設定
スカ博士産の技術を利用した本局連中がやってる人造魔導士計画の産物。
違法研究所の場所が陸の管轄であるミットチルダの一角であったため、髭中将派閥の部隊が発見して確保。
既に自我を確立した個体であったため、本局派閥との取引(証拠隠滅その他)の結果、地上本部側で戸籍作成&局員としての立場を用意して働かせる事に。
外見はクローン元であるなのはさんじゅうはっさいとそっくりだが、遺伝子調整の結果、運動性のバグは見られない。
しかし促成成長や実験の後遺症か、その味覚や視覚等が弱いため、専用の機能を追加したインテリジェントデバイスと機械式眼鏡で補っている。
が、その中身はTS転生者(よく見る設定)。
しかも本人がメカ・ロボ・SF好きの「身体が闘争を求める→アーマードコアの新作が始まる」な人だったため、デバイスのデザインとかが徐々にそっち寄りになっていく。
基本的には銃火器、一部SF的ホバーバイクやパワードスーツ染みたデバイスを使用する。
なお、本人は「クローン?どうせだからその設定に寄せてみるべ」とばかりに髪型をボブカット(目が隠れる長さの前髪)と変装兼多機能メガネを追加、口調を上司に当たるオーリスの様なキビキビとしつつ、感情を見せない丁寧口調にする。
本家本元に似た容姿をしているが本家よりも釣り目であり、それを眼鏡と前髪で隠している。
更に食事は味覚弱いからって全部サプリメントにして、日がな一日デバイスを弄ってるかネット回遊か訓練か寝るのローテーションである。
本人的には食事はすっぱり諦め、趣味と実益なデバイス弄りとその調整と開発のための訓練、そして色々治療中のために人よりも休息が必要なので多めに寝てるだけ。
そんな事してるので、職員としての戦果は凄まじいものの、人間味のない人型の戦闘兵器として見られているため、周囲の職員からは距離を取られている。
しかし、直属の上司であるオーリスからは何だかんだ世話になってるし、子供扱いを受けて戸惑う様子(ふり)を見せ、ふわもふな動物には相好を崩したりする。
その様子に髭達磨ことレジアス中将の癒しとストレスと罪悪感のゲージががつがつ上がって良心を痛めつける事になる。
一人称は「私」。
セリフは「私に何か落ち度でも?」、「了解。戦闘行動を開始します。」
デバイス「エモーション」訳:感情。愛称エミィ
レイジングハートを参考にした、試作インテリジェントデバイス。
主にクローン主の体調管理を目的とした医療デバイスであり、本来戦闘用ではないが、本家本元がバリバリの戦闘用なので拡張領域が大きい。
が、保護された後にクローン主の戦闘用デバイスとしての機能を追加された。
当初は一般的なミッド式の杖型だったが、主が自前の給料とか貰い出すと好き放題に改造されていった。
元が医療用であるため、医療目的の身体操作や脳内物質を始めとした分泌物の調整が可能で、クローン主を限界まで酷使する事が可能。
なお、彼女本人としては自分の主人に遠まわしな自殺をさせてるようで嫌がっている。
最初期の一般杖型→実戦を経験してのアサルトライフル型(ブッシュマスターACR似)→ホバーバイク型を追加→パワードスーツ型(白栗AC4)を追加→パワードスーツ型を折り畳み式にしてホバーバイク型に搭載→撃破・重傷になっても戦闘可能になる再起動機能を追加→スカ博士捕獲後に再改造されてペーパープランだった白栗(ACFA)仕様に。
一人称は「本機」。
セリフは「システム正常。準備完了。」、「目標達成。帰投しましょう。」
………………
その個体の最も古い記憶は、暖かい羊水に似た培養液の中での事だった。
自身の心音と周囲を満たすやや粘りのある培養液の温度と感触。
それが唐突に終わったのは自分の周囲、培養槽の外が俄かに慌ただしくなった時だった。
時折視界に入る白衣の研究者達が慌ただしく走り回り、何事かと叫びながら大急ぎで作業をしている。
そこに杖を構えた物々しい雰囲気の者達がやってきて光を放ち、研究者らを静かにさせていく。
そして、遂に自身の存在に気付いた乱入者達が険しい顔でこちらを見て何事かを話している。
「プロジェクトFの遺産か…回収部隊の手配は?」
「間もなく到着します。こいつの回収には少々時間を頂きますが…。」
「全て抜かりなく回収させろよ。こいつにはそれだけの価値がある。」
聞き慣れない筈の言語なのだが、何故か明瞭にその発音を聞き取れるし、その内容も分かる。
はて?こんな英語みたいな言語、自分はこの様に明瞭に聞き取れる筈は無いのだが?
