IS~RED&BLUE~   作:虹甘楽

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第一章のメインキャストがほぼ出そろいました。
ここ数話は校正する部分が少ないので、すぐ書けますね。


第15話 悲しいけど俺、覚えてないのよね

 あいつと私が出会ったのは、一夏と別れて中国に戻った直後だった。

 ある日見かけた、学校のそばの剣道場。一夏のことを思い出した私は、気がついたらそこを覗いていた。竹刀を握る、自分と同年代くらいの子たちは皆、一心不乱に同じ動きを繰り返し、汗を流していた。

 が……その中に……いや、その外に、異質な存在がいた。

 

 道場の外で一人、体の倍以上はある長さの丸太を振っていた男の子。私は、その子に興味を持った。

 

「ねぇ、アンタ、何をやってるの?」

「刀を振る練習だよ」

「刀?じゃあ、なんで丸太を振ってるの?」

「これが練習になるんだ。大きな刀を振るから」

「ふーん……変なの」

 

 少年は、再び丸太を振る。私はそれが気になって、しばらくそいつを見ていた。

 

「おい、(ホン)!丸太はもういい。次は(ワシ)と試合じゃ」

「はい、老師。……じゃ、バイバイ」

 

 名前に合わない見た目だな……と思った私は悪くないと思う。

 次の日、再び道場を訪れても、彼はいなかった。なんでも、あの少年とおじいさんは、旅をしながら刀の修行をしているそうで、夜のうちにここを去ったとか。

 そんな人いるんだ……と、妙に感心したのを覚えてる。その日の記憶は、ちょっと変わった出来事として、私の中で眠っていた。

 

 

 

 

 

 

〈side:山代紅也〉

 

 ……誰だっけ?この子。

 なんか、俺のことを知ってるみたいなんだけど、見覚えがない。

 ほら、小学校で一緒だった人と、高校の通学路で偶然出くわしたけど、こっちは相手を覚えてない、そんな気まずい感じ。

 

「あなた……(ホン)よね?どうして、IS学園に?」

 

 その呼び方……俺を(ホン)と呼んでいたのは、記憶の中でただ一人……

 

「キミ……(ウン)老師の知り合いか?」

「え?誰?」

(ウン)(ノウ)だよ。刀鍛冶で、剣豪の。俺を(ホン)って呼んでたのは、あの人だけだったんだが」

「……ああ、アンタと一緒にいた、あの厳ついおじいさん?」

「それ、本人の前で言うなよ……」

 

 ヤバイヤバイヤバイ!誰だ、ホント!?老師を知ってるなら、中国で会ったってことだ。ってことは去年に会った?あの時は武者修行の最中だったから、旅先で会った人なんて、いちいち覚えてないぞ!?

 

「おい」

「なによ!?」

 

 バシンッ!

 

 HRの開始を告げる、乾いたチャイムが教室に響く。

 ……どうやら、凌ぎ切ったようだ。タイムアップ。安心した。

 

「もうSHRの時間だ。教室に戻れ」

「ち、千冬さん……」

「織斑先生と呼べ。さっさと戻れ、そして入り口を塞ぐな。邪魔だ」

「す、すみません……」

 

 すごすごとドアからどく少女。完全にビビって、委縮してる。

 両者の絶対的力関係が垣間見える図だ。……まあ、織斑先生相手に強気に出れる相手って、いるんだろうか?初期からアビリティ「威圧」持ちだから、性格が「普通・強気・弱気」だと太刀打ちできないもん。

 

「また後で来るからね!逃げないでよ、一夏、紅!」

「さっさと戻れ」

「は、はいっ!」

 

 反転、そしてBダッシュ。よく訓練された、アクティブな子だな。

 

「っていうかアイツ、IS操縦者だったのか。初めて知った」

 

 一夏が呟く。どうやら知り合いらしいから、後で話を聞こう。……と、言っても――

 

「……一夏、今のは誰だ?知り合いか?えらく親しそうだったな?」

「い、一夏さん!?あの子とはどういう関係で――」

 

 俺が聞かなくても、こいつらが勝手に尋問してくれるだろう。

 ただ、今聞くのは避けた方がいいと、山代さんは思うのですよ……。

 

 バシンバシンバシンバシン!

