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ラウラに紅也の居場所……だった場所を教えた後、私は8に記録された映像を再生した。
そこに映っていたのは、第一アリーナの映像。誰かが使っているM1のセンサーから、コア・ネットワーク経由で盗み出したものだ。
もちろん、普通はそんな行為はできない。これは、ブルーフレームの武器強奪機能の副産物とでも呼べるものだ。
通常、ISの武器というものにはセキュリティがかかっているため、操縦者から許可をもらうか……ドレビン的な人に
でも、ブルーフレームに搭載されたプログラムは、武器を手に取ることでそのシステムを侵食し、使用許可を出すことができるのだ。
が……実はそれだけではない。
許可を下ろす際、武器だけではなく武器を持っているIS
このプログラムが七月の
さらに、M1には元々、一方通行ではあるがASTRAYネットワークが備わっている。だからこそ、普通の機体よりもはるかに容易にリンクを繋げられる。
ゆえに、私は学園のネットワーク監視網に引っかかることなく……こうして、部屋にいながらにアリーナでの出来事を知ることができる。
さて、何で私がこんなことをしているのか?
至極単純。
始業式の日に出会った、アメリカの代表候補生……ダリル・ケイシーのデータを集めるためだ。
彼女の機体は、私達が敵から奪還した“GATシリーズ”の一機を、強化パーツによって改修したもの……らしい。エリカさんからそう聞いた。
ゆえに、その性能は未知数であり……。つまり、再び敵対したときにどう戦えばいいのか。それを見極めたいってわけ。
モニターに映る、腰から上に緑色の追加装甲を装着したカーキ色の全身装甲機は、現在もう一機のアメリカ製IS――コールド・ブラッドと交戦していた。
交戦……といっても、これはあまりに一方的な展開だと思う。両肩と両手にマウントされた4門の方向が次々に火を吹いて、相手が反撃する隙を一切与えないのだ。
……両肩の砲門は、ベース機が装備してたのと同じね。連結機能があるのかは分からないけど、固定武装化してるみたいだから、多分無いと考えていいかな。
代わりに腰に固定されてる2つは、前には無かったわね。結構大型のビームライフルだから、戦うなら注意が必要かも。
……あ、ミサイルまで撃ってきた。すごい火力ね、ホント。
……って、待ちなさい。何でこっちに逃げてくるのよ、そこの操縦者!
「ふ、フォルテちゃん!?何でこっちに来るのよ~!」
「そんなこと言わずに助けて欲しいっス!そのビームライフル貸してほしいっス!」
あ、ビームライフル盗られた。
学園に提供した装備だからロックがかかってないんだけど、普通のISが使おうとすると……
「これでも喰らうっス!……って、あれ?」
「きゃぁぁぁぁ!出力高すぎ!!」
……やっぱり。
M1にはビームライフル専用のOSがあるんだけど、それがない普通のISで使うと、シールドエネルギー全てを使ってビームを放ってしまうのだ。
当然、その威力は驚異的なもので――
『こら、フォルテ!それにそこのM1!なんつー危ねぇモンぶっ放してくれてんだ!火傷したぞ!』
『あらー……。ここまで威力が出るとは思わなかったんスよ』
『はわわわわ!ご、ごめんなさ~い!!』
極大のビームの閃光は、N.G.Iの新型の右手部分を溶かすも、シールドエネルギーをゼロにすることは叶わず。
逆にコールド・ブラッドはエネルギーを使い果たし、ゆっくりと地上へ降りていった。
……今日はここまでね。
8に映像を閉じるように指示し、私は軽く肩をほぐす。
なかなか有意義な時間だったけど、画面を見続けるのはやっぱり疲れるのだ。
それにしても、紅也は道場なんかで何をやってるんだろう?