「む、意識レベルが上昇していますね。こちらの会話を聞いている様です。」
「今はまだ眠らせておけ。暴れでもされたら面倒だ。」
その後、直ぐに眠ってしまった。
……………
ミッドチルダ首都 クラナガン再開発地区にて。
犯罪組織との大規模な戦闘の末、復興のための再開発が必要となった人気のないこの場所で、一台の大型バイクが無人の道路を駆けていた。
白く大型のソレは何処かCB1300Pに似たデザインだが、銃型デバイスを保持する補助腕が後部車輪の左右に配されたボックスの上に設置されており、何処かテクニカルに似たちぐはぐさを覚える。
それもその筈で、この車両はバイクにあってバイクにあらず。
魔導士の用いるデバイスと同質の素材で構成された高級品であり、インテリジェントデバイス並びカートリッジを搭載しているため、単体での魔法行使が可能な車両型デバイスなのだ。
そんな際物の持ち主は管理局指定のBJから不要な装甲を排した黒のライダースーツ型のBJを纏い、ヘルメットの奥では自身の相方たるインテリジェントデバイスの出す情報を受け取り、現場へと急行していた。
『クラナガン再開発地区にて事件発生。現在、陸士部隊が武装組織に対して応戦中。』
「武装組織の規模並び武装は?」
『総勢30名程。武装は小銃並び短機関銃。…対装甲ロケットの使用を確認。』
「逃走経路並び到着と先回りまでの時間は?」
『複数の軽武装車両を確認。推測ですが分散した後に地下に潜るのではないかと。』
「一網打尽にするには…」
『このまま全速力で急ぐのが最善かと。』
「最短ルート、算出次第最大速度で。」
グン、と体が後方に押し付けられるが、直ぐに平常に戻る。
自身が搭乗する大型バイク「レイブレード」が慣性制御を行使したのだ。
通常の車両ならとっくに事故を起こす様な、法定速度の二倍は出してでも急ぐ理由。
それは自身が治安を維持する側、時空管理局の末席に属するからに他ならない。
三権分立に喧嘩売ってるし、身内でなぁなぁな部分の多いこの組織だが、それでも治安を、秩序を守る側であるのは間違いない。
例え過剰な拡張主義で人員の補充が追い付かず、少年兵どころかクローン兵の実用に踏み切りつつあるとしてもだ。
『敵施設内にてAMFの展開を確認。減衰率…12%。』
「その程度なら問題ない。目標視認、このまま突入する。」
『了解。衝角展開。』
武装組織のアジト内部では、即席のバリケードを築いた武装勢力による抵抗が続いていた。
地の利は向こうだが、数の利は武装隊にある。
押し切れないのは薄らと展開を確認できる魔力結合阻害力場のせいだろうか。
だが、そんなものは高速度の質量体の突入の前には無力だ。
攻性障壁たる衝角術式を正面に展開し、壁の向こうにいる敵兵目掛けて突貫する。
その一撃は容易にコンクリート製の壁を粉砕し、内部にいた敵兵は飛散する瓦礫によって大なり小なり負傷する。
その意表を突かれた瞬間、
「散弾、フルオート。」
『了解。』
瞬間最大火力を叩き込む。
自身の右手に1丁、バイク型デバイスの後部サブアームの2丁によって、視界内の敵兵全てに対して散弾のシャワーをプレゼントする。
バタバタと悲鳴すら許されずに敵兵は倒れていく。
と言ってもちゃんと非殺傷設定はされている。
死んではいない、トラウマかどうかは…本人次第だろう。
『通路奥、増援7名。』
「排除する。」
衝角術式はそのままに、通路をバイクで走行する。
本来、施設内においてはやはり通常通り徒歩の方が向いているのだが、幸いにもこの建物の構造は二階建ての地下無し、階段は比較的緩やかな屋内のものと非常用の屋外のものだけで、後は通路に沿って作業部屋や事務部屋があるだけ。
「通常射撃、フルオート。」
『了解。』
標的は既に殆どが通路にいるので、後はそこを掃射すれば良いので降りなくても良い。
廊下の角で待ち構えていた敵兵らが銃撃を加えてくるが、その程度では張ったままの衝角術式には傷一つつかない。
桃色の魔力弾の射撃に、銃を向けていたテロリストらは成す術もなく倒れていった。
『目標、車両2台での移動を開始。』
「追えるか?」
『問題なく。』
