IS~RED&BLUE~   作:虹甘楽

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昔の自分の文章を見ると、なんだか恥ずかしいですね。
さらに恥ずかしいのは、今は間違いなくこのころよりも文才が無くなっていること。


第2話 自己紹介。俺の名前は……

 一時間目。科目は「IS基礎理論授業」。授業自体は、予習どおりの内容だったが、俺の手は板書をとっていない。なぜなら……

 

(自己紹介の機会が…無かったッ!!)

 

 衝撃の事実に気付き、打ちひしがれていたからだ。

 あまりの事態に愕然として、上の空で――気が付いたら、授業は終わっていた。

 そして今は休み時間。教室も騒がしくなってきたが、妙な空気になっていて、俺の周囲には誰もいない。……いや、いるにはいるが、微妙な距離を保っている。

 アレか?自分から話しかけるのは気まずいか?初対面で「やあ名無しの権兵衛くん」とか話しかけたくはないってか!?

 ……同感だ。俺も、名前を知らない奴に話しかけるのは、苦手だ。

 

「なあ、ちょっといいか?」

 

 そんな微妙な空気を払って話しかけてきたのは、気軽に話せる唯一の例外――――俺の前に座る、世界初の男性IS操縦者、織斑一夏であった。

 

 

 

 

「ん、どうしたんだ織斑。なんか用があるのか?あるんだな!」

「な、なんで断定形なんだよ。と、いうか、近い!顔が近いから!」

 

 ……っと、興奮しすぎていたようだ。自重しよう。

 

「いや、悪いな。周りに誰も知り合いがいないうえに、こんな環境だから、つい…な」

「ああ、気にすんなよ。その気持ちはよく分かる。すごいよな、女子のパワーって」

「特に織斑先生が現れた時の騒ぎようといったら……」

「ファンが多いのは知ってたけど、あそこまでだと軽く引くぜ。……ところで、本当に今更なんだけど、お前の名前は?」

 

 ………来た!その質問を待っていた!

 すごいぜ、空気が読める男、織斑一夏!よっ、大統領!!

 

「あ、そういえばまだ自己紹介してなかったっけ」

 

 まわりの女子の話し声のボリュームが落ちたのが分かる。みんな、俺に興味津々か。そうかそうか。…ならば、期待に応えようではないか!

 

「俺の名前h……「ちょっといいか?」…」

「え?……箒?」

「廊下でいいか?」

「あ……いや……」

 

 どこか申し訳なさそうにこちらを見る織斑。話に割り込んできた女子は…こっちを睨んでる。しかし、この顔、どこかで―――?

 

「……あ、篠ノ之 箒?」

 

 ギロリ、とこちらを睨む目つきが鋭さを増す。その様は、まるで抜き身の日本刀……

 

「なぜ私を知っている?お互い、初対面のはずだが?」

「もちろん初対面さ。ただ、俺はお前を知ってる。……というか、ネットで見た。

 ……日本の全国大会で優勝するほどの腕前、一度やりあってみたいと思ってたんだ」

「ほう、それを知ってなお挑むか。……面白い」

 

 互いに好戦的な笑みを浮かべ、目線がぶつかり合う。と、そこへ割り込むように、第三者の声が挟み込まれる。

 

「ところで箒、話があるんじゃないのか?」

 

 織斑だ。第三者どころか、そもそも彼は当事者だった。しかし彼の一言によって、場の闘気は霧散した。最終決戦的な流れだったのに。空気読め。

 

「あ、ああ、そうだった。早くしろ」

「お、おう」

 

 二人はすたすたと廊下へ向かう。再び、俺は取り残された。

 

「ちょっと、よろしくて?」

 

 今度声をかけてきたのは、金髪蒼眼、おまけにロール髪の女子だ。…今にも「おーっほっほ」とか言い出しそうな。あくまでイメージだけど。

 微妙な上から目線や、腰に当てた手が、その印象を補強する。

 

「訊いてます?お返事は?」

「ああ、悪い。考え事をしてた。それより、君は誰?そして用件は?」

 

 すると、彼女は信じられないようなものを見る目でこちらを見る。気のせいか、その瞳には怒りが見て取れ…そういえば、なんか女子に睨まれてばっかだよな、俺。

 

「……わたくしを覚えてない?このセシリア・オルコットを?

 ……そうですか。一度負かした相手など、忘れましたか!わたくしはあれから訓練を積み、あなたを叩きのめすことを目標にしていましたのに!!」

「いや、だから、絶対初対面……」

「まだおっしゃいますか!?だいたい、あなたのことは、昔から気に入りませんでしたの。話しかけて差し上げても無口で、無愛想。それが少し饒舌になったと思えば、野蛮な話し方の上に、わたくしを完全無視。なにより許せないのは―――」

 

 そこでオルコットは、一拍置いて、告げる。

 

「こうして、男のまねごとをして、おめおめと学園に現れたことですわ!山代 葵!!」

 

 

 

「え……それ、多分、人違いじゃ」

「見間違えるものですか!その蒼い短髪、黒っぽい碧眼、日本人特有の肌!全て!記憶の通りですわ!!」

「いや、そもそも俺は……」

 

 キーンコーンカーンコーン。

 微妙なタイミングでチャイムが鳴り、織斑と篠ノ之が戻ってきた。

 

