作中で分かりにくい疑問点などがあった場合、こちらで触れることもあると思います。
ジェス・レポート1
「亡国機業」と呼ばれた組織が起こした一連の事件とその決着から、すでに10年の時が流れた。この件については未だに詳細な情報も、報道もなく、真相は闇の中に隠れたままだ。
オレはクライアントの依頼により世界中を取材する中で、ときに間接的に、ときに直接的に「亡国機業」と関わってきた(今思えば、それらは決して偶然ではなく、“彼”によりおぜん立てされたものだったのだろう)。その成果は今まで日の目を見ることはなかったが、クライアントの遺言に従い、今日この日に公表しようと思う。
これから記すのは、取材を通して得られたあの戦いの“真実”である。
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全ての事件について話す前に、まずは当時のISを巡る状況について説明する必要があるだろう。
インフィニット・ストラトス(IS)と呼ばれる兵器が初めて表舞台に登場した『白騎士事件』から10年。世界各国が第三世代型ISの開発に心血を注ぎ、企業や、ときに学生を利用してまでしのぎを削っていた。
本来は宇宙空間での活動を想定して作られたISであったが、〈type-00〉を始めとする無数の失敗を経たことで、宇宙進出の可能性よりも兵器としての可能性を見出されることとなった。そのころ真面目に宇宙開発用のISを作っていた国家などそれこそ赤道直下の数カ国だけだったはずだ。
さて、当時ISは女性にしか動かせない、というのが常識であった。「兵器」であるISが女性にしか使えないのだから、世界の構造が「女尊男卑」へと変わっていったのは、自然な流れだったように思える。一方、今まで自分が得ていた利益や立場を失うことを恐れる者達もいて、彼らがそのあたりの問題を解決しようとして無茶な研究を行った結果、『ドレッドノート事件』や『強化人間製造』などに代表される、取り返しのつかない事態を引き起こすことすらあった。
世界の流れが急速に変わり、ようやく安定を見せはじめたこの時代。その流れに新たな一石を投じる者が現れた。
ISを動かせる男が、世界で初めて現れたのである。
男の名は、織斑一夏。今となっては歴史の教科書に名前が載るような有名人の彼も、当時はただの高校生だった。にもかかわらず、彼は事件の当事者たちと共に代表候補生たちをまとめあげ、「亡国機業」の野望をことごとく打ち砕いた(未だに年齢問わずファンが多いことも納得である)。
彼らが表舞台に立つことになった、最初の事件。「亡国機業」と「Xナンバー」、そして「ASTRAY(王道から逸れたもの)」と呼ばれたISについて、少し語ろうと思う。