なので後半の宝具・スキル欄に加筆修正しました。
「さて、そろそろアイツを呼びましょうか。」
ジャンヌ・ダルク・オルタ。
青髭のジル・ド・レェが聖杯の力で作り出したジャンヌダルクの、本来は存在しない負の側面。
ジャンヌを知らない人々の「彼女ほど悲惨な目に遭ったのならば復讐を考えていない筈が無い」という思い込み=信仰を具現化する事で誕生した。
そして、嘗て第一特異点にてフランスで猛威を奮った竜の魔女。
そんな彼女が贋作英霊の事件を経てカルデアに召喚されてから一月、そんな事を唐突に言い出した。
「あいつって、ジルは二人ともいるし、白ジャンヌもいるよ?」
「あいつらじゃなくて、もう一人いるじゃない。私がフランスで使ってた手駒。」
「え?でも、第一特異点のサーヴァントの皆さんは、既にカルデアで召喚している状態ですが。」
今丁度現れたマシュの言う通り、第一特異点のサーヴァントは既に全員が召喚され済みであり、心当たりなんてマスターである少年にはいなかった。
しかし、ジャンヌ・ダルク・オルタ(通称:邪ンヌ)の言によれば、もう一人いるらしい。
「幸い、呼び符が何枚かあるんだし、呼んでみましょう。」
「では、私もご一緒しますね。」
触媒なら私もいますしね。
皮肉げな笑みを浮かべながらも、どこか楽しげな雰囲気の邪ンヌといつも通りの健気なマシュと共に、藤丸はシステムフェイトのある召喚室へと足を運んだ。
……………
「呼び符は7枚か。まぁ大丈夫でしょ。」
「大丈夫じゃなかったら?」
「それ、いつもの事でしょ?」
「先輩、爆死は程々にしましょうね…。」
召喚陣に呼び符をセットする邪ンヌとマシュからの一言に、藤丸はぐうの音も出なかった。
実際、召喚時の爆死等よくある事だったからだ。
「さ、準備は出来ました。呼びなさい。」
「所で、目当ての英霊の説明とかは……。」
「却下。この私からのサプライズだと思いなさいな。」
ニヤニヤと嗜虐的な笑みを浮かべる邪ンヌに、藤丸とマシュは諦めて召喚陣の起動を始める。
(これで誰も出なかったら、絶対邪ンヌにセクハラしてやる…。)
(ジャンヌ・オルタさんの言う残り一人、一体誰なんでしょう?)
(あいつを呼べれば、私のスキルとの連携もあって活躍の場が増える…!)
それぞれの思惑と疑問を他所に、二人は召喚を始めた。
1枚目、宝石剣
「外れね。」
「便利だし、丁度限凸できるだけあるから重ねておこっか。」
「では次に行きましょう。」
2枚目、柳洞寺
「外れね。」
「マナプリ一枚目と。」
「では次に。」
3枚目、アゾット剣
「また外れね…。」
「持ってると愉悦られそうだからマナプリへ。」
「パラケルススさんのものよりも低性能らしいですね。」
4枚目、偽臣の書
「ワカメね。」
「ワカメだね。」
「今日はワカメを食べるのは止めましょう。次です。」
5枚目、死の芸術
「外れだけど当たりね。」
「よっし、こいつも限凸!」
「絵柄はアレですが、効果は一級品ですからね…。」
残る呼び符は後一枚だけ。
もう後は無かった。
「さぁ来い!邪ンヌとオレに縁のある英霊!」
「今なら私が作ってあげた契約書もあるわよ!とっとと来なさい!」
「いつもの爆死でも先輩は私が慰めます!」
3人の叫びと言うか気合いに反応してか、召喚陣が先程当たった死の芸術以上にぺかー!とエーテルの輝きを放ち、先程までと違ってその中央に人影が見えてくる。
「カモン!人理の守り手よ!」
そして、エーテルの輝きが収まった時、召喚陣には一人の少女の姿があった。
緑色に染められたワンピースに茶色のスリーブ(アームカバーの様なもの)、白い三角巾を掃除婦の様に頭に被った彼女。
一見単なる中世の村娘にしか見えない彼女だが、膝裏にまで伸びる人間離れした輝きを持つ金糸の長髪と縦長に広がる瞳孔と薄い金の瞳が彼女が単なる人間ではない事を如実に物語っていた。
そんな彼女はにっこりと笑うと、ぺこりと頭を下げてサーヴァントとしての挨拶を告げた。
「サーヴァント・ライダー、召喚に応じ参上しました。真名をファフニール。殆どバーサーカーな身ですが、上手く使ってくださいね?……所で、ジークフリート殿はおられますか?いればお礼を言いたいのですが…。」
「「「ぃやったーーーー!!」」」
召喚室に三人の歓声が響き、それを間近で聞いたファフニールはきょとんと瞬きをするのだった。
……………
所変わって食堂にて、4人はお茶をしながら話をすることにした。
「そうか、君は確かにファフニールなんだね。」
