IS~RED&BLUE~   作:虹甘楽

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序盤の無駄なコラボは消して、ちょっと改稿してます。
今まで設定のみ存在していたある人物が、セリフだけとはいえ初登場です。


第25話 気になる噂?嵐の予感

「――てな感じでな。なかなか退屈しないところだぜ、IS学園は」

「ふーん。とりあえず、あんたが相変わらずだ、ってことはよくわかったわ」

「おいおい、それだけかよ……」

「それ以上何を言えばいいの?結局肝心な部分はぼかしてるじゃない」

「……緘口令」

「ま、それなら話さないわよね、あんたは。公私はきっちり分ける男だし」

 

 久しぶりの休日だが、俺たちは何をするでもなく部屋でだらだらしていた。

 あんな事件があったわけだし、俺たちの任務もひとつ達成。さらに予想外の成果もあったわけで、正直気が抜けていた。ていうか、少し休ませて。

 

「公私を分けるなら、ASTRAYネットワークをこんなことに使わねえって」

「あはは、そうかも。ま、あんたのそーいう所、わたしは結構……」

「それより、みんなは元気?」

「アオイ……あんたさぁ……」

 

 まあ、そんなわけで。たまにはちょっぴり昔が懐かしくなって、こうして電話代要らずのASTRAYネットワークを介した通信でオーストラリアの友人と長話に興じたりしてるわけだ。

 残念ながら、今日連絡がついたのはソフィアだけだったが……。中学行ってないからって、友達少ないわけじゃねぇよ?ホントだよ?

 

「まあ、ヒメさんもユウヤさんも出張中だからわからないけど、あの二人に限って心配はいらないんじゃない?セリアーナもコウヤたちと話したがってたけどさ、今日はたまたま(・・・・)都合が悪かったみたい。まあ、地元のみんなも変わりないよ。コウヤに秘密があったのは、なんとなくわかってたし」

「そうかい……」

「紅也、嘘が下手」

 

 今日も、何でもない毎日が過ぎていく。

 あれから一週間。季節は移り、そろそろ六月になろうとしていた……。

 

 

 

 

 

 

 六月。

 この月には、忘れてはならない重大イベントがある。

 

 ――学年別個人トーナメント。

 

 1クラス30人、4クラス合わせて120人ほどでISのトーナメントを行い、一週間かけて学年最強を決める。優勝者には名誉と、IS・ザ・ISの称号が与えられ……嘘ですごめんなさい。

 

 さておき。

 一年生ではまだ訓練が始まっていないので、実質は先天的才能評価であるのだが、今年は専用機持ちが6人もいる。……実質、その6人の戦いになるだろう。

 セシリア、凰、一夏には一度勝ってる。問題はないだろう。

 簪の装備は知り尽くしてるから、まあ、負けないはず。

 問題は……葵。

 接近すれば切り刻まれ、逆に距離を取れば問答無用で撃ち落とされる。

 何か、不意をつけるような装備を作らないといけないかな……。例えば、複合武器とか。

 

(……8、例の翼のフライトユニット、完成状況は?)

《80%だ。もうすぐ完成だが……どうした?》

(アレに、可変機能をつけて、武器に変形するようなギミックをつけたい。できるか?)

《……今更何を言うか》

(例えば、連射の効く射撃武器……ガトリングを内蔵するとか……)

《いや、どうせお前は接近戦しかできん。剣の方がいいんじゃないか?》

(うーん……。……両方、は?)

《それはいくらなんでも……。いや、案外いけるかもしれん。図面を制作するから、しばらく待ってくれ》

 

 おや、冗談のつもりだったけど……なんとかなるのか?

 ……一旦中断するか。そろそろ、夕食の時間だ。

 

「……と、いうわけで、今日はここまでだ」

「はあっ……。くっ、無念……」

 

 目の前には、息を切らして道場に倒れる、箒。

 ナニしてたか、って?

