IS~RED&BLUE~   作:虹甘楽

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あれは、雪の降る寒い日のことだった……(※作中時間は秋です)

あ、お気に入り登録数400人になりました。ありがとうございます♪


第94話 あいつか?ああ、知ってる。話せば長い。そう、古い話だ。

 ラウラに紅也の居場所……だった場所を教えた後、私は8に記録された映像を再生した。

 そこに映っていたのは、第一アリーナの映像。誰かが使っているM1のセンサーから、コア・ネットワーク経由で盗み出したものだ。

 もちろん、普通はそんな行為はできない。これは、ブルーフレームの武器強奪機能の副産物とでも呼べるものだ。

 

 通常、ISの武器というものにはセキュリティがかかっているため、操縦者から許可をもらうか……ドレビン的な人に洗浄(ロンダリング)してもらわないと他のISでは使えない。

 でも、ブルーフレームに搭載されたプログラムは、武器を手に取ることでそのシステムを侵食し、使用許可を出すことができるのだ。

が……実はそれだけではない。

 許可を下ろす際、武器だけではなく武器を持っているIS本体(・・)に干渉しているのだ。

 このプログラムが七月の第二形態移行(セカンド・シフト)時に強化され、ISへの干渉――つまり、強制的なリンクの確立が可能になった。

 さらに、M1には元々、一方通行ではあるがASTRAYネットワークが備わっている。だからこそ、普通の機体よりもはるかに容易にリンクを繋げられる。

 ゆえに、私は学園のネットワーク監視網に引っかかることなく……こうして、部屋にいながらにアリーナでの出来事を知ることができる。

 

 さて、何で私がこんなことをしているのか?

 至極単純。

 始業式の日に出会った、アメリカの代表候補生……ダリル・ケイシーのデータを集めるためだ。

 彼女の機体は、私達が敵から奪還した“GATシリーズ”の一機を、強化パーツによって改修したもの……らしい。エリカさんからそう聞いた。

 ゆえに、その性能は未知数であり……。つまり、再び敵対したときにどう戦えばいいのか。それを見極めたいってわけ。

 

 モニターに映る、腰から上に緑色の追加装甲を装着したカーキ色の全身装甲機は、現在もう一機のアメリカ製IS――コールド・ブラッドと交戦していた。

 交戦……といっても、これはあまりに一方的な展開だと思う。両肩と両手にマウントされた4門の方向が次々に火を吹いて、相手が反撃する隙を一切与えないのだ。

 ……両肩の砲門は、ベース機が装備してたのと同じね。連結機能があるのかは分からないけど、固定武装化してるみたいだから、多分無いと考えていいかな。

 代わりに腰に固定されてる2つは、前には無かったわね。結構大型のビームライフルだから、戦うなら注意が必要かも。

 ……あ、ミサイルまで撃ってきた。すごい火力ね、ホント。

 

 ……って、待ちなさい。何でこっちに逃げてくるのよ、そこの操縦者!

 

「ふ、フォルテちゃん!?何でこっちに来るのよ~!」

「そんなこと言わずに助けて欲しいっス!そのビームライフル貸してほしいっス!」

 

 あ、ビームライフル盗られた。

 学園に提供した装備だからロックがかかってないんだけど、普通のISが使おうとすると……

 

「これでも喰らうっス!……って、あれ?」

「きゃぁぁぁぁ!出力高すぎ!!」

 

 ……やっぱり。

 M1にはビームライフル専用のOSがあるんだけど、それがない普通のISで使うと、シールドエネルギー全てを使ってビームを放ってしまうのだ。

 当然、その威力は驚異的なもので――

 

『こら、フォルテ!それにそこのM1!なんつー危ねぇモンぶっ放してくれてんだ!火傷したぞ!』

『あらー……。ここまで威力が出るとは思わなかったんスよ』

『はわわわわ!ご、ごめんなさ~い!!』

 

 極大のビームの閃光は、N.G.Iの新型の右手部分を溶かすも、シールドエネルギーをゼロにすることは叶わず。

 逆にコールド・ブラッドはエネルギーを使い果たし、ゆっくりと地上へ降りていった。

 

 ……今日はここまでね。

 8に映像を閉じるように指示し、私は軽く肩をほぐす。

 なかなか有意義な時間だったけど、画面を見続けるのはやっぱり疲れるのだ。

 

 それにしても、紅也は道場なんかで何をやってるんだろう?