普段だったらこういう、新型機が模擬戦してるなんていう情報を掴んだら、アリーナに飛んでいくはずなのに。
……私が必ず映像を残すって、信じてるのかな。
だとしたら、嬉しい……かな。
さて、気持ちを切り替えよう。
今日は部活もないし、やることも特に残ってない。
つまり、ヒマなのだ。
誰かを誘おうにも、セシリアとシャルロットは二人で特訓するって言ってたし、鈴音も一夏と二人っきり(ここを強調された)で特訓するって言ってたし。ラウラは今頃学園中の保健室を巡礼してる最中のはずだから……
箒か、簪ね。ヒマなのは。
とりあえず、簪にコール。
……繋がらない。
また『打鉄弐式』の整備かな?……そういえば、今月中に荷電粒子砲を開発するって宣言してたわね。
一人じゃ無理だと思うんだけど。
まあ、ビームライフルの設計図自体はこの前モルゲンレーテが公表したから、紅也の助けを借りれば作れるかもね。
それはともかく、次は箒だ。
箒は、確か剣道部に所属してたけど、最近は顔を出してないって聞いてる。
だから、かければ確実に出るだろう……と、思ったんだけど。
……やっぱり、繋がらない。
何をやってるんだろう?一人で特訓とか?
それとも、鈴音と一夏の特訓に乱入してるとか?
まさか……真面目に部活に出てる!?
……それこそ有り得ないわね。
さて、どうしよう。
クラスの友達も、今日は外に遊びに行ったはず。
紅也は、何だか忙しそうだから、無理。
そうなると……
「……8。なんか面白いこと、無い?」
《自分で考えろ!》
「……無責任」
《
「それもそうね。……じゃあ、またM1のモニター映像出して」
《がってんだ!》
そう言って(表示して、かな?)8に表示されたのは、3つの分割モニター。
それぞれ三機のM1に対応してるんだけど、そのうち二つは黒い。
さっきまで見ていた第一アリーナの映像も映ってない。どうやら、操縦者が帰っちゃったみたい。
代わりに映ってたのは……第四アリーナ?確か、一夏と鈴音が特訓してるはずだけど……。
「……8。『甲龍』と『白式』は見える?」
《待て。ISコアを索敵……確認できるのは『甲龍』のみだ》
「……一夏が、いない?」
どういうことだろう?
一夏は確かに人の気持ちに鈍くて、要領が悪くて、頼りないけど。
それでも――交わした約束を破るような男だとは思わない。
……あれ、でも、そういえば、前にセシリアと鈴音が話してなかったかしら?
なんでも、自分とのデートをすっぽかされたとか。
………………。
とりあえず、鈴音の様子でも見に行こうかな。これ以上放置したら、暴れてアリーナ壊しそうだし。
◆
第四アリーナは、それなりに混雑していた。
鈴音以外にも何機かの練習機が起動してて、思い思いの訓練をしてる。
その中には、さっき視界とセンサーをハックしたM1もいたんだけど……なんとその操縦者は、私の知り合いだった。
「あ、葵ちゃん!久しぶりだね」
「おいエルシア。『久しぶり』ってほどでもねーだろ。この間会ったろ?」
「そういえばそうだね」
M1の操縦者はクリスさん、その正面で打鉄を展開してたのはエルシアさんだった。
……でも、妙な点が一つ。それは……
「……何で、『打鉄』の近接戦用ブレードを装備してるの?」
そう。
M1の正式採用武装はビームライフルとビームサーベルだけのはず。
なのになぜか、目の前のM1には近接戦用ブレード……つまり、刀が装備されていたのだ。
「いやぁ、ホラ、紅也の剣技ってカッコイイじゃん?だから、ちょっと使ってみたくなってな」
「私が貸してあげたの。次は、私が変わってもらおうと思ってたんだ」
言いながら刀を振ってみせるクリスさんと、それをどこか羨ましそうに見るエルシアさん。
……うん。気持ちは分からなくもないけど……。
「……素人に、刀の技は使えない。紅也も1年かかった」
「それは知ってるって。整備班長に弟子入りして、修業したんだろ?確か……4年ちょっと前だったか?前にそんなことを聞いた覚えがあるぜ」
