徒然なる中・短編集(元おまけ集)   作:VISP

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IS転生 魔改造セシリアが逝く その5

 クラス代表決定後、一年一組の様子は殆ど変わらなかった。

 大凡予想通りの結果だったという事もあったが、それ以上にセシリアが同年代の者達よりもスペックも経験も図抜けており、何より中の人の年季から来る大人の雰囲気がセシリアのクラス代表就任を納得させたからだった。

 変わった事と言えば、クラス委員の仕事をセシリアが積極的にこなしている事、一夏と箒が放課後に課外学習を受けるようになった事だろうか。

 セシリアとしては未だ知識も経験も無い二人に、少しでも周囲に追いついてもらいたいがために、クラス委員等と言う割の合わない仕事をしてほしくなかった。

 その事をセシリアの様子と面倒見の良さから察した二人は、本来なら面倒に思う課外学習も何のその、真面目に取り組んでいるそうな。

 そんなこんなで、特に負の方向のイベントが起きる事も無く、一年一組は束の間の平和を満喫していた。

 とは言え、それが何時までも続く訳もない。

 

 「篠ノ之さん、お時間ありますか?」

 「ん、オルコットか。特に予定は無いが、どうしたのだ?」

 

 入学式から2週間程、セシリアはそろそろ皆慣れた頃だろうから、とアクションを起こす事にした。

 

 「そろそろ本国から持ってきた茶葉を開けようかと思いまして。でも一人では味気ないでしょう?偶には女子だけでと言うのも悪くないと思いまして。」

 「おお、秘密のお茶会と言う奴か。分かった、そちらの部屋で良いか?」

 「えぇ、では準備しておきますわ。」

 

 こうして、セシリアはようやっと箒に近づいた当初の目的を果たす事が出来たのだった。 

 今現在?強制入学組二人が幸せな生活送れる様に手助けする事になってます。

 

 「粗茶ですが…と日本では言うのでしたかしら?」

 「うむ。合ってるが、オルコットのお勧めなら粗茶と言う事もあるまい。」

 

 セシリアは特別に一人部屋だ。

 英国の代表候補生筆頭であり、表向きの一夏の護衛としての立場から、機密情報が守れる様にと言う配慮だ。

 無論、学園側にはある程度筒抜けだろうが、聞かれて不味い謀略の類はする予定が無いので問題は無い。

 

 「これはダージリンティー。有名な品種で、爽やかかつ緑茶に近い渋みがありますわ。」

 「おぉ……。」

 

 きっちりとゴールデンタイムを守って淹れられた紅茶は、余り詳しくない箒をして美味しく感じられた。

 

 「うむ、さっぱりとして飲みやすい。このクッキーともよく合うな。」

 「誰かに淹れたのは久しぶりですけれど、腕が落ちてなかった様ですわね。」

 

 のほほん、と夕食前ののんびりとしたお茶会。

 話す内容も他愛のない世間話であり、余りにも平和だ。

 思えば、同年代とこうしてお茶を飲んでのんびりする等、箒は今まで経験した事があっただろうか?と自問する。

 答えは当然ながらNoだ。

 彼女は例のプログラムによりボッチだった。

 当然、友達も0だ。

 

 (思い返せば返す程に悲しくなるな……。)

 

 それが今はこうして同じ学校に通う仲の良い友人とお茶会をしている。

 これはもう勝ち組と言ってもよいのではないだろか?(慢心) 

 

 「さて、お茶も楽しんだ処で、そろそろ本題に入りましょう。」

 

 そんな訳は無かった。

 

 「改まって場を設けたという事は、一夏には話せない事か?」

 「えぇ。と言うより、織斑さん本人に知識はあっても自覚0なので相方である篠ノ之さんに、と言う事ですわ。」

 

 ややげんなりとした表情で告げるセシリアに、箒は疑問を抱く。

 一夏の周囲の親しい女性であり、その中でも自分が対応できて、セシリアに出来ない事となると……

 

 「あぁ、身辺警護か!」

 「ご理解が早くて助かります。」

 

 当人である一夏には理解しづらく、箒には理解できる事。

 それは自分自身が保護されるべき要人であるという自覚に他ならない。

 箒の場合、要人保護プログラムにて、その辺りを強制的に叩き込まれた。

 しかし、一夏にはその辺りの自覚が殆ど無いと言ってよい。

 それは偏に千冬の努力の結果であるが、現在の一夏が自身の重要性を自覚していないという状況からすれば、逆に邪魔となっていた。

 

