IS~RED&BLUE~   作:虹甘楽

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と、いうわけで過去編です。
聖石探しの合間にでも読んで下さい。


過去編1 セシリアVS葵 ジン評価試験

 N.G.I‐1017 ジン。N.G.Iが、モルゲンレーテの技術提供の元に作った試作型全身装甲ISのうちの一機である。

 今回、そのテストパイロットとして選ばれた少女。名を山代葵といった。そして、

 

「葵。一人でイギリスに行くなんて、ホントに大丈夫か?やっぱり、俺がついていこうか?」

「心配ない。紅也、レッドフレームの最適化中。ここにいて」

 

 彼女を心配そうに見つめる少年は、彼女の双子の兄、山代紅也であった。二人はまさに瓜二つであり、葵が髪を切ったら、見た目は完全に一致するだろう。

 

「でも、あのN.G.Iが作った試作機。コンセプトもウチとは全然違うんだ。気をつけないと……」

「しつこい。……私は、大丈夫」

「う……葵……」

 

 二言で兄を黙らせた少女は、そのまま飛行機に乗り込む。

 ……が、過保護な兄は、この程度で引き下がるはずは無かった――。

 

 

 

 

 

 

 飛行機は、イギリスに到着する。

 出迎えなどない。なぜならここは、既に敵地。

 

 ――葵の目的。それは、ジンの性能試験……つまり、戦力評価であった。

 

 イギリスの試作ISと模擬戦を行い、その改良点を見つけ出す。

 ……とは言われているものの、その実態は、研究者たちのエゴだろう。自分たちの作った機体が、どの程度の完成度なのか……。それを知りたいのだ。

 

 モルゲンレーテとしても、N.G.Iの技術力を知りたいのだろう。ここに、二社の思惑が一致した。

 

 そこで白羽の矢が立ったのは、BT試験兵器の実験を行っているイギリスであった。

 互いに試作機を持つ立場。性能評価を持ちかけたら、あっさり話がついた。

 ……本音としては、相手より自分の技術が上だ、と見せつけたいだけなのだが。

 

 ちなみに、葵がテストパイロットに選ばれた理由は一つ。

 今回のテストを担当する、イギリス側の代表候補生が、葵と同じ年だからだ。

 ――そこまで対抗意識をみせなくても、いいだろうに。やれやれ。

 

 これを引き受けるにあたり、葵は条件を出した。

 ひとつ。ジンの各種装備一式を、モルゲンレーテに譲渡すること。

 ふたつ。性能評価を行うジンを、改造する許可を出すこと。

 二つ目に関しては、正しい評価ができないとしてN.G.Iが渋ったが、「このままでは負ける」と断言した葵の一言で、泣く泣く条件を呑んだ。

 

 

 

 

 ――そして、今。

 俺、山代 紅也は、改造されたジンを台車に乗せて運んでいる。

 

 ……え、オーストラリアに残ったんじゃないかって?

 葵が心配なんだよ!幸い、俺の機体、レッドフレーム(正式名称はメイン・バトル・フィギュアだが……)は、使用可能な状態だ。そこで、脚部装甲のみを部分展開し、その上から立体映像を重ねて投影することで、「がっしりした大人の職員」のフリをしてヘリに乗り込んだのだ。

 

 と、モルゲンレーテのロゴ入りトラックを発見。

 担当者に書類を渡し、ジンとともにそのまま乗りこむ。

 ―――こちらスネーク。潜入ミッション、成功だ。

 

 

 

 

 

 

 イギリス、IS開発局。

 ここが、今回の試験の会場だ。

 研究所とアリーナが同じ敷地内にあり、データを取るにもISを改良するにも便利な構造をしている。

 俺は、葵が使うピットにジンを運び込み、ようやく元の姿に戻った。

 

 これ以上続けたら、帰りに使うエネルギーが足りなくなる。

 それに、たとえ誰かに見つかっても、葵のフリをすれば大丈夫だ。

 ……さて、模擬戦の開始まで、あと一時間。少し、敷地内を偵察――いや、そう、散歩だ。散歩しよう。

 自分にそう言い訳し、俺はピットを後にする。

 ああ、そうそう。ジンの設定は、葵以外にはいじれないようにロックした。妨害なんてさせねぇよ。

 

