徒然なる中・短編集(元おまけ集)   作:VISP

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IS転生 三組代表が逝く8

 「やり過ぎだ馬鹿者共。」

 

 スパパーン!と快音が響いた。

 

 「「ごめんなさい。」」

 

 普段は回避する灯も、簪同様に甘んじて出席簿の一撃を受ける。

 衝撃が徹っているのか、やたら痛い。

 しかし、その程度で済めば御の字と言う程度に今回の騒ぎは被害と影響が酷かった。

 

 先ず第一にラウラの乗るISに搭載されていたVTシステム。

 これはドイツ本国への照会及び国際IS委員会からの強制査察が即座に行われる事となったが…ラウラを作成したデザイナーズベイビーの研究施設ごと、関係者は文字通り消滅させられていた。

 他、ドイツ政府及び軍の一部高官が謎の死を遂げた事で、事件は迷宮入りとなった。

 なお、千冬の携帯には「アホな連中は掃除しといたから誉めて-♪」なるメールが入っていたりと、各国は頭を抱えつつ、ボロボロになったドイツを更に責めて落し所を探っている。

 次にラウラ自身の処遇だ。

 デザイナーズベイビーであり、軍所有の兵器扱い(表向きは士官学校向けの教育を受けている事になっている)である彼女は、今回の一連の事件によって原隊であるシュヴァルツェ・ハーゼと共にドイツ国内に居場所がなくなってしまった。

 一応副隊長のクラリッサは正規の軍人であるが、彼女一人でIS部隊全員の面倒を見る事が出来る訳もなく。

 既に今年の転校枠も一杯なので、部隊の適齢者は来年度受験してIS学園に来る事となっている。

 それ以外の者は正規の方法で士官学校入りなり就職口を探す事となるが、デザイナーズベイビーであり、軍事方面に偏れど十分な教育を受けている事もあり、まぁ大丈夫だろうと見られている。

 なお、ちゃんと給与は適正額+賠償額が払われる予定だ。

 そして、我らがバグキャラこと灯の処遇である。

 試合であり、違法ISの強制停止措置のためとは言え、過剰な攻撃を加えた事は当然ながら問題視された。

 しかも、その攻撃は最新技術で構成された150mm砲による直接砲撃である。

 例え相手が違法なシステムを搭載したISであっても、過剰火力過ぎた。

 また、アリーナに与えた被害も洒落にならなかった。

 何せ試合会場の3割がクレーターと化したのだ。

 幸いにも死人も怪我人も出なかったが、アリーナのエネルギーシールドが飽和しかけ、危うく観客に被害が出る可能性もあった。

 幸い、緊急時用の安全機構(エネルギーシールドを上面のみ解除して上空へ逃がすシステム)が働いたため、飽和する事は無かったのだが。

 また、直接砲撃こそ命中しなかったものの、爆風によって篠ノ之箒の打鉄はD判定を受けて大破よりの中破、一方簪は対ショック姿勢及びシールドエネルギーに余裕のあったためC判定で済んだ。

 しかし、砲撃が直撃したシュバルツェア・レーゲンはVTシステム発動中だったとは言え大破、ラウラもシステムの起動と強制停止による反動で気絶して検査入院する事になった。

 そして、やらかした本人の轟雷もPICを全て砲撃の反動の中和に割いていたため、機体及び搭乗者保護が疎かになっていた事もあり、爆風でシールドエネルギーが切れたと同時に溜まっていた駆動系や関節ダメージも合わさり、D判定どころか完全に大破、本人も首がむち打ち状態になって、数日間は安静&謹慎を言い渡された。

 こんな状態になっては再試合など出来る筈もなく、後日改めて開催される運びとなった。

 本来、ここまでやらかしたら両者とも相応の処分(代表候補生資格及び専用機の取り上げ)になる可能性も高いのだが、本人らの技量が同年代の中でも特に高く、中でも倉土灯の純粋な量産型ISによる第三世代兵装の再現は世界的にも高く評価されており、おいそれと処分する事は出来なかった。

 まぁ資格とコアを取り上げられた所で変態企業群が確実にコアを貸し出して抱え込もうとすると思われるので、余り意味がないとも言うが。

 

 とは言え、お咎め無しは流石に無理なので、ガチおこ状態の織斑教諭によるお説教&反省文の提出、更にクレーターとなったアリーナの整地をさせられる事と相成ったのだった。

 

 

 ……………

 

 

 「ねぇ灯。」

 「んー?」

 

 アリーナに出来たクレーター、その埋め立てのためにロードローラーを人力で動かす灯に、アリーナのエネルギーシールドの状態を確認していた簪が声をかけた。

 

 「灯が織斑君達が嫌いなの、私のせい?」

 

 それは簪にとって負い目だった。

 自分の専用機の開発が打ち切られたのは、織斑一夏の専用機を倉持技研が用立てようとしたからだ。

 その分の開発リソースを次期国産第三世代ISである打鉄弐型のチームから持ってきたため、打鉄弐型の開発は事実上停止、簪の下にはコアだけが残った。

 その事を理由に、簪は織斑一夏に対して悪感情を持っているが、それが親友に伝播しているのではないかと危惧していた。

 

 「違うよ。」

  

 だが、灯はそれは違うと断言した。

 何せ彼女にとって、織斑一夏とその周辺はキャラクターとしてならば兎も角、こうしてリアルで見ると実に自分勝手で人格破綻な連中だからだ。

 ISと言う事実上の兵器を纏いながら、それを法律で規制されているにも関わらず、平然と日常的に異性に対して暴力を目的として振るう。

 お近づきには絶対になりたくない。

 それがIS学園にやってきてから彼・彼女らを観察して至った灯の結論だった。

 なまじ簪が良い子であったため、どうしても彼・彼女の事が何段も劣って見えると言う事もあったのだが……それにしたって酷いとしか言い様が無かった。

 

