徒然なる中・短編集(元おまけ集)   作:VISP

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うーん消化不良。


落第騎士SS 桐原にTS転生

 どうすべぇ、と桐原家の静矢に転生した中の人は思った。

 

 ここが落第騎士世界であり、伐刀者とかいう文民統制に喧嘩売ってる個人技インフレ上等チートオレTueeeeee!な世界であり、尚且つ自分が高校生になる頃には第三次大戦勃発の確率がめがっさ高いという糞ゲーな世界である事は齢半年程度で何とか赤子の感覚器官でも分かった。

 

 (いや、伐刀者なんてやってられないし。)

 

 自分とて厨二病やオレTueeeeee!に対して誘惑が無い訳ではない。

 しかし、それ以上に自分の命が大事だった。

 だがしかし、桐原家はどうやら代々優秀な伐刀者を輩出している家柄らしく、戦いたくないなんて言えば良くて捨てられ、悪くて洗脳されかねない。

 聞いた事はないが、そんな伐刀絶技を持った連中がいてもおかしくはないだろう。

 名家ならばそんな連中との繋がりがあっても不自然ではない。

 なので、死なない様に自分を特化させる事を決意した。

 幸い、原作における桐原静矢の伐刀絶技は対象の五感に自分を感じなくさせる事でステルス化するという逃げ隠れには最適なものだ。

 展開に時間がかかる上、対象以外からは見られてしまうし、足跡や残り香等は消えないし広範囲攻撃に弱いのだが、それは訓練と対策次第でどうにか出来る。

 

 (何とか生き延びて元のオタク生活に戻らねば(使命感)。)

 

 ヒキニートではないが、生涯オタクだった前世を持つ身としては、早い所元の快適な住環境を取り戻したかった。

 だけど、こっちって自分の知ってる作品あるかなぁ?

 歴史が大分違うから、その辺はあんまり期待できんかも…。

 でも、黄昏の魔弾なる人気漫画もあるし、それはそれで良いかも。

 

 

 

 この時、自分は不覚にも気付かなかった。

 自分が原作と異なり、何故か女の子になっている事を…。

 何で気付かなかったって?

 股まで手が届かなかったからだよ!

 

 

 不肖桐原静矢もとい静(0歳)、未使用のままマイサンを無くす。

 

 

 ……………

 

 

 生まれてから16年後、予定通りに破軍学園へと入学できた。

 それまでに家での魔力ランク測定やら、本格的な訓練の開始に伐刀絶技の開眼、そこから来る戦術・戦略の勉強、それに加えて通常の学校の勉学まであり、かなりハードだった。

 幸いと言うべきか、噛ませ扱いの桐原静矢(TS済み)の元のスペックの高さからそこまで習得速度そのものは前世補正も加えて高いものがあったので、そこまで苦労する事は無かった。

 が、親が頭の固い人種であったためか、ゲームやラノベに漫画なんて必要無い!とか抜かすため、その点に関しては早々に見限っている。

 将来的には家を継がずに仕事&別居は既に決めている。

 やはり前世からのオタクとしては、あんなガチガチのエリート主義は合わないのだ。

 既に弟もいるし、女の私なんてお呼びじゃないでしょう。

 

 「理事長、私達に何の御用でしょうか?」

 

 入学早々に一部の生徒と共に呼び出されてしまった。

 まぁ原作知識的に予想はできるけどネ!

 で、結果は予想通りでした。

 ここでの事は他言無用です、という厄ネタな言葉を皮切りに話されたのは、これまた厄ネタの塊の様な話だった。

 曰く、自分達と同じ今年入学の生徒の一人にFランクの生徒がおり、その男子生徒を中途退学に追い込んでほしい。

 魔力量が低く、伐刀絶技も身体強化(全伐刀者の基礎技能の一つ)位しか使えないので、大成する見込みも低い。 

 更に言えば、その生徒が学園を卒業したとしてもとてもではないが実戦に耐え切れず殉職する可能性は高いとも。

 そこで、自主退学に追い込み、平和な道を生きる様に誘導してほしい。

 そのためなら手段は問わず、学園側からも支援する、という話だった。

 