 なんとなく足音を消しながら、廊下を歩く。

 それと同時にレッドのセンサーで、葵の位置も探る。万が一にも、鉢合わせしてはいけない。説教二時間コースは確定だ。

 ……うん、この辺にはいない。まずは、研究所の方へ向かったようだ。

 センサー解除。警戒レベルを引き下げて、再び施設をまわる。

 そして、休憩室に向かったとき―――俺は、ついに見つかった。

 

「もしもし、そこのあなた。どなたですの?見覚えのない方ですが……」

 

 声からして、女性。ここの職員だろうか?

 前髪を下ろし、目元を隠す。顔はやや伏せて、振りかえる。

 

 ――そこに、お嬢様がいた。

 

 ……いや、だってなあ。

 金髪縦ロールなんて、どう見てもお嬢様だろ。

 しゃべり方も、どこか気品がある感じ。なんていうか、こう……。貴族っぽい?

 

「あの、もしもし?」

 

 ああ、今度は少し、不信感がこもった声だ。……やばい、早くしないと。

 

「……何?」

 

 ……やばい!今、モロに地声だった!!修正修正―――。

 

「まあ!質問しているのはこちらですわ!何者ですの!!」

「……モルゲンレーテ所属。山代 葵」

「ヤマシロ……?ああ、わたくしの対戦相手の!」

 

 ええっ!?コイツ、よりにもよって試合の相手かよ!

 こりゃヤバい。余計なことを話したら、正体バレるかも……。

 

「光栄に思ってくださいな!このわたくしと、テストとはいえ戦えるなど、あなたの身に余る栄誉ですのよ!!」

「……知らない。興味ない」

 

 ああもう、話しかけるな。俺は面倒が嫌いなんだ!

 

「まあ、何でしょう!その態度は……」

「雑魚と話す時間は無い」

 

 一方的にそう言い捨て、俺は撤収する。

 

「なっ……!!いいでしょう!このわたくしが、自ら、叩きのめして差し上げますわ!!」

 

 そんな捨てセリフを聞きながら、俺は休憩室から逃げ出した……。

 

 

 

 

 

 

 そして、試合開始時刻。

 俺は、モニターの映像をハックし、離れたところから試合を見ることにした。

 イギリスのISは、既に準備完了して、空に浮かんでいる。

 海のような青い装甲を持つIS。その手には身の丈よりも大きなライフルが握られ、背中には四枚の大きな青い翼がついている。

 

 ――アレの名称は、ブルー・ティアーズ試作型。

 自立稼働し、レーザーを放つ大型砲台だそうだ。……ビットってのは、小型が相場と決まっているが。あんなにデカければ、葵にとってはただの的だな。

 

 反対側のゲートが開く。

 そこから出てきたのは、青と黒の二色に塗り分けられた、全身装甲のIS――ジンだった。

 背中には本来の二枚の翼の他に、二つのプロペラントタンクが搭載されている。ここにはジェット燃料が満載されており、機体の速度を一時的に引き上げることができるのだ。

 また、装甲のところどころには穴が開いており、徹底した軽量化がなされている。

 

 ――そう、葵は、鎧武者のような外見のジンに、速度重視のチューンを施したのだ。

 

 本来の武装である剣は外され、軽量だが切れ味バツグンのナイフ、アーマーシュナイダーが二本、肩にマウントされている。

 足にはスラスターが増設され、全てのスラスターを稼働すれば、本来のジンの3倍近い速度が出せる。その分、操縦のクセが強くなるが……葵ならば問題ない。

 手に握られたのは、無反動砲キャットゥス。弾頭は通常弾頭と閃光弾の二種類。一撃離脱を前提としている装備だな。

 さらに、頭部のトサカは撤去され、代わりにモノアイが追加された。正面と上部を別々に観測するモノアイは、どこか不気味だ。

 

「……来ましたわね!山代 葵!!」

「…………」

 

 敵は騒ぐが、葵はどこ吹く風。元々無口な奴だ。

 

