徒然なる中・短編集(元おまけ集)   作:VISP

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うむむ、まともに描写すると際限なく執筆する事に…某氏の様な300話とか心が折れる(確信

一応、予定では大差ない部分は全スルーして(例:イベント特異点)、主人公の存在による変化とオルガマリーとの交流を主軸に描写していく予定です。
一つの特異点につき5話前後で、一話辺りは最低三千字位かな?

なお、10話以上になったら個別連載枠にしますので、それまで応援よろしくお願いします。


FGO×デモベ第3話

 比較的被害の少ない海岸近く、その一角にある武家屋敷。

 辛うじて被災を免れたその場所は、元々は名も無き魔術師の工房であったらしく、簡易ながらも魔術的な警報が仕掛けてあった。

 とは言え、既に機能を停止していたので、オルガマリーは手早くそれを復活させ、更に人除けの結界を重ねた上で、漸く腰を下ろした。

 

 「取り敢えず、状況を整理します。」

 

 そう言って茶の間のテーブルに付くと、オルガマリーは端末から冬木市の地図を表示した。

 それは元は平常時の冬木市の地図を指していたものだが、今はデータを更新したのか、レイシフトで出現した新都(大橋より)から現在の旧市街地までは地形の変化が記録されていた。

 そこには隕石でも降ってきたかの様な巨大クレーターやビームで焼き払ったかの様な長大な破壊痕が記録されており、この都市の現在の異常性を如実に物語っていた。

 

 「現在、私達は特異点となった冬木市にレイシフト。戦力はこの場の四人のみで、カルデアは消火活動と施設復旧及び要救助者への対処で手一杯。」

 

 そして、テーブルの上に七つのペンを置く。

 

 「恐らく、此処を破壊し、住民を殺傷したであろうサーヴァント達の対処をしつつ、この地の特異点を解消しなければなりません。」

 

 サーヴァント。

 本来、制御など絶対できない英霊を人間でも維持・運用できる様に矮小化した最上位の使い魔。

 それは熟練の魔術師であっても完全に御し切れるものではなく、最上位のサーヴァントに至っては唯一の安全機構である令呪すら易々と突破してのける。

 攻撃力に至っては、個体にもよるが単体で主要国家の軍隊を壊滅する事も可能な、人類が現在まで運用可能な兵器の中では最強の存在だ。

 

 「この地における聖杯戦争と言われる魔術儀式によって召喚された七騎のサーヴァント。彼らがこの事態の原因なら、聖杯をどうにかすれば解決します。」

 

 サーヴァントを運用するには、主に三つのものが必要となる。

 一つ、マスター。

 二つ、術式。

 三つ、魔力。

 これらの内どれか一つが欠ければ、一部の例外を除いて、サーヴァントは現世に自身を維持できなくなる。

 

 「あの、聖杯って何ですか?」

 

 素人である立香が質問した。

 話の腰を折る形だが、彼は素人であり、当然の疑問でもあった。

 

 「聖杯って言うのは、莫大な魔力を秘めた願望器よ。一部例外があるらしいけど、凡そ人間の想像できる事なら、何だって願いを叶えられる。えーと…ロマニが見ていたアニメでは、ドラ〇ンボールが近いわね。」

 

 何やらおかしな単語が出てきたが、純粋なマシュと現在はバーサーカーであるリーア&アーリも沈黙を保っているため、ツッコミ役は不在だった。

 魔術師として研鑚を積んでいた筈の彼女に日本のサブカルを教える辺り、ロマンの業は深い。

 まぁ、本人としてはカルデアにいながら出来るお手軽な娯楽のつもりなのだろうが、それにしても酷い。

 

 「じゃぁ、聖杯戦争はそれを奪い合うって事ですか?」

 「そうよ。何でも有りのバトルロイヤル形式で、最後に残ったマスターとサーヴァントが聖杯を手にするの。」

 

 だが、そうなるとおかしい事がある。

 

 「じゃぁ、何であの狙撃手と黒い大男は協力してたんでしょうか?」

 「そこがおかしいのよ。聖杯戦争で同盟を組む事はあるらしいけど、あの大男に関しては完全に理性なんて無かった。単に利用されたのか、それとも確たる指揮系統が存在するのか。その辺りも探りたい所ね。」

 

