徒然なる中・短編集(元おまけ集)   作:VISP

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非難轟々だが、二次創作ってそんなもんだしね。



IS転生 三組代表が逝く11

 模擬戦後、簪は入院した。

 肋骨3本に罅が入り、内臓にも負荷がかかっており、更に体力・気力を消耗し過ぎて、ISを脱いだ途端に気絶したからだ。

 適切な措置の後、準備されていた医療ポッドに入れられた簪の意識が戻るのは翌日の昼過ぎの事だった。

 その間、灯は教師陣に拘束された後、ISを一時取り上げられた後に事情聴取を受け、自室での謹慎処分を受けた。

 無論、本当に悪いのは無茶をした簪なのだが、ここで灯の側に何のお咎めも無しだと、何らかの禍根が残る可能性があったためだ。

 まぁPICのフルマニュアルが危険行為である事もあり、この事件を機に漸く学園側が重い腰を上げたと言うのもあるのだが…。

 PICのフルマニュアルに関しては、今後は機動への割り振りを最大8割までとし、残り2割の出力は搭乗者保護に割り振る事が義務付けられた。

 危ない事をしたのだから罰せられる。

 この基本的な事を周知させるための生贄とも言えた。

 

 「あー………だるーい……。」

 

 だが、本人は自室でダラダラとくつろぎ腐りながら映画鑑賞(簪お勧めの特撮もの)をしていた。

 その姿、正にニートである。

 これこそ堕落の頂点と言わんばかりに寝そべりながらポテチとストローを刺した炭酸ジュースと氷の入ったカップが目の前に置かれており、その姿は女子高生と言うよりも堕落し切ったおっさんのそれである。

 

 「あんた、もう少しシャキっとしなさいよ。一応謹慎中でしょ?」

 

 咎めるのはこれから授業に行く同室の生徒だ。

 以前、代表候補選抜戦でぼこぼこにした第三位の女子であり、簪と灯に次いで三位を取った辺り優秀なのだが、現役時代の山田先生よろしく、上二人が異常過ぎてさっぱり注目されていない悲しい生徒だった。

 

 「織斑先生からも「すまんが涙を飲んでくれ」って言われてるからさー。」

 

 もし今後、似た様な事態が起きた時、当事者を一切罰さないとなれば、それこそ大きな問題に発展しかねない。

 そのため、芽の内に「罰則を与えた」と言う前例を作る事で、それを防止しようと言う事だった。

 これには灯は納得していたし、何よりあの模擬戦では自分を見つめ直すには良い機会だったので、これ幸いと承諾したのだ。

 

 「ま、良いけどね。行ってきまーす。」

 「いってらー。」

 

 そして、同室の生徒が出ていった後、灯はだらけきった顔を引き締め、自身の意識を内側へと埋没させていく。

 内容は「先日の模擬戦の問題点」について。

 既に数度行ったものだが、それでも自己を見つめ直す意味では何度でも必要な行動だ。

 

 敗因1、機体性能について。

 自身の乗ったレイダオは未だ慣熟しておらず、最低限の調整のみ行った状態であった。

 また、機体性能についても第二世代最後発であるラファール・リヴァイブに匹敵するシャアザクに対し、性能は兎も角として燃費面で問題のある多用途プラズマ砲を採用したレイダオとでは長期戦において不利だった。

 また、シャアザクはレイダオ対策に耐熱処理を施したシールドとホークを装備する等のメタを張られていた。

 

 敗因2、自身のライダー能力について。

 基本的にサーヴァントか仮面ライダーの力を引き出すのに使っているのだが…実は本格的な変身が未だ出来ていない。

 と言うのも、灯には「正義を愛する心」や「理不尽に対する怒り」と言った感情が人並み以下しかないからだ。

 どっちかってーとシラカワ博士ばりに「自由を愛する心」を持っているので、手前勝手な理由で自分に喧嘩売ってきたり、WinWinではなくただ利用しようとする輩への憎悪しか特筆すべき感情が無いのだ。

 そのため、仮面ライダーと言うある種の憧れを抱く存在とはかけ離れているのだ。

 一番適正があるのがショッカーライダーな辺り、他のライダーへの適正はあ(察し)レベルである。

 そもそも、変身するにはISが邪魔であり、眼球等の一部を変質させるのなら兎も角、戦闘機動中でのライダーへの変身はこの能力がばれる点でも出来ない。

 では、サーヴァント・ライダーへの変身だが…これをやると容姿や人格も変身先のソレに変化するため、下手な英霊には変身出来ないと言う欠点がある。

 以前、ライダー・メドゥーサへと変身した際、何故か普段はそこまで好きではないロリショタ系の同人誌を食い漁る様に見てしまい、半日程経った時点で漸く飢えが満たされ、変身を解除できたと言う事があったのだ。

 結論:能力は迂闊に使用できない。

 まぁ今現在やっている様に、英霊個人のそれではなく、ライダーのクラススキルなら無条件で発動可能なので、今後も修練はしつつも必要が無ければ使わない方針で行くべきだろう。

 

 そして敗因3、簪の美しさについて。

 あの時、あの瞬間、プラズマ砲の弾幕を掻い潜り、こちらへと突撃してきた簪の姿は、余りにも美しかった。

 自分の様なチートではなく、ただ友人に勝ちたいと努力して獲得した技量と意志力、そして覚悟。

 それを以て己に相対し、遂には凌駕してみせた彼女は、その容姿と精神性のどちらにおいても、余りにも美しかった。

 そんな彼女に見惚れてしまい、隙を晒してしまった自身の未熟を呪いこそすれ、簪へと怒りを抱く事は灯には出来なかった。

 

 結論:負けて当然。

 

 うん、まぁ分かってた事だった。

 何度も考えて、その度に同じ結論に至っているのだから、こればかりはもうどうしようもない。

 さて、考えも纏まった所で、さっきから殺気を向けてくる(誤字でもギャグでもない)無礼なお客さんの相手でもするかね?