 普段だったらこういう、新型機が模擬戦してるなんていう情報を掴んだら、アリーナに飛んでいくはずなのに。

 ……私が必ず映像を残すって、信じてるのかな。

 だとしたら、嬉しい……かな。

 

 さて、気持ちを切り替えよう。

 今日は部活もないし、やることも特に残ってない。

 つまり、ヒマなのだ。

 誰かを誘おうにも、セシリアとシャルロットは二人で特訓するって言ってたし、鈴音も一夏と二人っきり(ここを強調された)で特訓するって言ってたし。ラウラは今頃学園中の保健室を巡礼してる最中のはずだから……

 

 箒か、簪ね。ヒマなのは。

 

 とりあえず、簪にコール。

 ……繋がらない。

 また『打鉄弐式』の整備かな?……そういえば、今月中に荷電粒子砲を開発するって宣言してたわね。

 一人じゃ無理だと思うんだけど。

 まあ、ビームライフルの設計図自体はこの前モルゲンレーテが公表したから、紅也の助けを借りれば作れるかもね。

 

 それはともかく、次は箒だ。

 箒は、確か剣道部に所属してたけど、最近は顔を出してないって聞いてる。

 だから、かければ確実に出るだろう……と、思ったんだけど。

 ……やっぱり、繋がらない。

 何をやってるんだろう?一人で特訓とか?

 それとも、鈴音と一夏の特訓に乱入してるとか?

 まさか……真面目に部活に出てる!?

 ……それこそ有り得ないわね。

 

 さて、どうしよう。

 クラスの友達も、今日は外に遊びに行ったはず。

 紅也は、何だか忙しそうだから、無理。

 そうなると……

 

「……8。なんか面白いこと、無い?」

《自分で考えろ!》

「……無責任」

機械(メカ)に責任も何もあるか!》

「それもそうね。……じゃあ、またM1のモニター映像出して」

《がってんだ!》

 

 そう言って(表示して、かな?)8に表示されたのは、3つの分割モニター。

 それぞれ三機のM1に対応してるんだけど、そのうち二つは黒い。

 さっきまで見ていた第一アリーナの映像も映ってない。どうやら、操縦者が帰っちゃったみたい。

 代わりに映ってたのは……第四アリーナ?確か、一夏と鈴音が特訓してるはずだけど……。

 

「……8。『甲龍』と『白式』は見える?」

《待て。ISコアを索敵……確認できるのは『甲龍』のみだ》

「……一夏が、いない?」

 

 どういうことだろう?

 一夏は確かに人の気持ちに鈍くて、要領が悪くて、頼りないけど。

 それでも――交わした約束を破るような男だとは思わない。

 

 ……あれ、でも、そういえば、前にセシリアと鈴音が話してなかったかしら?

 なんでも、自分とのデートをすっぽかされたとか。

 

 ………………。

 

 とりあえず、鈴音の様子でも見に行こうかな。これ以上放置したら、暴れてアリーナ壊しそうだし。

 

 

 

 

 

 

 第四アリーナは、それなりに混雑していた。

 鈴音以外にも何機かの練習機が起動してて、思い思いの訓練をしてる。

 その中には、さっき視界とセンサーをハックしたM1もいたんだけど……なんとその操縦者は、私の知り合いだった。

 

「あ、葵ちゃん!久しぶりだね」

「おいエルシア。『久しぶり』ってほどでもねーだろ。この間会ったろ?」

「そういえばそうだね」

 

 M1の操縦者はクリスさん、その正面で打鉄を展開してたのはエルシアさんだった。

 ……でも、妙な点が一つ。それは……

 

「……何で、『打鉄』の近接戦用ブレードを装備してるの?」

 

 そう。

 M1の正式採用武装はビームライフルとビームサーベルだけのはず。

 なのになぜか、目の前のM1には近接戦用ブレード……つまり、刀が装備されていたのだ。

 

「いやぁ、ホラ、紅也の剣技ってカッコイイじゃん?だから、ちょっと使ってみたくなってな」

「私が貸してあげたの。次は、私が変わってもらおうと思ってたんだ」

 

 言いながら刀を振ってみせるクリスさんと、それをどこか羨ましそうに見るエルシアさん。

 ……うん。気持ちは分からなくもないけど……。

 