 木刀を使って、打ち合いをしてたんだよ。途中から考え事してたけど。

 こいつとは、こうやってときどき稽古をしている。本気で、空破斬の習得を考えているようだ。俺としては、「竜破斬」の方が好きだけど、ファンタジーやメルヘンじゃあるまいし、この世界では使えないしな。

 

「シャワーを浴びたら、晩飯食いにいこうぜ。葵も誘ってくるわ」

「はあ……よ、余裕だ、な……」

「なあに、鍛え方が違うんだよ」

 

 ――俺は、何度も死線を越えてきた。

 トラから逃げ、クマと戦い、パンダに襲われ、迫るISから身を隠し……

 ……って、アレ?ほとんど師匠(もしくは老師)のせいだな。なんだか泣けてきた……。

 

「……おい、紅也。どうした?涙が……」

「な……泣いてなんか、ないんだからね!これは汗だから!!心の汗だから~!!!」

 

 走り去る俺。その目には、光るものがあったとかなかったとか。

 

「……いや、だからそれは、涙では?」

 

 一人残された箒の声は、道場にむなしく響くのだった。

 

 

 

 

 

 

 食堂。

 夕食時、ここが騒がしいことはいつものことだが……。今日は、いつも以上に賑わっていた。

 

「ねえ、聞いた?」

「聞いた聞いた!」

「え、何の話?」

「だから、あの織斑君と、山代君の話よ」

「いい話?悪い話?」

「最上級にいい話」

「聞く!」

「…………」

「まあまあ落ち着きなさい。いい?絶対これは女子にしか教えちゃダメよ?女の子だけの話なんだから。実はね、今月の学年別トーナメントで優勝した人は……二人のうちどっちかと付き合えるんだって!!」

「えええっ!?そ、それ、マジで!?」

「……………」

「マジで!」

「うそー!きゃー、どうしよう!」

 

 奥の方で密集する十数名の女子。そこから、きゃいきゃいうるさい声が聞こえてきた。

 気になったので葵に様子を見に行ってもらったが、戻ってきた葵は……なんていうか……ちょっと不機嫌だった。

 

「……で。何の騒ぎなんだ、アレ」

「……まずは、ご飯」

 

 すたすたと、食券を買いに向かう葵。俺と箒は顔を見合わせたあと、黙ってついていくことにした。

 

 

 

 

 

「な……なんだと!本当なのか、それは!!」

「う……うん。みんな言ってる」

「な、なぜこのようなことに……」

 

 カラン、と箸を落とし、頭を抱える箒。……俺も同じ気分だ。

 何だよ。「俺と付き合う」って。根も葉も……それどころか、種すら無い噂だ。

 そもそも……。俺が優勝したら、どうなるんだ!?

 嫌だ!!俺は一夏と違って、そんな趣味はない!!

 ……じゃあ、俺がワザと負けると……。

 葵の優勝!?そして一夏と交際!? そんなの……そんなの……

 

「おにーちゃんは許しませんよ!!」

「うわっ!?い、いきなり叫ぶな!!」

「落ち着け」

 

 スパン!と葵にはたかれる。どうやら、口に出していたようだ。

 いやあ、失敗失敗。

 

 さて。

 

「まったく……。こんな根も葉もない噂、どっから出てきたんだろうな?」

「……!さ、さあ。だ、誰が言いふらしたのかさっぱり……」

 

 ……ん、『言いふらした』?なにか、引っかかりを感じるな。

 

「「…………」」

 

 葵と二人、無言で箒を睨み続ける。

 箒は夕食をとりつつも、ちらちらとこちらを見て―――箸を置き、観念したかのように、ため息をついた。

 

「じ、実は……。あの日の夜……」

 

 

 

 

 

 

 襲撃事件の当日、私と一夏の同居生活は、唐突に終わりを告げた。

 

「部屋の調整が付いたので、今日から同居しなくてすみますよ。

 えっと、それじゃあ私もお手伝いしますから、すぐにやっちゃいましょう」

 

 山田先生から告げられた、引っ越し宣言。

 当然……あ、いや、一夏が寂しがると思ったからだ。だから私は反対した。

 ……だが、あの馬鹿は違った。

 

「そんな気を遣うなって。俺のことなら心配するなよ。箒がいなくてもちゃんと起きれるし歯も磨くぞ」

 

 ~~!私がこうまで気にかけているのに、あの馬鹿は―――!!

