IS~RED&BLUE~   作:虹甘楽

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※今回のお話に、ストロングアメリカを象徴する大統領や、IS以外のロボットは登場しません。あしからず。


第95話 何故こんなことが出来るかって?それは私が、アメリカ合衆国大統領だからだ!

「これはどういうことですか!」

 

 北米大陸、某所。

 とある企業の開発施設にて。

 長いブロンドヘアーを腰まで伸ばした長身の美女と、筋肉質な厳つい短髪の男が、机を挟んで向かい合っていた。

 

「どういうこと、と言われてもねえ。事態は、既に我々の手を離れているのだ。いくら我々に力があるとはいえ、国には逆らえんよ」

「ですが……!」

 

 机に手をつき、喰いかかるブロンド美人と、それをいなすマフィアのような男。

 どこかミスマッチな光景に見えるが、この場所では比較的よくあることだ。

 

「くどいな、バートレット君。“GAT-X103”の提供を決めたのは我々で、その操縦者を決めたのはアメリカだ。そこに、一操縦者である君の意志が介在する余地は無い」

「しかし!バスターの操縦者はクロエでしょう!彼女は先日回復しました。今からでも、機体の返還を――」

「いいから、話を聞きたまえ。これは、君にも関係のある話だ」

 

 ヒートアップする女性――エイミー・バートレットとは裏腹に、彼女の上司である厳つい男はどこまでも冷静だ。

 その態度に押されたのか……あるいは、こうしていても男が意見を変えないと悟ったのか、エイミーは席に着く。

 ただし、その目線だけは、相変わらず挑戦的なものであったが。

 

「……で、話とはなんですか?例の、ストライクの強化改修プランでしたら、既に聞いていますが」

「知っている。部下にそう伝えさせたからな。

 ……君に新たな任務を与える。今後のわが社の発展に関わる、重要な任務だ」

「任務……テストパイロットですか?失礼ですが、私にはストライクが」

「――君は、考えたことがあるかね?たった一機で戦局を覆すような、圧倒的な力があれば……と」

 

 エイミーの言葉を遮るような形で、男が発言する。

 それに不快感を覚えるエイミーだったが、彼女とて大人。企業の人間。

 上下関係というものは、嫌というほど分かっている。

 

 ……もっとも、彼女の父親は『そんなもん知るか!』という精神の持ち主であったため、『万年大尉』などという不名誉なあだ名を持っていたのだが。

 親は親、娘は娘だ。

 

「確かにストライクは、一つの到達点だ。高機動、高火力、万能性を、装備を換装することで獲得している。だが……もし、それらを換装なしで実現できるISがあったら?」

「……確かに、驚異的でしょう。ですが、それは夢物語です」

「そうかな?かつて不可能と言われた第四世代機は、既に存在しているのだよ。

 ……君だって、『福音事件』のときに目撃したはずだ。その圧倒的な性能を。素人の操縦者が操っているにもかかわらず、あのスピード!あの攻撃力!それを熟練した操縦者――例えば、君のような者が扱ったら、どうなる?」

「まさか……」

 

 この時点で、エイミーは気付いた。

 否、気付いてしまった。

 彼が持ってきた『話』の正体に。

 

「そうだ。我々ノース・グランダー・インダストリーは、第四世代機開発計画――『フリーダム・プロジェクト』を始動させる。

 君には、このプロジェクトで開発される試作機のテストを引き受けてもらう」

 

 それは、彼女の予想通りの内容であった。

 しかし、ここから先。その部分は、彼女の予想を超えていた。

 

「――それから、君はモルゲンレーテの男性IS操縦者……コウヤ・ヤマシロと親しかったな?彼をこちら側に取り込むことも、君の仕事だ」

「……え?それは、どういう……」

 

 エイミーは困惑する。

 何故、ここで彼の名前が出てくるのか?

 いや、そもそも『取り込む』ってどういうこと?

 アレして私達の陣営に引き込めってこと!?