 

 出席簿による乱打。織斑先生の前で雑談したのが運の尽きだ。

 

 

 

 

 

 

 時は進んで昼休み。

 セシリアと箒は、終始落ち着きが無かった。授業中は上の空で、山田先生に注意5回、織斑先生に3回叩かれていた。歴代2位のHit数。

 ちなみに俺も、山田先生の授業中に中国修業時代のことを回想していたため、板書は一夏頼みだったりする。そして今。

 

「お前のせいだ!」

「あなたのせいですわ!」

「なんでだよ……」

 

 二人は一夏に絶賛八つ当たり中だ。俺は、その矛先がこっちに向いてはたまらないため、口をつぐんでいる。

 

「まあ、話ならメシ食いながら聞くから。とりあえず学食行こうぜ」

「む……。ま、まあお前がそう言うのなら、いいだろう」

「そ、そうですわね。行って差し上げないこともなくってよ」

 

 二重否定は強い肯定。そんなに行きたいのか、セシリア。

 

「俺も行くぜ。アイツが誰なのか、教えてほしいからな」

「む?紅也の知り合いではないのか?」

「……いつ会ったのか、心当たりがない」

「で、でも。仲良くお話していたではありませんか!」

「……こっちは、ボロが出ないように必死だったんだよ。

 ああいうタイプの奴は、自分が覚えてることを相手が忘れてたら、理不尽に怒るタイプだ」

 

 ガンドとか、ガンドとか、ガンドでな。……いくらなんでも、ISで攻撃してくることはないだろうが。

 

「だから、ボロが出ないように協力してくれ、一夏」

「あ、ああ。……確かに、昔っから理不尽に怒る奴だったよ」

「助かる。……あ、そうだ。今日、葵も一緒でいいか?」

「おう」

 

 クラスメイト数名を連れて移動する一夏たちと別れ、俺は3組の教室に向かう。

 

 

 

 

 

 

「あ、来たわね、紅。逃げたかと思ったわよ!……と、アンタは、昨日の紅っぽい人!昨日は助かったわ!」

 

 昼食を受け取り、席を探す俺たちを呼ぶのは、大きなテーブルに集まっていた転校生だった。

 今なら、アイツが葵に声をかけた理由が分かる。俺と間違えたんだろうな。

 

「よう、お前も来てたんだな」

「………」

 

 空いてる所に二人で座る。どうやら俺を待っていてくれたようだ。ありがたいぜ。

 

「鈴、いつ日本に帰ってきたんだ?おばさん元気か?いつ代表候補生になったんだ?」

「質問ばっかしないでよ、一夏。アンタこそ、なにIS使ってるのよ。ニュースで見たときびっくりしたじゃない」

 

 早速会話が始まる。やはり二人は、かなり仲のいい友人同士らしい。

 

「一夏、そろそろどういう関係か説明してほしいのだが」

「そうですわ!一夏さん、まさかこちらの方と付き合ってらっしゃるの!?」

 

 除け者にされた箒とセシリアも、攻撃的な口調で問い詰める。尋問の時間だ。

 

「べ、べべ、別に私は付き合ってる訳じゃ……」

「そうだぞ。なんでそんな話になるんだ。ただの幼馴染だよ」

「………………」

「? 何睨んでるんだ?」

「なんでもないわよっ!」

 

 ……ああ、またこのパターンか。片思いのような何かか。

 

「幼なじみ……?」

「あー、えっとだな。箒が引っ越していったのが小四の終わりだっただろ?鈴が転校してきたのは小五の頭だよ。で、中二の終わりに国に帰ったから、会うのは一年ちょっとぶりだな」

 

 そこまで話し、ふと何かに気付いたような表情をしてから、再び一夏は話しだす。

 

「で、こっちが箒。ほら、前に話したろ?小学校からの幼なじみで、俺の通ってた剣術道場の娘」

「ふうん、そうなんだ。初めまして。これからよろしくね」

「ああ。こちらこそ」

 

 互いに挨拶を交わすも、対抗意識が消えてない。……あれだな、「幼なじみ」という名の縄張りを巡って、争ってる感じだな。

 

「ところで、俺からも聞きたいんだけどさ。鈴と紅也って、どうやって知り合ったんだ?」

 

 ……一夏、グッジョブ!!ここでその質問に持っていくさりげなさは、高評価だ!

 

「紅也って……(ホン)のこと?」

「おいおい、俺の名前、知らなかったのかよ……」

 

 その発言に、俺はやれやれと肩をすくめ――おい、お前ら。その「どの口が言うか」って顔はやめろよ。悟られる。

 

「しょうがないじゃない!紅って名前だって、道場の人が呼んでたのをたまたま聞いただけだったし、話したのも二言三言だったし、アンタ、ずっと丸太振ってたし……」

 

 ……ん、道場?それって確か、久しぶりに人里に下りて、老師が路銀を稼ぐために雇われた所じゃ……。それに丸太っていうと、あの訓練をしてたのは四月ごろだったから―――

 

「……ああ、あの時の。飼い主とはぐれた子犬みたいな子か」

「な……なんですってえぇぇぇ!!」

「いや、覚えてるよ。日本語で話しかけられたから、印象的だった。でも、俺はアンタの名前を聞いてなかったな。へへっ、道理で覚えがなかったはずだぜ」

「こ……子犬って、アンタねぇ……」

 

 おおう、怒らせちゃったか?ツインテールが逆立ってる。サイヤ人みたいだ。

 

「……そこまで。八つ当たりは駄目」

 

 そんな少女を宥めたのは、今まで黙っていた葵だった。意外だ。苦手って言ってた相手に話しかけるなんて。

 