 「私がこのクラスに配置されたのも、日本と英国政府間の協議によるものです。その上で、当人である織斑さんに自覚してほしいのですけれど……。」

 「無理だろう。アイツは未だにその辺の意識が出来ていない。」

 

 中学卒業・高校入学したばかりの少年にそんな事を期待する事こそ本来は異常なのだが、そうも言っていられないのが現状だ。

 周囲の大人がどんなに頑張ろうとも、当人が無遠慮に行動してしまえば、何時どんな不慮の事態が起きるか分からない。

 

 「だからこそ、篠ノ之さんとこうしてお話しているのです。SPの方々や私では、四六時中一緒にいるという訳にはいきませんから。」

 「う、そんなに一緒にいるか?」

 「それはもう。親鳥と雛鳥の様に。」

 

 ころころと微笑むセシリアに、頬に朱が差す箒。

 やはりと言うべきか、好きな男子の事でからかわれる事に耐性が無いのだろう。

 

 「で、相手は何を想定しているのだ?」

 「先ず第一に学内の女尊系と各国のハニートラップ。第二に学外の女尊系。第三に何処かの紐付きテロリストでしょうか。」

 「多いな…。」

 「最後に、強制入学組であるお二人に関して不満を抱く方達ですわ。」

 「私もか?」

 「えぇ、こればかりは仕方ないかと。」

 

 正直、どれもこれも面倒だが、一見何の悪意も無い様に見える最後が一番厄介だ。

 これは一夏と箒の二人が学力とか二の次三の次で入学したため、その能力を疑問視したり、その分枠を削られて入学試験に落とされた人達の事で隔意を抱いている者達だ。

 彼女らは特に思想や適性に問題がある訳ではないし、一夏と箒達の課外学習によって減少傾向にもある。

 しかし、自分達が必死こいて勉強して入学したのに何でこいつらは試験ほぼ無しで入学してんだよ、と言う嫉妬の感情は早々消えるものではない。

 そのため、一刻も早く護衛体制を確立したかったのだ。

 

 「学内は基本織斑先生方の目がありますが、教員や生徒の中にも女尊系の方々がいない訳ではありません。何より、国際IS委員会からの推薦で入学してきた方々にはその傾向が強いです。」

 

 基本的に、入学時の適性検査で過激な思想持ちは排除される。

 しかし、委員会からの推薦だとその辺りは学力・実技テスト以外は免除されるため、どうしても入り込んでしまうのだ。

 なおこの国際IS委員会、ISの登場初期こそ各国のIS関連の法規作成におけるゴタゴタや調整等を一手に引き受けて役に立っていたが、現在は空洞化している。

 それでもIS学園へある程度の影響力を持つ事から、委員の所属国の紐付きと化している。

 そのため、金さえ積めば色々便宜を図ってもらえるとされ、今回の様な問題を発生させている。

 

 「勿論、一組の方々はその辺かなり厳密に調査していますし、同じ日本人で纏めてありますので、早々問題は起きないと思いますが…。」

 「他学年や他クラスはそうでもないという事だな。」

 

 端的に言って、凄まじく面倒臭かった。

 

 「とは言え、今現在は特に問題はありません。ですが、実際に問題が起きない様に予防する事は必要です。」

 「成程。女子同士なら幾らでもやりようはあるな。」

 

 現在、女尊男卑などと言うアホな妄言をする輩が多くなっているが、それでもそんな過激な事を言うのは極少数派だ。

 問題なのは、その声の大きい連中を利用して票集めをしている政治屋や御用弁護士、そしてマスゴミだとかの生臭い連中なのだ。

 大半の女権団とか言われてる連中は、元々は女性の社会進出を訴える割とまともな団体だったのだ。

 そこにIS登場の衝撃によって世論が混乱している際、女性優位を訴えて自分達の利益にしようとしだしたのがこの連中の始まりだった。

 今ではまともな団体の方が少数派で、まともな人々からは顰蹙を買いまくっている。

 

 「とは言え、私はそういった大奥の運営みたいな事は出来んぞ?」

 「えぇ、そこは別の方で行います。篠ノ之さんには、何があっても織斑さんの味方であってほしいのです。」

 「分かった。そういう事ならば喜んで。」

 

