ?俺の家に泊まるの)
まぁいーやと呟き目を閉じる。
明日は多分大変だ。説明とか色々で。
でもひとまずは
(疲れた... )
ゆっくり休むとしよう。
紫貴の意識は再びブラックアウトしたのだった。
小猫の口調がわからない... !