「えぇ、表記揺れでファブニールとも呼ばれますが…。」
そう言って、ちらりと物言いたげに邪ンヌに視線を向けるファフニール。
それに邪ンヌはどこかふてくされた様にふん、と鼻を鳴らす。
「だって、ファブニールの方がかっこよいじゃない。」
「まさかの理由ですね…。」
呆れた様なマシュの言葉が全てを物語っていた。
邪ンヌぇ…と藤丸も言葉には出さずとも呆れた視線を向ける。
「何よ!言いたい事があるなかはっきり言いなさいよ!」
「邪ンヌは可愛いなぁ。」
「んな!?なななななn(ry」
顔を赤くして照れる邪ンヌに、藤丸は更に温かい視線を向けてほっこりする。
「む……。」
「イテ」
それを見ていたマシュは不満そうに顔をしかめると、そっと隣に座る藤丸の膝を軽く叩く。
私にも構って、という素直になれない初心な少女なりの精一杯のアピールだった。
「ふふ、皆さん仲がよろしいんですねー。」
その様子を、のんびりとお茶を楽しんでいたファフニールがにこにこと笑顔で感想を告げた。
「アンタ、何処見てそんな事が言えるのよ!?」
「うん、皆仲良しだよ。」
「はい!私と先輩はいつも仲良しです!」
「ぷふ!」
三者三様の言葉にファフニールはついつい噴き出してしまった。
(これなら、私も何とかやっていけそうですね。)
終始和やかで騒がしいお茶会で、ファフニールは本当に久々の安心という感情を抱いていた。
……………
「お前、は……。」
お茶会が終わり、施設全体の案内をしている最中、二人は出会った。
竜殺しの英雄、ニーベルゲルンの歌の主人公、ネーデルランドの遍歴騎士。
セイバー・ジークフリート。
「貴方は……。」
片や真性の竜種、悪竜現象の始まり、人々が恐れた邪竜。
ライダー・ファフニール。
顔を合わせた二人は、微動だにしない。
「すまない。」
先に動いたのは、ジークフリートだった。
普段から長身なのに猫背気味の彼は、腰を直角に折って深々と頭を下げていた。
「俺は君の事情を知らず、ただの邪悪であると決めつけて退治した。そのせいで、君は人理にそういうものだと刻まれてしまった。」
それは偉大な英雄が抱えていた、数少ない後悔の一つ。
彼が後年、遠回しな自害を選んだ理由の一つ。
死後千年経っても消えなかった、過去の過ち。
「頭を上げてください。」
その謝罪はしかし、その相手に止められた。
穏やかでのほほんと笑っていた少女は、今は真剣な顔で自分を殺した男を見つめていた。
「ジークフリート、その謝罪を受ける事は出来ません。」
「だが…!」
「何故なら、竜となった後の私は確かに大勢の人を殺してしまいました。それが指輪の呪いを広めないためのものだとしても、それは呪いによって歪んでしまった私の成した罪。」
誰かが彼女を止めねば、討たねばならなかった。
それはシグルドでも、ジークフリートでも変わらない。
「罪は裁かれねばなりません。そして、たまたま私を裁いたのが貴方だったというだけです。」
悪竜は討たれるのが世の定め。
竜殺しの英雄として、ジークフリートは民草を守るために立ったに過ぎない。
『そうか。お前が相手となれば、俺が呼ばれるのも必然だったか。』
『往くぞ、ファフニール。嘗ての様に、俺がお前の嘆きを止めよう。』
そして、あの第一特異点では民草のため以外にも、宝具と聖杯によって狂わされて望まぬ暴虐を撒き散らすファフニールを止めるために立ち上がった。
「邪竜となり、罪を重ね続ける私を止めてくれました。剰え、最後には呪いの指輪を頼んだ通りに捨ててくれました。それだけでも望外なのに、今ではこうして罪を償う機会まで貰えたんです。」
これ以上は貰い過ぎて怒られちゃいそう。
そう言って困った様に微笑む少女は、だからと目の前の罪悪感と後悔で押し潰されそうな男へと、自分のできる最高の笑顔で告げた。
「ありがとう、ジークフリート。貴方は確かに私を救ってくれました。一度ならず二度までも、本当に感謝しています。」
「………ッ!」
その言葉に、その笑顔に、生前からずっと求めてきた素朴で暖かな感謝に、ジークフリートは思わず涙腺が緩みかけた。
それを英雄としての渾身の気合いで辛うじて押し留め、精一杯の虚勢を張って、己が退治した少女へと告げた。
「……では、俺は何度でも君を止めよう。君が道を誤るならば、君を止めるのは竜殺したる俺の役目だ。」
「えぇ。その時はよろしくお願いしますね。」
竜殺しと邪竜。
本来なら不倶戴天の天敵である二人の再会は、とても優しく穏やかなものだった。
