徒然なる中・短編集(元おまけ集)   作:VISP

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エイプリルフール企画です。続きません。


嘘予告 FGOの自鯖を特典にして転生したin血界戦線

 ある日、紐育と言われるアメリカ合衆国最大の都市は異界からの霧に飲まれた。

 以来、その地は異界からの住人と法則、文物が流入する混沌の都となった。

 その地から漏れ出るモノは現代社会において余りに危険なものが多く、その周囲には常時様々な監視と関門が設置され、入る事は比較的容易でも、出るのはその億倍の難易度となった。

 だと言うのに、彼の都市から僅かに漏れ出る技術や物品によって、国家間のパワーバランスは容易に崩れ、国が滅びる程の騒ぎもままある事だった。

 そんな訳もあり、嘗て紐育と呼ばれた都市は現在はヘルサレムズロットと名を変え、世界中からあらゆる注目の集まる魔都と化していた。

 そんな訳で、この街では現在過去未来において様々な思惑を持った者達が蠢くのであった。

 

 「ふわぁぁぁぁ……。」

 

 そんな都市に、この話の主人公は暮らしていた。

 所々跳ねた黒髪に住んだ水色の瞳の少年。

 その名を藤丸立香。

 嘗て型月系作品を、取り分けFGOをこよなく愛した転生者である。

 同時に、神様転生やらかしてスマフォ型礼装で自鯖を召喚&維持できるだけの魔力持ちとか言う下手な聖杯よりも生きたチートである。

 

 「先輩、おはようございます。本日は快晴ですよ。」

 「あーマシューおはよー。」

 「もう、先輩は相変わらずレムレムしてますね。」

 

 この紐育に投げ出され、何故か身体がぐだ男になって驚いたのも今は昔。

 今現在はマシュを筆頭に幾人かのサーヴァントと起居している。

 一部、余りに奔放なサーヴァントに関しては野放し状態ではあるが。

 英雄王も征服王もファラオも神祖も、皆人間程度が御せる方ではないのだから当然だが。

 彼らは持ち前のカリスマと実力により、あっと言う間にこの都市に馴染んで独自の勢力のトップに納まってしまった。

 彼らの頭の中には死後位ゆっくりすると言う思考は無いんだろうなぁ…と思いつつ、喧嘩や殺し合いは程々にね、と言って事実上放置しているぐだ男であった。

 

 「あ、旦那様。今日の朝餉が出来てますよ。」

 「うーん、今行くー。」

 

 開いたドアから清姫の声が聞こえてくる。

 同時に味噌汁の香りがするので、本日は和食らしい。

 実に良い、素晴らしい。

 やはり日本人としては、朝食にご飯と味噌汁は欠かせない。

 幸い、今現在同居しているサーヴァント達の過半数は日系人である事から、和食の確率は高い。

 時折、静謐のハサンの中東系、マタハリの洋食等に変わるのでバリエーション豊富で飽きる事は無い。

 

 「おはよう、皆。」

 「おはようございます、立香。」

 「おはようございます、ますたぁ!」

 「おはようございます、マスター。」

 「おはよ、ご飯できてるわよ。」

 

 こうして、この家の日常が始ま…

 

 「だから夜更かしなんてやめなさいって言ったでしょ!」

 「だってだってクロばっかり勝って悔しかったんだもーん!」

 「わわわわ寝坊してしまいました!」

 「ふわ~……まだ眠いよ……。」

 「起きるのだわ起きるのだわ!ご飯の時間に遅れちゃう!」

 「梅干しも、納豆だって、残さず食べようね!」

 「あわわわ…ちゃんと起きたから朝ご飯抜きは止めて~~!」

 

 訂正、小さな7人もの女の子達も加えて、漸く彼彼女らの今日と言う日が始まるのでした。

 

 

 ……………

 

 

 「今日から皆、自由に暮らそう。」

 

 ある日、見知らぬ都市で召喚されたサーヴァント達を前に、嘗てはただの少年で、今はもう立派な主である自分達の契約者がそう告げた。

 それはどの様な意味があるのですか?

