徒然なる中・短編集(元おまけ集)   作:VISP

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艦これ短編 赤城が作る3

 近くの商店街にオープンした業務用スーパーで開店大安売りをしていたので、ついつい買い過ぎてしまった。

 

 具体的には小麦(薄力粉・強力粉合わせ)30kg、玉ねぎ10kg、白菜とキャベツ各15玉に卵を70個。

 そして止めに挽肉30kg。

 

 「買い過ぎましたね。」

 「ですねー。」

 

 重量は兎も角、流石に持ちきれないとして急ぎ電話で警備府から軽トラックを鳳翔さんに運転してもらった。

 ものの5分で積み込みを終え、運転してきてくれた鳳翔さんにお礼代わりにソフトクリームを奢り、今度は自分が運転する。

 

 「で、この材料ですが。」

 「あれしかないでしょう。」

 「幸い、仕込みは昼の分まで。よって夜は…」

 「えぇ、夜は…」

 「「餃子パーティーですね!」」

 

 そういう事になった。

 

 

 ……………

 

 

 鳳翔さんが餃子の皮を、私こと赤城が中身を作る事になりました。

 レシピは既に決めてあるとは言え、量が量なのでお昼が終わってから非番の子(某駆逐と戦艦除く)に声をかけて手伝いを頼みます。

 人数が集まった所で、早速調理開始です。

 

 先ず餃子の皮ですが、こちらは薄力・強力粉100gずつに塩一撮みとお湯100㏄、打ち粉に片栗粉を使います。

 粉と塩を混ぜ合わせた後、お湯を注いで箸で混ぜましょう。

 この時大事な事は、絶対に分量以上のお湯を入れてはいけない事です。

 入れてしまうと餃子の皮の食感が無くなってしまいますからね。

 ある程度混ざってそぼろ状になったら、次は混ぜたものをビニール袋(アルコール消毒済み)に入れて揉みます。

 袋を上から掌でつぶす様にして揉み続け、平になった内側に向けて折り畳み、また潰します。

 これを10分程繰り返します。

 足し水はせず、徐々に水分が馴染んで生地が纏まっていくのを待ちましょう。

 10分程混ぜて、そぼろ状からごく普通の生地程度にまで表面がつるりと滑らかになったら、今度は袋から取り出し、丸めてラップに包み、30分程生地を休ませます。

 それが終われば、生地を24個に均等に切り分けます。

 と言われてもそんな正確に出来るか!と言われるので、簡単に説明します。

 先ずは生地を半分にし、それぞれを切り分けやすい円柱状にします。

 更にその円柱状の生地を半分ずつにして、これで4つの生地になります。

 これらの生地を更に半分にして8個の生地になり、最後にその生地を三等分にすればこれで24等分となります。

 多少差があっても、手作り餃子なので特に問題はありません。

 そして出来上がった24の生地は直ぐに伸ばさないものはラップをかけて水分の蒸発を防ぎます。

 で、後はまな板等に片栗粉を撒いて、生地を麺棒で円状に伸ばします。

 伸ばす時は麺棒を縦向き・横向きにして均一に伸びるようにしましょう。

 最後に片栗粉を軽く塗して終了です。

 

 お次は餃子の中身です。

 ここからは私のオリジナルなので、分量は割と適当になります。 

 先ず、肉と野菜の比率ですが、これは4:6程度を目安にしてください。

 普通逆じゃね?と言われそうですが、こうすると加熱時に野菜から大量の水分が肉汁と共に出て外はカリカリ皮はもちもち中身はジューシーな餃子に仕上がるのです。

 よりヘルシーにしたいなら、挽肉減らして豆腐を入れるのもありです。

 野菜の内訳はキャベツか白菜をメインにネギ(玉ねぎ可)を加えます。

 ニラを入れる場合はニンニクは無しにしても大丈夫です。

 で、肝心の調理ですが、今回使用するキャベツ・白菜・玉ねぎ(合計30kg)を全て微塵切りにします。

 これは流石に量が多いので、今回はフードカッターを使用します。

 さて、首尾よく微塵切りにした野菜15kgと挽肉10kgを混ぜます。

 この時、塩胡椒・ニンニクを加え、全体が馴染んで粘り気が出るまで只管かき混ぜ続けます。

 ある程度混ざったら、半分に分け、片方にだけニンニクを入れます。

 この時、1kg辺りにチューブなら3cm、粉末なら大匙一杯程度を目安に入れましょう。

 どうしてもニンニクの匂いが嫌って言う人も居ますからね、気遣い大事です。

 しっかし、艦娘じゃなかったら重労働で疲労困憊になる程の作業ですねこれは…。

 もういっそ業務用機械の購入を真剣に検討した方が良いですね、うん。

 