そのまま施設内をインテリジェントデバイスの提示するルート通りに爆走し、階段を駆け上がり、二階の窓を突き破る形で目標達の搭乗する車両の真上へと躍り出る。
『目標周辺にAMF確認。』
「多重殻弾、フルオート。」
通常の射撃魔法とは異なり、装甲の分厚い目標やAMF環境下での使用を想定された多重殻弾は遺憾なくその効力を発揮した。
ほぼ真上からフルオートで降り注いだ多重殻弾の雨はAMF影響下のテクニカル車両の屋根を易々と貫き、内部にいた目標へと命中、その意識を刈り取った。
が、そんな事をすれば当然運転手の意識も失われ、目標の車両2台はバランスを失って横転、或いは道路沿いの建物へと激突して止まった。
「エミィ、あの建物は?」
『現在では無人となっています。法的な問題はありません。』
「目標のバイタルは?」
『全員セーフです。魔導士もいません。』
「チェックした後、後続の陸士部隊との交代を以て帰還する。それまで現場待機。」
こうして、彼女とその相方のいつも通りの一日が過ぎていった。
……………
彼女にとって、生まれた時から一緒のインテリジェントデバイス「エモーション」は唯一の家族であり、戦友であり、半身である。
故にその整備は頻繁かつ丁寧であり、時には日がな一日整備している日もある位だ。
しかし、彼女の外見年齢は11歳であり、まだまだ育ち盛りで食べ盛りで遊びたがり。
本人がどう思っていようが、お節介な周囲の人間からの干渉はこと管理局という場所では兎角多い。
「ナズナ、偶には外に出なさい。」
「…オーリス。」
彼女の後見人の娘であるオーリス・ゲイズがノックも無しに入室してきた。
如何にもできる女・the秘書・お局様な印象の彼女だが、その実態は母性溢れる優しい女性なので、当たりのキツささえ直せば引く手数多だろう美人さんだ。
「今、何か、不快な事を考えなかったかしら?」
「…イイエ、チットモ。」
「チッ、まぁ良いわ。」
時折後見人である中将閣下を肝胆寒からしめる威圧感を放つ彼女ではあるが、根は優しい人なのだ。
「いい加減に外出なさい。エモーションと一緒にいるのは楽しいでしょうけど、引き籠るのは不健康よ。」
「…わかった。」
「言っておくけど、デバイス屋巡りは禁止ね。」
ズガビシャガーーーンッ!!
とばかりに衝撃を受けたナズナが固まる。
正直、そこ以外は行く気が無かったのに、いきなりそこを禁止されてしまっては何もする事がない。
読書やカタログなんかはネットを漁れば出てくるし、ゲームも同じ。
何か食い歩きをしようにもこの身体は味覚と視覚が弱いため、そういったものを楽しむ事も出来ない。
視覚は機械式眼鏡とエミィの補助でどうともでもなるが、味覚ばかりはどうにもならない。
だから、食事は専らカ○リーメイト風栄養食とミネラルウォーターかスポーツドリンクとなっている。
興味がない訳ではないが、今はエミィを弄っている方が楽しいのだ。
「…一体、何を、すれば…。」
「そんな途方に暮れたように固まらないの。偶には私と一緒に服でも見繕いましょう。」
今日は偶々休みが取れたから、と宣うオーリスに、しかしナズナは首を左右にちぎれんばかりに振る事で意思を示した。
誰だって好き好んで着せ替え人形になりたくはないのだ。
加えて言えば、男性としての精神性を持ったナズナにとって、ファッションなんて見苦しくない程度であれば十分であり、衣服等は実用性さえあればそれで良いのだ。
「ダメよ。中将からも貴方の情操教育担当は私と言われているんですから。」
「……いやー、冗談キツイっす。」
「またそんなスラングを…。」
嘆かわしいとオーリスが頭を振る。
しかし、この手のサブカルチャーへの親しみは前世からの習慣だったので、精神の安定のためにも欠かせないのだ。
「……1着。」
「7着。貴方どうせ前のも着てないでしょう?」
「……3着。」
「6着。各季節ごとのものも買いなさい。」
「……3着。」
「5着。靴は大丈夫?」
「……3着。後サンダル。」
「今回はそれで許してあげます。さ、支度しましょう。」
こうして、毎度の事ながら姉貴分に当たるオーリスによって、ナズナは強制的にショッピングへと連れていかれるのだった。