 幸い、理不尽な怒りをぶつけてくると言う点で条件は満たされているので、例えIS使ってきても、問題なく相手は出来る。

 まぁ最悪の場合は目撃者は消さなければならないけど…ま、偶にはいっか。

 

 こうして、灯は無意識に溜まっていたストレスを吐き出す相手に、シスコン生徒会長を選んだのだった。

 

 

 ……………

 

 

 更識楯無は今、授業もボイコットしてある部屋の前に来ていた。

 相手は愛しい愛しい簪ちゃんを双方合意の模擬戦とは言え負傷させた相手。

 だが、相手の糞ビッチに何ら違法性が無い事も確認している。

 しかし、それはそれとして、姉として妹を傷つけた相手には然るべきケジメをつけさせねばならない。

 例え、簪ちゃんが嫌がったとしても、だ。

 家としても、此処で何もしないと言う選択肢は…まぁ無い訳ではないが、最低限釘を刺しておく必要はある。

 そして、私は今も標的が寛いでいる部屋へと侵入する。

 幸い、鍵は生徒会長権限で持ってきている(学園長に小言は言われたが)。

 本来なら、標的が外出中に部屋で待ち伏せていたいのだが、標的が謹慎中と言う事もあり、一切部屋から出る事が無いので、こちらから行かざるを得ないのだ。

 そして、私は鍵を差し込もうとして…

 

 「そこで止まれ。」

 

 完全に不意を突かれる形で、背後を取られていた。

 

 「…倉土灯さんかしら?」

 

 全身からぶわりと湧き出そうになる汗を必死に驚きと恐怖を抑制する事で防ぐ。

 気配は完全に感じなかった。

 だが、暗部の当主なんてものをやっている自分をして、彼女は完全に不意を突いてきた。

 明らかな異常だった。

 

 「生徒会長、でしたっけ?一応謹慎中なので、訪問はまた後程でお願いします。」

 「私もそうしたかったのだけど…一応私はあの子の姉なの。だから今日は私的な理由で来たわ。」

 

 意外と常識的な言葉に安心どころか警戒しつつ、相手の罪悪感を呷る形で有利に話を進めようとする。

 既に楯無は当初予定していたOHANASHIプランは完全に瓦解し、自身の身の安全の確保を最優先にした行動していた。

 それ程に、自分の背後に立つ者は脅威に過ぎる。

 先程確認した時には、確かに室内にいた。

 なのに、今は暗部として高度な訓練と経験を積んだ自分の背後をものの数秒で取ってみせるだけの身体能力と技術を披露してみせた。

 背後関係は全て把握していたとは言え、ISだけでなく、素でもこれ程の能力を持っている事は、全くの想定外だった。

 恐らく、織斑先生等と同類なのだ。

 単体で世界を相手に戦える規格外、或はそれに成り得る素養を秘めた者。

 少なくとも、ISありきとは言えど、敵に回すには余りにも損な人物だった。

 

 「んー、単なる肉体言語だったら、相応に歓迎したんだけど…」

 

 やはりデッドライン上にいたらしい。

 楯無は先程から冷えていた肝が更に冷えて零下になりつつあった。

 

 「簪は家族とは疎遠だって言うし、私が迂闊に交流するのも悪いと思いますよ?」

 「そ、それは……」

 

 スッとは背後から気配が離れて安心するのも束の間、言葉の槍に胸を貫かれ、楯無は胸を抑えた。

 

 「それに、例え私的な理由だとしても、一応謹慎中ですので。生徒会長なんですから、その辺りのルールはきちんと守ってください。」

 「うぅぅ…どうしてもダメ?」

 「後日、日を改めてなら考えますが。」

 

 よし、言質は取った。

 一応ゆっくりと振り向くと、そこには確かに先程まで部屋にいた妹の友人の姿があった。

 やはり、眼を離した僅かな間にこちらの背後を取ったのだ。

 

 「では後日、また改めてお話しましょう。」

 

 お馴染みの扇に「また来週!」と表示させ、口元を隠す。

 自分と最愛の妹の命を握られていると言う恐怖を微塵も出さず、生徒会長更識楯無として傲岸不遜にして唯我独尊な振る舞いを維持してみせる。

 そうでなければ、今すぐにでも全身から脂汗が出て、膝から力が抜けそうだから。

 

 「良いですけど……部屋に勝手に入ってきたりしたら怒りますからね?」

 

 呆れを込めたその言葉は、しかし実際は警告だ。

 次にアホな真似をすればタダでは済まさないと、言外にそう言っている。

 だが、既に楯無にはそのつもりはない。

 彼我の戦力差、そして相手の立場を思えば、互いに迂闊な真似は出来ない。

 

 「えぇ、えぇ、次からは普通にノックするから、その時は歓迎してね?」

 「お茶位なら出しますよ。茶菓子は期待しないでください。」

 

 こうして、楯無(シスコン姉)と灯(妹のガチ親友)の初邂逅は表向き平穏ながらも、その実極めて物騒な形で終わった。

 

 

 

 

 

 

 (チッ、暴れそこねた。ネトゲでもやろっと。)

 (久々に死ぬかと思った…!)

 

 

 

 




灯「霊体化からの実体化でステルス余裕です。」

なお、まだ変身を残している模様。





何時か仮面ライダーへの変身を描写したいけど…明らかにヤッテも良い相手じゃないといかん(汗
それでいて誰にも見られない状態となると…うーむ(汗

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