これからも毎日一話投稿で頑張りますよ~!
代表決定戦後の、寮内1017号室にて。
紅也と葵は、8に表示されたデータを見ていた。
そう、本日ロールアウトしたばかりの一夏の専用機、白式のデータを。
「……一夏には、悪いことをしたかな」
本日初めて登場した機体の情報を何故彼らが持っているのか?その答えは、モニターを輝かせる目の前の端末にあった。
白式の初期化と最適化処理を行うと同時に、8は白式に干渉し、データを吸い上げていた。
男がISを動かせる
「お兄ちゃんは悪くない。これは、私たちの仕事」
「……そうだな。割り切らねえと」
パラメータや武装を映していたモニターが切り替わり、戦闘時の映像を表示する。
「
「単一仕様能力。通常、二次移行後に発現。同じ能力は発現しない……はず、だった」
「まあ、能力には謎が多いからな。そういうこともあるだろう。問題は……8、スペックデータを表示だ」
再び画面が切り替わり、白式のカタログスペックが表示される。
「ここだ。見ろ、葵。こいつのコアナンバー……」
「No.001……。……フシギダネ?」
「……ここでボケるなよ。シリアスが台無しだ」
「……白騎士」
「そう、白騎士のコアナンバーと同一だ。白騎士もコアも、とっくに行方不明になったハズなのにな。しかも、8でも解析できない部分があった。……これ以上は、開発者にしか分かんねぇだろうさ」
「篠ノ之……束……」
薄い光に照らされた部屋が、静寂で満たされる。春風が窓をなでる音だけが二人の間に漂っていた。
「……今日は、もう寝るか」
「……うん」
「よし……。8、とりあえず、このデータを暗号化して、モルゲンレーテに送信してくれ。俺達は、もう寝るからよ」
《
「おやすみ、8」
暖かな明りを消すと同時、気を利かせた8のディスプレイも消える。
とりあえず、明日はどうしようか……とか考えながら、俺は眠りに就いた……。
◆
翌日、教室にて。
「おはよう、セシリア」
「あら、おはようございますわ、紅也さん。どうかなさいましたの?」
「ああ。クラス代表なんだけどな、俺、辞退しようと思ってんだ」
「まあ、どうしましたの?あなたなら、適任だと思ってましたのに」
本気で分からないのか?この間、話しただろ。
「理由は二つ。一つは、俺は技術者だってこと。専用機持ちとはいえ、戦いは苦手だからな……。だから、あんなミスをする」
「一昨日のような、ですか?でも、結果的には勝ったのですから……」
「だから、あれは引き分けだって。
で、二つ目。てか、こっちがメインなんだけどな。俺は、モルゲンレーテっていう企業のテストパイロットだから、基本的にはそっちが優先なんだよ。だから、何かあったときに自由が無さそうな、クラス代表は無理だ」
「そう言えば、そんなことも言ってましたわね」
うんうん、とうなずくセシリア。こいつもなんだか角が取れてきたな。良い傾向だ。
「で、お前はどうする?やってくれるか?」
「いえ……。実質わたくしは2敗だったのです。それで代表を引き受けるなど、言えたものではありませんわ」
「勝ちは勝ちだろうに……お前も、なかなか頑固だな」
ハア、とため息をつく。どんな過程でも、どんなにギリギリでも、勝てたなら誇っていいのに。ホント、急に謙虚になったな。
ともかく、これで一夏が代表だ。……俺としては、願ったり叶ったりの状況になる。
「じゃあ、俺は織斑先生にそれを伝えてくるぜ。また後でな」
「ええ、後で」
さて、織斑先生はまだ職員室にいるかな?
◆
「では、一年一組代表は織斑一夏くんに決定です。あ、一繋がりでいい感じですね!」
山田先生を始め、クラスの女子も大いに盛り上がっている。暗い顔をしているのは一夏だけだった。……あ、なんか手を挙げてる。
「先生、質問です」
「はい、織斑くん」
「俺は昨日の試合に負けたんですが、なんでクラス代表になってるんでしょうか?」
「それは―――」
俺は、チラリとセシリアを見る。それに気付いたセシリアは、ガタンと音を立てて立ち上がる。
「それはわたくしと――」
「俺が――」
「辞退したからさ(ですわ)!」
思い思いのポーズを取る。セシリアは腰に手を当て、俺はギ○ュー特選隊のファイティングポーズだ。……どっかーん、と、背後で爆発が起こったような錯覚を覚える。
(……決まった)
「……で、何でまた」
流すなよ、一夏。これじゃ俺達、痛い子じゃないか。
「まあ、わたくしとの勝負はあなたの負けでしたが、しかしそれは考えてみれば当然のこと。なにせわたくしセシリア・オルコットが相手だったのですから。それは仕方のないことですわ。……それで、まあ、わたくしも大人げなく怒ったことを反省しまして、一夏さんにクラス代表を譲ることにしましたわ」
「それは、ありがた迷惑というか、俺もやりたくないというか……」
「おっとぉ、勘違いするなよ一夏。あの日、あの時、あの場所で、君に……じゃなかった。織斑先生がなんて言ったか、一字一句違えず思い出すんだ」
確かに、こう言っていた。
『……とりあえず、他に候補はいないな?ならば、この三人でバトルロイヤルを行い、勝者が
「セシリアと俺は一勝一引き分け。お前は二敗。俺とセシリアがお前をクラス代表にするなら、これは決定事項だ」
「なん……だと……」
崩れ落ちる一夏。ホント、からみやすい性格だ。
「と、いうわけでみんな、いいかなー?」
「「「「いいともー!!」」」」
「いやあ、セシリアもわかってるね!」
「そうだよねー。せっかく世界で二人だけの男子がいるんだから、同じクラスになった以上持ち上げないとねー」
おおう、今の奴、結構上から目線だな。……二人だけ、じゃないけどな。損にしかならないネタばらしは、この場では必要ないだろう。
「私たちは貴重な経験を積める。他のクラスの子に情報が売れる。一粒で二度おいしいね、織斑くんと山代くんは」
「ちょっと待て!最近、俺の利益が減ってると思ったら、勝手にそんなことしてたのか!?こうなったら決闘だ!本気紅也で相手してやる!!」
「へへーん、山代くん。独占は良くないよ!独占禁止法って、知ってる?」
「フッ、ここはIS学園。日本であって日本でない、治外法権エリアだ!!」
「こら、勝手に人を商売に使うなっつーの!」
「「黙れ、客寄せパンダ」」
「ひどっ!?」
一夏は黙っていろ。これには、俺の生活がかかってるんだ。
……あの四人、奢りだからってあんなに食べやがって。
「そ、それでですわね」
コホン、と咳払いをして、あごに手を当てるセシリア。なにか、言い出しにくいことでもあるのか?