 これで一組内では合法的に一夏と一緒にいる理由が出来たと箒は喜ぶが、彼女に任せられたのは謂わば最後の盾だ。

 一夏に何かあればその身を盾にしてでも守り、一夏を支え、応援し、共に歩む事でその心を守る。

 はっきり言って大役だが、箒は寧ろそんな役目こそが欲しかった。

 

 「周辺の虫除けに関しては、私がクラス全体にそれとなく伝えて連携する予定です。」

 

 一夏と箒の練習量・学習時間を確保するためだけでなく、これをやるためのクラス代表就任だった。

 既に根回しは始めており、一組の中からは唯一の男子を守ろうという意気込みが生まれていた。

 とは言え、本職の様な事は期待していない。

 あくまでも一夏に好意的な注目が集まり、秘密裡に何かをしようと言う連中にやり辛いと感じさせる程度のものだ。

 

 (まぁその辺は本職の生徒会にお任せしよっと。)

 

 セシリアに出来る事は限られている。

 たとえイギリスの代表候補生筆頭であり、専用機持ちであろうと、限界は存在する。

 だからこそ、こういう時は素直に人を頼るのだ。

 まぁ、単にこういった裏方よりも正面突破してこようとする敵を迎撃する方が遥かに性に合っているというのもあるが。

 

 「では、皆で織斑さんを守りましょう。」

 「うむ。共に頑張ろう、オルコットさん。」

 

 

 

 

 

 

 

 「処で、私は苗字ではなく名前で呼んでほしいのだが…。」

 「私に一太刀与えられたら考えますわ。」

 「難易度が高すぎやしないか?」

 「ふふ、頑張って修練する事ですわね。」

 (これ以上仲良くなって変なフラグ生えても困るし。)

 

 

 ……………

 

 

 「何とか産廃の汚名を返上しよう。」

 

 一夏はそう決意し、クラス内で整備科への進級を目指している生徒を中心とした有志を集め、何とか白式の調整を行おうとしていた。

 

 「機体の基本性能は公表されてる第三世代のより高いんだけど……。」

 「調整ほぼしてないじゃん!スラスターのエネルギーロス4割って何事!?」

 「近接機体なのに被弾面積多い上に装甲も厚くないとかたまげたなぁ…。」

 「システム面も何か雪片関連のデータで殆ど埋まってるんですがそれは。」

 「なにこれ なにこれ(白目)」

 

 予想以上の駄目具合に騒然となっていた。

 

 「織斑君、これ倉持にクレーム付けた方が良いって。」

 「正直、まともに動いてたのが奇跡レベル。」

 「機体コンセプト自体は暮桜の正統後継機なのに、残念ってレベルじゃないわよ!」

 「あれ、このOS、打鉄のとまるっきり同じなんだけど…。」

 「よし、書式に纏めて先生達に提出しよう。欠陥品掴まされたってレベルじゃないし。」

 

 ともあれ、現状はあるものでどうにかするしかない訳で。

 一年一組による白式の現地改修作業が始まった。

 

 「先ず、ソフト面を徹底的に洗いましょう。」

 

 そして、一組総出でやるとなったら、当然セシリアが音頭を取る事になる。

 

 「最終的な調整の方向性は織斑さんの要望に沿う形にするとして、先ずは何処が悪いか調べましょう。」

 

 ソフト・ハード班に分かれて作業は進み、ものの二日で洗い出しは完了した。

 結果、以下の問題が判明した。

 

 1、OSが打鉄のままで未調整。

 燃費が悪く、機体性能が高いのに量産型の打鉄の仕様のまま。

 2、量子格納領域が無い。

 雪片一振り及びその周辺システムと思われるブラックボックスに圧迫され、他の武装が格納できない。

 3、機体の形状上、どうしても近接戦闘に不利。

 これは既に散々言っているが、被弾面積広すぎる機体で近接仕様、更に高機動のためのウイングバインダーで射撃兵装無しとか最早罰ゲームである。

 4、機体の細かい調整、特にスラスター回りが完全に未調整。

 

 「ちょっと倉持まで行って参ります。」

 「セッシーどうどう。」

 「明らかに納期間に合わず力尽きた感。」

 「そりゃ数か月程度じゃねぇ…。」

 

 一組一同が頭を痛める中、各問題を解決すべく奔走するのだった。

 

 

 ……………

 

 