 私を嫌いになったの?

 何を考えてるの?

 その言葉に誰かが疑問を呈すれば、彼は丁寧に答えた。

 

 「カルデアの任務は終わった。人理再編も。そして、皆も座に帰って、僕も日常に帰る。その予定だった。でもカルデアとの通信も出来ず、何故かサーヴァントが全員いて、そして何より特異点とはまた違う、完全な異世界に僕達はいる。」

 

 そこからの先の言葉は、少年自身が何処か躊躇いながらも口にした。 

 

 「僕達の戦いは、終わった。だけどカルデアに、元の世界に帰れる方法が皆目見当もつかない。」

 

 と言うより、本来なら世界間移動など、本来なら第二魔法の領分だ。

 それはあの魔術王にすら出来るかどうか分からない規模の神秘だ。

 唯一、それを出来るとしたら一人だけ、宝石の翁・万華鏡こと第二魔法の担い手であるキシュア・ゼルレッチ・シュバインオーグ位のものだろう。

 

 「此処まで来れば、皆を縛る理由は無い。とは言え、この世界を混乱させる訳にはいかないから、多少の不思議なら不思議じゃないこの都市内でと言う限られたものになるけど。」

 

 だからこそ、少年は決意していた。

 今までたくさんのものを貰った英霊達に、人類史の素晴らしい先達達に、僅かばかりの報酬を贈りたいと。

 

 「だからこそ、皆に自由に暮らしてほしいんだ。その先で、生前やり残した事だったり、自分の趣味に没頭したり、取り敢えずのんびり暮らしたり。自分の好きな事をしてほしい。」

 

 ぐるりとサーヴァント達を見る。

 皆、見慣れた顔だ。

 この2年間、共に頑張って駆け抜けた戦友達だ。

 一部、若干どころか深刻な問題児達がいるが……うん、そういったのは監視or介護付きにすればギリ大丈夫かな!(白目)

 

 「聖杯は今手元にないけど、これが今の僕に出来る皆への報酬だ。」

 

 2年間、ありがとうございました。

 そう言って深々と頭を下げる少年に、サーヴァント達はそれぞれの反応を返した。

 ある者は涙ぐみ、ある者はこちらこそと感謝し、ある者は少年の成長を微笑み……

 

 「このヴァァァァァカめ!」

 

 ある者は思いっきり罵倒した。

 

 「報酬だと?戦いは終わった?帰る方法がない?もう一度言ってやろう、ヴァカめ!」

 

 ある者……うん、もういいや、名前出そう。

 アンデルセンは得意の毒舌を発揮して、自分の契約したマスターを完全に扱き下ろしつつ説教していた。

 

 「貴様自身の諦めと自暴自棄をラッピングしてオレ達に押し付けるんじゃないヴァカ者め!無いのなら作れば良い!無いのなら探せば良い!そんな初歩的な事さえ忘れたかマスター!令呪の補充も出来んからとサーヴァントを律する努力を放棄してからに!第一、オレ達が本当の意味で自由になった場合どうなるか考えろ!」

 「えぇと……。」

 「十中八九、この世界が滅ぶぞ。」

 

 きっぱりと、アンデルセンは断言した。

 

 「征服王は性懲りも無く征服を開始し、ファラオは時代遅れの神殿建築、初代暴君なぞ四方八方から問題を起こし、神祖は新興宗教なり新ローマなりを興すだろうよ!その結果、この都市の魑魅魍魎共及び外の人類とのトラブル待った無し!この都市限定だと?馬鹿々々しい!そんなもの、規制した所であっと言う間に飛び越えるだろうよ!」

 

 すげぇ説得力だった。

 名指しで責められた幾人かは怒ってたが、それでも凄い説得力だった。

 ついうっかり、その場のほぼ全員が頷く程度には。

 

 「ちなみにオレは一人暮らしなんて無理だぞ!何せ生前も長い事本が売れずに飢えてたし最後は病気で死んだからな!後輩達といちゃつくのは良いが、オレの生活支援だけは頼んだぞ!」

