デート・ア・ライブ-IF Story-(仮) 作:十文字氷架
感想で規約について教えてくれた人、ありがとうございます。次からは気をつけますね。
Episode-Ⅰ 過去との再会
-???-
「ようやく君をラタトスクに送ることが出来るんだね…」
そう呟く、車椅子に乗った老年の男の前には、桃色の髪の少女が立っていた。
「…君には8年もの間苦労をかけた」
「そのようなこと、お気になさらないでください、ウッドマン卿。あなたに拾われなければ、私はこうして、今日まで無事に生きてはいられなかったのですから」
にこりと微笑む少女につられて、男は破顔する。その後すぐに表情を引き締め、言葉を続けた。
「…今日で訓練の全過程は終了。君もようやく
「…はい」
「最初にも言ったとおり、彼に五河家に預けられる前の記憶は殆ど無いと言っていい。DEM社に所属していた彼の実妹も同様にね。それでも…行くのかい?」
「もう、覚悟は出来ています。…例え私のことを覚えていなかったとしても、私が彼の、彼の妹の力になりたいんです」
厳しい表情を向ける男の目を少女は真っ直ぐに見つめていた。
「…決意は固いようだね。なら、私から言うことは他にない。任務を遂行した後は好きに過ごしたまえ」
「了解しました、ウッドマン卿。では、行って来ます」
「ああ。年寄りの冷や水かもしれないが…君のこれからに幸運を願っているよ」
男に敬礼をし、少女は部屋を出て行く。
「頑張ってくれ、凜袮くん。世界の存亡は君と彼らにかかっているんだ…」
男の呟きは誰に聞こえることもなく、虚空へと消えていった。
-フラクシナス艦内-
「特別顧問?」
「ああ。今日の夕方にはここにくるそうだ」
「何よそれ…聞いてないわよ」
「連絡が来たのは昨日の深夜だ。どうやらシンと真那くん、それに或守の二人の件でよこされるらしい」
「士道と…真那?それに鞠亜と鞠奈の件で、ってなんか怪しいわね。また
「ご心配には及びませんよ、司令。どうやらウッドマン卿直属の方だそうですので」
「ウッドマン卿の…?」
「ええ、サプライズも兼ねて、詳しい内容は送る本人から聞いてほしいとのことです」
「サプライズ…なら、悪いことではなさそうね。まあ前例がないからなんとも言えないけど」
「確かに、ウッドマン卿からサプライズというのは、初の試みです。フラクシナスの通信記録には、その類のものは残っていませんでしたので」
「琴里の言うとおり、悪いことではないんじゃない?もし悪いことなら、あの叔父様は口頭でこちらに伝えるもの」
「ま、そうよね。…考えても仕方ないし、待つことにしましょ。他にウッドマン卿からは何かなかったの?」
「シンに真那くん、或守たちは必ず。それとなるべく多く精霊たちを集めてほしいとのことだ」
「ふむ、精霊たちは美九と狂三以外はどうとでもなるとして…問題は真那ね。昨日また病院を脱走したばかりで、居場所がわからないのよね…」
「それなら私たちに任せてください、琴里」
「ええ、或守の名にかけて夕方迄には回収してみせるわ」
「頼もしいこと言ってくれるじゃない。それなら真那の回収は任せるわ。夕方までにはお願いね」
「「了解(です)(よ)」
「はあ…」
「む、大丈夫か、シドー」
「ああ、ちょっと寝不足なだけだ。悪いな心配かけて」
「いや、元気ならば良いのだ」
士道は月曜の朝、十香と一緒に学校に向かっていた。
「(十香にはちょっとって言ったけど、やっぱり結構きついな…)」
ここ数日夢に見る、士道のことを名前で呼ぶ桃色の髪の少女。そのことがしきりに脳裏をチラつく。というのも…
「(昔の記憶…みたいなんだよな。見たことない公園で遊んでる風景だけど…小さい頃の俺がいた)」