 (う~ん。)

 

 実際、黒鉄厳の言葉は公人としては確かに一理あった。

 仮にもし一輝の様な魔力の極端に低い伐刀者がいたとして、彼程の剣或いは戦いの才能があるとはとてもではないが思えない。

 そうなれば、戦場で無駄な死体が一つ増えるだけだ。

 だからこそ、下手な希望等は持たせずに別の道で生きていくべきだ。

 が、自分は変な知識のために知っているのだ。

 黒鉄一輝が別の道に進んだ場合、高確率で日本の首都たる東京は第三次大戦で壊滅的な被害を被るのだと。

 

 (あんな善良そうな男の子、いじめ倒すとかないわー。)

 

 というかそもそも、一輝始め黒鉄家の子供達があんなにも頑なになったのは厳が相互理解を怠ったからこそ。

 その尻拭いとしてこんな後味の悪そうな事をするのは絶対に嫌だった。

 かと言って、ここで断ったらもっと酷い事をしかねない。

 となれば、あくまで言い訳の効く形で事を進める必要がある。

 

 「分かりました。方法はこちらに任せて頂いても?」

 「構いません。人手や道具が必要ならばこちらで用意します。」 

 

 取り敢えず、そういう事となった。

 はぁ……ほんとマジどうしよ。

 

 

 ……………

 

 

 僕は、彼女の事を何があっても一生忘れる事は無いだろう。

 彼女との出会いは、入学早々に実家に圧力をかけられた学園側の指示を受けた他の生徒達に追い回されて隠れていた時の事。

 階段裏の物陰で座り込んでいた時、唐突に声をかけられたのだ。

 

 「貴方が黒鉄一輝君ですね。」

 

 疑問符ではなく断定してきたその女生徒の姿には、見覚えがあった。

 桐原静。

 入試主席で答辞を読んでいた女生徒であり、全部ではないが試験を見た時、随分巧く戦うのだと思った。

 

 「何でも、創設以来始まって初のFランクだとか。」

 「そういう君は、Bランクだそうだね。」

 

 今年度の入学生の中ではただ一人のBランク。

 彼女の扱う霊装は弓であり、そこから様々な種類の矢を放つ彼女の姿は、多くの人の印象に残った事だろう。

 

 「唐突ですが、黒鉄君は伐刀者になりたいですか?」

 「なりたい。」

 

 そのためにここに来た。

 父に、黒鉄家に認めてもらうためにも、伐刀者として結果を残すために。

 

 「とは言え、Fランクである貴方が伐刀者になるには通常よりも厳しい訓練が必要。そうですね?」

 「うん、まぁその通りだね。」

 

 その問に、黒鉄は大凡の桐原の狙いを悟った。

 恐らく自分を捻じ伏せて、Fランクは相応しくないとでも因縁を付けるつもりなのだろう。

 

 「ふーむ……所で黒鉄君は我流ですか?」

 「? うん、そうだけど。」

 

 はて、そんな質問をする必要があるのだろうか?

 

 「宜しい。今後のお互いのためにもここは一つ、模擬戦をしましょう。」

 「それは良いけど……。」

 

 一輝としては疑いを捨て切れない。

 それが今までの一輝を救ってきた実績があるからだ。

 

 「勿論、どんな結果になった所で単なる模擬戦なのですから、双方に問題は発生しません。何なら文書にしても良いですよ?」

 「いや、分かったよ。模擬戦をしよう。」

 

 その言葉で、黒鉄は腹を括った。

 元より気配を殺して隠れていた彼女から逃げられるとは思えない。

 なら、此処で虎口に入るのも有りだと判断したのだ。

 

 「宜しい。では先生方に話して空いてる試合会場を借りてきますね。」

 

 にっこりと微笑むその姿に、一輝は僅かだが目を奪われた。

 

 

 ……………

 