 

「彼は、世界に二人だけの男性IS操縦者。だが、それ以前に優れた技術者だ。

 『打鉄弐式』だったかな?あれのマルチロックオンシステムは、彼が作ったそうじゃないか。あのシステムは『フリーダム・プロジェクト』の核となる。『ヴェルデバスター』の運用データと合わせれば、火力面での問題はクリアできる。だからこそ……!」

 

 男の瞳に、既にエイミーの姿は映っていない。

 そこに映っているのは、まだ見ぬ未来の幻想か、はたまた第四世代機への妄執か。

 なんにせよ、面倒なことに巻き込まれた……と思い、エイミーは小さくため息をついた。

 

 

 

 

 

 

〈side:山代 葵〉

 

 鈴音を伴った私は、アリーナから出る。

 あそこに長くいたら、絶対に巻き込まれる気がしたから。

 

「……で、探すって言ってもどこを探せばいいのよ」

「それは……まあ、適当に」

「ノープランなの!?」

「……自分のことなんだから、自分で考えて」

「しかも無責任!……ああもう、分かった!心当たりを探してみるわよ!」

 

 怒ったように早足になり、鈴音がぐんぐん進んでいく。

 向かう先は……寮?

 

「……部屋にいると思うの?」

「そうじゃないわよ。第一、一夏って昼寝するようなタイプじゃないし」

「詳しいんだ。……好きな人だから」

「うん……じゃ、ない!幼なじみだからよ!」

「二番目の?」

「違う!違わないけど、違う!

 というか、その言い方だとあたしが『二番目の女』みたいじゃない!」

 

 がー、っとまくしたてる鈴音。

 なんというか……うん、とりあえずセシリア以上のツッコミ力ね。

 そうこうしてる間に、寮にたどり着く。

 

「……で、どこに行くの?」

「とりあえずはシャルロットの部屋ね。そこにいなかったら、箒の部屋。そこにもいなかったらセシリアの部屋を調べてみるわ」

 

 なんと、全員が昼間に一夏のコーチを賭けて争ったメンバーだ。

 つまり……一夏のことが好きなメンバー。

 

「……アテがそれっていうのは、ちょっと虚しくない?」

「それは言わないで……。あたしも、正直ガックリ来てるから」

 

 だよね。

 

 

 

 

 

 

「……で、一通り回ってみたわけだけど……」

「見事に空振りね。嬉しいような、悔しいような……」

 

 あの後、順番に部屋を回ってみたけど、結果は空振り。

 念のため一夏本人の部屋や、鈴音の部屋まで見たけど、一夏はいない。

 

「まったく!どこで油売ってるのよ、アイツは!」

「……それ、どういう意味?」

「ああ、確か『なんかの最中に別のことをする』って意味よ」

 

 ……『確か』?

 合ってるかどうか分からないわね。後で調べてみようかな。

 それにしても、中国の人ってことわざが好きなのかな?

 某潜入ゲームの初代データアナリストも、無線を送ると色々教えてくれたし。

 

《それは違うな。『油を売る』というのは、そもそもことわざではない。仕事の途中に無駄話をする、という意味だ。起源は日本の江戸時代、油売りが――》

「う、うるさいわね!あたしだって間違えることくらいあるわよ!」

 

 ちなみに、今は私の部屋で休憩中。

 戻った瞬間、置き去りにした8がこれでもかと抗議したけど、全部無視して今に至る。

 そこ、手抜きとか言わない。

 

「……8。今、一夏がどこにいるか、分かる?」

《ISコアの場所をサーチするのは校則違反だぞ。いいんだな?》

「できるなら最初からそう言いなさいよ!バレないようにやりなさい!」

《仕方ない》

 

 私の指示を聞いた8は確認のメッセージを出すも、鈴音の勢いに押されてサーチを始める。

 すると画面に映っていた文字は消え、代わりにIS学園の地図が表示された。

 

《白式、部活棟の保健室にて確認。それと》

「そこまで分かれば十分よ!先に行くわね、葵!」

「あ、うん。……ありがと、8。留守番よろしく」

 

 勢いよく飛び出していった鈴音を追い、私も部屋を出る。

 

《他に四機のIS反応が……聞いてないな》

 

 そんな文字が浮かんでいたのに、私はとうとう気付かなかった。

 

 

 

 

 

 

 咎められない程度の速度で走ること、数分。

 私達は、部活棟の保健室にいた。

 いたのだが――

 

 肝心の一夏の姿は、どこにもなかった。

 

 代わりに……と、言っていいのかどうかは知らないけど、そこにいたのはラウラ。

 どこか苦しそうな顔のまま、ベッドに横たわってる。

 

 ……何があったんだろう?紅也を探して保健室を回ってたら、逆に自分がベッド送りにされるなんて。

 こういう状況、「ことわざ」で何て言うんだっけ?確か……逆にうなぎパイに喰われた、だったっけ。後で鈴音……は詳しくなさそうだし、紅也か8に確かめようかな。

 

「う……うう……」

 

 あ、ラウラが目を覚ましそう。

 丁度いいや。何があったのか、本人から直接聞いてみよう。

 