 私は怒りにまかせて、そのまま部屋を移った。

 

 新しい部屋に着いた後で、私は後悔した。

 怒りにまかせ、まともに言葉も告げずに去った。……別れの印象は、おそらく最悪だ。

 このままではいけない。そう思い、一夏の部屋へと向かう。

 ノックしても気付かなかったようなので、少し強めにノックすると、一夏が飛び出してきた。……うんうん、そんなに私に会いたかったのか。

 

「お、箒。なんだ?忘れ物か?」

 

 ……目の前に一夏がいる。

 今まで当たり前だったことが、明日からは特別なことに変わってしまうのだと思うと、何とも言えない気持ちになる。

 

「どうかしたのか?まあ、とりあえず部屋入れよ」

「いや、ここでいい」

 

 戻ったら、また未練が出てしまう。そう、思ったのだ。

 ……しかし、何と言おう?「今までありがとう」か?――これでは、別れの挨拶ではないか!

 「また、教室で」か?――なんだか、私のキャラではない気がする。

それとも――

 

「……箒、用がないなら俺は寝るぞ」

「よ、用ならある!」

 

 待て、今帰られたら、それこそ未練が残る!!

 何か……何か、話題は……そうだ!

 

「ら、来月の、学年別個人トーナメントだが……」

 

 さて、ここからどう続けようか。

 ――と、唐突に、一夏と凰の会話がよみがえる。かつて交わしたという、将来の約束。

 ……あんな女に、遅れを取ってたまるか!!

 

「わ、私が優勝したら――つ、付き合ってもらう!」

 

 

 

 

 

 

 種と言うか、火種はお前か、箒。

 

「で、それから一夏の態度は変わったか?」

「いや、いつも通り……だと、思う」

 

 ……そうか。じゃあ、多分。

 

「それ、誤解されてる」

「……は?」

 

 葵も気付いたようだ。箒一人が、ピンとこない顔をしている。

 

「考えてみろ。幼なじみのかわいい子に告白されて、ドギマギしない男がいるか?

 もしいたら、そいつはその子を何とも思ってないんだろうな」

「か、かわいいだと!?わた、私がか?」

「? ああ。

 ……話を続けるぞ。いくら一夏でも、そこまで鈍くは無いはずだ。なら、なぜ反応が無いか?それは――」

「一夏にとって、それは当たり前の事だから」

「――って、葵。話をかぶせるな。……とにかく、一緒にどこか行くのに『付き合う』とか、そう思われてるぜ」

「な、なんだと!ううむ、一夏め……」

 

 いや、紛らわしい言い方をした、お前も悪い。

 しかし一夏……愛されてるな~。

 

「……箒。一夏、好きなの?」

「すっ……?そ、そんなことが、ああああるわけないだろう!

 一夏のことなんぞ、何とも思ってないわ!!」

 

 分かりやすく動揺し、叫ぶ箒。しかし、タイミングが最悪だった。

 

「あー、そうか。

 どうりで、話しかけても反応しなかったし、俺を避けてたわけだ。

 ……悪いな、箒。お前の気持ちに気付けなくて」

 

 ぎぎぎ、という擬音が聞こえた気がした。

 箒が振りかえったその先には、トレーを持った一夏と凰がいた。

 ……それにしてもこのセリフ、状況が違えば嬉しく思うんだろうなー、とか、考えたり考えなかったり。

 

「じゃあ、俺は邪魔みたいだから……。行こうぜ、鈴」

「ええ。じゃあね~。三人でごゆっくり~」

 

 反転し、去りゆく二人。

 

「ご……誤解だあぁぁぁ!!」

 

 後に残されたのは、涙目で叫ぶ箒と、静かに食事を続ける俺達二人だけだった。

 




ここから原作2巻です。
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