 

 (よし、大体狙い通り。)

 

 プラン自体は簡単だ。

 原作開始時期には侮りが過ぎていた学園全体の認識、それを変える。

 少なくとも、黒鉄一輝の近接戦闘技能はこの時点で同年代からは既に群を抜いている。

 近接戦闘に限定してこの学園で勝てるとしたら、自分か生徒会所属の東堂刀華くらいだろう。

 それが周知された場合、学園側がもし一輝を退学させた場合「あんな優秀な生徒を退学させたのか」と言う風評被害を受ける事になり、それは今後の伐刀者育成にも大きな影を落とす事になりかねない。

 唯でさえ近年は対外的な結果の残せていない破軍学園にそれは致命傷となりかねない。

 もし一輝を退学及び学内の声を無理矢理押し潰すにしても、それは結局今の学園首脳陣への対外的不信を招く事となるのでそれも迂闊にはできない。

 そして、最低でも人の目を一輝に集中させる事で表立ってのいじめを抑制する事にも繋がる。

 

 (これで一年間時間を稼げれば良いんだけど……。)

 

 幸い、自分の伐刀絶技は姿を隠すのに適している。

 学園の理事長が黒鉄家から指示を受けていた事、それに従った生徒がいた事、他諸々の黒鉄一輝個人に対する理不尽な扱いに関する情報収集は既に開始している。

 

 (後は、彼がボクと戦い、その実力を見せる事。出来れば勝利してくれると尚良いかな?)

 

 それで彼を単なる不出来なFランクと見る者はいなくなる。

 

 「双方、準備は良いか!」

 「はい。」

 「いつでも。」

 

 そして今、試合会場には結構な数の生徒が観客としてやってきていた。

 その数は100を優に越している。

 まぁ入試主席とFランクという物珍しさから来ているのだろうが……よし、広報部の先輩方はこちらの狙い通りカメラを持ってきてるな。

 

 (後は、分かり易く黒鉄君が強いと証明してみせるだけ、か。)

 

 超高速での初撃決着では、学園側がうやむやにしてしまう可能性が高い。

 そのためにも、ある程度接戦する必要がある。

 高速の近接戦闘が得意な黒鉄一輝を相手にして、だ。

 

 (不意打ち上等ゲリラ大好きアンブッシュは何回でもおkで最後に立ってた奴が勝者だ!な私には辛いなぁ。)

 

 「ま、やってみせるさ。」

 

 そう一人呟くと、静はその手に霊装を展開した。

 

 

 ……………

 

 

 「では、試合開始!」

 

 そして、審判の声と同時、

 

 「「ッ!!」」

 

 双方が動いた。

 一輝は陰鉄を手に接近すべく疾走し、静は弓矢で弾幕を張りながら後退したのだ。

 それを見て、一輝は舌を巻いた。

 

 「やっぱり入試の以外にも手があったんだね!」

 「当然!引き出しは多いに超した事はありません!」

 

 通常、静の弓は典型的な和弓だ。

 小柄な彼女の身長の1.5倍程もある大きな黒塗りの弓。

 それが今は同色の短弓となり、威力は低いが短い矢を秒間3発程度の速さで連射し、弾幕を張っている。

 

 (これは結構厄介だな!)

 

 入試試験では、敵役の教師の肩へと刺さった矢がそのまま爆散していた。

 霊装即ち伐刀者の魔力で編まれた心の形。

 ならば、霊装を自身の魔力へと戻し、操る事も可能だ。

 その中には複数或いは無数の武器を持つ者もおり、それを使い捨てる事もある。

 しかし、彼女程積極的にそれを行う者は殆どいない。

 如何に魔力で編まれているからと言って、己の精神の具現を爆破したがる物好きなんていないし、そもそも人形師でもないのにそこまで遠距離から操作できる者が殆どいないからだ。

 だが、静はそれを実現し、火力の足りない筈の弓矢は高速徹甲榴弾へと成長した。

 だからこそ、一輝は必死になって回避する。

 無論、手加減されているのは分かっていたが、紙装甲の一輝が被弾した場合、大怪我では済まない可能性が高い。

 故に、丁寧に全ての矢を捌ききらねばならない。

 

 (KOEEEEEEE!流石一輝=サンは格が違う!)