「べ、別にそんなんじゃ……。と、いうか、アナタは何者なのよ。まだ、名前聞いてなかったわよね?」

「……葵。山代 葵。妹」

「言葉足らずで悪いな。ちなみに、双子だ」

「ふーん、へーえ……」

 

 そう言いながら、俺と葵を交互に眺める凰。そしてひとり、納得したかのようにうなずく。

 

「なるほどね。髪の色以外はそっくりじゃない」

「まあな。入学したときは髪も同じだったから、見分けがつかないくらいだったぜ。

 現に、一夏とセシリアなんか……」

「ちょっと、紅也さん!?」

「……失礼。でも傑作」

「山代さんまで!?うう……」

 

 涙目になるセシリア。……ああ、ちなみに、葵とセシリアは、別に仲が悪いわけじゃない。ただ、葵が少し毒舌なだけだ。

 念のため言っておくけど、決闘騒ぎも無かったよ?

 

「……そういえば、アンタは誰なの?」

 

 凰は、思い出したかのようにセシリアに問う。

 

「まあ、ご存じない?わたくしはイギリス代表候補生、セシリア・オルコットでしてよ!よろしくお願いしますわ、中国代表候補生の凰鈴音(ファン・リンイン)さん」

「へえ、そうなの。ま、興味ないけど」

「な、な、なっ……!?い、言っておきますけど、わたくしあなたのような方には負けませんわ!」

 

 プライドを折られた揚句、投げ捨ててそこらの狗にでも食わせたかのような凰の態度に、セシリアが怒る。

 

「そ。でも戦ったらあたしが勝つよ。悪いけど強いもん」

 

 凰も大した自信だ。……やばい、こう言う奴、大好物だ。すごく戦いたい。

 全力出したら怪我するのは分かってるけど、やっぱり戦いたい。

 

「紅也。自重」

 

 分かってるよ。余計な戦いは避けろ、って言いたいんだろ。

 

 

 

「一夏」

 

 もはやセシリアに興味を無くした凰は、ラーメンをすする合間に一夏に話しかける。

 

「アンタ、クラス代表なんだって?」

「お、おう。成り行きでな」

「ふーん……」

 

 どんぶりを持ち、男らしくごくごくとスープを飲む凰。なかなか見ごたえはあるが、ちょっと汚いぞ。

 

「あたしも、クラス代表なのよ。……あ、あのさぁ。ISの操縦、見てあげてもいいけど?」

「そりゃ助か―――」

 

 ダンッ!という音と共に、トレーの上の食器が揺れる。

 箒とセシリアがシンクロ率100%で机を叩き、勢いそのまま立ち上がったのだ。

 

「一夏に教えるのは私の役目だ。頼まれたのは、私だ」

「あなたは二組でしょう!?敵の施しは受けませんわ」

 

 そこで二人は、首だけをクルリと回転させ、俺の方を向く。

 その様子は、まるでホラー映画のワンシーン。背中を嫌な汗が伝う。

 

「「紅也(さん)も何か言ったらどうだ(ですか)!」」

 

 巻き込まれた。女子怖い。

 

「あー、別に教えてもらってもいいんじゃないか?こっちも、相手の情報が得られるんだし。……そしたら、ウチの葵の一人勝ちだしな(ボソッ)」

 

「スパイを発見。捕えろ」

「「「「イエッサー!!」」」」

「ちょ、やめ、お前ら、一度ならず二度までも裏切るか!?」

「先に裏切ったのはー、やまぴーの方でしょ?」

「裏切ってなどいない!俺は、最初から葵の味方だぁぁぁ!!」

「みなさん、やっておしまいなさい!!」

「……恥ずかしい」

 

 俺はなすすべもなく、女子の群れに捕まる。くそっ、俺は間違ったことは言ってない!恐怖のあまり、本音が出ただけだ。そしたら布仏が出てきたけどな。

 

「そういえば、紅の妹の……葵っていったっけ?ひょっとして、アンタもクラス代表?」

「………(コクリ)」

「専用機持ちなのよね?ドコの所属?」

「……オーストラリア」

「ふーん、クラス対抗戦、ちょっとは面白くなりそうね」

「……そうでもない。多分、私が勝つ」

「なっ、大した自信ね!いいわ、吠え面かかせてあげるから、覚悟してなさい!!」

「必要ない。負ける要素がないから」

「―――――!!」

 

 ちらっと見ただけだが、あっちもあっちで修羅場だ。まあ、人と関わろうとしてるだけマシかな。

 

「あら、山代さんもクラス代表でしたの?さすがはわたくしのライバルですわ」

「……同格扱いしないで」

「きいいいぃぃ!!なんでこんなのが紅也さんの妹なんですの!?」

「こら、葵。いちいち相手にケンカを売るな」

「そのつもりはない。全部本当」

「「なんですって!?」」

 

 ……誰か、こいつらを止めてくれ。

 

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