IS~RED&BLUE~   作:虹甘楽

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メインキャストが出そろったと言ったな?あれは嘘だ。


第19話 新しい出会い

 ――夜、第二アリーナ。

 

「まったくもう、アリーナの見回りなんて……面倒ですね、織斑先生」

「言うな、これも仕事だぞ。クラス対抗戦が近いんだ。使用期限をオーバーしようとする者や、片付けない者がいたら困るだろう」

 

 人気の無い廊下を歩いているのは二名の教師――織斑千冬と山田麻耶である。二人は、アリーナの利用規則を破っている人間がいないかどうか、こうして見回っているのだ。

 

「はい、ここですねー。消灯よし、ステージは……って、あれ?これは、地割れ……でしょうか?」

「まったく、どんな暴れ方をしたらこうなるのやら……。それにしても、これは……」

「? 織斑先生?」

 

 織斑千冬は気付いた。これは、衝撃によって地を割ったものではないと。

 しかし、妙だ。いや、馬鹿な話だ。

 

 地面を切断できる武器など、あるはずがないではないか―――

 

 

 

 

 

 

「……で、8。状況は?」

《アレを使ったせいで、両腕にガタが来てるな。早急に修理が必要だ》

「……はあ、やっぱりか」

 

 前回の戦闘で使った、未完成の切り札。実戦で使えるかどうか軽く試してみるつもりだったのだが……結果は、ご覧のあり様だ。

 機体の出力不足だった。

 一応、構えることはできた。

 振り下ろすこともできた。

 ただ、止めることができなかった。軽く当てて終わらすつもりが、地面に叩きつけてのオーバーキルになってしまった。

 師匠……何であんなものを作ったんですか……。

 

《『材料が手に入ったから、全部使ってみた』と言ってたぞ》

「ハハハ……あの人らしいや。……しょうがない!今夜は徹夜覚悟でメンテだ!8、予備パーツは足りるか?」

《腕の予備は4本。まだ後一回は壊せるぞ》

「壊さねぇよ」

 

 と、漫才を繰り広げていると、シャワー室から葵が出てきた。

 

「紅也、次」

「あー、悪い。これから整備室まで行ってくるから、シャワーはまだだ。遅くなるかもしれないから、今日は先に寝ててくれ」

「……腕、やっぱり壊れた」

「うーん、いけると思ったんだけどなぁ」

「でも、紅也の腕は、無事。なら、それでいい」

「そっか、ありがとよ。……おやすみ」

「おやすみ」

 

 作業着に着替え、8を持ち、俺は寮を後にする……。

 

 

 

 

 

 

 IS整備室。

 本来なら二年生からはじまる『整備科』のための設備であり、その名の通りISの整備を行う施設である。……そう、整備。間違っても、修理に使うところではない。

 が、そんなことを気にも留めない男が、ここにはいた。

 言わずと知れた主人公、山代紅也である。

 

「えーと、整備室は……こっちか?」

《そこから3番目のドアだ。この時間なら、誰にも気づかれないはずだ》

「おっけー。いち、に、さん……っと、ここだな」

 

 ドアをサーチ。鍵はかかってないようだ。

 静かにドアを開ける。予想通り、中には誰も……いや。

 

(誰かが隠れてるな……)

 

 どこかから視線を感じる。俺を見ている、というよりは、誰かが来たから様子をうかがっている、といった感じだ。……何でわかるかって?8が熱源サーチして、データを俺に送ってるからだよ。

 すぐに視線の主も……ホラ、そこだ。見つけた。

 

「なあ……勝手に入って悪かったとも思ってるけどさ、教えてくれ。アンタ……誰だい?」

 

 ビクッ!と動く影。しかし、それ以上の動きは見せない。

 一秒、二秒、三秒……延々と沈黙が続くかと思ったが。

 

「……バレてる?」

「ああ、バレバレだ」

「…………」

 

 暗がりから現れたのは、同学年の女子生徒だった。

 それも、会ったことはないが、見たことはある顔である。

 

「……更識(さらしき) (かんざし)

「……私を、知ってるの?」

 

 おお、驚いてる。そりゃそうか。知らない人(しかも男子)に、名前を知られてたら。俺も、凰に話しかけられたときはそんな感じだったと思う。

 

「そりゃ知ってるさ、四組のクラス代表さん」

「……………」

 

 また沈黙。人と話すことが苦手なのか、単純に暗い子なのか……。葵は前者で、この子は後者かな?