夢のことについて深く考えるほど、頭痛に悩まされる。そのせいか朝早くに目が覚めてしまい、そのまま眠れずに起きていることが多くなった。…そろそろ令音さんに睡眠薬でももらったほうがいいのだろうか。
「何を立ち止まっているのだシドー!遅刻してしまうぞ!」
「え?て、ヤバッ今行く!」
寝不足で軋む体を無理やり動かして、士道は十香を追っていった。
―2-4教室―
朝から全力疾走をするハメになったが、HRの10分前には間に合ったようだった。士道は自分の席に座り、荷物を置くと、ぐでっ、と机に体を投げ出した。
「あー、なんとか間に合ったか…」
「どした、元気ないな五河」
「殿町か…悪い、ちょっと寝不足でな」
「まあ無理はすんなよ。…それよりな、耳寄りな情報があるんだがちょっと聞いてくれるか」
「…聞くだけなら」
「おう、ありがとよ。実は情報は二つあるんだが、どっちから聞きたい?」
「…じゃあ悪い方で」
「いやいや別に良いのと悪いのの二つじゃねえよ。…順番に話すか。まず今日は席替えがあるんだと。ちなみに今回は特例での席替えってやつは無しだそうだ」
「へー、なんでまたそんなことに」
「自分の胸に手を当てて考えてみろ五河」
「は?」
軽い感じで話をしていた殿町が、急に真剣な顔つきで士道の両方を掴む。なんのことだ?と一瞬思ったが、思い当たる節があったので、黙っておいた。おそらく十香や折紙のことであろう、と。
「五河はもう少し、今の自分の立場というのを考えて発言してくれ」
「あ、ああ、すまん」
「分かればいいんだ。急に掴んで悪かったな」
殿町は笑いながら、士道の肩から手を離した。…教室の隅に固まっていた腐女子らしき集団から、
「やっぱり、殿町くんが攻めよね!」
やら、
「五河くんの戸惑った顔、イイわね。新刊のインスピレーションが湧いてきたわ!」
などといった発言が聞こえたが、聞かなかったことにしよう。
「あ、それと情報の続きだ。…これはかなり極秘なんだがな。今日うちのクラスに転校生が来るらしい」
「転校生…この時期にか?」
「その様子だと、これに関しては思い当たる節は無いみたいだな。なんでも特殊な事情の子で、海外から来るらしい」
「海外ってことは外人なのか?」
「いや、どうやらそのへんも特殊らしくてな。こっちでの意思疎通は問題ない子らしい」
「となると日本人か。性別は?」
「お前に確認とるんだ。女子に決まってるだろ?」
「…ああ、なるほど」
危なくさっきのように聞き返すところだったが、寸でのところで気づいて言葉を飲み込む。それでいい、とでも言うように殿町は腕を組んでうなづいた。と、そこで先生が教室に現れた。
「はーい、みなさん席についてくださーい。朝のHR始めますよー!」
「お、もう珠ちゃん来ちまったか。じゃな五河、俺は席に戻るぜ」
殿町をはじめとして、クラスメイト達が席に戻っていく。先生が全員揃っているのを確認し、連絡事項の伝達を終えると、教卓の下からくじを取り出した。
「それでは知ってた人もいるかも知れませんが、今から席替えをします」
どうやらかなり席替えの噂は広まっていたようで、教室内がワァッと賑やかになる。みんな随分と楽しみにしていたようで、我先にとくじの前に並んでいた。
「五河くん、引かないんですか?五河くんで最後ですよ」
「え?あ、今引きます!」
列を後ろから眺めていたら、いつの間にか他の全員が引き終えていたようだ。士道がくじを引いて番号を先生に伝えると、先生の点呼で一斉に席替えが始まった。
結果として士道の席は変わらなかったが、折紙は廊下側の中ほどの席。十香は窓側の前の方の席と見事に離れていた。
「お、なんだ後ろは五河か。よろしくな!」
「…正直お前が近くで助かった。よろしく、殿町」