「宣言通り……あなたが地を這い降伏するまで、徹底的に叩きのめして差し上げますわ!」

 

 そんなこと言ってたっけ?『叩きのめす』だけだった気がするけど。

 

「……うるさい。雑魚に興味は無い」

 

 俺と似たようなセリフを発する葵。それを聞いた相手は、口をパクパクさせている。

 

《それでは、テストを始めて下さい》

 

 無機質な声が、戦いの開始を告げる。

 

「~~~!!お行きなさい、ブルー・ティアーズ!!」

 

 青いビットが、宙を舞う。

 一基は葵の後方へ。一基は真上へ。三基目はその退路を塞ぐ位置へ。四基目は、葵の周囲を円軌道で飛び回る。

 

 が、唐突に。

 葵の姿がかき消える。

 

 瞬時加速(イグニッションブースト)。それも、超高速の。

 ライフルを構え、ビットの操作に集中していたお嬢様(仮)は、その接近に虚をつかれ―――否、知覚できずに―――

 ナイフで突かれ、腹を蹴られ、とどめとばかりに放たれたキャットゥスを直撃する。

 

 ――シールドエネルギー、減少。残り、137。

 

 いきなり大ダメージだ。こりゃ、決まったか?

 

「くっ……やりますわね!……ならば!」

 

 お嬢様はビットを呼び戻す。それらはISのそばに滞空すると、一斉に光を放ち始めた。

 ビットを固定砲台として利用した、圧倒的な弾幕。それらが、葵の接近を阻む。

 

「……小癪」

 

 キャットゥスの弾頭を変更。無誘導で放たれたそれを、レーザーが撃ち落とす。

 瞬間、圧倒的な光が立ち上り、アリーナを包み込んだ。

 

「なっ!?卑怯ですわ!これでは、視界が……。

 ……でも、それはあなたも同じはずですわ!」

 

 確かに。

 今の状態じゃ、葵も敵の姿は見えない。

 ――だが。

 葵なら、記憶を頼りに敵を落とすくらい、簡単にできる。

 

 ボン!ボン!ボン!

 

 聞こえたのは、爆発音のみ。そして光が収まると……

 

「……あら?」

 

 そこに四基のビットは無く、残されたのはライフルを構えた青いISのみであった。

 

 そしてその正面に立っているのは、武装を全て格納した状態のジン。

 

「ふふふ……どうやら!ビットを破壊しても、このスターライトMk.Ⅱを破壊するほどの弾丸は、持っていなかったようですわね!!実弾で身を固めるから、弾切れになるのですわ!」

 

 そう言って高笑いを始めるお嬢様。そして――

 

「喰らいなさい!!」

 

 無防備な葵に、ライフルを向けた。

 エネルギーが凝縮し、レーザーとしてあふれようとする。それを見た葵は、人差し指を相手に向け――

 

「……お前は既に、死んでいる」

 

 と、なんとも有名なセリフを放つ。

 すると。

 何の前触れもなく、突然。ライフルが爆発した。

 

「え……。スターライトから光が逆流する……!きゃあぁぁぁぁぁ!!!」

 

 そのダメージで、シールドエネルギーを失った敵ISは、地上へと墜落していった。

 

 

 

 

 

 

 模擬戦は終了。俺は、再び変装し、悟られることなく帰国した。

 葵も、敵操縦者と話すことなく撤収し、ヘリの中で眠ってしまった。

 ……疲れたのか?いや、時差ボケかな。

 

 後日。

 あの時の映像が届いたため、俺はようやく、その試合について話すことができるようになった。

 早速「最後に何をしたか」と聞いてみると、「余裕があったから、ライフルの銃口に爆弾を詰めておいた」との事。

 

 ――葵には勝てない。

 俺は、改めてそれを実感した………。

 




時系列としては、本編の10か月前です。N.G.Iとの技術提携から2カ月。ジンは最初の試作機でした。

このあと様々な事件が起こり、当の紅也はこのときの出会いを忘れています。つまりセシリアの勘違いも、あながち勘違いではなかったわけですね。
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