 で、混ぜ終わったら、今度は作った餃子の皮で包みます。

 普通のスプーンではなく、ティースプーン一杯分程度の量を皮の中心に置き、皮の外周の半分へと水を塗ります。

 後は見慣れた餃子の形になる様にヒダを作りながら閉じます。

 で、これ物凄く時間がかかるので……

 

 「ごめんなさいね、皆さん。」

 「後で何かお礼のデザートでも作りますね。」

 

 「大丈夫!私達に任せて!」

 「ふふん、レディにかかればこの位…あれ?」

 「はわわ、暁ちゃん、そんなに載せちゃ包めないですよ~。」

 「報酬はウォッカで頼むよ。」

 

 「ふっふ~アイドルなら料理だって出来ないとね!」

 「姉さん、次のパッドに取り替えますね。」

 「ん~夜戦じゃないけど頑張るよ~。」

 

 人海戦術です。

 取り敢えず手数が必要なので、非番で時間あって飯テロ(悪い意味で)を除いた人員を召喚する事にしました。

 第六駆逐隊の4人と川内型三姉妹です。

 自分で食べる分なら、面白い形にする事も許可しています。

 手慣れてない所もまだ見られますが、数が数ですので、その内慣れる事でしょう。

 

 で、肝心の焼き方ですが、油を加熱したフライパンに広げ、大体10個未満の餃子を並べて中火で焼きます。

 そこに100㏄程度のお湯をかけて蓋をして蒸します。

 羽根つきにする際は、このお湯に片栗粉大匙半分程度を入れましょう。

 好みで増量するとより大きく厚めの羽根ができます。

 で、フライパンの中の水分が蒸発したら蓋を開け、少しだけごま油を回し入れ、餃子がフライパンから剥がれた所でひっくり返します。

 そして反対側に焦げ目が付いたら完成。

 これぞ赤城特性ヘルシー野菜餃子です。

 

 さ、今の内にでっち上げ中華スープとお浸しでも作っておきましょうか。

 終われば機械の洗浄もしなくちゃいけませんしね。

 

 

 ……………

 

 

 午後7時 提督執務室

 

 「提督、明日の予定ですが…」

 「む?」

 

 すん、とそろそろ飯時かな、と思っていた執務中の提督は、不意に鼻に届いた香りに書類から顔を上げた。

 

 「提督?」

 「高雄、すまんがドア開けてもらって良いかな?」

 「? はぁ、構いませんが。」

 

 そう言って、高雄が今し方自分の閉めたドアをもう一度開ける。

 そして廊下の先から漂ってきた香りに空きっ腹がうめき声をあげる。 

 

 「そういえば、今日は赤城さんが担当でしたね。」

 「明日の予定、急ぎかい?」

 「いえ、食後に確認すればよろしいかと。」

 

 幸いにも、通常の仕事はもう終わっているし、急ぎのものも無い。

 顔を見合わせた提督と秘書艦は取るものも取らず、食堂へと駆け足で向かった。

 

 

 ……………

 

 

 普段から和気藹々と喧騒に包まれている食堂。

 だが、今のそこには狂乱の宴があった。

 

 (間違いない。このたんぱく質と生地の焼ける香り、そしてこの音……!)

 

 「おかわり!」

 「餃子おかわり!」

 「生ビールと餃子おかわり!」

 「こっちも餃子セット一つ!」

 「はい餃子おかわり三つに生ビーとセット一つ!」

 

 餃子。

 それは日本人を誘惑して止まない中華料理の一つ。

 食堂にいる調理担当を除いた全ての艦娘は全員、餃子を一心不乱に貪っていた。

 

 「水餃子一つ!」

 「こっちは蒸し餃子一つ!」

 「はいただいま!」

 

 水餃子に蒸し餃子、そういうのもあるのか!