 2週間、それが白式の現地改修にかかった総期間だった。

 本来なら未だISの実機については触れていない彼女達ではもっと時間がかかるのだが、これに関しては本音が心強い援軍を連れてきてくれたのだ。

 

 「私も噛ませて。こんなの許せない。」

 

 4組代表、日本代表候補生の一人、更識簪その人である。

 

 彼女は元は打鉄弐式の専任パイロットだったのだが、倉持技研が白式の開発を始めるに当たり、弐式の開発を一方的に無期限停止したのだ。

 半官半民と言う倉持の構造上、政府からの要請は断れないのだが……元々国産次世代機を開発して安定していたのに、経営陣が一方的に仕事をもぎ取って来て現場に投げたのが運の尽きだった。

 唯一の男性IS搭乗者のための専用機を!と意気込んでみた所で、そのリソースは有限だし、開発途中だった打鉄弐式とは余りにも求められるものが違い過ぎて流用も不可能だった。

 その上、暮桜の後継(=再現)機と言う成功体験の踏襲を目指した白式は肝心の第三世代兵装であっさりと暗礁に乗り上げた。

 あぁでもないこうでもないと踊り続ける会議に対し、いい加減にせいやとキレた篠ノ之博士の一声によって白式(フレームのみ)は白式(未完成)程度の出来で完成したのだった。

 そんなこんなの狂騒劇を知っている簪は、特に一夏を恨む事もなく、代わりに倉持に極大の憎悪を抱きながら、今日まで必死こいて打鉄弐式の開発を続けていたのだという。

 

 そんな人物が開発に参加したのは、勿論理由があった。

 本音から打鉄弐式の代わりに開発された筈の白式の惨状を聞き、ガチ切れしたのだ。

 曰く、「弐式だけじゃなく、白式までこんなの。ISを馬鹿にしてるとしか思えない。」

 そんな激しい怒りと正義感と共に、既に整備科の三年生並の技術力を持った彼女の参戦はとても心強いものだった。

 

 「でも、弐式の方もちょっと手伝ってほしいかなって…。」

 「お安いご用ですわ。」

 

 斯くして、簪と言う圧倒的な援軍により、白式の初期設定は1日で完了したのだ。

 そして翌日、改修は荒れる事となる。

 

 「オレさ、白式自体は嫌いじゃないんだわ。千冬ねぇとお揃いだし。」

 「まぁそうでしょうね。」

 

 白式は倉持製とされているが、それはガワだけであり、実際は篠ノ之束製ISの最新型ISである。

 それも先に作成された暮桜の後継機として。

 ブリュンヒルデのファンであれば、目の色を変えて欲する機体である事は間違いなかった。

 

 「倉持に関しては、正式に抗議を出すとして。問題はどの様な方向性で調整するかですわね。」

 

 大別できるのは、短所を埋めるか、長所を伸ばすか。

 スラスター回りの出力調整による効率改善は大前提として、それによって浮いたエネルギーをどう使うのかが課題となった。

 

 「やっぱ稼働時間の延長じゃない?」

 「スラスターの出力向上は?踏み込めないと意味無いんだし。」

 「ってーか、この半ばブラックボックス化してる領域どうするー?」

 

 あーだこーだと話は纏まらず、取り敢えず一度動かして方向性を選んでもらおうという事で、一夏は白式を纏ってアリーナで慣らし運転をしたのだった。

 

 「おお!凄い、全然違う!」

 

 白式の挙動は、随分と滑らかだった。

 本人の慣れもあるとは言え、初日にあった固さや反応の遅延は消え、スラスターも三段階での出力選択をリアルタイムで出来るようにしたため、かなり使いやすくなったという。

 打鉄のままだったOSも使用しない射撃関連機能を削除し、反応速度の向上を主眼に限界までカスタムした。

 こうした一組+簪の努力により、本人の錬度不足と機体の調整不足による盛大なエネルギーロスはほぼ解消していた。

 それでもやはり打鉄やラファール・リヴァイブよりは大分悪かったが。

 

 「ん、『零落白夜』?」

 

 あーだこーだ言いながら白式を見つめていた一同だが、不意に一夏が不明な機能を発見した。

 一度降りて精査した処、驚きの結果が判明した。

 零落白夜とは暮桜の単一仕様能力(ワンオフアビリティー)であり、自機のエネルギーを消費する事でエネルギーの刃を形成する。

 この刃はISのエネルギーシールドを始め、非実体系のエネルギーを問答無用で切断するという極悪性能であり、初代ブリュンヒルデである織斑千冬は本人の近接戦闘技能と相まって雪片一振りとこの単一仕様能力で以てモントグロッソを優勝したのだ。