「ぐす……。」
「良い話だなぁ…。」
(今更ながら良心が痛い……。)
なお、完全に置いてけぼりにされた三人は空気を読んで無言で背景に徹していた。
……………
真名:ファフニール
出典:ニーベルンゲンの歌
地域:ドイツ
属性:混沌・中庸
性別:女性
身長/体重:153cm:53㎏
「ニーベルンゲンの歌」に謳われる邪竜。
その正体は、神々の謀略によって悪竜の呪いに汚染された一人の少女だった。
兄を殺された賠償として、ロキ神より渡されたラインの黄金という財宝の山。
その中にある呪われたアンドヴァリの指輪により、彼女とその家族は財宝を求めて殺し合う事となった。
父が弟のレギンに殺された後、長姉であるファフニールは呪いの大本の指輪を見抜き、呪いがそれ以上広がらない様に抱え込んだ。
すると、呪いを強く受けたファフニールは竜へと変化してしまった。
元々彼女達は変身の魔術を得意とする魔術師だったが、それが原因かはわからないものの、ファフニールは真性の竜種へと成り果てていた。
これ以上の被害拡大を食い止めるため、ファフニールは財宝を抱えてグニタヘイズへと移り住み、そこで待ち続けた。
竜となってしまった己を止める/殺してくれる英雄の到来を。
その間、彼女は財宝目当てに住処へと引き寄せられたあらゆる人間達を殺し尽くした。
呪いが外に出れば、自分と同じ様な被害者が出る。
それを食い止めるため、そして竜としての財宝を収集する本能に従い、彼女は住処にやってくる者全てを皆殺しにしていた。
そして、遂に待ちわびた者がやってきた後、彼女は漸く覚めない眠りにつく事が出来た。
宝具を使用しない限り、彼女は単なる村娘としての人格を備えている。
多少の魔術は使えるが、後は人間よりも多少頑丈な程度に過ぎない。
しかし、一度その宝具である指輪を使えば、彼女は理性を失い、伝承通りの邪竜へと変貌する。
宝具「呪われし黄金の指輪/リング・オブ・アンドヴァリ」
ランク:EX
種別:対人宝具
レンジ:5
最大補足:1人(自身・ジーク・ジークフリート・シグルド他、指輪を保有した者)
ファフニールを竜たらしめる呪いの指輪。
これを手にしたが最後、一時的に財宝に恵まれるが、呪いによって次第に狂気に飲み込まれていき、最後には竜へと成り果てる。
これを発動させた場合、ファフニールは邪竜の姿となって活動を開始する。
こうなると、マスターからの命令も複雑なものは実行できなくなり、燃費が大きく悪化する。
しかし、その強力さに関しては確かなもので、竜の吐息の一撃で小さな町一つを灰塵に帰す事も出来る。
此度の召喚では、大規模攻撃時のみこの姿で竜の吐息による攻撃を行う。
効果:自身のクラスをバーサーカーに変更(見た目が画面一杯のドラゴンになる)+自身のHPの最大値と攻撃力を上昇(OCでUP・5T)+敵全体に強力な攻撃。この効果は重複可能である。
宝具「ラインの黄金」
ランク:A
種別:対軍宝具(自軍)
レンジ:10
最大補足:可変
北欧の神々により兄の命の賠償として贈られた黄金の財宝の山。
その量たるやライン川を埋め尽くし、三代に渡ってもなお使い切れない程の圧倒的な財力を与える。
しかし、指輪程ではないが、この黄金にも破滅の呪いが宿っており、ゆっくりと持ち主とその周囲を破滅させていき、持ち主が消えればまた別の持ち主を引き寄せてしまう。
永劫に続く財の形をした呪詛、それがこの黄金の本質である。
効果:ジークフリート(剣)・ジーク(術)・シグルド(剣)・ファフニール(騎)が装備した時のみ、味方全体にNP獲得状態を付与(毎ターン5P)+味方全体のNP獲得量をUP(20%UP)。
宝具「悪竜の血鎧/アーマー・オブ・ファフニール」
ランク:B
種別:対人宝具
レンジ:5
最大補足:可変
本来ならばジークフリートの宝具なのだが、彼女の場合は己の血を浴びた者全てに対して一時的に彼女と同等の耐久性を発揮させ、外部からの攻撃に対して高い耐性を獲得させる。
効果:絆礼装の一種。味方のジークフリート(剣)とジーク(術)とシグルド(剣)等とその亜種の英霊全てにダメージ50%カット状態を付与する。
スキル一覧
魔術:C
魔力放出:C
変化:A
動物言語:A
怪力:A
黄金律:B
狂化:A
竜種:A…攻撃力UP+耐久力UP+NP獲得量UP
ステータス一覧
ライダー時 筋力E 敏捷E 耐久D 幸運C 魔力C 宝具EX
バーサーカー時 筋力A 敏捷D 耐久A+ 幸運D 魔力C 宝具EX