「その後旅に出たのよねー。確か、紅也くんが中一の頃だったね」
「……昔を懐かしむなんて。……ババ臭い」
いきなり昔話を始めた同僚(一つ年上)に対し、思わずそんな一言が漏れる。
家でそんなことを言ったら折檻を受けるのは確実だけど、ここに母さんはいない。
だから、うっかり口が滑った。
「誰がババ臭いって!?」
……この場に、そういった話題に過剰反応する人が一人いたことを忘れてた。
「く、クリスちゃん、落ち着いて。葵ちゃんも、悪気があった訳じゃないんだから」
「うるさいエルシア!お前みたいなロリっ子に、私の気持ちが分かってたまるか!」
「かっちーん!クリスちゃんこそ、背が低くて悩んでる人の気持ちなんて、一生分かんないよっ!」
口から唾を飛ばしながらまくし立てるクリスさんに、温厚なエルシアさんがついにキレた。
どうしよう、これ……。一応、私が発端なんだけど。
でも、話はどんどんヒートアップしてるし……ていうか、私、蚊帳の外だし……。
「お前こそ、制服姿をコスプレ扱いされた私の気持ちが分かるか?分からないだろ!」
「分かってたまるかー!知ってるんだよ!クリスちゃんが一番傷ついたのは、去年帰ってきた紅也くんに『初めまして、お姉さん』って言われたことなんでしょ?」
「そ、そんな昔のことはどうでもいいだろ!?それを言うならお前だって、『あれ、エルシアさん……の、妹さん?』って言われて傷ついてたじゃねぇか!」
「そうよ!紅也くんのばーか!」
「紅也のおたんこなす!」
……よし、無視しよう。
そう決意した私は、今度こそ鈴音の方へ歩いていく。
「鈴音」
「何よ!遅かったじゃ……なんだ、葵か」
何だ、ってなによ。気持ちはなんとなく分かるけど。
「悪いけど、今日は一夏と『二人っきり』で特訓するの。それを邪魔するなら――」
「……約束の時間、何時?」
「……放課後になったらすぐ、って言ったわよ」
イライラした表情から一転、しおらしい顔を見せる鈴音。
……不安、なんだろうな。やっぱり。
前も約束をすっぽかされたから、今回も……とか思ってるんだろう。
あるいは、自分がないがしろにされてると思ってる?
……それは、可哀想だ。
だって。
あの時の私も、そうだと思っていたから……。
強くなる。
そうしなければ、紅也は帰って来ないと思った。
そうしなければ、紅也に――捨てられると思った。
だから、私は頑張った。
そして……紅也を泣かせてしまった。
鈴音に、そんな思いはさせたくない。
じゃあ、どうしようか?
……決まってる。
「……探しに、行こ?」
「……葵?」
クリスさんやエルシアさんと話したせいか、昔のことを思い出した。
あのとき、紅也は世界のどこかにいて、私には探せなかった。
でも、一夏は……間違いなく、この学園のどこかにいるのだ。
「来ないなら、探しに行く。それで、首根っこ掴んで引っ張って来よう」
「葵?なんか、今日はやけに行動的だけど……どうしたの?何か変なものでも……って、いつも食べてるか」
「……………」
「ちょっと!無言で引っ張る力を強くしないでよ!痛いじゃない!」
失礼な。
あれを、変な食べ物だって?
一度食べてみればいい。少なくとも紅也は、おいしいって言ってくれた。
……食べてる間、なぜか一度も目を合わせてくれなかったけど。
「まあいいわ。一夏のやつ、約束をすっぽかしたこと……後悔させてあげるわ!」
「………………」
そうやって暴力的になるから、好意が伝わらないんじゃないの?……とは、口が裂けても言えない。
言ったら、多分喧嘩になっちゃう。
私は、空気が読める子。
だから、上空で激戦を繰り広げてる『打鉄』と『M1アストレイ』は無視して、アリーナを後にするのだった……。
5巻部分は今まで以上にモブ娘が多いですが、原作キャラ以外は覚えなくても問題ないと思います。
ブルーフレームに他ISへの干渉能力がついた理由はまたいずれ。