「っ……!またあとで来ますわ!逃げないことね!よくって!?」

 

 そう言い残して去っていく(いや、自分の席に戻っただけだが)オルコット。

 早く誤解を解いておかないと、面倒なことになりそうだ。

 

「……何だ、今のは」

「……さあ?」

 

 教室入り口で立ち尽くす二人。その後ろには、修羅がいた。

 

 パァン!バァン!!無駄のない連撃が、無防備な二人の頭に降りそそいだ。

 

「とっとと席に着け」

「「は…はい、織斑先生」」

 

 

 

 さて、二時間目もおわり、休み時間。

 ……え、二時間目はどうしたって?特に語る事は無い。強いて言うなら、織斑は少しバカだった、ってところだ。そして織斑先生のコンボ数が増えた。それだけだ。

 話を戻そう。俺は今、追われている。

 赤い彗星に?乙女座の変態に?違う違う、マイ☆クラスメイツに、さ。

 

「待って、山代くん!それとも山代さん?」

「さっきのセシリアの話って、どういうこと?」

「山代くん、調べさせてもらうよ~」

 

 そう言って、手をワキワキさせながら迫るクラスメイトから逃げるため、セシリアとの約束を無視した俺は、間違ってない。……間違いなんかじゃ、ない。

 なんで俺が、女に胸を揉まれなきゃいかんのだ。あの目はヤヴァイ。捕まったら尊厳を踏みにじられるほど滅茶苦茶にされそうだ。エ○同人みたいに!

 ……捕まらないけどね。

 

「とうっ!!さらばだ明智くん!!」

 

 掛け声と共に、窓の外へ。そしてパラシュートを展開し、安全な着陸を図る。

 

「あっ、逃げた!」

「逃がさないわよ、山代くん!」

「弓道部部隊、前へ!!」

 

「…マジで?」

 

 ぷすり。

 

「ちょっと、この高さからヘイロージャンプとか、どこのモダンコンバットだあぁぁぁ!?」

 

 ……俺が何をした?

 

 

 

 

「それではこの時間は実践で使用する各種装備の特性について説明する。その前に…

 山代。何があった?」

 

 俺の制服は穴だらけ・土まみれ・傷だらけと三点そろった、ボロボロ状態だった。織斑先生は、ややあきれた表情でこちらを見ている。

 

「話すと長くなりますけど、いいですか?」

「却下だ。10文字以下で説明しろ」

「今日は飛べなかった」

「意味不明だ。まあそんなことより……」

 

 自分から聞いたのに、そんなこと扱いで流された。

 ……痛い。心が、イタイ。イタくてイタくて……泣いてしまいそうだ。泣いても……いいですか?

 

「再来週行われるクラス対抗戦に出る代表者を決めないといけないな」

 

 クラス代表。簡単にいえば、ジュニアハイスクールの頃のクラスリーダーのようなポジションだそうだ。対抗戦だけでなく、生徒会の開く会議や、委員会に参加する必要がある。しかしそこは実力主義のIS学園。求められるのは真面目さよりも、強さだとか。

 

「はいっ。織斑くんを推薦します!」

「私もそれがいいと思います―」

「お、俺!?」

 

 ふう、どうやら織斑に決まる流れのようだ。

 

「織斑。席に着け、邪魔だ。さて、他にはいないのか?自薦他薦は問わないぞ」

「ちょっ、ちょっと待った!俺はそんなのやらな―――」

「自薦他薦は問わないと言った。他薦されたものに拒否権などない。選ばれた以上は覚悟をしろ」

 

 ざまあwwww

 別に織斑に恨みはないが、ここで贄になってもらおう。

 

「い、いやでも――――」

「待ってください!納得がいきませんわ!」

 

 突如上がった甲高い声。それから机を叩く音。振り返ると、そこにいたのはオルコット。

 

「そのような選出は認められません!大体!男がクラス代表だなんていい恥さらしですわ!わたくしに、このセシリア・オルコットにそのような屈辱を一年間味わえとおっしゃるのですか!?」

 

 おお、修羅場だ。渡鬼だ。

 

「実力から行けば、代表候補生のわたくしがクラス代表になるのは必然。それを、物珍しいからという理由で極東の猿にされては困ります!わたくしはこのような島国までIS技術の修練に来ているのであって、サーカスをする気は毛頭ございませんわ!」

 

 ……アレ?オルコットさん?アナタの出身地、イギリスも島国では?

 ついでに、その言い方だと、この国出身の世界最強を敵に回しかねないぜ。

 

「いいですか!?クラス代表は実力トップがなるべき、そしてそれはわたくしですわ!あるいは……」

 

 チラリ、とこちらを見るオルコット。イヤな予感がする。

 

「ここにいる、オーストラリアの代表候補生、山代 葵が適任ですわ!!」

 

 し――――ん、と、教室が冷えた。途中まで熱血展開だったのに、最後の最後で台無しだ。

 まさか………人の名前を間違えるとは。

 

「……オルコット」

「はい、なんでしょう」

 

 織斑先生は、額に手を当て、ハァ……とでも言いたげだ。

 そして俺を指さし、決定的な一言を告げる。

 

 

 

「コイツの名前は山代 紅也。れっきとした、男だぞ」

 




第1章は毎日12時に投稿できたらいいな、と思います。
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