 

 そんな事を考えながら、静は弾幕を張りながら試合会場中を逃げ回る。

 順調に矢を撒き散らしながら、一輝に防戦一方な様に見せつける。

 

 (チャンスは一度、やり直しは利かない!)

 

 静はこのまま撒いた矢を起爆して会場中を爆発で満たすつもりだった。

 それで煙幕を展開しつつ、視界を敢えて遮る事で相手の接近を許し、やられたふりをする予定だ。

 

 「はぁぁぁぁぁ!!」

 「んな!?」

 

 しかし、それは一輝が予想以上の速さで距離を詰めてきた事によって挫かれる。

 魔力の放出は感じない、となると純粋な体術、所謂縮地の類か。

 

 「速過ぎるよ!」

 「見切っておいてよく言うね!」

 

 このままズンバラリンでは恰好がつかないと、弓を消して代わりに鏃が異様に長い矢を二本生成し、即席の双剣として一輝の斬撃を凌ぐ。

 一合目を弾き、二合目を交差した矢で受け、三合目で右の矢を弾き飛ばされ、袈裟切りから変化した変則的な刺突を左で弾いて慌てて距離を取る。

 が、当然の如く一輝は静に追随してくる。

 距離を取られればハリネズミにされると分かっているからだ。

 

 「シッ!」

 「…!」

 

 右手に投擲用ナイフにも似たほぼ鏃だけの矢を三つ生成して牽制のために投擲。

 それらが一太刀で切り払われるのを見てどんだけーと思いつつ、静は奥の手の一つを使う。

 

 「な!?」

 

 距離を詰め切られる寸前、静の姿が風景に溶け込む様にして掻き消え、一輝は驚きで硬直する。

 

 直上からの殺気に上を見上げる。

 そこには、太陽を背にする形で和弓にも似た大弓にそれに見合う程に長大な矢を番えた静の姿があった。

 伐刀絶技「顔無し/フェイスレス」による透明化、直後の魔力放出による急上昇で上を取ったのだ。

 その高度は実に30m、これでは碌に魔力の無い一輝では射程外だし追い付けない。

 

 「殺ったぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 が、此処で本当にぶっ殺しちゃったらヤバい事この上ないので、同時にではなく矢を放つよりも僅かに早く地面に撒いてた小さな矢を起爆する。

 

 (さぁ、乗ってきなさい!)

 

 

 ……………

 

 

 (詰み、いや、まだ!)

 

 一方、一輝もまたここが決め時だと悟っていた。

 元より魔力量から超短期決戦しかできない彼からすれば、決め時が来る事そのものは歓迎だ。

 しかし、こうも自身が不利な状況だと困る。

 

 (桐原さんは直上30m!一刀修羅を使って跳躍しても届かず、投擲した所で致命打になり得るか怪しい。)

 

 「ッ!」

 

 視界の端で、試合会場に撒かれた無数の小さな矢が爆発していく。

 一個一個はそう強力ではないが、それでも手榴弾程度の威力はある。

 即ち、人体を破壊するには十二分の威力があるという事。

 それが試合会場の端から順に爆発して…

 

 (順、に?)

 

 そう、会場の端から自分のいる中心に向けて、だ。

 その早さは後数秒もあれば自分を巻き込み、続く直上からの大矢の一撃で自身を木っ端微塵にする事だろう。

 

 (一か八か!)

 

 逡巡もなく、一輝は最後の賭けに出る。

 そして、爆発が自身のいる会場の中心へと到達する刹那、

 

 「ふぅ……!」

 

 なけなしの魔力を全て振り絞り、桐原のいる直上へと跳躍する。

 だが、彼の魔力だけでは届かない。

 残り半分、15mで失速してしまうだろう。

 その寸前、地表での爆発が一輝を後押しし、その体を持ち上げる。

 だが、僅かに届かない。

 

 「ここまでですか!」

 

 静が失望する様に叫ぶ。

 それに一輝は応える。

 否、否、否! 