 「あ、それ吾輩もお願いします。創作活動中は色々と疎かになってしまいますからな。」

 

 さっきまで凄い勢いで説教してたのに、直ぐこれである。

 しかもやっぱりと言うか何というか一人増えてるし。

 

 「えーと……と言う訳で、今後の目標は『他人に迷惑をかけない範囲で自由に暮らしつつ』、『元の世界へ還る方法を探すor開発』、『手を出してきた連中にはきっちり思い知らせる』の三方針で行きたいと思います。」

 

 取り敢えず、そんな事になった。

 

 ちなみにこの後、キレて暴れるサーヴァント達を鎮圧するのに小一時間かかりました。

 

 

 ……………

 

 

 『やぁ立香君、おはよう。定期報告の時間だよ。』

 「おはようございますダヴィンチちゃん。」

 

 朝食も終わり、金だけは黄金律持ち達からの支給で大量にある立香は基本定職に就かずに他のサーヴァント達の手伝いやお世話等をして過ごす。

 予定の無い日はちびっ子サーヴァントやマシュ、マグマダイバーズと遊んだりもするが、時折こうしてキャスター組筆頭であるダヴィンチから進捗報告を受け取る事がある。

 

 『やはりと言うべきか、進捗は芳しくない。まぁ魔法の領分だからね。何らかの原因が無い限り、早々意識して出来るものでもないさ。』

 「まぁ出来たら魔術師発狂ものですしね。」

 

 第二魔法、その限定的再現。

 幸い、お手本でもあるカレイドステッキもあり、当初は数年で済むだろうと思われたこの作業。

 やっぱりと言うべきか、魔術に詳しい全サーヴァントが協力しても未だ解析すらまともに出来ていなかった。

 流石は宝石翁の作品と言うべきか、その翁をして「あ、これアカン奴や」と思わせたステッキと言うべきか。

 帰還の目途は全くついていなかった。

 

 「まぁ仕方ないかぁ……。」

 『そうだね。我々も甘く見ていたと言うのが本音だ。流石は魔法使い、簡単には行かせてくれない様だ。』

 「今後も副業しつつ作業続行でお願いします。皆にはちゃんと休憩とらせてあげて下さいね?」

 『それは私にデスマーチしろって遠回しな注文かな?っと、冗談冗談。吉報を待っててくれ。じゃ!』

 

 それきり通話が切れる。

 あの様子では、流石の万能の天才でも無理なのだろう。

 

 「でも、僕は本当に帰りたいのかな……?」

 

 元の世界、元の自分に。

 藤丸立香ではなく■■■■に。

 一人だけの■■■■に。

 答えは簡単、否だった。

 家族も友も恋人もいない人生より、苦労の連続だが自分を慕ってくれる者達が多くいるこの世界が、例え危険だと分かっていても大事だった。

 サーヴァント達に知られれば、きっと怒られるだろうけど。

 それでも自分は彼らと別たれたくなかった。

 

 「もう、一人は嫌なんだ……。」

 

 

 ……………

 

 

 藤丸立香、と言うだけあって、FGOで出来た事は大体できる。

 その中には、性別の変更と言うものがある。

 

 「いやー女の子の身体って可愛いし甘い物美味しいし可愛いしで楽しいね!」

 

 そんな事言って楽しんでた時期が確かにありました。

 でも、お人形さんの様に女性陣に延々着せ替えされたり、面白半分に下着までコーデされたり、終いには入浴に誘われたり寝室に連れ込まれたりされると、流石に図太い立香でも駄目でした。

 恥ずかしすぎて死んじゃう。

 マスターは思った、これ以上の女装(=性転換)は控えようと。

 しかし、そう思うのは遅かった様だ。

 

 「あ、あのさ」

 「何だ、マスター。」

 「これは、その、どういう事なんでしょうかクーさん……。」

 

 最後の方が尻すぼみになってしまったが、それは仕方ないと立香は思う。

 だって今、自分はクーさんの部屋でベッドに押し倒されているのだから。

 しかも恰好がクーさんのシャツ一枚で、更に言えばシャワーを浴びて髪を乾かした直後。

 はっきり言えば襲って下さいと言っている様な状況だが、まさか本来は男である自分を襲う程にこの神話的プレイボーイが飢えているとは思っていなかったのだ。

 フェルグス?あれはケルトでも相当だからカウントしない方向で。

 

 (どうしてこうなってしまったんだ!)