「ラウラ、起きて」

「う……ぁ……こ、こうや……?」

「残念、私よ。あ・お・い」

「あたしもいるわよ」

「む……鈴と葵だと?ここは……保健室?何故こんなところに」

 

 あら、目が覚めるの早いわね。

 やっぱり軍人だから、寝ぼけたりしないんだ。羨ましい。

 

「……それはこっちが聞きたい。何があったの?」

「確か私は……紅也が道場にいると聞いて、箒と一緒に向かう途中だったはずだ。それから……ダメだ。思い出せん」

「箒?何で、ここで箒の名前が出てくるのよ?」

「簡単なことだ。あいつも紅也を探していたのだ」

 

 箒が?紅也を?

 ……夏休みに言ってた「責任感」ってやつかしら?

 なんにせよ、詳しく話を聞く必要がありそうね。

 

「……詳しく」

「ああ。校舎内の保健室で箒と鉢合わせ、そこに来たケイシー先輩から『紅也が生徒会長と共に道場へ向かった』と……そうだ!こうしてはいられん!今すぐあの女を……」

「ちょ、ラウラ!?何をする気か知らないけど、寝てた方がいいわよ!」

「離せ鈴!私はなんとしても、あの女を遠ざけねば!あの胸は危険だ!お前だって分かるだろう!?」

 

 なるほど。生徒会長と一緒に、道場へ行った……と。

 何のために道場へ行ったのか?

 もちろん、戦いか鍛錬かのいずれかだ。

 

 ここで、少し考えてみる。

 紅也と生徒会長の間に、どんな繋がりがある?

 考えられるのは二つ。始業式のときのイベントか、朝の一件。

 

 ……考えるまでもなく後者ね。

 

 さて、紅也が目を覚ましたら、どうするか。

 私が紅也の立場だったら、生徒会長に会って、発言を撤回させる。

 でも、話を聞かなかったら?

 決まっている。そのときはモルゲンレーテの流儀に乗っ取って……力ずくだ。

 

 だから、道場へ行った理由は『戦い』。

 これで紅也の行動は読めた。

 後は、これに一夏が関わってるのかどうかだけど……。

 流石にそこまでは分からない。当事者に聞いてみるのが手っ取り早いでしょうね。

 

「なっ!?そ、それはあたしもアンタも貧乳だって言いたいわけ!

 ……いいわ。こうなったら決闘よ!あたしが勝ったら、一夏の居場所をゲロってもらうわよ!」

「いいだろう。ただし私が勝ったら、紅也の居場所を吐いてもらう」

「何でもいいわよ!どうせあたしが勝つから!」

「フン。二対一でも勝てなかったくせに、よく吠える」

 

 妙な流れになっている保健室はとりあえず放置して、私は紅也の居場所を探る。

 ……第三アリーナのあたりかしら?素手では決着がつかなかったから、IS戦で勝負ってわけ?それとも、単にデルタを使いたくなっただけかしら?

 まあ、理由なんてどうでもいい。

 推理するまでもなく、会えば分かることだ。

 そう思い、保健室を静かに退室する。

 中の騒ぎは、ドア一枚隔てた先でも十二分に五月蠅い。

 これを、もし……今まさに外を歩いてる織斑先生あたりに聞きつけられたら、どうなっちゃうのかしら?

 

 

 

 

 

 

「やっ」

「……………」

 

 予想外の展開だった。

 第三アリーナ方面に歩いていると、朝に見た先輩に出会った。

 

 そう。IS学園生徒会長、更識楯無その人に……。

 

「こうやって一対一で会うのは初めてだね。うん、本当に紅也くんそっくり」

「……………」

 

 初対面にも関わらず、やたらと積極的な先輩の態度に、私は戸惑ってしまう。

 こういうタイプは苦手だ。自分のペースに人を巻き込むような、こういう人は……。

 

「えーっと……山代葵ちゃんだよね?」

「……………」

「葵ちゃん、って呼んでいいかな?」

「……………」

 

 だから、無言。

 こういう相手は、なるべく無視するに限る。

 でも、目線だけは外さない。

 何も言わず、何も反応せず、ただただ相手の目を見続ける。

 

 そうして一秒、二秒、三秒……。

 

「とりあえず、今日は挨拶だけってことで。じゃ、またね」

 

 目線を逸らさないまま先輩はそう答え、颯爽と去っていく。

 その姿を、私は静かに見つめ続けていた。




人たらしVS人見知り
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