 提督と高雄はどれを頼もうか悩んだ。

 

 「いらっしゃいませ!本日は餃子パーティーとなっております!」

 「メニューは?」

 「焼き餃子と羽根つき、水餃子、蒸し餃子、ミックスの5つになっております!にんにく有り無し選べますよ!」

 「「ミックスで有り!後ビール!」」

 「はい、ミックス二つにビール二つ!かしこまりました!」

 

 そして欲望に忠実になった。 

 

 「はい、ミックス二つにビール二つ!」

 

 ものの10分としない内にドン!と重量物独特の音と共に料理が配膳された。

 お盆の上に載った白米の乗った茶碗にお浸しと中華スープの椀。

 そして主役である蒸し餃子の入った蒸し籠、水餃子の入った小鉢、そして焼き餃子の並んだ皿が載っていた。

 ごくり、と知らず喉が鳴る。 

 

 「頂きます!」

 「頂きます。」

 

 二人はほぼ同時に手を合わせ、真っ先に焼き餃子を口にした。

 焼き餃子は綺麗な焼き色の付いた羽根つきと普通のものが三つずつ並び、今も焼きたて特有のジュージューと言う音を立てていた。

 

 (最初は普通のをタレを付けずに…)

 

 噛んだ瞬間、パリパリに焼かれた皮の表面の小気味よい食感が伝わる。

 次いでもっちりとした弾力のある皮の中の食感に出会う。

 

 (うお!?)

 

 最後に、今まで食った餃子よりも遥かに多い熱々の肉汁に驚く。

 野菜の甘味、肉の旨味が存分に溶け出たそれは、下味程度の塩味だけの筈なのにとても美味しい。

 そして咀嚼して気づく。

 通常の餃子は挽肉の油とフライパンのサラダ油でこってりの筈なのに、何故か不思議とあっさりとして飽きが来ない。

 

 (なんだこりゃ!?)

 

 次に3個ある水餃子をそのまま食べてみる。

 パリッとした食感こそないものの、まるで麺類かの様にするりと口に入り、噛めば焼き餃子以上の汁が溢れ出す。

 焼くのに油を使っていないためか、焼き餃子よりも更にあっさりとしていた。

 最後に3つある蒸し餃子だ。

 水餃子と焼き餃子の中間程度を想像していたのだが、これもまた驚いた。

 皮の弾力、それが凄かった。

 まるで撞き立ての餅かと思ってしまった。

 それでいて水餃子の様にあっさりであり、しかし食べ応えはこちらが上だ。

 

 (よし、最後に羽根つき…)

 

 そして、最後に焼き餃子の羽根つきへと至る。

 先程の皮の表面だけでなく、羽根の部分もまたきっちりとパリパリに焼き上げられており、その点においては普通の焼き餃子を上回る。

 

 (結論:全部美味い。)

 

 そしてちょっと脂っこくなった口の中をジョッキに入ったビールを呷って口直し。

 ごく、ごく、ごくと盛大に飲めば、口の中はホップの程好い苦みと炭酸の刺激と共にすっきりする。

 

 (あ、これ止まらないや。)

 

 そして、提督は餃子とビールを消費する機械となった。

 餃子餃子ビール餃子浸し餃子スープ餃子餃子ビール……。

 お浸しはほうれん草ではなく、千切りキャベツを湯がいて鰹節と出汁つゆで味付けしてある。

 スープは透き通った中華スープで、輪切りした青ネギと細かく刻んだ白髪ネギに春雨だ。

 どちらも塩分控えめだが、出汁の旨味がしっかりしているためにあっさりとしつつも美味い。

 酒の飲めない者でも、この二つなら十分餃子の脂を消せるだろう。

 

 「あ、タレ。」

 

 そこで漸く気づいた、タレ付けてなかった。

 そのためか白米も減っていない。

 これはいかんとテーブルを見ると、普段よりも置いてある調味料が増えていた。

 普段は醤油と七味位なのだが、今は更にお酢とラー油、更にポン酢とおろしニンニクの入った壺まである。

 

 (流石は赤城と鳳翔さん、抜け目ないな。)

 

 備え付けの小皿を3枚取り、それぞれお酢+醤油+ラー油、お酢+ラー油、ポン酢+ラー油を注ぐ。

 お好みのタレに浸し、先程とはまた別の味わいになった餃子をおかずにご飯を掻き込む。

 

 「ミックスとビールお代わり!」

 「はい、ミックスとビールお一つ!」

 

 気づけば全部食べ尽した上で、お代わりを叫んでいた。

 今夜もまた、食堂の熱気は長くなりそうだった。

 

 

 

 

 

 

 

 翌朝

 

 「うふふー、余った餃子のタネで作った和風ハンバーグも良いですねー。」

 「!」

 

 




久々に書いた。
最近夜勤で忙しくてどうしても気力が…

ネタだけはたくさんあるんだけどなー

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