 恐らく、その辺りがこの地が特異点化した理由なのだろうと、オルガマリーは予想していた。

 元々聡明な彼女は一先ずの拠点を得た事で、それを取り戻していた。

  

 (意外と優秀だね。ヘタレで未熟だけど。)

 (あぁ、これなら割と行けそうだな。要訓練だが。)

 

 誰にも聞こえない半身同士の会話でも、オルガマリーは良くも悪くも正確に評価されていた。

 

 「で、こちらの戦力だけど…。」

 

 そこで、オルガマリーの顔が暗くなる。

 まぁ常識的に考えて絶望的であるので仕方ない。

 

 「まともな魔術師は私だけで令呪無しのバーサーカー。残りは素人とデミ・サーヴァントに成り立てで宝具も使えない…。」

 「すみません所長。私の未熟のせいで…。」

 

 傍から見れば絶望的だった。

 未だに六騎はいるであろう他のサーヴァントとの戦闘を思うと、どうしても戦力が足りないのに、増援の気配は一切ない。

 いじめか?と問いたくなる状況だった。

 

 (まぁ、マシュに関してはそうしなければならなかったろうがな。)

 

 彼女の持つ大楯から、リーア達は正確にその真名を読み取っていた。

 円卓の13席にして純潔の騎士、ギャラハッド又はガラハッド。

 父である円卓最強と名高いランスロットを超える実力を持った、聖杯獲得の騎士にして、恐らくこの世で最も清らかな騎士だ。

 そんな英霊を受け入れれば、普通は人体がパンクする。

 デザインベビーであるマシュは何とか彼を収められる器を持っていた。

 だが、そのままギャラハッドが主導権を握れば、未熟な彼女ではそのまま魂も人格も記憶も、何もかも消えていただろう。

 だからこそ、こうして意識を最低レベルまで落とし込み、宝具の解放すら修練無しでは出来ない程に弱体化させる必要があったのだ。

 もし彼女が爆破工作によって致命傷を負わなければ、ギャラハッドはマシュの中で彼女が死ぬまで眠り続けただろう。

 

 「なので、可能な限り交戦は控え、目標を達成する必要があります。そのためにも、先ずは情報収集を行います。既に使い魔は飛ばしましたので、多少の収穫は…」

 「■■■■■。」

 

 不意に、表向き沈黙を保っていたバーサーカーが唸り声を上げ、視線を玄関の方へと向けた。

 

 「どうしたの?」

 

 まさか敵襲か?

 そう考えた一同が腰を上げた瞬間、ピンポーン、と極普通のチャイムが鳴り響いた。

 

 「「「「…………。」」」」

 

 一瞬、無言で顔を見合わせる一同。

 

 「バーサーカー、対応を。」

 「………。」

 

 無言で立ち上がり、玄関へと進むバーサーカー。

 だが、その背中からは闘争の気配がない。

 

 「マシュ、一応私と藤丸の護衛を。」

 「はい!」

 「藤丸はマシュの後ろにいなさい。絶対に前に出ず、マシュから離れないように。」

 「わ、分かりました。」

 

 そして、玄関では

 

 「ちーす。ちょっと話したい事があるんだが、時間いーか?」

 

 何かチャラそうな兄ちゃんが現れた。

 

 

 ……………  

 

 

 チャラそうな兄ちゃん、もといキャスターのクー・フーリンからの情報により、凡その事情は把握できた。

 曰く、この聖杯戦争は狂ってしまった。

 最優の騎士にして、清廉であったセイバーが突如属性反転し、未だ戦争が終わっていないのに聖杯を獲得した。

 更には他のサーヴァントに襲い掛かり、仕留めた傍から聖杯の力によって自身の手駒としていった。

 残った正常なサーヴァントは己のみであり、事態の解決を目指すなら協力を惜しまない。

 それがキャスターの言い分だった。

 

 「分かりました。その話、お受けします。」

 「話が早くて助かるぜ。こっちも一人じゃジリ貧でよ。」

 

 事実、キャスターも結構消耗しており、直ぐに危ういと言う程ではないが、宝具の使用は極力控えた方が良いと言うのが実情だった。

 

 「んで、そっちの戦力はどうなってるんだ?」

 「それなんだけど…。」

 

 オルガマリーは素直に大英雄に真実を話した。

 

 

 ……………

 

 

 キャスターとの合流から一時間程。

 武家屋敷での休憩を挟んだ後、一同は聖杯戦争の中枢である大聖杯がある、事件の首謀者と思われるセイバーの根城へと向かっていた…

 