 

 内心でAA略!とか思いながら、立香は今日の出来事を思い出していた。

 

 今日、立香は女の姿で珍しく一人でショッピングを楽しんでいた。

 そこにアロハシャツのクー・フーリン(五次)に遭遇、一緒に買い物を楽しんでいた。

 だが、唐突な夕立に降られ、仕方なく近場にあったクー・フーリンの住むマンション(他のクーフーリン及びケルト勢が入居中)の一室に招待され、言われるがままに冷えた身体を温めるためにシャワーを浴び、渡された着替えを洗濯に出して本来の服が乾くまで待とうとソファーではなく目についたベッドに腰かけたのだった。

 

 (あ、これ襲われても仕方ないや。)

 

 客観的に見ると、どう考えても隙だらけというか鴨が葱背負って自分で羽を毟って身体を洗い、俎板の上に横たわった感じすらあった。

 

 「現実逃避は良いか?」

 「えーとえーと、オレ元々男だし……。」

 「構わん構わん。叔父貴程じゃないが、オレも結構拘らん質だしな。」

 「衝撃の事実ゥ!?」

 

 フェルグス、君は一体剣術の他に何を教えたんだよ!?

 立香はこの都市の何処かできっとよろしくやってるだろう豪放磊落にして自由奔放な偉丈夫の姿を思い、内心で力の限り叫んだ。

 

 「えーとえーと、ほら!兄貴って奥さん沢山いるし、師匠だって……。」

 「それはそれ、これはこれ。ケルトの文化は知ってるんだろ?嫁さんは養える限り何人いたって良いんだよ。」

 「じゃ、じゃぁ!オレまだ童貞だから!童貞の前に処女失うのとか無いから!」

 「んじゃこの後師匠かメイヴの所行くか。」

 「それでいいのケルト!?」

 

 立香は今日何度目になるか分からない叫びを上げる。

 本当にそれで良いのかケルト(ドン引き)。

 んで、結局処女失うのが先になるのですがそれは。

 

 「男の部屋に上がって、しかも風呂入って薄着に着替えて、その上でベッドに座る?食ってくれって言ってる様なもんだろ。」

 「そそそそそそそうなんだけどそのつもりは一切無かったのでごじゃりましててててて」 

 (何だかクーさんの顔が何時もより格好良いって言うか色っぽく見えるし頼りになる大人の魅力ってかやっぱり凄い鍛えられてて逞しくて見惚れちゃって綺麗でああああ(ry)

 

 立香は段々近づいてくるクーさんの顔に何故か頭がオーバーヒートしてきた。

 そのため思考がバグりまくってまともな対策が思いつかない。

 念話してケルト勢に、特にスカサハ師匠に通報すれば大抵はどうにかなると思うのだが……下手すると他のクーさんと師匠まで参戦して3~7Pにまで増える可能性すらあると思うと下手な事が出来ない。

 そして、勝つとなれば割と用意周到な所あるあるなクーさんが捕まえた獲物を逃がす道理もある筈がなく…

 

 「安心しろ。初心者には優しくしてやる。」

 「あっ……。」

 

 そうして、遂に立香(少女)とクー・フーリンの唇が重なった。

 

 

 

 その後の事は、詳しくは語らない。

 だが、翌日より半数以上のサーヴァントが参加する「チキチキ☆マスターとメイクラブ大会!~ポロリもあるよ~」が勃発、マスターが男女双方の恰好で多くのサーヴァント達に貪られる事となった。

 

 

 

 

 

 

 




正直に言おう…


 書いてて凄い楽しかったwwww


やっぱりTSものって楽しいw

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