 

 「成程。白式とは倉持による暮桜の再現実験機と言う事ですか。」

 

 その言葉に、一同が納得した様に頷いた。

 暮桜は篠ノ之博士製であり、世界が未だ第一世代を実用化した時点で既に第三世代の領域にあった。

 しかし、その技術力は本物であり、現行のどの第三世代機よりも高性能であり、知名度もまた抜群だ。

 そして現在、第三世代機の開発に難航していた倉持は過去の栄光の象徴とも言える暮桜の模倣へと走ったのだ。

 国から注文されていた打鉄弐式の開発を放り捨ててまで。

 結果的には時間と技術力の不足で完成する事は無かったが、たとえ完成した所で織斑千冬の乗らない暮桜もどき等、国防上役立たずなのは目に見えている。

 この選択をした時点で倉持の経営陣の未来は暗かったが、そもそもちゃんと基礎技術を積み重ねなかった時点でダメダメだった。

 まぁ打鉄の成功で油断しきった故の結果なので、自業自得なのだが。

 

 「落ち目とは言え国内最大手の倉持がこれとか…。」

 「日本国内のIS開発は停滞しそうですわね…。」

 

 そんな暗い話題は兎も角として、これにて一夏は白式の最終調整の方向を見出したらしかった。

 

 「千冬ねぇの真似は、オレには無理だ。だから、オレなりの方向で行く事にする。」

 

 それは尊敬する姉の言うがままだった弟の、自立の第一歩でもあった。

 姉と自分は違うのだと、隔絶した才能と経験を知ったが故に、一夏は己自身を正確に認識したのだった。

 

 「では、本格的に弄りましょうか。」

 「頼む。皆にも改めて頼む。オレに力を貸してくれ。」

 「私からも頼む。」

 

 そう言って直角で頭を下げる一夏と箒の二人に、一組+1は快諾した。

 

 

 ……………

 

 

 スラスター関連の調整は、省エネ一択となった。

 現状の一夏の力量では、どう足掻いても零落白夜を扱い切れないと判断したからだ。

 そのため、少しでも攻撃可能回数及び継続戦闘時間を増やそうと省エネとなった。

 次に手を付けたのが、機体形状だった。

 余りにも邪魔な背面のウイングスラスターはウイング部分を切り詰め、基本が横向きだったそれを縦向きにして被弾面積を抑えた。

 更に肩に付いてる装甲も腕部と干渉するのでパージする。

 これによって機体本体分の格納領域が空いたので、一つだけ兵装を追加する事が可能となった。

 しかし、ここで問題が一つ。

 OSの方で、既に射撃兵装用の機能を全てオミットしてしまったのだ。

 元に戻すか、現状のまま行くか。

 これに関しては一夏自身が射撃兵装に慣れていない事もあり、取り敢えず現状のまま行く事となった。

 そして、足せる兵装は何を選ぶのかと言う話になったのだが……

 

 「よし、盾にしよう。」

 「じゃぁ打鉄の予備パーツを加工するね。」

 

 一夏の技量では全ての攻撃を回避する事は出来ない。

 であれば、盾で正面からの攻撃を受け止めつつ、そのまま踏み込んでいくというスタイルにしたのだ。

 

 「盾の裏にマシンガンでも仕込めば…。」

 「予備弾倉までは容量無いから仕方ないかなって。」

 「よろしい。ならばフラッシュロケットですわ。」

 「「「その手があったか!」」」

 

 と言う訳で、フラッシュグレネード付きシールドが白式の左腕部に追加された。

 こうした2週間にも及ぶ努力の結果、白式現地改修仕様が誕生したのだった。

 

 

 

 

 「よし、模擬戦しようぜオルコットさん!」

 「ストライクシールド!」

 「ぐわぁぁぁぁぁ……。」

 

 とは言え、未だ黒星だらけなのだが。




Q、白式をガンオンで例えると…

A、射撃兵装もガード兵装もないバイアランwith新兵パイロット。


Q、現地改修後は?

A、↑に盾とドム系の拡散メガ粒子砲追加したと思いねぇ。

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