 

 「まだだ!」

 

 まだ、己は戦える!

 完全に失速し、落下へと変化する間、その刹那だけは人は完全に浮遊している。

 その刹那に、もう一度一輝は跳んだ。

 類稀な身体能力と肉体操作技術、そして刀へかかる荷重すら利用して、彼は到達した。

 上空30m、桐原静のいる領域に。

 

 「「…ッッッ!!」」

 

 その零距離において尚、静は諦めなかった。

 驚愕と、歓喜と、興奮に支配されながら、彼女もまた伐刀者としての責務を果たすべく、正面から一輝へと矢を向け直し、放つ。

 だが、その一射は放たれたと同時に正面から両断され、

 

 「御、美事……。」

 

 そのまま、袈裟懸けに斬られた。

 同時、今度こそ完全に失速した二人は、仲良く意識を失って落ちていった。

 

 

 ……………

 

 

 一年後

 

 「とまぁ、そんなこんながあって、一輝君は舐められる事も無くなりました。」

 「そうだったのですか…。」

 

 あの事件から丁度一年後、入学してきた一輝の妹の球雫ちゃんへと当時のなれそめなんかを説明していた。

 

 「本当に随分とお兄様がお世話をお掛けしてしまったのですね。桐原先輩、本当にありがとうございました。」

 「別に珠雫ちゃんのせいじゃないってば。まぁあの後も大変でしたけど。」

 

 春先の中庭、そこでのんびりする三人はのんびりと物騒な会話をしていた。

 

 「あれ見て私が弱いなんて勘違いした馬鹿共を千切っては投げ千切っては投げ。こっちまで露骨に敵視してきたアホ共を闇討ちして黙らせて、それでも勘違いして突っかかってくる連中を相手に二人で乱取りしてボコボコにして。大変刺激的な毎日でしたとも。」

 「いや、その……その節は大変ご迷惑をおかけしました。」

 

 そして、改めてそんな事態の原因となった一輝は静へと本当に申し訳なさそうに謝罪していた。

 

 「別にいいですよ。悪いのは別にいる訳ですし、そもそもこの学校を退学した所で、別に構いやしませんし。」

 「はぁ!?」

 「いや、別に卒業するなら破軍である必要もないし、そもそも連盟である必要すら無いですし。」

 

 そもそも、東京壊滅にしたってその時に国外にでも退避して人里離れた辺境にでもいれば良いし、そんな場所で勝手に伐刀絶技を使っても怒られない。

 第三次大戦を無傷で過ごすには、そもそも伐刀者である必要は無いのだ。

 

 「とまぁ、そんな感じでいたのですが、今年からは理事長がまともな人に交代になったので、こうしてのんびりしている次第ですよ。」

 

 思えば、たった一年で随分と絆されてしまったと思う。

 このマキシマム善人である一輝とセット扱いされるようになってから、私の人生設計が狂いっぱなしだ。

 まぁ私が彼の善人ぶりを見て、何だかんだしょーがないにゃぁ…と手を貸しているからなのだが。

 それでも何時でもバックレる用意はしているし、本当の奥の手、即ち透明化ではなく透過である伐刀絶技「呼ばれざる者/ノーネーム」を使えばどんな場所でも誰からでも離脱できる。

 原作の桐原静矢と違って、ノータイムで使用可能な私にとって、逃げ隠れに徹すれば誰にもどうにもできない。

 

 「そ、そっか。いきなりだったからびっくりしたよ。」

 「大袈裟ですねー。もう遠距離攻撃にも対応できるようになったんですから、私の手を借りる必要もないでしょうに。」

 

 実際、自分が最大速度で連射しても、最大火力で有効射程ギリギリから狙撃しても、こいつは既に対応できるだけの力を付けた。

 また、近接戦闘にしても余程の例外でない限りは5分と持たずに切り伏せるだけの腕も。

 