「はは、お前仲いいやつ少ないもんな」
「余計なお世話だ」
「ところで、五河。お前の隣の窓側の席が空いてるが誰の席なんだ?」
「え?…ほんとだ、空いてるな」
席替えを終えたのに、士道の横の席は空席だった。何故かと首を傾げていると、先生が話し始めた。
「はい、席替えは終わりましたね。さて、隣が空席の人は手を挙げてくださーい」
「はい、俺ですけど」
「あ、五河くんでしたか。おめでとうございます!」
「へ?」
「そこはなんと、今から紹介する転校生さんの席なんです。なんと可愛い女の子ですよ、良かったですね五河くん」
先生がそう言うと、また五河か、とでも言うようにクラスの男子の殺気立った視線がこちらへ向けられる。だがそんな男子達の視線の何十倍も恐ろしい殺気が士道の、正確には士道の隣の席に向けられていた。これは見なくても分かる。多分、折紙だ。
「は、はは…そうですね」
士道は先生に対して乾いた笑いを漏らすしかなかった。
「では、早速転校生さんの紹介と行きましょうか。入ってきてください、園神さん」
「はい」
先生の合図で、園神と呼ばれた生徒が教室へと入ってくる。お手本のような綺麗な字で黒板に名前を書くと、生徒たちの方を向き、ペコリと一礼した。
「アメリカから来ました。園神凜祢と言います。家庭の事情で幼い頃に海外に引っ越しましたが、れっきとした日本人です。これから、よろしくお願いします」
園神凜祢と名乗った少女を前に、クラスの男子は色めき立ち、女子は感嘆の息を漏らした。あまりに綺麗な、それこそ十香や折紙と同レベルの美少女だったからだろう。だが士道はそれとは別の意味で衝撃を受けていた。
「(夢で見た女の子に、似ている…)」
睡眠不足の原因になっていた夢に出てきた少女が、成長して自分の前に現れたのだ。驚くのも無理はなかった。
「では、園神さん。席は窓側の一番後ろ…五河くんのお隣です」
「わかりました、先生」
先生に言われて園神がこちらに歩いてくる。そのまま士道の前まで来ると、こう言った。
「よろしくね、五河くん」
そう言われて、士道はズキリと胸が痛む。昔は名前で呼んでいたじゃないか、と根拠のない夢の記憶を思い出して、胸の内で悪態をつきながら。夢とは違う呼び方で、ちょっとした意趣返しのつもりで、こう返した。
「よろしく、園神」
園神は、一瞬悲しげな表情を浮かべ、すぐに笑顔に戻り、席に座った。それを見た士道の中に、一つの疑問が浮かぶ。
「(…まさか本当に夢に出てきた子と同一人物なのか?いや、そんな――)」
考えても分からない。士道の胸中にモヤモヤとしたものが浮かんだまま、先生の授業が始まった。
※この小説に出てくる殿町は
・士道との友情度五割増
・社交性七割増
・エロス三割減
・士道への嫉妬(主に女の子関係)八割減
になっていますのでご了承ください。
とりあえず一話でしたがいかがだったでしょうか?
わかりづらいかもしれませんが、フラクシナス艦内のシーンで話しているのは、琴里・令音・神無月・鞠亜・鞠奈の5人です。一応口調には気を使って書いたのですが…
士道の夢についての描写は何度も書き直したのですが、うまくいかなかったのでやむなくカット。内容としては、崇宮にいた頃の士道と真那が凜祢と公園で遊んでいる、といったものです。
章タイトルも二年前から構想していたものだったのですが、まさかの凜緒リンカーネイション限定版の特典小説のタイトルが凜緒リユニオン。まさか同じ単語を使われるとは…ま、まあ凜緒と凜祢で違うので大丈夫でしょう(そうであってほしい)。
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