 「さて、とっとと片さねーとドンドン来るぞー。」

 「は、はい!」

 

 のだが、今は大量のスケルトンを相手にマシュが戦闘訓練をしていた。

 

 「宝具ってのは本能だ。英霊なら誰だって使える。後付けだから自覚し辛いだけでな。」

 

 マシュはデミ・サーヴァントとして覚醒したものの、未だに英霊の真名も、宝具の解放すら出来ない。

 それはいけない。

 恐らく防御宝具であろう盾が無ければ、この先に待つセイバーに蹂躙されるだけだ。

 

 「つー訳で訓練だ。何、死なない程度にしてやるから安心しな。」

 「ちっとも安心できない!」

 

 立香の叫びはもっともだった。

 流石はケルト、戦に関しては修羅勢である。

 

 「なんで私にルーン刻むのよ!?」

 「いや、坊主だと自衛も出来ねぇだろ?」

 

 勝手に背中にルーンで厄寄せの魔術を刻まれたオルガマリーが憤慨している。

 まぁ立香にやって死亡しようものなら人理崩壊不可避なので仕方ない。

 

 「バーサーカー!頼むから守ってよ!?」

 「………。」

 「無視しないでよォォォォォォォォォ!!」

 

 絶叫するオルガマリーの横、あらぬ方向を見て直立する鋼の狂戦士は黙して語らない。

 まぁ狂戦士だしね、会話能力は無いからね、仕方ないよネ。

 とは言え、仕事をしていない訳ではない。

 

 (どうだ?)

 (通信回線は軍用も含めて全滅。生存反応は周囲数十km内には微生物を除いて無し。)

 

 頭部のブレードアンテナが内部構造を展開、この時代、この国からアクセスできるだろうあらゆる通信を感知しようとしているのだが……全く感知出来ない。

 辛うじて都市としての形骸が残っているこの冬木市でも、電波すら殆ど感知出来ない。

 それはつまり、この世界の人類はこの場にいる三人とカルデアにいるであろう面々を残して、絶滅したと言う事に他ならない。

 

 (こりゃまた根が深そうだな。)

 (後、雲の上のアレだけどさ…。)

 

 二人の目、最高位の千里眼に準ずる、極近い時間帯なら未来も過去も見える二人の目には、地表を睥睨する光の帯がしっかりと見えていた。

 

 (どうも焼いたのはアレじゃないみたいだ。)

 (何?)

 (あれ、焼けた地表の熱量を吸収してるぜ。此処はそこまで吸収されてないから、寒くはないけど。)

 

 つまり、あの光帯は手段であって、目的ではない。

 確保した熱量を持って、何かをするのが黒幕の目的なのだ。

 

 (…現状では情報が足りなすぎるな。)

 (だねぇ。)

 

 となれば、先ずは情報収集だろう。

 幸い、この三人の所属するカルデアなる組織は元々こうした事態のための組織らしく、態々異なる時間軸からこの時代の冬木市にやってきたらしい。

 事実、先程の通信は時間を遡って送られてきていたため、本当の事なのだろう。

 

 (恐らく、彼女達が事態の解決を図る英雄だな。)

 (となりゃー、アイツらについてくのが近道か。)

 

 この世界が所謂型月系列である事は以前から分かっていたので、その点に疑問は無い。

 強いて言えば、あの菌糸類が仕事したのかー、程度の感慨でしかない。

 

 (黒幕どつくのはまだまだ先って事か。)

 (とは言え、現地住民で対処できるなら、その方が良い。)

 

 型月の世界は厄ネタの宝庫であり、世界が滅びるのも極普通に在り得る。

 しかも、それを観測する上位存在が何体も確認されているため、下手な行動も取れないのだ。

 最悪の場合、鋼の大地へと至るまでもなく、アリストテレス全員との戦争になる可能性すらあった。

 

 (ま、気長に行こうや。)

 (だな。)

 「お願いだから無視しないでよォォォォォォォォォ!!」

 

 二度目の絶叫から目を反らしながら、この世界最大の異分子は静かに潜伏を決めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




漸くCCCコラボ全ミッション終了。

なお、ガチャ結果は二万課金して何とかキアラ以外のご新規を全員ゲット
オミヤ?彼は以前の新宿で当てましたので。

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