 「そんな事無いよ。桐原さんがいなければ、僕の学園での生活はもっと酷かった。」

 「お、おう?」

 

 ぎゅっと両手を包む様に握られて、真剣な瞳でこっちを見てくる一輝に困惑する。

 あれ?こいつってこんな事するキャラだっけ?割とむっつりな事は知ってるけど。例:「死んだ」

 

 「分かった。分かったから離れて。」

 「で、でも…。」

 

 何だか最近こいつの目が怖いんだよなぁ……私のことを見る目が他と違うっていうか。

 

 「少なくとも私から辞める事は無いから落ち着いてください。OK?」

 「う、うん。」

 

 でも、こんな捨てられた子犬みたいな顔されると、どうにも見捨てられない。

 あぁ糞、早い所あの皇女様とフラグ立ててくれよ、こんな所で油売ってないで。

 

 「流石お兄様。手口が素晴らしいです。」

 「ん、何か言いました?」

 「いえ、大変仲が宜しいのですね。」

 

 にっこりと微笑む珠雫に、一輝もまたにっこりと笑う。

 

 「うん、いっつもこんな感じだよ。」

 「ふふ、お兄様が楽しそうで私も嬉しいです。桐原さん、どうかお兄様を宜しくお願いしますね。」

 「まぁ目の届く範囲なら良いですよ。」

 

 こうして、一見穏やかなお昼休みは過ぎていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ねぇお兄様。」

 「何だい珠雫?」

 「桐原さんは何時お義姉さまになってくださるのでしょうか?」

 「んー卒業と同時位かな。それまでにしっかり捕まえるよ。」

 「ふふ、楽しみにしてます。」

 「おや、反対すると思ってたよ。」

 「まさか。お兄様の幸せが私の幸せ。それにあの方の率直な物言いは小気味よいです。」

 「そっか…。」

 「卒業したら、三人で何処か静かな場所で暮らすのも良いですね。退屈で刺激もなくて、でも穏やかで…」

 「そうだね。そんな日が来れば良いね……。」

 

 

 

 ―――これは天才を、竜を、運命を斬る英雄の物語ではない。―――

 

 

 

 「それを邪魔する者は……」

 「あぁ、皆斬ってしまおう。」

 「えぇ、それでこそ珠雫のお兄様です。」

 

 

 

 ―――愛を求め、愛に狂った悪鬼の物語である。―――

 

 

 

 

 

 

 

 




うん、盛大に筆が滑った。

Q どうしてこうなったん?
A 今までまともに妹以外からは愛情与えられてなかった一輝SANがいきなり親切されまくって一緒に戦って鍛錬して生活して惹かれていって、でも彼女には自分が必ずしも必要ではないと知ってしまって、彼女と離れたくない離したくない執着と独占欲、そんな自分への嫌悪感、更に他の男子生徒がTS桐原の事を男子高校生らしく可愛いだのエロいだのスケベしたいだの言ってるのを聞いてしまってプッツンした。現在外堀を埋め中。

Q 今後どうなるん?
A 自分に何時の間にかヤンデレメンヘラなまでに執着する一輝SANにビビりまくったTS桐原が逃げ出して、それにガチギレした一輝SANが狂気に陥って追跡開始。その鬼気迫る姿にTS桐原のSAN値がゴリゴリ削れていく展開に。

Q オチは?
A 最終的に世界の理そのものである黒い鎖を斬った一輝SANにより、自身の伐刀者としての才能そのものを斬られたTS桐原さんが拉致監禁されるEND。第三次大戦勃発して世界中が荒廃するが、珠雫含む三人だけは平和に子供作って生活する。

Q 続くの?
A 続かない。前作程思ったより筆が進まない。

Q 次は?
A FGOのイベント次第だけど、仮面ライダーのクロス蹂躙もの。
クロス先はゲートか落第騎士の予定。



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