「……素人に、刀の技は使えない。紅也も1年かかった」

「それは知ってるって。整備班長に弟子入りして、修業したんだろ?確か……4年ちょっと前だったか?前にそんなことを聞いた覚えがあるぜ」

「その後旅に出たのよねー。確か、紅也くんが中一の頃だったね」

「……昔を懐かしむなんて。……ババ臭い」

 

 いきなり昔話を始めた同僚(一つ年上)に対し、思わずそんな一言が漏れる。

 家でそんなことを言ったら折檻を受けるのは確実だけど、ここに母さんはいない。

 だから、うっかり口が滑った。

 

「誰がババ臭いって!?」

 

 ……この場に、そういった話題に過剰反応する人が一人いたことを忘れてた。

 

「く、クリスちゃん、落ち着いて。葵ちゃんも、悪気があった訳じゃないんだから」

「うるさいエルシア!お前みたいなロリっ子に、私の気持ちが分かってたまるか!」

「かっちーん!クリスちゃんこそ、背が低くて悩んでる人の気持ちなんて、一生分かんないよっ!」

 

 口から唾を飛ばしながらまくし立てるクリスさんに、温厚なエルシアさんがついにキレた。

 どうしよう、これ……。一応、私が発端なんだけど。

 でも、話はどんどんヒートアップしてるし……ていうか、私、蚊帳の外だし……。

 

「お前こそ、制服姿をコスプレ扱いされた私の気持ちが分かるか?分からないだろ!」

「分かってたまるかー!知ってるんだよ!クリスちゃんが一番傷ついたのは、去年帰ってきた紅也くんに『初めまして、お姉さん』って言われたことなんでしょ?」

「そ、そんな昔のことはどうでもいいだろ!?それを言うならお前だって、『あれ、エルシアさん……の、妹さん?』って言われて傷ついてたじゃねぇか!」

「そうよ!紅也くんのばーか!」

「紅也のおたんこなす!」

 

 ……よし、無視しよう。

 そう決意した私は、今度こそ鈴音の方へ歩いていく。

 

「鈴音」

「何よ!遅かったじゃ……なんだ、葵か」

 

 何だ、ってなによ。気持ちはなんとなく分かるけど。

 

「悪いけど、今日は一夏と『二人っきり』で特訓するの。それを邪魔するなら――」

「……約束の時間、何時?」

「……放課後になったらすぐ、って言ったわよ」

 

 イライラした表情から一転、しおらしい顔を見せる鈴音。

 ……不安、なんだろうな。やっぱり。

 前も約束をすっぽかされたから、今回も……とか思ってるんだろう。

 あるいは、自分がないがしろにされてると思ってる?

 ……それは、可哀想だ。

 

 だって。

 あの時の私も、そうだと思っていたから……。

 

 強くなる。

 そうしなければ、紅也は帰って来ないと思った。

 そうしなければ、紅也に――捨てられると思った。

 だから、私は頑張った。

 そして……紅也を泣かせてしまった。

 

 鈴音に、そんな思いはさせたくない。

 じゃあ、どうしようか?

 ……決まってる。

 

「……探しに、行こ?」

「……葵?」

 

 クリスさんやエルシアさんと話したせいか、昔のことを思い出した。

 あのとき、紅也は世界のどこかにいて、私には探せなかった。

 でも、一夏は……間違いなく、この学園のどこかにいるのだ。

 

「来ないなら、探しに行く。それで、首根っこ掴んで引っ張って来よう」

「葵?なんか、今日はやけに行動的だけど……どうしたの?何か変なものでも……って、いつも食べてるか」

「……………」

「ちょっと!無言で引っ張る力を強くしないでよ!痛いじゃない!」

 

 失礼な。

 あれを、変な食べ物だって?

 一度食べてみればいい。少なくとも紅也は、おいしいって言ってくれた。

 ……食べてる間、なぜか一度も目を合わせてくれなかったけど。

 

「まあいいわ。一夏のやつ、約束をすっぽかしたこと……後悔させてあげるわ!」

「………………」

 

 そうやって暴力的になるから、好意が伝わらないんじゃないの?……とは、口が裂けても言えない。

 言ったら、多分喧嘩になっちゃう。

 

 私は、空気が読める子。

 だから、上空で激戦を繰り広げてる『打鉄』と『M1アストレイ』は無視して、アリーナを後にするのだった……。

 




5巻部分は今まで以上にモブ娘が多いですが、原作キャラ以外は覚えなくても問題ないと思います。

ブルーフレームに他ISへの干渉能力がついた理由はまたいずれ。
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