「わたくしや紅也さんのように優秀かつエレガント、華麗にしてパーフェクトな――」
「俺はそんなんじゃないけどな」
「――パーフェクトな人間がIS操縦を教えて差し上げれば、それはもうみるみるうちに成長を遂げ――」
無視か。俺の意見は無視か。
バン!と机を叩いた音が響く。おそらく箒だろう。ああ、言ってやれ。一夏の教官は自分一人で足りていると―――
「あいにくだが、一夏の教官は足りている。私たちが、直接頼まれたからな」
……『私たち』?あなたと、誰?何となく想像はつくけど……。
殺気すらこもっている視線で、セシリアを射抜く箒。これは修羅場か?一夏を盗られると思った、箒の嫉妬か!?俺を巻き込むな!
「あら、あなたはISランクCの篠ノ之さん。Aのわたくしに何かご用かしら?」
セシリアァァァ!!火に油を注ぐな!……というか、俺の性別は知らなかったくせに、どうして他人のランクを知ってるんだ。
「戦闘力5か、ゴミが」っていうような目で見るなよ!!誰だよ、角が取れてきたなんて思った奴は!
「ら、ランクは関係ない!頼まれたのは私だ。い、一夏がどうしてもと懇願するからだ」
歴史が歪んだな。頼まれたのは俺だった気がするが。
……今思い出してみると、ひょっとしてアレって、俺が女だという証拠を集めるために頼んできたのか?だとしたら傑作だ。お互い、相手を探るために近づいたんだから。
「ハハハハッ……!」
「な、紅也!?」
「なにがそんなに可笑しいんですの!?」
「ああ、声に出てたか、悪い(……やばい、ごまかさねぇと)。
いや、あのだな、二人とも得意分野が違うんだから、
ふう。これでいいだろう。
さっきのごまかしもできたし、俺も蚊帳の外。急場の機転にしては、なかなかじゃねぇか。
……と、思っていた時期が俺にもありました。
「そ、そうですわね。では、わたくしたち三人で……」
「う、うむ、やむを得んだろう。紅也、オルコット、よろしく頼む」
「あ、あるぇ、俺は、君たち二人に頼みたかったんだけどナー」
何ということだ。どんな世界線でも、俺が教官になるという状態に収束するのか。
これも
認めん。認められるか、こんな……。心情的には急降下を通りこして、水没した気分だ。
ばしん、ばしん、パァン!
もはやチャイム代わりとなった朝の風物詩、出席簿の音が響き渡る。
「座れ、馬鹿ども」
でーでーでー でっででー でっででーん
出た、ダースベイダー。もとい、織斑先生。
俺達はあわてて席に着く。ここで逆らっても、良いことは一つもない。
バシン!
「その得意げな顔はなんだ。やめろ」
安心してくれ、みんな。叩かれたのは俺じゃない。一夏だ。
なぜ叩かれたのかは知らん。まあどうせ、なにか良からぬことを考えていたのだろう。
「お前たちのランクなどゴミだ。私からしたらどれも平等にひよっこだ。まだ殻も破れていない段階で優劣を付けようとするな」
そりゃ、あなたから見ればひよっこでしょうよ。
フリーザ様から見たヤムチャみたいなもんでしょう。俺?クリリンぐらいじゃない?
一撃ぐらいは当てられる……はず。
「代表候補生でも一から勉強してもらうと前に言っただろう。くだらん揉め事は十代の特権だが、あいにく今は私の管轄時間だ。自重しろ」
山田先生の時間ならいいのか。ひどいな。
バシン!伝家の宝刀でバッサリやられたのは……またしても一夏だ。
「……お前、今何か無礼なことを考えていただろう」
「そんなことはまったくありません」
「ほう」
バシンバシン!これはもう、コミュニケーションだとかそういうプレイにしか見えないな。
一部の女子が羨ましそうな目で一夏を見ている……。
「すみませんでした」
「わかればいい」
……本当に、何を考えていたんだろうか?気になるが、気にしたら叩かれる気がする。
「クラス代表は織斑一夏。異存はないな」
「「「「はーい!!」」」」
「かくして、一年一組のクラス代表は、織斑一夏に決定したのだ。
しかし……これが、あの悲劇の始まりになるとは、この時点ではまだ、誰も知らなかったのであった……」
「ちょ、不吉なナレーションを入れるなぁ!!」
バアン!×2
一難去って団結した一年一組は、今日も今日とて平和だった。