 とりあえず、電気を付ける。更識は一瞬眩しそうに目を細めるも、まだこちらを見ていた。

 

「……私に、何か用?」

「いや、違うんだ。ここの整備室を使おうと思ったんだが、まさか先客がいるとはな……。

 ここ、借りても大丈夫かい?」

「……私も、無断使用。別に……構わない」

「そうかい。じゃ、遠慮なく……」

 

 8から、レッドフレームを呼びだす。今回は戦闘モードじゃないから、8はそのままの状態で残っている。

 

「……!専用機……」

「ん、ああ。俺は企業の操縦者なんだ。専用機くらい持ってるさ」

「……あなた、一体……」

「そういや、名乗ってなかったな。俺は山代紅也。一組の生徒だ」

「……山代?もしかして、三組のクラス代表と……」

「ああ、あいつの兄だ。っていっても、双子だけどな」

 

 話しながらも作業を継続。ううん、フレームが歪んでるし、電気系統もスパークしてる。やっぱり、総取り換えが一番早いな。よし。

 

「8。フレキシブルアームズを展開する。補助を頼む」

《了解だ》

 

 俺の背中にパーツが装着される。菱形のボックス。その各辺から四本のアームが飛び出たようなユニットだ。

 

「……何、それ」

 

 更識は、先ほどよりも興味深そうな声で聞いてくる。

 

「作業用の補助アームだ。修理には必須だぜ。……それより、いいのか?自分の作業は?」

「……そうだった……」

 

 更識は空中投影ディスプレイを呼び出し、キーボードを叩き始める。

 

「よし、一番、二番アーム起動!右腕固定!三番でボルトを外して……っと」

 

 レッドフレームの右腕が、本体から分離する。それを慎重に地面に下ろし、次に予備の右腕を実体化。空いた拡張領域(バススロット)に壊れた右腕を格納する。

 そして、逆の手順で右腕を装着。最後に、四番アームでドリンクをつかみ、口元に持ってくる。これで、作業は半分終了だ。

 

「……器用」

「そうか?俺じゃなくて、コイツが優秀なんだよ」

 

 そう言って8を指さす。8も《ハイテクだからな》と、自慢げな様子だ。

 

「え!?……疑似人格コンピュータ?」

「そうだぜ!それも、とびきりハイスペックだ!」

《なぜお前が自慢する。まあ、否定する気は無いが》

「……ちなみに、今の作業……あなたがやっていたのは……どの部分?」

「…………四番アームの操作だ」

 

 ドリンクを振って見せる。一方で、一から三番は、その辺にあったジャンクパーツでお手玉をしている。……8め、よっぽど自慢したいらしいな。

 

「くすっ……………」

「あ、こら、8!テメェのせいで笑われたろうが!」

《お前がヘボいからだ。自業自得だ》

「なにおぅ……」

「くすくす……ご、ごめん、ちょっと……可笑しくって……」

 

 先程までの、どこか陰のある表情から一転、更識はわずかに笑みを浮かべていた。

 

「へへっ、ようやく笑ったな」

「……え?」

 

 更識は、一転してきょとん、とした顔になる。

 

「いや、さっきまでのお前って、なんか、暗かったからよ。そっちの方が似合ってるぜ」

「へ?に、似あ……あう」

 

 顔を赤くして照れる更識を見て、思わず笑みがこぼれる。

 ……葵も、こんな時期があった。俺が師匠に弟子入りして、葵が一人ぼっちになったとき、ずいぶんと暗い性格になってしまった。……いや、そりゃ、人付き合いが苦手なのは元々だけど、あの時はもっとひどかった。なにせ、俺にすら笑顔を見せなくなったのだから。

 そういえば、その頃からだったな。葵が、俺を名前で呼ぶようになったのは……。

 

「よし、作業再開だ。左腕、固定!」

《合点だ。さっさと済ませるぞ!》

 

 

 

 

 

 

「よし、修理完了!」

「早い……!」

 

 目の前には、新しい腕を装備したレッドフレームが。現在、8が伝導ケーブルに異常がないか、サーチしているところだ。

 

「ところで更識。お前の作業は進んだのか?」

「……え、うん、まあまあ……」

「そっか、まあまあか。悪かったな、邪魔して」

「……別に」

 

 そう言って、更識はすっと目をそらした。

 

《駆動系、及び油圧系、オールグリーンだ》

「よし、じゃあ、テスト行くぜ!」

 

 レッドフレームに体を預け、機体を纏っていく。両腕への違和感はほとんどない。予備パーツとはいえ、なかなか完成度の高いものを用意しておいてくれたようだ。

 

「完了……っと。違和感はほとんどない。さて、機能は……」

 

 右手から、エネルギー供給用のコネクタが現れる。そこに、軽くエネルギーを流し込むと、黄色いエネルギー球が形成された。

 

「よし、エネルギー循環も正常。耐久性も大丈夫そうだ」

 

 エネルギー球でお手玉をしながら、可動性もチェック。支障なし。

 完全に元通りだ。俺はレッドフレームを解除し、本体である8の中に収納(クローズ)する。

 

「じゃ、俺は帰るけど……あんまり遅くまで無理すんなよ」

「……あ、待って……」

 

 帰ろうとする俺を、更識は呼びとめる。

 

「ん、どうしたんだ?」

「……せっかくだから、手伝って欲しい」

「……何を?」

「……私の、専用機作りを……!」

 

 そう言った更識の目に、最初のおどおどした雰囲気は無かった――――。

 




中にいたのはダコスタ君!……ではなく、簪でした。
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