 「まーそー見えちゃうのは仕方ないけど、これは私の感情由来だから、簪が気にする必要は無いかなぁ。」

 「そっか。」

 「うん。でもまぁ、そうじゃなくても簪が何かされたら怒るよ。友達だからね。」

 

 そういって少年の様にニッと笑う様は、まるで悪童のそれだ。

 以前はもっと鋭く、笑うと言う事も余りしなかった親友の笑顔に、簪は釣られた様にクスクスと笑った。

 嘗て出会った頃、灯は寄らば斬るとでも言うべきか、本当に殺気立っていた。

 それが父を失い、母と故郷から勝手に離されたが故である事はもう知っているが、その頃に比べると本当によく笑うようになった。

 序でにノリも良くなったと思う。

 

 「じゃぁ、さっさと終わらよっか。」

 「ごめんね、手伝わせて…。」

 「いいよ、友達だもん。」

 

 夕暮れの放課後、二人は仲良く片付けを続けた。

 

 

 

 

 

 「かんちゃんは私のお嬢様なのに~……」

 

 一方その頃、簪と同室の本音は嫉妬でギリギリ言っていた。

 

 

 ……………

 

 

 『まさか、即日でお釈迦とはな…。』

 『オタクのせいでしょ、アレは。』

 『ぬぅ…まさか本当に使うとは。』

 『とは言え、データはこれ以上無い程揃いました。おまけにドイツのAICとその再現データまで。』

 『これ使えば、次期主力機も作れそうですね。』

 『専守防衛の日本らしい機体になりそうだな。』

 『で、次の機体は?』

 『あ、うちが前言ってた第三世代兵装を装備したのが出来てます。』

 『やけに早いな?』

 『機体本体のフレームは予備パーツから、装甲は今回は桐山君にお願いしました。』

 『機動と火力の両立した、全く新しいISです。これはもう第四世代と言っても良い。』

 『では急ぎ送るとして…もう一人、彼女の友人への勧誘は?』

 『データの共有と資材の融通は確約できました。』

 『彼女も極めて優秀な人材だ。代表候補生で終わらせるのは勿体ない。』

 『うむ。とは言え、何処か一社が独占するには余りにも惜しい。』

 『では…?』

 『共同開発計画を一歩進め、多企業による合同連合を設立し、そこに所属してもらう形にする。』

 『で、こっちに引き抜く準備は?』

 『二人とも凡そ仕込みは完了だ。来月には爆発するだろう。』

 『順調、と言った所ですか。』

 『…所で、バン〇イとコ〇ブキ屋からなのだが…。』

 『あの二社が何か?』

 『全面的に協力するから、是非とも色々やってくれと。』

 『序でに詳細な資料も送られてきました…。』

 『流石過ぎるな。』

 

 

 ……………

 

 

 タッグトーナメントは簪が普通の打鉄、私が以前練習用に使っていた打鉄改(IS学園仕様)により順当に一年の部で優勝した。

 それに関しては思う所は無い。

 ただ、現状の一年の練度ではこの辺が妥当だ、と思う位だ。

 なお、厨二病少佐は部下共々軍務を解かれ、普通の代表候補生になったのだとか。

 来年度以降は適齢の部隊員達も受験するらしいが、特に関心は無い。

 後、目覚めた後に私のいる教室を訪ねてきたが…絡まれると面倒なので霊体化して消えていた。

 はっはっは、サーヴァント・ライダーとしての機能も使えるようになったんだよ。

 まぁ一番習熟が進んでるのはやっぱり仮面ライダー系だが。

 だって結城丈二さん始め一号二号の頭脳とか、めっちゃ役に立つんだもん。

 なので、その気になれば自分でIS組めちゃいそうだけど、それはしない。

 そっちは企業の人に任せてあるし、あの人達の作るISは面白いからね。

  

 で、タッグマッチトーナメントから一週間程で次のISが届いた。

 はえーよホセ、と言いたい所だが、受領したISの外見にもびっくらこいた。

 全体が丸みを帯びた形状。

 通常の人型とは乖離した、四肢と追加装甲の様な非固定浮遊部位へと内蔵されたプラズマ砲。

 両肩辺りにある非固定浮遊部位は特徴的な甲殻類の様な印象を持った、丸みのある形状。

 

 うん、レイダオの改良機ですね、本当にありがとうございます。

 またフレームアームズかよ、しかも今回はガールじゃなくてガチな方なのかよっ。

 今回は汎用性を捨てて、第三世代兵装の試験機であるらしい。

 以前の轟雷のフレームを更に改良したものを使用しているので、前回の様な大口径グレネードにでも当たらない限りは壊れないそうだ。

 まぁ昭和ライダースペックとか発揮したら一瞬で破裂するんだろうけどね!

 なお、名前もそのままのこのレイダオだが、本来は胸部にある追加装甲が二つになった上で非固定浮遊部位となり、脚部も細いものではなくジイダオのややずんぐりしたそれだ。

 そして、非固定浮遊部位と腕部、序での脚部(脛)に搭載された6門のプラズマ砲が主兵装となっている。

 これ、実はプラズマ砲兼プラズマブレード兼プラズマ推進器を任意に切り替える事が出来るのだとか。

 そのため、素の状態で高機動型ISに匹敵する機動性を持っており、その辺りは正に脱帽と言っても良い。

 反面、武装への被弾時には爆発して一気に被害が出るとか、一機当たりのコスト・整備性が轟雷よりも高い等の問題もあるそうな。

 まぁ当たらなければどうとでもなるので、一端これで良しとしよう。

 

 

 

 

 

 そしたら、何故か簪から模擬戦を申し込まれたでござる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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